吉田羊、自身の作品や大泉洋・中井貴
一への思いとは 『祝25周年!WOWOW
冬の吉田羊まつり』放送記念インタビ
ュー

吉田羊のデビュー25周年を記念して、WOWOWでは2022年12月4日(日)に特集『祝25周年!WOWOW冬の吉田羊まつり』が放送される。吉田羊が出演をしてきた数々の映画、ドラマ、舞台に加え、自身初となる音楽コンサート『吉田羊Night Spectacles The Parallel~ウタウヒツジ~25th Anniversary Special』や、シス・カンパニー公演『ザ・ウェルキン』など、豊富なラインナップでおくる。
この特集の放送を前に、吉田羊のインタビューが届いたので紹介する。それぞれの作品に込めた思い、それぞれの見どころなどを語ってもらった。
ーー初のコンサート『吉田羊 Night Spectacles The Parallel〜ウタヒツジ〜25th Anniversary Special』を終えた感想からお聞かせください。パラレルな歌手としての吉田羊は楽しかったですか。
楽しかったです! ファンの方と久しぶりにアイコンタクトを取れる距離で会えて、お客様も楽しんでいただけている様子を感じられたので、本当に楽しくやらせてもらいました。そして、ビジュアル的には再考に再考を重ねましたので……。まったく違う4人の人格を衣装とヘアメイクで表現させていただいて。異国の雰囲気を感じさせるミュージカル女優、演劇と結婚して25年目を迎えた白無垢の花嫁、身体のシルエットが見える色っぽい大人の女性、そして、パラレルな吉田羊と、衣装とヘアメイクが変わるたびに新しい人物の世界をお見せできていたら嬉しいです。
『吉田羊 Night Spectacles The Parallel〜ウタヒツジ〜25th Anniversary Special』  Photo:Maiko Miyagawa
ーースペシャルゲストである大泉さんとのデュエットはいかがでしたか。
楽しかったですね。お受けいただいた時から、絶対的な安心感はありましたけども、大泉さんは2階席から入ってくる瞬間から、お客様との距離感や扱い方が本当に上手ですし、私も舞台上にいながら、出てきた瞬間に胸をつかまれ、さらに、歌声の第一声で、「上手い!」って腰が砕けそうになりましたね(笑)。
ーー向き合って歌唱されてましたね。
ふふふ、そうなんですよね。夫婦役を何度かやらせていただいていて。直近で言うとドラマ『2020年 五月の恋』で元夫婦役をやらせていただいたので、どこかモトオとユキコにリンクするような錯覚を覚えてました。また、同年代ですので、この世界で同年代で闘い続けている同士として響き合う瞬間だったなと思います。お互いの現在の健闘を称え合う空気感もありつつ、また違った感慨深い部分がありました。
『吉田羊 Night Spectacles The Parallel〜ウタヒツジ〜25th Anniversary Special』  Photo:Maiko Miyagawa
ーー最終公演ではVTR出演されていた中井貴一さんがサプライズで登場されました。
私、本当に知らなかったので、本当に驚いた時って口が開いちゃうんだなって思うくらいびっくりして(笑)。私にとっては大切な恩人ですし、ずっと背中を追いかけている方が私なんかのライブのために花束を持って駆けつけてくださるなんて……。こんな世界線があったなんてっていう気持ちでしたね。……ドラマ中で本当にお忙しいんですよ、中井さん。そんな中でこのオファーを受けてくださった懐の深さに感動しっぱなしでした。
ーー実は、中井さんご自身の方から「最後にサプライズで登場してもいいか?」というご提案があったそうです。
ええ……そうなの……? 泣いちゃいますね……。いや、ありがたいですね。中井さんって本当にエンターテイナーだから、相手が誰であっても、人を喜ばせるための労力を惜しまない方なんですよね。なんだろうなぁ……カッコいいんですよねぇ……中井さん。あったかいし、カッコいい。この25年の間、折に触れ、その時その時に私が必要としている言葉やお叱りをくださって。中井さんがいなかったら本当に今ここにいないので……。この先も中井さんに怒られないように、真剣に作品に向き合っていかなきゃなって思ってます。「お前、手抜いただろ!」って言われないようにしないとって思いますね。
ーービデオメッセージを寄せてくれた三谷幸喜さんや矢作兼さんを含め、多くの方からお祝いの言葉が届きましたが、ご家族やご友人もいらっしゃいましたか?
