【LIV MOON インタビュー】
世界中が共有している痛みを
作品に反映したいと思った
シンフォニックメタルの最高峰LIV MOONが5thフルアルバム『OUR STORIES』を完成させた。より情感を増したAKANE LIVの圧倒的な歌唱力と、デビューからLIV MOONを支えてきた西脇辰弥はじめ凄腕ミュージシャンたちによる卓越した演奏が詰め込まれた今作について、プロデュースも担当したAKANE LIVに語ってもらった。
自分を奮い立たせてくれた曲は、
やっぱりシンフォニックメタルだった
今回のアルバム制作にあたってコンセプトやテーマはありましたか?
2016年に東京都美術館で杉本博司さんという方の写真展があって(2016年9月3日~11月13日の『ロスト・ヒューマン展』。新シリーズ『廃墟劇場』を世界初発表)、世界各国の廃墟になった劇場や映画館で大きなスクリーンに光を当てて、その劇場を映し出すという写真を撮っていたんですね。昔は美しく煌びやかな劇場が朽ち果てた姿、その細かくディテールも見えた…たぶんこの劇場では100年間、いろんな作品が上映されて、人々が生きたりいなくなったりしていった歴史を感じて、その写真にすごく感動したんですね。そこで感じたいろんなものを作品に反映したいというのを2016年の時点で思っていたんですけど、その後、コロナ禍で劇場やライヴハウスが閉じていってしまう姿と重なって、あの写真をモチーフにした作品を作るなら今だと。なので、写真展で買った『廃墟劇場』のポスターを見ながら自分で物語を書いて、その物語をずっと一緒にやっているKAZSINさんと西脇さんにお渡しして、“この物語を見て受けたインスピレーションで曲を書いてください”ってお願いしました。でも、最初はシングル2曲の予定だったんですよ。それがアルバムを作ることになり、他の方にも楽曲を提供してもらうのに物語を共有したほうが…でも、戦争も始まって、コロナも始まってっていう状況になってしまったので、ちょっと物語が暗すぎたというか。この時代に誰もそんな暗いものを聴きたくないんじゃないかと思って、そういうものを反映した曲は残しつつも、あとは“一緒に活動してきた10年間で、この曲をLIV MOONに書きたいっていうものを書いてください”と他のメンバーには伝えて、アルバムに取り組んだ感じです。
楽曲のイメージについて具体的な希望は伝えました?
今までLIV MOONってハイトーンを使う曲がすごく多かったんですけど、そういう楽曲はもう十分あるので、もっとミドルの音域だったり低音を使う楽曲を増やしたいと思って、KENTAROさんには低音も使う曲をオーダーしました。でも、私的には低音ではない楽曲が来たんですけど(笑)。それによって自分的にもチャレンジングな音域があったりしましたね。私、音域は広いんですけど、ソプラノに切り替わるポイントが意外と早いんですよ。みなさん、私の声ってどこまでも出るから“この音域でも地声で出るだろう”って曲を渡してくださるんですが、“いや、これはソプラノです”って。そこらへんで苦労したのは多かったんですけど、おかげで新たな歌い方だったり、新たな表現方法が見つかりました。他のメンバーは曲を書いてくださったのが初めてだったので、こうやって積み重ねていくうちに、ジャストフィットな音域がくるようになると思うんですけど。
歌っていて新鮮だった?
楽しかったり、難しかったりですね。「Daybreak」を書いてくださった原澤秀樹さんは「Fighter」と2曲提供してくださったんですけど、彼はドラマーなのでリズムの取り方とかがすごくカッコ良いんですよ。でも、歌ってみると難しくて。LIV MOONってバンドメンバーがかなり難しいことをやっている中、私は朗々とソプラノで歌う楽曲が多かったんですが、今回は自分自身も刻んでいくっていう曲もあって、そのテンポに慣れるのに時間がかかって苦労しました。でも、こういう楽曲をもっとLIV MOONも増やしていきたいと思っていたんです。秀樹さんの曲は全編にわたって疾走感があるので、それにインスパイアされてAメロでは雄大な自然を前にした人々だったり、それを鳥に例えたりしました。そういう映像が目に浮かぶ曲をもっと歌っていきたいと思っていたから、彼の曲はとてもイメージにぴったりで。新しいLIV MOONの幕開けにはいいなと思って、今回の1曲目に持ってきました。
歌詞も含めて世界観や物語がくっきり感じられますが、歌詞の全体的なテーマというのは?
コロナ禍の中、自分が濃厚接触者になってミュージカルのステージに立ちたくても立てない期間があったんですね。自分は元気だし、パフォーマンスしたいのにできなくて、すごく落ち込みました。隔離期間中にいろいろな音楽を聴いたけど、自分を奮い立たせて前を向かせてくれた曲は、やっぱりシンフォニックメタルだったんです。“自分はこのジャンルでこれからも歌っていきたい”っていう想いがすごく強くなった…一番つらい時、前に一歩進む際の後押しになるような歌詞だったり曲を届けたいなと。今まで自分はいろんな役を演じてきたので、その曲を聴いて何かになりきって歌詞を書くやり方が多かったんですけど、今回は等身大の自分が感じていることだったり、ちょうどレコーディングの前後にウクライナとロシアの戦争が始まったりしたので、自分の想いを素直に歌詞に書いていきました。なので、ポジティブであったり、力強いメッセージ性がある音楽を届けたいっていうのも、このアルバムには核としてあると思います。
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