片岡仁左衛門「歌舞伎がますます栄え
るように」――師走恒例の京都・南座
での『吉例顔見世興行』で中村獅童ら
に託す思い

京都南座での『京の年中行事 當る卯歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎』。今年は12月4日(日)~25日(日)まで上演される。演目は、第一部が「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) すし屋」、「龍虎(りゅうこ)」、第二部が「玩辞楼十二曲の内 封印切(ふういんきり)」、「秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)」、第三部が「年増(としま)」と「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」だ。第二部の「松浦の太鼓」で20年ぶりに松浦鎮信を勤める片岡仁左衛門。大阪市内で開かれた取材会に登壇し、『顔見世興行』や作品への思い、後進への期待感などを語った。
「今年も早いもので『顔見世』がやってまいりました。まだコロナ禍で三部制という興行形態となっておりますが、今年も盛りだくさんの狂言で、どの部も皆様のご期待に応えられるように企画を一生懸命練って、立てたものでございます。どうかご支援のほどよろしくお願いします」と挨拶する仁左衛門。
仁左衛門が出演する「松浦の太鼓」は「忠臣蔵外伝」と呼ばれる作品のひとつ。「今回、忠臣蔵ものをと考えまして、「松浦の太鼓」を上演いたします。初めてご覧になる方にもわかっていただけるようなお話です」。
「松浦の太鼓」は十七世中村勘三郎に教えてもらったという。「中村屋のおじ様は割と気分屋で、そのときそのときで違うことをなさっているように見えるのですが、教えていただくと楽譜がすごく細かくて、とても勉強させていただきました。「松浦の太鼓」と言えば、十七世の中村屋のおじ様の印象が強いですね」。
片岡仁左衛門
松浦鎮信という役柄については、「とにかく赤穂浪士に対する愛情が深く、一徹で無邪気な人。駄々っ子みたいなところもあります。ひとつ間違えると軽薄にも見えるけど、非常に情け深い人です。また、役からにじみ出る大きさというものも必要だと思いますが、ただ、この大きさは出そうと思って出るもんじゃない。自然と身についてくるもの。大きさを出そうとすると、逆に小さくなってしまいます」。
『顔見世』では中村獅童が大高源吾を勤める。「獅童くんはこれから伸びてもらわないとならない人ですし、私達と一緒にする機会が少ないですから、若い人たちだけでやる歌舞伎では得られないものを得てほしいなと思います。かつて、中村屋のおじ様が私や二代目の播磨屋さんを大高源吾に起用していたことが、ちょうどいま、私が彼らを起用するようなものなんですよね。やっぱり一緒の舞台に立つということが大事。それと本人の感性、アンテナですよね。どこまで汲み取ってくれるかということです。その点も彼は期待できます」。
他にも、中村隼人、中村虎之介、中村鷹之資、孫の片岡千之助らも出演する。彼らに対しても「しっかり勉強してほしいです」と仁左衛門。
片岡仁左衛門
若手俳優には伝統芸能である歌舞伎を受け継いでほしいという思いもある。「もう口を酸っぱくして言うのですが、私達は「歌舞伎」というものを残していかなきゃいけない。伝統文化として受け継いでいるので、先輩たちが苦労して築き上げてこられた歌舞伎の技術を、まずしっかりと身につけてほしい。もちろんその時代時代に合わせていかなきゃいけません。江戸時代、明治、大正、昭和、平成と歌舞伎は変わってきていますが、我々の世代にはいくらかでも前の歌舞伎の匂いを残せているとろがあると思うんですよね。それを残しながら、基礎を身につけて、そして新しいこともやってほしいと思います」。
「京都の風物詩の一つに数えられるこの『顔見世』が今年も無事に開けられることを嬉しく思います。途絶えることなく開けられたということは、会社の努力はもちろんですけれども、劇場へ足を運んでくださる皆様がいらっしゃればこそできることであります。そんなお客様がひとりでも増えるように、お客様も広報部になっていただきたいです」と呼びかける仁左衛門。
「日本の伝統芸能の歌舞伎がますます栄えるように。皆様のお力添えをお願いします」と祈りを込めた。
取材・文・撮影=Iwamoto.K

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