【THE COLLECTORS インタビュー】
振りきれたアルバムを作りたい、
振りきれた曲を揃えたいと思った
海を越える蝶がいるんだったら、
俺たちももっとできる!
「パレードを追いかけて」はプライドパレードの光景が想起されました。
何年か前に家族で台湾に行った時、たまたまアジア最大のゲイパレードに遭遇したんです。そのパレードがすごい華やかで楽しそうで、カーニバルな感じだったんですよ。僕も原発反対のデモに参加したりしていますけど、何かを変えたくてそういう場に参加する人ってたくさんいるじゃないですか。なので、他のデモやパレードもミックスして歌えたらいいなと。“変えたい!”と思う人たちがそういうアクションを続けていけば、きっと自分が夢見ていた理想に近いところに行けるはずだし、社会も変わっていくっていう願いを込めて、この曲を作りました。僕は男の人が男の人を好きになるのも、女の人が女の人を好きになるのも、とてもナチュラルなことだと思っているので。
この祝祭感には希望があるし、その希望は「アサギマダラ」にも通ずるような印象を受けました。
そうですね。「アサギマダラ」もまったく一緒です。諦めたような言葉が人から出てくるじゃないですか。でもね、小さな蝶々が海を越えていくっていう事実があって。“海を越える蝶がいるんだったら、俺たちももっとできるでしょ!”と言いたかった。それを歌いたかったんです。希望は叶うものだっていうことを、ひとりでも多くの人に見せてあげられないと。そのためにもバンドで、自分なりの成功をしなきゃいけないと思っているんですよ。日本武道館でのライヴも何十年もかかったけど、“やりたいね”って言っていたことがやれたっていうのはそういうことですから。
ゆったりとしたメロディーとサウンドなので、蝶が旅をしている映像が音からも浮かびます。
“アサギマダラ”というタイトルをつけたのも、実在しているものを教えてあげる…実体がないものだと、どんなに偉そうなことを歌っても意味がないじゃないですか。“これはリアルなんだ!”というのは何よりも意味があるし、そういうことも考えて曲を作っているんですよ。で、サビに入っているワウは蝶が羽ばたく様子をイメージしていて。そういうところまで細かく描写したんで、そんなことを考えてやっていると、2歩進んで3歩下がっちゃうんですよ。“ワウが速い!”とか(笑)。
コータローさんにも細かくリクエストを?
今言ったようなことは全然話さないですけど、自分の中ではイメージがあるから“こんな感じのフレーズで、そこにワウがリズムに合わせて乗ってくる感じで弾いてくれるかな”とか。
じゃあ、ギターはわりと自由な感じなんですね。
いや、今回は僕が結構縛った感じがしますね。なので、かなりコータローくん色が薄くなっています。
「イエスノーソング」はそんな感じがしました。サビの《セイ イエス!》のあとの変わったギターフレーズとか。
不思議な感じですよね。でも、あそこが肝なんですよ。この曲も実のところ、僕が結構作っちゃっているんです。サビのギターのフレーズもそうだし、イントロのギターリフも僕が作っているし。コータローくんがフリーフォームで弾くのはリードソロくらい。
これはコータローさんは弾かないフレーズだなと思いながら聴いていました。
絶対に弾かないと思います。そこはもう作曲の域ですから。曲の一部になっていて、ギタリストのギターのフレーズじゃないですよね。
この曲でのポジティブな欲求が違うところに向かったのが「もっともらえる」?