姉2人が家族と来てくれましたね。父はちょっと遠いので、今回は遠慮しましたけども、実はライブ終わりで実家に帰って来まして。簡単に編集した今回のライブの映像を父に見せて。私の歌声やトーク、中井さんと三谷さんのビデオメッセージを聴いて。「本当にありがたいね」って言ってくれました。……私の母は、ずっと私に音楽活動をしてくれって言い続けてたんですよ。「お母さんはあなたの歌声が好きだから、いつかそういう活動をしてくださいよ」って言われてたんですけど、それを見せられないまま亡くなってしまったので……。でも今回、母も会場にいたような気がしてるんです。2曲目のミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の歌「マイ・フェイバリット・シングス」は、母と一緒に歌っているような感覚で歌わせていただきました。
『吉田羊 Night Spectacles The Parallel〜ウタヒツジ〜25th Anniversary Special』  Photo:Maiko Miyagawa
ーー今年のポカリスエットのCMソングでもあった荒井由実「瞳を閉じて」のカバーも、二度と会えない大切な人に想いを巡らすような深い歌声と演奏になってました。
兼松さん(音楽監督)のアレンジが素晴らしかったんですよね。最初に音源が上がってきたときに、私、泣いちゃって。これは泣いて歌えなくなるんじゃないかっていうくらい感動したんです。もともと名曲ですけど、シンプルな歌詞だからこそ響くというか。余計なことを言わないぶん、受け手側が想像する余白のある歌詞だなと思っていて。また、俳優らしさをにじまされられたらいいなという願いを込めて選んだ、ちょっと語りのような「最後のニュース」の歌詞もそうですけど、今の社会情勢に通じるような部分もあって。今、私たちが地球のためにできること、子どもたちに残せるものは何だろうっていうようなことも考えられるようなラインナップに図らずもなったなって思っています。
ーー映像は見ましたか? カメラ14台が入っての撮影で、映像はシネマスコープという映画のようなタッチになっています。
見ましたー!(笑) 本当にWOWOWさんのプロのライブ中継スタッフさんが集結してくださいましたので、お客さんが見たいところをこぼすことなく見せてくださっていて。ヴォーカルだけでなく、バンドのプレイヤーさんたちの手元や表情も抜いてくださっているし、いろんな視点で見ることができるので、贅沢な放送になるのではないかと思います。
ーーそして、今年7月に上演された主演舞台『ザ・ウェルキン』の初放送もあります。
やっていただけることになりました。もちろん、ライブだからこそ成立してる空気感やスピード感があるし、やっぱり舞台は生でこそだなと思うんだけれども、今回はコロナで地方から来られなかった方も多かったんですよね。
舞台『ザ・ウェルキン』  Photo:Maiko Miyagawa
ーー4日間公演中止になっていました。
そうなんです。その1回にかけて、半年間を楽しみにしてきた方もいらっしゃったはずなので、そういう方々に届けられるのは嬉しいですし、18世紀のお話ではありますけども、今に通じるテーマを多分に孕んでいて。ジェンダーレスが声高に叫ばれる今の時代だからこそ届けたい作品だなと思います。
ーー1759年の英国が舞台ですが、女性の劇作家であるルーシー・カークウッドによって、2020年に書き下ろされた作品になってます。
