L→R O-JIRO(Dr)、HAKUEI(Vo)、千聖(Gu)

L→R O-JIRO(Dr)、HAKUEI(Vo)、千聖(Gu)

【PENICILLIN インタビュー】
今はアッパーな感じとか、
そういうアプローチの曲がやりたい

“やっぱり歌がカッコ良くねぇとな”
というところがある

前作『九龍頭 -KOWLOON HEAD-』(2019年11月発表)に「SEX」という楽曲がありまして、あれは歌がほぼシャウトという感じですけど、今回はまったくああいうタイプがないですよね。で、ここまでの話を軽くまとめさせていただくと、『パライゾ』はギターのアプローチはハードでありつつも歌を邪魔せず、リズムはアッパーなものが多く、その上で歌はキャッチーであると。結成30周年のタイミングでこういう作品になったことは、どのように自己分析されますか?

千聖
その質問はすごい困る(苦笑)。細かいところは別として、“集めたらこういう感じになった”に近いから何とも言えないです(笑)。…ただ、今、そちらの話をこちら側からも分析すると、HAKUEIくんはもともとパンクが好きなんですよ。パンクのノリの「LIVING DOLL」や『九龍頭 -KOWLOON HEAD-』の「SEX」、ここら辺はHAKUEIくんが主導で作っていて、それに対しては僕らが“それならこういう感じかな?”っていうアレンジしていくんですね。基本パンクはロックンロールなんで、「SEX」はロックンロールなんですよ。「LIVING DOLL」は速いパンクでハードコア的なアプローチだから、俺の場合はこれにスラッシュメタルをくっつけているので、O-JIROくんもスラッシュメタル寄りになる。こういう速い曲はパンクというよりもスラッシュメタルの要素が強くなるんです。ロックンロールではなくなるから、いろんなミクスチャーですよね。このふたつの曲を対比して、音楽的な分析をさせてもらうとそういうことになります。

分析、ありがとうございます(笑)。

千聖
あと、テンポは何パターンかあるんですよ。140、190とか200、100。うちらのBPMはこの3つくらいなんですよね。その中で140はミドルになるんです。比較的に…ですけど。今作の「憂鬱と理想」とかがそうですね。「パライゾ」もそうかな? まぁ、「パライゾ」は3/4拍子なので、ちょっとリズムのノリが違うんですけど、そういうアプローチをしつつも、中には「想創シンドローム」のようにちょっとテンポを落としたのもあるにはあるんで…まぁ、その3つのBPM中で、リズムの裏とかも聴かせつつ…もちろんリズムの裏を感じさせるには歌もかかわってくるので、歌があった状態で制作しますし、そういう観点でも“歌を聴かせたい”という気持ちは強いんだと思います。今回は“メロディーはこれだ!”だとアプローチしている曲が、なぜか増えたのは事実ですね。

その“なぜか”は分析しづらいですか?

O-JIRO
ここ10年くらいは楽器を出して曲を作らないので、逆に「SEX」みたいな曲を作るは難しいんですよね。頭で考えてできる感じでもないので。楽器を出して、みんなで“せーの”でやっていくような…
千聖
セッション的なね?
O-JIRO
うん。“ここはシャウトがカッコ良いから〜”ってやっていったほうができやすいと思うんですよ。デスクトップでシャウトの曲を書くのは難しいので(笑)。しかも、自分はヴォーカルじゃないから、やっぱりニュアンスの違いとかも出てくるし。だから、逆にああいう曲は珍しいのかもしれない。最近はあんまりないし。

そうしますと、最近は楽曲の制作環境が変わってきていて、その辺の影響もあるということでしょうか?