これは“革命を起こそう!”っていう歌なんです、実は。本当に暮らしにくい世の中になったじゃないですか。税金も高すぎるし。なのに、当たり前のようにこのシステムの中に生きているでしょ? それは違うと思うんだよね。“妥協しなければ、もらって当たり前のものがもらえるんだ。本来もらわなきゃいけないものを取り返すんだ”っていう歌ですね。
サックスは藤井尚之さんなんですね。
そうです。すごくパンキッシュな曲だけど、サックスの音色も合っていて、ポップになりました。パンチのあるストリートなソウルな感じに。
「長い影の男」はちょっと80年代のポストパンクっぽいサウンドですね。THE COLLECTORSでは珍しいような。
自分が二十歳すぎくらいによく聴いていた、ベースで始まるThe Jamの「Pretty Green」やU2の「New Year's Day」、あとはEcho & the Bunnymenとか…80年代初頭のパンクとニューウェイブのムードを出したかったんですよね。あの頃ってギターのハーモニクスにディレイをかけたりとかして空間が広がっている感じがするんだけど、すごくシンプルな感じがあったじゃないですか。あの開放感を今やったら面白いんじゃないかと思って。で、自分はもともとベーシストだから、まずベースラインを考えるところから始まりました。
ベースラインもギターもクールで、音で埋めない感じになっていますよね。
埋め尽くさない音楽を作りたかったんですよ。それはギタリストじゃなくソングライターの領域なので、ギターもいつものコータロー色がないですね。
コータローさんはヴォーカルをとっている「負け犬なんていない」がすごくカッコ良いですね。
そうですね。ブルージーなギターが今回はすごく少ないので、それもあって歌ってもらったっていうのもあるんです。もちろん、コータローファンのためにも歌ってもらったほうがいいなって思っています。
コータローさんにすごく似合う歌詞ですよね。
そこはコータローくんをプロデュースしているつもりなんですよ。“こういう男でいてほしい”っていう願望ですね。ちょっと兄貴肌な先輩が後輩に歌って聴かせるみたいな、そんな存在でいてほしいというのを僕が具体化して。本人は本当は違うかもしれないけど…真の古市コータローって男はね。でも、THE COLLECTORSにおける古市コータローはそういう存在でいてほしい。
もともと持っている不良性とか?
うん。そういうイメージを出したくて。とても昭和っぽいし(笑)。その辺も含めて歌ってほしかったですね。
そして、間もなくツアー『Lick the marmalade!』が幕を開けますね。
楽しいツアーにしたいですね。アルバムも短期間で仕上げたにしてはまとまりがあるし、一曲一曲のメッセージ性もはっきりしているので。
取材:竹内美保
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アルバム『ジューシーマーマレード』2022年11月23日発売
日本コロムビア
『THE COLLECTORS Live Tour 2022 “Lick the marmalade!”』
11/23(水) 神奈川・横浜1000 CLUB
11/27(日) 千葉・柏PALOOZA
12/04(日) 北海道・札幌SPiCE
12/10(土) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
12/11(日) 大阪・BIGCAT
12/17(土) 福岡・CB
12/18(日) 岡山・YEBISU YA PRO
12/24(土) 宮城・仙台darwin
『THE COLLECTORS CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 2023』
[2023年]
1/15(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
2/12(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
3/12(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
4/16(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
5/14(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
6/11(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
7/16(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
8/13(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
9/10(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
10/15(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
11/19(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
12/10(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
ザ・コレクターズ:1986年初頭、ブリティッシュビートやブリティッシュサイケに影響を受けた加藤ひさしと古市コータローを中心に結成。2014年に山森“JEFF”正之、17年に古沢“cozi”岳之が加入し、現在のメンバーに。メジャーデビュー30周年を迎え、17年3月1日には初の日本武道館を開催し、18年11月には初のドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS ~さらば青春の新宿JAM~』が公開された。20年11月には、加藤ひさしの還暦記念ワンマンライヴ『THE COLLECTORS, HISASHI KATO 60th BIRTHDAY LIVE SHOW “Happenings 60 Years Time Ago”』を開催。そして、21年6月はバンド結成35周年記念公演を大阪城音楽堂で開催し、22年3月には5年振り2回目の日本武道館を実施した。THE COLLECTORS オフィシャルHP
「GOD SPOIL」MV