1973年初演の唐十郎名作戯曲『ベンガ
ルの虎』を流山児★事務所が上演

流山児★事務所(芸術監督:流山児祥)は、唐十郎『ベンガルの虎』を、2022年11月23日(水)~28日(月)、下北沢 ザ・スズナリにて上演する。演出を小林七緒、音楽を諏訪創、振付をスズキ拓朗がそれぞれ務める。出演は、伊藤俊彦、井村タカオ、成田浬、勝俣美秋、神原弘之(劇団1980)、眞藤ヒロシ、佐野陽一(サスペンデッズ)、山下直哉、山丸莉菜、祁答院雄貴、原田理央(柿喰う客)、橋口佳奈、本間隆斗、中原和宏。
流山児★事務所『ベンガルの虎』 (撮影:横田敦史)
カンナという女が結婚を約束した男を探しに東京の下町にやってくる。その男とは、「ビルマの竪琴」において戦死した仲間たちを弔うために祖国へ帰ることを拒んだ主人公の水島上等兵であり、実はとっくに日本に帰国していて、戦死者の遺骨でハンコを作り、儲けていたという……。唐十郎が1973年に発表したこの戯曲は、同年、唐の主宰する状況劇場が、バングラデシュと日本国内各地で上演し、評判を呼んだ作品だ。今作は、もともと2021年2月に、日本の演劇人を育てるプロジェクトの新進演劇人育成公演として上演予定だったがコロナ禍の影響により中止となったプロダクションが、改めて流山児★事務所の公演として、再起動する形となる。

【ものがたり】
東京下町のハンコ屋に、カンナ(山丸莉菜)という女性が訪れる。ビルマで戦友たちを弔うために僧侶になった夫の代わりに彼が注文したハンコを受け取りに来たのだ。だが、夫である水島(山下直哉)はとっくに日本に帰ってきていて、「日本商社員・水島」として戦死者の遺骨を大量に送り、元上官の俗物博士(伊藤俊彦)らがハンコ会社をつくって儲けていたのだ。名前も過去も奪われたカンナは水島の行方を追い、流しの少年・銀(祁答院雄貴)と共に花月園競輪場にたどりつく。そこはビルマの白骨街道で、バッタンバンの娼家へ繋がっていた。やがて、水底から南国で死んだ母・マサノ(中原和宏)があらわれた。
■演出の小林七緒のメッセージ
『ベンガルの虎』に登場するのは、白骨街道に眠る名もなき兵隊たちや故郷に見放されたラシャメンなど、国や社会のために働いたのに切り捨てられ、ひどい目にあう者たち。戯曲が書かれて50年が経つのに、2022年の現在、とても生々しく感じます。名前を奪われ存在を否定される女は、他人事なのか、自分なのか。今日も稽古場では、唐さんの強い言葉と真摯に格闘しております。アドバイザー大久保鷹さんの言葉「50年前の芝居をなぞるんじゃなく、いまの新作を創るんだ」を合言葉に。作っては壊し作っては壊し、出ていないシーンも皆で考え試し立ち上げる。決して他人まかせにしないこの過程も、唐さんの問いかけに対する私たちの答えなのかもしれません。まもなく出発です。2022年版、私たちの『ベンガルの虎』、共に旅をお楽しみください!
流山児★事務所『ベンガルの虎』 (撮影:横田敦史)
■流山児祥のメッセージ
50年前、唐十郎と紅テント一党は《アジア》を目指していたのです。1972年『二都物語』ソウル公演に続いて1973年『ベンガルの虎』をバングラデシュのダッカとチッタゴンで上演。唐さんは「私共は韓国、バングラデシュと紅いテントを背負って、日本人の深層意識に脈々と流れる《悪夢の結節点》を河原者の肉体に依って逆襲来あるいは演劇化して参りました。それはまぎれもなく、今日の《アジア》で、日本の演劇人である我らに何が出来るかという問いかけであります」と書いています。悪夢の結節点=アジアの戦争を忘れ、経済成長へとひた走っていた日本と日本人に向けて、唐さんは、白骨街道に捨てられた無名の弱者たちの物語として『ベンガルの虎』を書きあげたのです。小林七緒の緻密で微細な演出のもと、唐さんの戯曲と5年間、3作品と格闘した若い俳優たちは見事に成長しました。主演の山丸莉菜、そして山下直哉、祁答院雄貴、原田理央、橋口佳奈の若手、伊藤俊彦、井村タカオ、中原和宏ら実力派で創り上げた唐十郎名作上演の集大成それが『ベンガルの虎』です。3幕・2時間半。唐ワールドを存分にお楽しみください。
流山児★事務所『ベンガルの虎』 (撮影:横田敦史)

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