約八年ぶりに舞台に立つ浅香航大を独
占インタビュー! 多くの初体験が待
つ、文豪トルストイの大作『アンナ・
カレーニナ』への期待を語る

2020年夏にコロナ禍の影響を受け公演が中止となっていた『アンナ・カレーニナ』が、2023年2月に待望の上演がうこととなった。ロシア文学の最高峰トルストイによるこの不朽の名作を、ロンドン気鋭の演出家フィリップ・ブリーンが斬新な解釈のもと、初めてシアターコクーンのために上演台本を書き下ろし、演出に挑む。
物語の舞台は1870年代のロシア。政府高官であるカレーニンの妻アンナは、モスクワで若い貴族の将校ヴロンスキーと運命的に出会い、許されぬ恋に溺れていく……。一方、アンナの兄オブロンスキーは自身の浮気が原因で妻ドリーとの仲が危機に陥る。またオブロンスキーの若い友人リョーヴィンはドリーの妹キティに二度目のプロポーズを受け入れてもらい結婚を果たすが……。このそれぞれの男女の愛の行方が、ドラマティックに描かれていく。
注目のキャストは、アンナに宮沢りえ、リョーヴィンに浅香航大、ヴロンスキーに渡邊圭祐、キティに土居志央梨、ドリーに大空ゆうひ、シチェルバツカ侯爵夫人に梅沢昌代、オブロンスキーに梶原善、カレーニンに小日向文世という演技派揃いの顔ぶれが実現し、重厚な作品を華麗に彩る。
ヴィジュアル撮影のスタジオにて、リョーヴィン役の浅香航大に作品への想いや稽古への期待を語ってもらった。
約八年ぶり舞台は「喜びと楽しみが圧倒的に勝っている」
――『アンナ・カレーニナ』への出演のオファーが来た時のお気持ちはいかがでしたか。舞台に立たれるのは久しぶりですよね。
約八年ぶりです。時間が空いてしまったこともあって、次に舞台をやるとしたら……という自分へのハードルが上がってしまっていて(笑)。決してやりたくなかったわけではなく、単純に心から(舞台に)立ちたいと思えるタイミングでやろうと決めていたんです。何か引っかかることや後ろめたさがあるようでは勝負できない、舞台というものは中途半端な気持ちでやれるものではない場所だからと思っていたので。だけどここ一年、自分も30歳になり、新しい挑戦をしたいという想いがどんどん募ってきまして。新しい刺激となりつつ、今までとは違う方法で自分を表現するための手段を考えた時に舞台をやりたいという気持ちに自然となっていたんです。ですので、今回の『アンナ・カレーニナ』の話は、本当に素晴らしい機会を与えていただいたなと心から思っています。
――まさに、大作ですよね。
いや、こんな大作に自分が立たせてもらえるんだ!という想いもあって。正直、久しぶりの舞台で不安や怖れもないわけではないのですが、それよりも喜びと楽しみが圧倒的に勝っています。
――『アンナ・カレーニナ』という作品のことはご存知でしたか。
映画や小説の存在は知っていましたけれども、詳しい内容までは知りませんでした。なので、今ちょうど原作小説を読んでいるところです。これが、すごく面白くて! 本当に登場人物がみんな、それぞれに魅力的なんですよね。
――中でも特に魅かれている人物は。
スティーヴァ(アンナの兄・オブロンスキー)が僕は好きですねえ。
――どういうところが?
