「引退も考えた」茅原実里が今語るY
outube 芝居 そして歌― 独占インタ
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2021年12月31日に歌手活動を休止した茅原実里が、一人芝居に挑戦する。河口湖円形ホールで開催されるこの『メリーの不思議な夢』に対する思いや、活発に活動するYoutube、そして、歌うことについてじっくり聞いた。撮り下ろしの写真とともに独占でお届けする。

――茅原さんはSPICEには『MinoriChihara the Last Live 2021』のレポをやらせていただいて以来の登場になります。今回は12月に予定している一人芝居『メリーの不思議な夢』のお話を伺うんですが、とはいえ事務所から独立してフリーになったということで、その辺の環境や心境の変化もお話を伺っていきたいと思っています。直球の質問になりますが、なぜフリーになろうと思ったんでしょうか。
2020年にコロナが流行り始めて、自分自身と向き合う時間がたくさんできたんです。仕事がストップして、これからどうしていこうかなって結構ふさぎ込んでいましたね……。それまで、ありがたいことに忙しくお仕事をさせてもらってきたんですけど、キャリアが積み重なれば積み重なるほど、自分の中にある葛藤みたいなものが大きくなっていたんです。
――音楽活動は順調かと思っていましたが、ご自身の中で葛藤があったんですね。
はい、その葛藤とあまり向き合えないくらい、充実した日々でした。でも、時間ができて、そういう蓋をしていた部分が「パン!」って開いた感じというか……。求められているものやまわりの期待に応えられているのか、自分の気持ちが追いついているのかとか……。苦しく思っている部分があったんです。それに、チーム一丸となって日本武道館を目指した熱い時代も経験しているからこそ、その熱を継続して走っていくことの難しさを感じていたところもあって。
――同じ熱量を保ち続けるのは難しいというのはわかりますね……。
色んなものが重なって、もしかしたら自分が退くタイミングって、今かもしれないなって思ったんです。それで、2020年の末ぐらいから引退を考え始めました。

撮影:池上夢貢
――引退というのは、声優業も含めた演者活動全部ということですか?

はい、声優業も含めてやめようと。でも、声優としてたくさんのキャラクターを演じさせてもらってきて、自分が引退ってなるとそのキャラクターを別の誰かに託さなくちゃいけないんだなって。
――そうなりますよね。
ちょうどそのタイミングで、先々にこの作品のお仕事がありますというお話があったんです。それで、このキャラクターはもう別の誰かに託すんだなと考えた時、それはできないなと思ったんですよね。誰かに託すのは嫌だなあって……。だから、キャラクターに救われましたね。それで、声優業は継続していくというところに着地したんです。同時に事務所からは独立して、フリーになって自分の道を探していくことに決めました。
――キャラに救われるっていうのは、僕らからするとちょっとグッとくる話ですね。いざフリーになって、今の環境・心境はどうですか。
今凄くフリーだなぁって感じますね(笑)。これまでも色んな環境でお仕事はしてきたんです。でも、マネージャーを置かないのは初めてですね。
――それはそうですよね。
フリーになってすぐのタイミングで『響け!ユーフォニアム』のイベントに出演させてもらったんです。いつもなら駅でマネージャーと待ち合わせて会場まで向かうんですけど、それがもう一人移動なわけですよ。そこで「フリーなんだ私!」って思いましたね(笑)。
――確かにそれは環境が激変している……。
これまで全部事務所にやってもらっていたことを自分でやるようになりましたね。大変な事も勿論あるんですけど、それが嬉しいというか楽しいというか。お仕事を頂ける方の顔とか心とか、そういうものがしっかりと見える中でお仕事を進めていけるので、今まで以上にひとつひとつ頑張ろうって思えるようになりました。凄く充実しています。
撮影:池上夢貢
――そして、茅原さんは今YouTubeでの活動も活発にされています。まさかのYouTuberにも挑戦というか。
いや、YouTuberなんておこがましい。
――インタビューしてる今日現在、22,000人以上の登録者がいらっしゃいます。
増えましたね。10,000人を目指していたのにあっという間に……。
――YouTubeやろうって思ったのは、フリーになって表現だったり発信する場所が欲しかったのでしょうか。
