河村たかしのハンドサイン:ロマン優
光連載226

ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第226回 河村たかしのハンドサイン「河村たかし、かわいそうだと思いませんか! あれ、絶対間違っただけなのに! 指ハートなんてわかるわけないです!」と編集氏からいつになくテンションの高いメールが届き、非常に困惑。 
 11月12日・13日に名古屋市内で開催されていた「韓国フェスティバル2022 in 名古屋」に出演した名古屋と東京を拠点に活動する地下アイドルグループ・AMOURのメンバーがTwitter上にあげた河村たかし名古屋市長とグループが一緒に写った写真。メンバーはみんな指ハートをしてるのに、たかしだけは卑猥なハンドサインをしていたことが「セクハラではないか」とネット上で軽く騒がれた事件(?)。いつも何に対しても他人事のような言動の編集氏がこれに関しては何故そんなに熱くなっているのか。謎だ! 
 それはともかく、金メダルに噛みついた時も本連載で書いている(https://bucchinews.com/mobile/subcul/6836.html)のだけれども、大村知事リコール運動や表現の不自由展に関する抗議活動みたいに、彼に関しては下品な言動よりも、もっと気にしなければならないことがあるのではないだろうか。
 しかし、テーマとしてふられた以上はこれについて真面目に考えなければならない。
 メンバーがあの写真を何も気にせずにTwitterにあげたのは、あのハンドサインの意味をがわからなかったからだろうと思う。年齢的におかしなことではない。自分の中学生(男子校)の時にあれをやりながら女性器の名前を連呼する生徒がいたのだが、当時としても時代錯誤感がある「下品なオヤジがやるもの」のイメージであり、大人になってからは「下品なオヤジ」をわざと演じるような悪ふざけでしか、同世代がやっているのを見たことがない。歳が下になればなるほど、そんな奴もいなくなるだろうし。最近の若者が知らないで当たり前だと思う。まさか、あんな騒ぎが起こるなんて想像もしてなかったのでは。
 市長の言い分としては、見よう見まねで同じポーズをとろうとしたが、よくわからなくてああなってしまっただけで他意はないということである。
 実際、70代の男性が指ハートを知っている割合は非常に低いだろう。見よう見まねで間違えたという言い分は納得できるものだ。過去にちゃんと指ハートができていたとしても、その場だけのことだろうし、忘れたと言われたら、そうなのだろうとも思う。しかし、あのハンドサインが今より一般的だった時代を生きていた70代の男性が、自分がとっているハンドサインが卑猥なものであることに気付かないのも変といえば変である。自分の指を見て「これ、まずくない?」と思わなかったのだろうか?
 周りには市の職員もいただろうし、そういった大人たちは気付かなかったのだろうか? 逆に、指ハートを卑猥なハンドサインだと見間違って「最近の若い女の子の間では、あれが流行っているのかー」とか呑気にみんなで勘違いしていたとしたらビックリだが、そんなことはないだろう。 まあ、写真撮ってる時に誰も市長の指先なんか細かくチェックしてなかっただけだと思いますが。それが普通だし。
 しかし、本人はさすがに変な形になったことぐらいは気付くはずで、撮影後にちゃんと写真を確認して、これでよかったのか、ちゃんと確かめるべきだったのでは。しかし、出演者との記念撮影一枚にそんなに真剣に時間をかけて挑まないと言われてしまえば、それはそうなのだ。
 市長が率いる減税日本と、リコール運動では共闘していた維新が名古屋市議会選挙で争う展開なのだが、今回のことが影響して減税日本がイメージダウンし維新が有利にとかいうこともないだろう。所詮はネットの中の小さい騒ぎだし、こういうことを気にするような人は普段から下品な言動が売りになっている河村市長を最初から支持しないと思う。
 市長が実際にどう考えてやったなんて、本人しかわからないが、事象を並べて考えると意図的なものでなかったという説明は、まあ納得できるものではある。
 ただ、自分のハンドサインがあの形になったことに現場で気付かなかったり、あの形になったことに気付きつつも現場では気にならなかったということであるなら、やっぱり少し変だと思う。
 で、自分が気になったことの話を少ししますね。
 この件が騒ぎになったあと、メンバーが市長を好きだと言ってフォローするツイートをしたんですよ。「え、ああいう下品な人が好きなの!」と驚いたとかではなく、そう言ってフォローするしかないだろうし、別にそこは仕方がないとこです。
 地下アイドルって少しでも名前や顔を売りたくて、有名な人と一緒に写真をとってSNSにあげたりしがちじゃないですか。今回もそういうことなんだと思うんですが、それをどこまでオタクは許容できるのかって問題があると思うんですよ。
 私の推しの中には小池百合子さんだろうが山本一太さんだろうが、有名であるというだけで、どんな人だかよく知らないのに一緒に撮りたがるような人もいます。きっと志位さんとでも撮るだろうし、蓮舫さんとも撮るでしょう。なんだったら「あの人は有名な人だ」と言えば桜井誠さんとでも撮っちゃうでしょうね。
 アイドルが政治を語るなって話とは、また別の話で。有名だから一緒に撮りたいというだけで、よく相手のこと知らないわけですから。本人の中では政治関係ないですもん。宣伝のための戦略として仕方ないことだと思うし、ある程度ちゃんとした相手であれば自分の志向と違った人でも別にいいんですが、「さすがにこれは……」みたいに感じる相手も出てきますよね。 
 別に政治家に限った話ではないです。インフルエンサーだったり、迷惑系やゴシップ系YouTuberだったり。趣味嗜好に関してオタクが自分のそれを押し付けるのは違うとは思うんですが、こういった人たちって現実の問題と関わるような人であり、趣味の話とは少し違うじゃないですか。一緒に撮ったり、仕事をする中で、相手の持っているイメージをアイドルも引き受けることになる可能性もあるし、そのつもりはなくても、軽い気持ちでした相手を持ち上げるような発言が、相手の支持を補強するような役割を果たしたり。
 そういったことの危険性を、オタクはどこまでアイドル(や運営)に言っていいものなのか。オタクの分をわきまえて、辛くなったら黙って去ればいいのだろうか。
 そういうことを改めて考えてしまいました。なんか、難しいですよね。
 ちなみに私は感覚ロヂックというグループの死灰スミレさんが前世でやっていたグループのライブでオタクの人が死灰さんにやっていたのを見て指ハートのやり方を覚えたので、河村市長みたいなことにはならないと、そこだけは安心しているのです。
(隔週金曜連載)
【画像】撮影:内閣官房内閣広報室(Wikimedia Commons)、Takashi_Kawamura_Hideaki_Omura_and_Shinzo_Abe_20161021_1.jpgをトリミング。
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
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