K-BALLET Opto「プラスチック」製作
発表レポート~新星ジュリアン・マッ
ケイも出演する意欲的新作を創造

BunkamuraとK-BALLET COMPANY(芸術監督:熊川哲也)による新プロジェクトとして期待されるK-BALLET Optoの第2弾「プラスチック」が2023年1月8日(日)~9日(月・祝)KAAT 神奈川芸術劇場(ホール)にて上演される。同公演は、地球環境に多くの影響をあたえ今後世界的な取り組みが必要とされる「プラスチック」をテーマとし、ビニール傘/ペットボトル/ビニール袋をモチーフに、新たなドラマティック・バレエ『ペットボトル迷宮』『ビニール傘小町』を初演する。11月下旬、東京・セルリアンタワー能楽堂(舞台上)で製作発表が行われた。

■「ペットボトル」をテーマに「芸術と社会がいかにつながるか」を追求
初めにダンサーによるデモンストレーションが行われた。2作品の中心となるダンサーの紹介を目的に、各作品ごとのエッセンスが伝わるように構成したという。『ペットボトル迷宮』のデモンストレーションには、ジュリアン・マッケイ(ミュンヘン・バレエ プリンシパル)、飯島望未、日髙世菜が登場。三者が円を描くように動くシーンなどが印象的。『ビニール傘小町』のデモンストレーションには山本雅也と小林美奈が緩急自在に絡み見ごたえがあった。
『ペットボトル迷宮』デモンストレーション (c)Hajime Watanabe
続く企画、作品解説には、アレッシオ・シルヴェストリン(『ペットボトル迷宮』振付・演出)、渡辺レイ(『ビニール傘小町』振付・演出)、高野泰寿(企画・構成・台本)が登壇。
K-BALLETプロデューサーの高野は、今回の企画経緯をこう話す。「K-BALLETは創業から25年を通しまして、芸術がいかに社会とつながるかを追い求めておりました。公演事業から始めてK-BALLET SCHOOLを創り、未来の子供たちを育て、いかに社会に還元していくのかを模索してきたような気がしています。K-BALLET Optoの企画も、素晴らしい古典バレエだけでなく、今だからこそ描ける問題は何かを熊川(哲也)をはじめとして皆でディスカッションをして考えました。それをBunkamuraさんと共に現代的、社会的な今を切り抜くという観点で立ち上げました。熊川が今非常に問題意識を持っているのは環境問題です。そのなかでも一番我々になじみ深いのはプラスチック汚染。そこに芸術がどのように関与できるのかを話し合いながら、ビニール傘とプラスチックボトルをピックアップするに至りました」。
『ビニール傘小町』デモンストレーション (c)Hajime Watanabe
さらに高野は「舞台背景、そこが創られるまでのストーリーも重要視しております」と述べる。『ペットボトル迷宮』で使用される1万本のペットボトルは廃材を利用してのリサイクル品だが、それは東京・表参道に設置されたリサイクルボックス「SmaGo」とのタイアップで、リサイクルペットボトルを用いて舞台装置を作るという。『ビニール傘小町』に関しては、商業施設から集められた傘を舞台に上げる。また、現代美術家の森村泰昌とほぼ日刊イトイ新聞が手がける「アート・シマツ」とのコラボによって舞台セットができるという。「今回の作品を通じて、普段芸術と接点を持たない業界の活動を知ることができたり、自分たちの活動を知っていただけたりします。社会との接点が生まれたのかなと思っています」と手ごたえを語る。
(c)Hajime Watanabe