色々な想いがありますが、一人芝居を成功させるためにYouTubeをやろうと決めたんです。私の場合、ライブ以外でお客様に集まっていただくことは凄く難しいことだと思っていたので、自分のことを知ってもらう場所が必要だったんです。改めて“茅原実里”という人間に興味を持ってもらいたいなと。
――まずはそこだったんですね。
はい、デビューしてから「ミノリズム」っていうブログやラジオをやっていたんですが、YouTubeは今の時代に合わせてその「ミノリズム」をアップデートさせるみたいな感覚でした。でも、最初はYouTubeって自分に向いてないと思っていたんですよ。
――それはまた何故でしょう、拝見している限り凄く自然体ですが。
これまでたくさんミュージックビデオとか動画のお仕事もしてきたんですけど、カメラを向けられて喋るっていうのが物凄く苦手で……。これまでも「YouTubeやったらいいじゃん!」って言われたこともありましたが、絶対向いてないしやりたくないって思ってきたんですよ。でも、実際に始めてみたら意外と自分に合ってるし、本当によかった。
――改めてYouTubeをやってみてどうですか。
面白いです!
――本当にブログ的というか、思った以上にNG無いなと思っています。
そうですね、これまでは音楽の活動に支障がないように保守的なスタンスだったんだと思います。それがフリーになったことで、全てフラットな状態になりましたね。今は、等身大の茅原実里を知ってもらいたい、応援してもらいたいという思いが強い。
――見てて楽しそうなんですよね、普通にお酒飲んで、お肉食べてるだけでもめちゃくちゃ楽しそうに見える。
楽しいですね。応援してくれているみなさんとコミュニケーションを取れる場所でもあるので。交流の場を全部無くす選択をしてしまっていたかもしれないと思うと本当に怖いですし、今それがあるっていうことが嬉しい。本当にこの道を選んでよかったなって思えるんです。
撮影:池上夢貢
――そして、自主的にやる表現の最初の一歩として一人芝居を選ぶっていうのも、本当に面白いと思ったんです。今回の『メリーの不思議な夢』をなんでやろうと思ったのかもお聞かせください。
河口湖円形ホールで何かやろうっていうのを決めて、最初は朗読劇かなって思っていました。コンパクトで音の響きがすごく素敵なホールなので、そこで私が朗読をして、演奏と一緒に届けるっていうのがイメージしやすかったんです。でも、脚本をお願いしようと決めていた劇団5454主宰の春陽漁介さんにそのお話をしてみた時、春陽さんが「茅原実里の新しい可能性を見せたいんだったら、朗読劇よりも一人芝居の方が面白いんじゃないか」っていう提案をしてくれたんです。
――そうですね、可能性という意味では圧倒的にそっちのほうが面白そうです。
ちょっと考える時間もあったんですけど、過去に劇団5454さんの公演で一人芝居を観させてもらったことがあって。板橋廉平さんという方が『すすぎ』っていう一人芝居をやられていたんですけど、芝居あり歌ありダンスありで、命を削って芝居をしている時間がそこにあって、めちゃくちゃ感動したんですよ。
――感動したからこそ難しさも感じた。
そうなんです。感動したのと同時に、一人芝居ってめちゃくちゃ難しいなと。でも、18年間この世界でお仕事をしてくる中で、歌に朗読劇、舞台にコント、色んなことに挑戦させてもらってきました。その経験が自分の中にあって、きっと色んな武器を持っているはず。その引き出しを全部開けて、一人芝居に全部詰め込むことができたら、私にしかできないエンタメが作れるかもしれないっていう気持ちにどんどん変わってきて。難しいからこそやり甲斐もあるし、たった一人で挑んだ方が新しいスタートにふさわしいと思うようになったんです。でも、台詞覚えられるかなぁ(笑)。
――正直、茅原実里が一人芝居をやる、しかも河口湖でやるのが面白いから、今回お話聞きたいっていうのはありましたね。春陽さんは脚本も演出も面白いから楽しみです。
何度も打ち合わせを重ねているんですけど、春陽さんはディスカッションして、私から色んなものを引き出しながら作って行くスタイルなので、一緒に作っているという感覚も強いですね。もっともっと春陽さんの力になれたらいいのになって思うことも凄く多かったりしますし。ちなみに、河口湖円形ホールって暗転が使えないんですよ。なので、時間によって光の入り具合とかも変わってきたり、昼夜で色々変化があると思います。
撮影:池上夢貢
――特に一人芝居はその人のパーソナリティーが出ると思うんです。だからこそ今茅原実里がやる意味だったり、今茅原実里が表現したいものだったりが凄く色濃く出るんじゃないかなと。今話せるレベルでいいんですけど、どんな作品になりそうですか?