この物語の中で生きている女性たちは、封建的な男性社会の中で、自分の人間としての尊厳を考える間もなく生きていて。なおかつ、女に生まれたがためにジェンダールールを押し付けられ、日々の生活をつつがなく過ごしていくために、家族を養うために、自分が働くことや、役割を押し付けられていることに疑問を持たない強い女性たちなんですよね。そういう彼女たちの姿は、18世紀の話として描かれているにも関わらず、不思議と自分の日常に重なるところがあります。最近も性加害の問題などが取りざたされていますけれども、そういう性的にも搾取されてきた女という生き物が、少しずつ変わってきてはいるけれども、まだまだ改善されずに苦しい思いをしている。遠い話だと思って見ているうちに、どこか自分たちに重なってくる芝居だなと思っていて。
ーー母と子というテーマも内包しています。
生きとし生けるものには皆必ず母という存在がいて、その関係性というのは決してみんなが一様ではない。それぞれの家庭環境があって、繋がり方があって、順風満帆で平和な人もいれば、うまくいっていない人もいて。みんなにとって普遍的なテーマが、母であり、家族であり、親子でありっていうことを考えると今の人に考えていただける、通じるものではないかなと思いますね。なおかつ、血のつながりみたいなことがテーマになってくると、私情や事情を挟まずに、人が人を裁くことの難しさみたいなことも感じさせられて。この先、自分たちがいつ裁判員に選ばれるかもわからない時代で、その時に自分はどの立場で物を考えるだろうかっていうようなことも考えるきっかけになるんじゃないかなと思いますね。
ーーライブ、舞台に加えて、4本の主演映画も放送されます。
『嫌な女』はW主演ではありましたけど、私の初主演作で、黒木瞳さんが初監督に挑戦された作品で思い入れのある作品でもありますので、これを選んでいただいたのはうれしいなと思います。でも、昔の作品を観るのって恥ずかしさしかないんですよね(笑)。
ーーご自身の出演作を見返すことはありますか。
あまりしないですね。どうしても反省点が先に出てきちゃって、見てて辛くなるんです(苦笑)。でも、作品が私のところにやってくるタイミングには意味があると思うし、その時の私だからこそ表現できたこともあるとは思う。今回、時間を経て客観的に見れたらいいなとは思います。ただ、これだけ連続して観ると、絶対に自分の癖みたいなものが見えてくると思うんですよ。それが怖いなって……。
吉田羊  Photo:Aya Kawachi
ーーいま、すごく嫌そうな顔をしてますが(笑)。
嫌です! 怖いです、自分の癖を見るのは(笑)。ただ、『ハナレイ・ベイ』だけは、自分が憶えてない芝居をしてたんですよね。多分、それこそが松永さんの狙いだったんだと思います。作為や計算を挟み込む余地がないくらい追い込んだ先に残る、純粋な自分の感情や意識を教えてくださって。松永さんは、芝居をする吉田羊ではなく、不安定で揺らいでいる、むき出しの私を引き出してくれたんですね。それが、とても新鮮でしたし、上がったのを見た時に、記憶にない芝居がたくさんあって。まだ見ぬ自分にまだこれからも会えるという期待や希望が持てたという意味でも、あのタイミングで出会えたことは奇跡だったし、運命だったなって思います。
ーーまた、松尾スズキさんや三谷幸喜さん、TEAM NACSとの作品でも、普段は見れない吉田羊さんのコメディエンヌぶりをみることができます。
そうですね(笑)。特に松尾さんはこれまで交わることがなかった劇作家さんだったので、私が何をやったら面白いと思ってらっしゃるのかっていうのが作品を見て感じられて(笑)。発想がすごくおかしかったですし、やっぱり普段の自分にないものだからこそ自由度が高く、どこまでも振り切れる楽しさがありました。
ーー最後に、『冬の吉田羊まつり』を楽しみにしてる方にメッセージをお願いします。
私の出演作を全部コンプリートしようとすると、いろんなプラットフォームに加入しないといけないところを、今回はWOWOWさんさえ見ていればまるっと見ることができますので、ぜひ1本も逃さず見て楽しんで吉田羊にまみれていただきたいと思います。

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