『BORUTO』主題歌を担当 名前を失っ
た少女・Anonymouzが見つけ出した、
名前がないからこそできる表現方法 
〜「Ladder」リリースインタビュー〜

「ある日突然名前を失った少女…。絶望や落胆の中、彼女は旅に出ることを決意する。Anonymouz-名前のない女の子。彼女は本当の名前を探して、歌を歌うことを決めた。」
しっかりとしたコンセプトを持ったアーティスト・Anonymouzが、名前を探す道の中で『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』の主題歌を担当することとなった。
これまでオリジナル楽曲のリリースと共に、J-POPの英語カバーを多数リリースしてきた彼女。今回リリースした「Ladder」も、独自の言語感覚を大いに生かした楽曲となっている。果たして彼女は、その個性を生かすべくどういった作詞方法をとっているのだろうか。そして、初のアニメタイアップとなる今回の楽曲はいかにして制作したのだろうか。SPICEとして初インタビュー、彼女の根幹から今回リリースとなった楽曲「Ladder」制作の背景に至るまで聞いているので、是非最後まで楽しんでほしい。

■周りから付けられた印象を一度脱ぎ捨てたいと思った
――今回、SPICEとしてAnonymouzさんは初インタビューとなります。読者の方への自己紹介もしていただくところから、いろいろとお聞きできればと思っています。
そうですよね、なんでも聞いてください。
――ありがとうございます。早速なのですが、アーティストプロフィールで気になったのが「名前を失った」という部分。何か理由があってのことだと思うのですが、教えてもらってもいいですか?
私はAnonymouzになる前から歌手活動を行っていたんです。その中で、自分の意図していないイメージを付けられてしまうということが多くあり、それにすごく違和感を感じていた。そこで、一度付けられたイメージを脱ぎ捨てて音楽活動をリスタートしたいという想いのもと「名前を失う」という判断をさせてもらったんです。
――周りから受ける印象と自身が感じているイメージにギャップがあったと。確かにアーティストとしてはそこは非常に難しいですよね。
私自身歌うことが大好きで、歌っている時の自分は周りからの評価から解放されていたい、という想いもあったんです。それで、一度名前を失って、新たな名前をつけるのではなく、何者でもないというAnonymouzという名前で活動させてもらっています。
――そして、今まさに歌いながら自分の名前を改めて探しているという。
そうなんです。名前を失ってから、歌の中に新しい自分を発見できるということがすごく多い。今後もそういった発見をどんどん自分の中に吸収して、いつかは新しい名前を見つけられたらいいな、と思っています。
――Anonymouzさんにとって歌うということは本当に大切なことなんですね。
そうですね。人前で歌う自分、花冠(※)をつけてAnonymouzとなった自分は、私自身にとってもすごく特別な瞬間です。
※Anonymouzはライブの際に、衣装として必ず花冠を身に着けている
■Anonymouzにとっての2022年、それは成長の年
――2022年はシングルも発売され、ライブも行われるなど活発に活動された一年だったのかと思いますが、もう終盤ということでAnonymouzさんにとって今年はどんな一年だったかを伺いたいです。
自信を持てるようになった年だったと思います。今年に入ってワンマンライブを3回やらせていただけて、その中で確かに自分が成長していることを感じられたし、ファンの方との交流の中で自分が歌う意味も見えてきた。充実した一年間だったと感じています。
――自分自身、「ここが成長した」と具体的に感じている部分はありますか?
ライブをさせていただく機会を何度もいただいて、その中で人前ならではの歌い方が身についてきている実感がありますね。大勢のお客さんの前で歌うのは、レコーディングなどで歌うのとは全然違うんです。立ち振る舞い全てをお客さんが見ているわけですし、こめるべき感情も違ってくる。そこは実地で身についてきているんじゃないかと。
――ライブの現場でしか学べないことがあったと。そんなライブでの経験がレコーディングにもフィードバックされている。
ライブで歌を披露する時って同じ曲を何度も何度も練習する。すると細かいところに新しい表現が入れられることに気付くんです。その結果、新しい歌い方が必要になって身に着けるということは結構ありました。
――確かに今年リリースされた楽曲を聴いて、表現の幅が広がったのを感じました。
本当ですか、ありがとうございます! これまでは高い音を張って歌うのが自分の強みだと思っていたのですが、最近は低い音の出し方もこだわって歌うようにしているんです。あとは、歌い方の表現を優しくするよう心がけてもいる。それが聴いていただいた時に伝わったのかな? そうであってほしいですね。
■Anonymouzらしさを生み出す、独特な作詞方法
――Anonymouzさんの楽曲の魅力として、独特な言葉の当てはめ方があると思いました。作詞もそうですが、楽曲、メロディをどのように作られているのでしょうか?
まず、歌につける節やメロディを先に決めるんです。ギターでコード弾いたり、鼻歌で歌ったり、楽曲によって方法は違うんですが、まずはとにかく意味とかめちゃくちゃでいいから、響きが気持ちいいように英語で歌詞を書いてしまう。そこに対して改めて、意味が通るように言葉を置き換え直す。そういう流れで歌詞や歌のメロディを決めていますね。
――そうなんですね! 最初に英語で作詞されるというのはちょっと驚きです。
歌うのは英語の方が楽なので、最初の作詞はどうして英語でやってしまいますね。喋るのは日本語の方が楽なんですけど(笑)。
――歌う時に楽な言葉と喋る時に楽な言葉が違う、これは発音方法の差なんですか?