『メリーの不思議な夢』では、主人公のメリーが存在している世界が河口湖の湖畔なんです。河口湖円形ホールは、その河口湖の湖畔のすぐそばにあって、お客様が足を運んでくれたその場所が物語の舞台になるんです。
――劇場が物語の舞台そのものなんですね。
この町の美しい自然だったり、人の温かさであったり、冬の澄んだ空気だったりとか……そういう素敵なものを物語と一緒に連動させて楽しんでいただきたいっていう想いで作っています。あの場所だからこそ、何かを感じてもらえるんじゃないかなって信じているというか。
――河口湖に対する思い入れを感じます。
めちゃめちゃ強いですね。それこそ引退することで、河口湖との繋がりが無くなるっていうのは本当に嫌だったんです。自分にとって特別な場所で、歌うことをやめたとしても何かしら人として繋がり続けていきたい。もう一度歩き出そうって決めた時に、またあの町に人を運びたいと思ったし……特にコロナになって観光客が減ってしまったというのもあったので、自分にできることで町を盛り上げたい、みなさんの笑顔が見たいっていう想いがあるんです。
――ファンも含めた茅原実里ファミリーに対する河口湖のウェルカム感は凄いですよね。
ありがたいですよね。今年はライブがなかったんですけど、これまでライブを開催してきた8月の第1週の土日には、ファンのみんなが河口湖に行っていたみたいなんです。例年通り、いつもの宿に泊まって、いつものご飯屋さんに集まるっていう時間を過ごしてくれて。これって凄いことだなって思って。
――もう習慣になっているんですね。
私のライブがきっかけかもしれないですけど、ファンのみんなもそれぞれ町の人や場所と絆を作っていて。みんなにとっても大事な場所になっていることに、凄く感動しました。やっぱりこの場所とのご縁っていうのは絶対に守って行かなくちゃいけない。
――そうですね、茅原さんが繋いだ縁ですもんね。
私はやまなし大使でもありますし、自分にできることが色々あるって前向きに思うようになりました。自分が河口湖で何かしたいなぁって思った時に、やりたいんだったらやればいいじゃん! やろうよ! って背中を押してくれる人たちがいる。本当にありがたいなと思って。これはもう、私にしかできないことが絶対にこの場所にあるはずだっていう使命感みたいなものがあります。
――お話を伺ってる限り、茅原実里が河口湖円形ホールでやるという状況じゃないとできない作品になりそうなですね。
そうだと思います。
――作品を通じてファンに伝えたいこともあるんでしょうか?