本当に憎めない人なので。浮気とかしてても、なんだか可愛いく思えるんです(笑)。もちろん、自分が演じるリョーヴィンも大好きです。
>(NEXT)ただのラブストーリーではない
「人間の説明書」みたいな作品
――今回はフィリップ・ブリーンさんが上演台本も手がけられるそうですが、どんな戯曲になるんでしょうね。
先日、リモートでお話をさせてもらったんですけど。フィリップさんならではの、映画などとは違う切り口で原作を読まれていて、表現したいものがあるそうで。まださわりしか聞かされていませんが、その部分だけでもすごく魅かれる考え方でした。
――たとえばどういうことですか、少しヒントをいただけますか。
ただのラブストーリーではない、とおっしゃっていました。それは僕も原作を読んでいて思いましたけど、この作品は人間の説明書というか、人間とは?人生とは?みたいな本だな、と。そこに登場するキャラクターたちがみんな実に魅力的なわけです。19世紀の時代に生きるロシア貴族の話なのに、現代に生きる日本人の自分でも、なぜかとても親近感を覚えましたし。
――人間臭い人物が多いかもしれませんね。
そうなんですよ。ですからぜひ、そういう魅力溢れるキャラクターを自分も演じていけたらと思っています。
――海外の演出家から演出を受けることに関してはいかがですか。
初めての経験なので、とても楽しみです。やはり、日本と海外では芝居の作り方や感覚がきっと違うでしょうし。フィリップさんはレベルの高いイギリス演劇界の一線で活躍されている人ですから、その方の世界観の一部になれるというのは貴重な経験になると思います。フィリップさんが演出をされた舞台『罪と罰』を拝見したんですが、それも本当に素晴らしかった。出演されていたキャストのインタビュー動画を見たらみなさんすごく輝いている表情で、フィリップさんに信頼を寄せているのが伝わってきましたね。
――『罪と罰』で、気に入ったところはどんな点でしたか。
世界観を、実に細かいところまで作り込んでいらして。印象としては、まるで絵本を見ているような感覚でした。物語の内容は激しかったりするんですけれども、あくまでも美しい舞台でした。
お客様と作品の入口みたいな存在に
――現時点では、リョーヴィンはどういう人物で、どう演じたいと思われていますか。
リョーヴィンは、僕自身も大好きな人物です。なんだか、ある意味ちょっと犬みたいじゃないですか?(笑)とても素直でね。いろいろな刺激を受けながら、失敗も犯すけど、何か憎めない。だけど自分の思想はしっかりあって、周りに流されたりしない強い信念を持っている。不器用なところもあってそこが可愛くもあり、すごくいい奴なんです。そういうところを丁寧かつおおざっぱに表現しつつ、愛されるキャラクターにできたらいいかなと思っています。
――もしかしたら、お客様にとっては共感しやすい人かもしれないですね。
確かに、そうかもしれません。お客様との距離を近くする、入口みたいな存在になれたらいいですね。
――アンナ役の宮沢りえさんを始め、共演者の方々については。
宮沢さんとは初めて共演させていただくんですが、これもまた楽しみです。なんなんでしょうね、あの魅力。もちろん、素晴らしい女優さんだということはわかっているんですけれども、僕の周りの業界関係者もみんな口を揃えて「宮沢さんは、いい!」って言いますから。そして小日向さんとも初共演。というか、僕の場合、今回は梶原善さん以外は初めましての方ばかりなんです。長い稽古期間と本番中に、このキャストのみなさんたちがお芝居を組み立てていく過程を間近で見られて、自分もその座組の一員としてやっていけるなんて。きっと、あっという間に時間が過ぎてしまうだろうと思うので、一日一日を大事にしながら過ごしたいと思っています。
――ご自分に目標を立てるとしたら。
この舞台に関わる期間中は、常に貪欲でいたいなと思っています。ゴールとか限界は決めずに、いろいろなことを吸収したいですね。
――では最後に、お客様にお誘いのメッセージをいただけますか。
個人的なことでは、直接人の前に立って演じる機会はこの約八年なかったわけですので、そういった意味でも30歳になって再び挑戦する自分を見てほしいという気持ちはやはりあります。今の自分が出せるものをここですべて出すつもりでいますので、ぜひ見守っていただきたいですね。フィリップさんにはまだリモートでしか会っていませんが、今から期待と信頼を抱いていますし、気が早いかもしれませんが絶対に素晴らしい作品になると確信しているので! そこに加えて、こんなに素晴らしいキャストのみなさんとご一緒できるんですからね。お客様にもたくさん期待していただきたいです。一生懸命がんばりますので、みなさん、ぜひ劇場へ観に来てください!
取材・文=田中里津子 撮影=荒川潤

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着