■振付・演出家が語る『ビニール傘小町』『ペットボトル迷宮』への意欲
『ビニール傘小町』の原案は三島由紀夫の「近代能楽集『卒塔婆小町』」と太田省吾の「小町風伝」であり、年老いた老婆(小町)の物語。K-BALLET COMPANY 舞踊監督で、同作の振付・演出を担う渡辺はリサーチを重ねるなかで、舞踏の土方巽が踊る『疱瘡譚』の映像に刺激を受けた。「もの凄く地に足が着いた感じの表現の仕方や音楽の使い方がインスピレーションになりました。言葉で表せないものがダンスなんだなと。ダンスで言葉以上のものを表現できると思い、模索しながらやっています」と明かす。そして「小町は美しかった女性だけど、現代では老婆。人はみんな老化していくし、ビニール傘のプラスチックも消費されていく。老いた美しさとか、老いて自分の表現というのがもう少し深くなっていくこととか、老婆を通して表現の原点に戻りたいという気持ちで進めています」と意欲を語った。
『ビニール傘小町』デモンストレーション (c)Hajime Watanabe
『ペットボトル迷宮』の振付・演出のシルヴェストリンは、パリ・オペラ座バレエ創立350周年祝賀祭のオープニングを一任された鬼才。「ペットボトル」というテーマを受けて「私の最初のステップとして、ペットボトルという素材を芸術として捉えてみようと思いました。環境問題の答えを見い出すのではなくて、ペットボトルというものを芸術作品にしてしまおうと。その素材を分解しながら考えていきました」と話す。そして「私が創造いたしましたのは、大きな空間でペットボトルという表面を創っていくこと。動く壁を創ってみたりして、それがいろいろな形で再生されていくのです。なので、私たちの周りに存在しているペットボトルですが、形を変えながら私の一部分になっていきます」と語る。音楽はJ,S.バッハとリゲティで「オルガンの作品も取り入れて、空間というものが感じられる雰囲気を創り上げようと思います。そして、空間そのものが呼吸をしているようなイメージを想像しております」と構想を語った。
『ペットボトル迷宮』デモンストレーション (c)Hajime Watanabe

■新星ジュリアン・マッケイ降臨! K-BALLETとの新たな「出会い」
『ペットボトル迷宮』に出演するマッケイは、アメリカのモンタナ州出身で、11歳のとき名門ボリショイ・バレエ・アカデミーに留学。ローザンヌ国際バレエコンクールでプロ研修賞を受賞したのち英国ロイヤル・バレエ団で研修し、ロシア、アメリカを経て、現在ドイツのミュンヘン・バレエ プリンシパルを務める。新世代の麗しきスターも途中から登壇し、「私はここに来ることができて、うれしく思います。このように多くの才能がある方たちと共演できることを幸せだと感じております。このコンサートに向けて私は非常に興奮しておりますけれど、全く新しいユニークなプロジェクトだと思っておりますので凄く楽しみです」とコメントした。
ジュリアン・マッケイ (c)Hajime Watanabe
質疑応答も活発だった。最後にマッケイへの質問とその回答の一部を紹介する。
「どのような表現を心がけ、どのように伝わったらいいか?」との質問に対して「私はやはり踊りという芸術は皆様に魅せるということが需要だと思っていますし、社会におけるいろいろな問題を改善できるかどうか、そういうことにスポットをあてられることが凄くいいと思います。だから踊っているのでありまして、実際に踊ることによって、いいことが生まれるのであればうれしいと思っております。踊ることによって、普段皆様が考えていないことにライトを照らすことができれば凄く幸せです」と返答した。
『ペットボトル迷宮』デモンストレーション (c)Hajime Watanabe
また「K-BALLETのダンサーとアレッシオさんの作品を踊ることによって、どのような刺激を受けているか。また、これからコラボレーションに期待することは?」との問いに、こう答えた。「私にとりましては、踊り手の非常に長い道のりのなかで、いつも学びというものを心がけています。どんな劇場、どんな振付家、どんなプロジェクトに関わりましても学ぶことは必ずあると思います。今回アレッシオさんと共演して、非常にユニークで興味深い体験ができております。過去のものとはまったく違います。そして、いつも私は新しい形とか型とか動きを探し求めております。今回は新しい出会いがたくさんありました。いい経験をさせてもらっています」。
Orchardシリーズ: K-BALLET Opto『プラスチック』トレイラー
取材・文=高橋森彦

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