新しい一歩を踏み出す茅原実里を見届けていただけたらと思います。それと、富士河口湖町の素晴らしさを物語と関連付けて伝えたい、この2つですね。
撮影:池上夢貢
――凄く楽しみです。実はもう一つ聞きたいことがありまして。答えづらかったら答えづらいでもいいんですが……もう、茅原実里は歌を歌う気はないんでしょうか。
そうですね……正直わからないですね。自分の中で締め括ったばかりなので。でも、不思議と結構時間が経ったような気もしているんですけれども。
――そうですね、もうすぐ1年。
走り切って凄く達成感もあったし、当たり前ですけど、背負っていたものがとても大きかったんだなっていうのは、今も感じていますね。
――僕もラストライブは配信でしたけど、拝見しました。印象なので間違っていたら申し訳ないんですけど、凄くスッキリとピリオドを打とうとしている印象でした。
とにかく去年はしっかり走り切らなくちゃいけないっていう気持ちだったので、このライブをみんなとちゃんと一緒に楽しんで終わろう! っていう思いでしたね。
――これを聞いた理由として、多分この記事を読むファンの人はそこは絶対聞きたいところなんじゃないかと思ったんです。せっかくお話できたから、今の茅原実里の生の声を聞くべきだと。
ありがとうございます。
――茅原さんの言葉でお聞きできて良かったです。改めて今回の一人芝居が終わると、今年も終わりになります。その先に見えてくる来年以降の茅原実里のビジョンみたいなものってあったりするんですか。
色々あります。今までは「声優アーティスト」という枠からはみ出ないようにお仕事をしてきたんですけど、これからは“等身大の自分”でどんどん新しいことに挑戦していきたいですね。40代でも新しいことを始められるし、何でも挑戦できるし、キラキラできるんだよっていうことを伝えていけたらいいなって。それは必ずしもエンタメだけじゃないかもしれないなって思ったりもしています。
――興味があるものとかあったりするんですか。
この一人芝居を成功させることができたら、河口湖でのプロジェクトは継続していきたいと思っていますね。アプローチが一人芝居なのかって言ったらそうじゃないかもしれないですけど。
――自分の体を使って演技するってことに関してはかなり興味がある。
そうですね。表現者として続けていきたいです。
――興味を持ってやりたいことは結構多そうですね。
私はやっぱり人が喜んでくれることが好きなんだと思います。人の笑顔が大好きだし、そこに繋がるものをやっていきたいです。今まで「これはちょっと茅原実里には合わなかもしれないな」って諦めてしまっていた部分も、自分が心からやりたいと思ったことは人になんと言われようと「やろう!」って。
――強い意志があるんですね。
はい。やっぱり歌って欲しいって声もあるし、なんでYouTubeなんてやってるの? って思う方もいるかもしれない。でも、私にとっては必要なことだったから始めたんですよね。今は心に耳を傾けて動くことが、自分を成長させてくれるような気がしています。
――それは話をして感じたところです。
ある意味、完全体の『Freedom Dreamer」になったというか(笑)。また歌いたくなったら歌うかもしれないし。
――すごく素敵ですね。では最後に、茅原実里に興味を持ってる方に一言いただければ。
4月からYouTubeチャンネル「ミノリズム」をスタートさせました。チャンネル登録よろしくお願いします!(笑)
――急にすごいYouTuberっぽい!
伝えたいことは全部言っちゃったので(笑)。
――でも今回の一人芝居はYouTubeで後日無料配信するんですよね。そういう意味でもチャンネル登録は必要ですね(笑)。
そう、全編無料配信します! 冬の河口湖で5公演もお客様を動員するなんて物凄く難しいことだと思っていたんです。でも、チームで話し合って「絶対に成功させよう! 絶対にチケットを売り切ろう! 茅原実里の新しい一歩を、これまで応援してくれた方に見届けてもらえる可能性を作ろう!」っていう強い想いで決めたんです。
――これからの茅原さんの活動が凄く楽しみですね。何をやるのかちょっと僕らも掴みきれてないからワクワクするというか。
ワクワクしてもらえたら嬉しいです! みんなをHAPPYにしますよ、私!
撮影:池上夢貢
インタビュー・文=加東岳史 撮影=池上夢貢

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