そうですね。英語の方が口の奥で発音していると言いますか……。逆に日本語は口先で発音している感じがする。なので日本語で先に歌詞を書くと子供っぽい印象の歌になってしまうんです。
――その作詞方法がAnonymouzさん独自の歌い方を作り上げられているんでしょうね。歌い方のミステリアスさがまた、匿名性ともマッチしていると感じています。
狙っていたわけではないのですが、自分でもそれはあると思っています。最近は、自分自身が何者かを提示しない、だからこそいろんなキャラクターになりきって歌うことができる、ということも自分の強みだと感じています。これからもできるだけ色んなキャラクターになりきって歌っていきたいです。
■仲間想いなボルトたちの姿を歌に込めたいと思った
Anonymouz「Ladder」
――今回リリースされる「Ladder」は『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』のエンディングテーマとなりました。エンディングテーマを担当する、となった時はいかがでしたか?
私自身、シリーズの原点である『NARUTO -ナルト-』は物心ついた頃からある作品で、小学生の頃には友達含めて見ているのが当たり前な作品になっていたんですよね。そんな作品の主題歌を担当できるようになったのは感慨深かったです。
――なるほど。そんな生まれた頃から放送されていた作品の楽曲制作にあたって、最初に決めたテーマとか何か決められて作られたのでしょうか?
登場人物ほぼ全員がすごく仲間を想っている。それを『NARUTO -ナルト-』シリーズに感じていたんです。だから、仲間のことを見捨てない、何かあったら仲間を助けに行く、そんな彼らの生き様を歌に込めようということを考えましたね。
――サビの「Don't go up without me」という部分などは特にそういった心情が描かれていますね。反対に、この歌詞の中には仲間を連れ去る存在の影も感じました。
連れ去っているのは超情的な力、という想定で歌詞を書いています。『NARUTO -ナルト-』シリーズでは、悪者ではなく、超自然的な存在に仲間が連れ去れてしまう、そういったエピソードのイメージが強くあったので。
■アニメ映像がついて初めてアニメソングを作ったという感覚が湧いてきた
――確かにそういった展開は多いですね。Anonymouzさんにとって今回が初のアニメの主題歌ですが、物語に寄り添って楽曲を作ってみた印象もお聞きしたいです。
もともと本や映画を見て、そこで得たインスピレーションを使って楽曲を作るということは多くあったんです。今回はインスピレーションを受けた作品が『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』だった、という感じで、あまりこれまでと大きな違いは感じてはいないんですよね。
――「アニメソングを作るぞ!」といった意識をせずとも、すんなり制作ができたと。
そうなんです。なので、出来上がっても「アニメソングを作った!」という感覚はあまりなかった。その実感が湧いたのは『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』のエンディングで使われているアニメ映像を見てからですね。
――今回アニメで使われている映像もすごく印象的でしたよね。実際にエンディングテーマとして映像が付いたものを見た印象はいかがでしたか?
すごくキュートな映像で、すごく気に入りました! 見た時はすごく嬉しくて、もう息が止まるような感覚だったのを覚えています。
――加えて、アニメ映像とは別にMVも先日公開されましたね。
MVは渋谷の街を朝、歩きながら撮ったものになんです。そこには朝の渋谷の独特な青さみたいなのがすごく出ている。青って私の一番好きな色なので、すごく私好みのいいものになったな、という感じがしています。是非みなさんに見てもらいたいですね。
Anonymouz「Ladder」
■多様なキャラクターを演じわけられるシンガーとして歩み続けたい
――今後のAnonymouzさんの活動についてもお聞きしたいです。次回作「River」で『ヴィンランド・サガ』の主題歌を担当することも先日発表されました。
この曲も物語からのインスピレーションをもとに制作した楽曲なんです。ただ、完成した時は「Ladder」と同じように、主題歌という実感がわかなくて……。でも、ティザー映像とともに流れるところを見て、すごく世界観とハマったように感じられた。見ていてすごく嬉しい気持ちになりましたね。
――アニメの放送が楽しみですね。そして、アルバム『イレブンイレブン』も間も無くリリースとなります。
そうなんですよ。アルバムの中では匿名性を全面的に活かして、いろんなキャラクターになりきって歌っています。なので、どんな人が、どんな時に聞いても、収録されているどれかには共感できる、そんなアルバムになっていると思います。是非ともリリースを楽しみにしていてほしいです。
――Anonymouzさんの楽曲、バリエーションがある一方でしっかりとした芯があるもの感じます。何か秘訣というか、Anonymouzさんらしさはどこにあると考えられていますか?
楽曲の中のキャラクターは変えても歌声は変えない、そこを意識しています。どんなキャラクターになっても自分の声に芯が通っていればAnonymouzの曲になると思っていますから。
――なるほど。では最後に今回の楽曲のリリースを楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
私自身のファンの方にも、『NARUTO -ナルト-』シリーズのファンの方にも楽しんでいただける曲ができたと思っています。仲間への想いも、情熱的なところも、存分に詰まった楽曲なので是非聴いてもらえればと思っています。

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着