FEATURE / (sic)boy「Afraid?? feat
. nothing,nowhere.」 最新曲で提示
した、2020年代エモラップの先にある
新たなポップスの可能性

Text by Jun Fukunaga(https://twitter.com/ladycitizen69)
Photo by Official
24kGoldn、iann dior、The Kid LAROIら若手ラッパーの活躍により、今やアンダーグラウンドなヒップホップという枠を超え、ポップスのスタイルのひとつとして、音楽シーンに定着してきた感のあるエモラップ。同様の現象はここ日本でも起こり得るのか? そして、そのムーブメントをアップデートする音楽は日本から生まれるのか? 11月23日(水)にリリースされたばかりの(sic)boyの最新曲「Afraid?? feat. nothing,nowhere.」は、そんな問いかけに対する彼からの回答と言える楽曲だ。
JUBEEとのコラボ曲「君がいない世界」以来のリリースとなる本楽曲は、漠然とした不安や冷たい時代に心がすり減り情熱や希望が奪われていく様、遠そうで近くもあるように感じる“死”に対して躓きながらも命の意味を孤独に追いかけ問い続けることを説く。テーマとしては、さまざまな不安を抱える今の若い世代の心情を代弁した、エモラップの王道的なものになっているが、その閉塞感を乗り越えるための希望も示されている。
例えば、曲中でリフレインされる《何も怖くないよ/君がいない夜を超える》、《瞳閉じれば/ツギハギの空を駆ける》という2つの印象的なラインは、その最たる例だ。また繰り返されることである種のヒプノティックさを醸し出しているが、これは聴き手だけに限らず、歌い手である(sic)boy本人にとっても、作用する最低な現実を乗り越えるための暗示のようにも思える。
サウンド面では、これまでにヒップホップとオルタナティブ、エモ、ラウドロックの融合を図り、J-Rockと日本語ヒップホップを行き来する両ジャンルの新境地を切り開いてきた(sic)boyらしい、歪んだギターとボトムヘヴィなTR-808サウンドをハイヴリッドしたトラックに仕上げられている点が印象的だ。このスタイルはこれまでの『CHAOS TAPE』(2020年)、『vanitas』(2021年)といった過去2作品のアルバムを振り返ってみても、(sic)boyのシグネチャー・サウンドを踏襲したものであることは間違いない。
しかし、本楽曲のドラムの乾いたスネアの音やリズム・パターンを聴いていると、より彼のルーツであるロック要素が色濃く反映され、従来のエモラップ的トラックの枠を抜け出し、生身のロック・バンドのような、生々しいグルーヴが楽曲に備わったように感じる。これは現在、ヒップホップとロックの融合が以前に輪をかけて進み、今やラッパーがポップパンク・ロッカー化し、そういったアーティストがエモラップのプロデュースを手がけることも珍しくなくなるなど、これまで以上に固定観念的なジャンルの概念が溶けてなくなってきたアメリカのシーンともリンクする要素だ。
そのような印象を受けるのは、同地のシーンに通じるUSの新鋭インディペンデント・ヒップホップ・シーンで活躍するコレクティブ、AG ClubのメンバーであるSaint Patrickがプロデュースを務めていることも無関係ではないだろう。
また本楽曲では、客演に迎えられたアメリカのエモラッパー/シンガーのnothing,nowhere.による楽曲の後半のメロディックなフロウも聴きどころのひとつだ。nothing,nowhere.には(sic)boyと同じくロックとヒップホップを融合したその音楽性だけに限らず、SoundCloud経由で頭角を表したという共通項がある。またこれまでに若者が抱える精神的な不安や人生の苦しみをテーマにした楽曲を多数発表しているなど、(sic)boyが本曲で表現する世界観との相性も抜群だ。
そんなnothing,nowhere.は、2021年のアルバム『TRAUMA FACTORY』では、収録曲の「blood」や「nightmare」で現在、海外でリバイバル中のポストパンクや00sエモパンク的なアプローチにも取り組むなど、ダウナー系エモラップという枠を超えた音楽性を打ち出している。
一方、(sic)boyも先述の2021年のアルバム『vanitas』ではアメリカのラッパー/シンガーのJez Diorを客演に迎えた「FLN」で、00’sエモパンクに接近するなど、両者はルーツの面に限らず、近年の取り組みを見ていても果敢にその音楽性を拡張するスタンスで共鳴しあっていることがわかる。その意味で本楽曲はこれまでヒップホップとロックの垣根を越えてきた両者による新たな挑戦であり、現在グローバルに広がりをみせるポップスとしてのエモラップの次の形を明示する新たな可能性を秘めた楽曲と言えるだろう。
それだけに、今後(sic)boyはどのような“ポップスとしてのエモラップ”の進化した姿を見せてくれるのだろうか? 今から楽しみでならない。
【リリース情報】
■ 配信リンク(https://sicboy.lnk.to/Afraid)
【イベント情報】

『(sic)boy one-man live “HOLLOW”』

日時:2022年12月29日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
料金:¥5,000*
会場:神奈川・KT Zepp Yokohama
出演:
(sic)boy
*1F:スタンディング(整理番号付き)/2F:指定席

※未就学児入場不可

※ドリンク代別
※お1人様チケット4枚まで
※公演中止の場合を除き、お客様の体調不良および新型コロナウイルス感染によるチケットの払い戻しはいたしません。
■ チケット詳細(https://sicboy.lnk.to/live_hollow)
■(sic)boy: Twitter(https://twitter.com/sid_the_lynch) / Instagram(https://www.instagram.com/sid_the_lynch/)
Text by Jun Fukunaga(https://twitter.com/ladycitizen69)
Photo by Official
24kGoldn、iann dior、The Kid LAROIら若手ラッパーの活躍により、今やアンダーグラウンドなヒップホップという枠を超え、ポップスのスタイルのひとつとして、音楽シーンに定着してきた感のあるエモラップ。同様の現象はここ日本でも起こり得るのか? そして、そのムーブメントをアップデートする音楽は日本から生まれるのか? 11月23日(水)にリリースされたばかりの(sic)boyの最新曲「Afraid?? feat. nothing,nowhere.」は、そんな問いかけに対する彼からの回答と言える楽曲だ。
JUBEEとのコラボ曲「君がいない世界」以来のリリースとなる本楽曲は、漠然とした不安や冷たい時代に心がすり減り情熱や希望が奪われていく様、遠そうで近くもあるように感じる“死”に対して躓きながらも命の意味を孤独に追いかけ問い続けることを説く。テーマとしては、さまざまな不安を抱える今の若い世代の心情を代弁した、エモラップの王道的なものになっているが、その閉塞感を乗り越えるための希望も示されている。
例えば、曲中でリフレインされる《何も怖くないよ/君がいない夜を超える》、《瞳閉じれば/ツギハギの空を駆ける》という2つの印象的なラインは、その最たる例だ。また繰り返されることである種のヒプノティックさを醸し出しているが、これは聴き手だけに限らず、歌い手である(sic)boy本人にとっても、作用する最低な現実を乗り越えるための暗示のようにも思える。
サウンド面では、これまでにヒップホップとオルタナティブ、エモ、ラウドロックの融合を図り、J-Rockと日本語ヒップホップを行き来する両ジャンルの新境地を切り開いてきた(sic)boyらしい、歪んだギターとボトムヘヴィなTR-808サウンドをハイヴリッドしたトラックに仕上げられている点が印象的だ。このスタイルはこれまでの『CHAOS TAPE』(2020年)、『vanitas』(2021年)といった過去2作品のアルバムを振り返ってみても、(sic)boyのシグネチャー・サウンドを踏襲したものであることは間違いない。
しかし、本楽曲のドラムの乾いたスネアの音やリズム・パターンを聴いていると、より彼のルーツであるロック要素が色濃く反映され、従来のエモラップ的トラックの枠を抜け出し、生身のロック・バンドのような、生々しいグルーヴが楽曲に備わったように感じる。これは現在、ヒップホップとロックの融合が以前に輪をかけて進み、今やラッパーがポップパンク・ロッカー化し、そういったアーティストがエモラップのプロデュースを手がけることも珍しくなくなるなど、これまで以上に固定観念的なジャンルの概念が溶けてなくなってきたアメリカのシーンともリンクする要素だ。
そのような印象を受けるのは、同地のシーンに通じるUSの新鋭インディペンデント・ヒップホップ・シーンで活躍するコレクティブ、AG ClubのメンバーであるSaint Patrickがプロデュースを務めていることも無関係ではないだろう。
また本楽曲では、客演に迎えられたアメリカのエモラッパー/シンガーのnothing,nowhere.による楽曲の後半のメロディックなフロウも聴きどころのひとつだ。nothing,nowhere.には(sic)boyと同じくロックとヒップホップを融合したその音楽性だけに限らず、SoundCloud経由で頭角を表したという共通項がある。またこれまでに若者が抱える精神的な不安や人生の苦しみをテーマにした楽曲を多数発表しているなど、(sic)boyが本曲で表現する世界観との相性も抜群だ。
そんなnothing,nowhere.は、2021年のアルバム『TRAUMA FACTORY』では、収録曲の「blood」や「nightmare」で現在、海外でリバイバル中のポストパンクや00sエモパンク的なアプローチにも取り組むなど、ダウナー系エモラップという枠を超えた音楽性を打ち出している。
一方、(sic)boyも先述の2021年のアルバム『vanitas』ではアメリカのラッパー/シンガーのJez Diorを客演に迎えた「FLN」で、00’sエモパンクに接近するなど、両者はルーツの面に限らず、近年の取り組みを見ていても果敢にその音楽性を拡張するスタンスで共鳴しあっていることがわかる。その意味で本楽曲はこれまでヒップホップとロックの垣根を越えてきた両者による新たな挑戦であり、現在グローバルに広がりをみせるポップスとしてのエモラップの次の形を明示する新たな可能性を秘めた楽曲と言えるだろう。
それだけに、今後(sic)boyはどのような“ポップスとしてのエモラップ”の進化した姿を見せてくれるのだろうか? 今から楽しみでならない。
【リリース情報】
■ 配信リンク(https://sicboy.lnk.to/Afraid)
【イベント情報】

『(sic)boy one-man live “HOLLOW”』

日時:2022年12月29日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
料金:¥5,000*
会場:神奈川・KT Zepp Yokohama
出演:
(sic)boy
*1F:スタンディング(整理番号付き)/2F:指定席

※未就学児入場不可

※ドリンク代別
※お1人様チケット4枚まで
※公演中止の場合を除き、お客様の体調不良および新型コロナウイルス感染によるチケットの払い戻しはいたしません。
■ チケット詳細(https://sicboy.lnk.to/live_hollow)

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