O-JIRO
でも、もう15年くらいこんな感じだから。
千聖
O-JIROくんはデスクトップで曲作りを始めたのが早かったからね。今の話からすると、セッションっぽいタイプで曲を作りたがるのはHAKUEIくんで。すごい激しいスラッシュっぽい曲の場合はO-JIROくんと俺とで主導して作ることは多いんですけど、今回はそれがあんまりないんです。そういうところもあるかもしれない
O-JIRO
千聖くんとふたりでスラッシュメタルみたいな曲を書きました…となった時は、“Bメロの歌のアイディアはHAKUEIさんに投げちゃおうか?”ってこともあるんですけど、今回は原曲を作った人がメロディも何となく書いていたんで、そういうところがあるのかもしれない。

なるほど。だから、それぞれが自分の持ち場を堅持したのかもしれないですね。ギターはよりハードに、歌はしっかりキャッチーに。ドラムに関しては全体的にとても躍動感があると思うんです。例えば「heartbeat」の間奏でマーチングビートになりますが、ああいうところは聴いててとても面白くて。ドラムはしっかりと楽曲全体を支えながら自己主張もされている箇所は他にもたくさんあると思います。

O-JIRO
「heartbeat」は千聖くんが考えた時からサビがマーチングになっていたんですけど、ドラムは基本的に一番最後に考えるんです。最初のギターリフを完成させてからベースを作って、それからドラム作る感じなので…何て言うんですかね? もちろんその時にはメロディーもあるから合致感というところでは、メロディーとリフに対してベースとドラムは“ここはユニゾンにするのか?”とか“ここはリズム押しにするのか?”とか“ギターをもっと象徴的な感じに作っていこうか?”というのはあとから考えるので、ちょっとそういうところはあるのかもしれない。

ドラムで楽曲のニュアンスを肉付けしていくみたいな感じでしょうか?

O-JIRO
そうそう。“ここはもうちょっと圧が欲しいな”と思ったら、圧のあるフィルを入れたりとか。

「Social Networking Suicide」もめちゃめちゃ逆動感があると思って聴いておりました。

O-JIRO
そうですね。長くやっていると“こういうふうな感じで来てほしいな”とかっていうのは分かるし、メンバーも“それ以上のものを”というアレンジを考えてきてくれるので、「Social Networking Suicide」は自分としては“とにかく変な曲を作りたい!”というのもありながら(笑)、プリプロダクションではみんなで揉んでアレンジした感じがあって、すごく楽しくできた曲ですね。

やや強引にまとめるようで恐縮ですが、ここ10年くらいの間に曲の作り方が変化してきた結果、今回のようなアルバムに到達したと言えるというか。

千聖
そういうのもあるけど、もともと“やっぱり歌がカッコ良くねぇとな”というところがあって。俺はガキの頃から“ギターはカッコ良いけど、ヴォーカルがイマイチだな”っていうのは嫌だっていうか…全体がカッコ良くないと話になんない。自分が憧れていたバンド、好きなバンドは、やっぱりヴォーカルがカッコ良くて。しかも、カッコ良いヴォーカルだけじゃなくて、他にもスタープレイがいっぱいいたのが、俺が聴いてきた80’sの良さだったと思うので、ギターもドラムもおざなりでいるとか、カラオケみたいな感じじゃなくて…そうかと言って“歌さえ良ければいいんだ”というのも違うし。でも、歌が良くないと話にならないんで、そういうとらえ方をしてる人たちが集まったバンドなんですよね。

必然的にこの音のバランスになるということですね。

千聖
必然的にそうなるんだけど、みんなそれぞれに癖はあって。“こんなのが好きだ”とか“こういう時はこういうのがいい”とか。やっぱり自分の音楽のルーツに戻りがちなんで、HAKUEIくんの好きなパターン、僕の好きなパターン、O-JIROくんの好きなパターンがあることをすごく感じるんですよ。それを合わせているというか。あと、それにプラスして言うと、俺の作った曲はどっちかと言うとリズムやメロディー、ギターのリフが、家でデモを作っている段階で決まってきちゃうんで、俺自身がつまらないんですよね。将来の設計が見えている。“O-JIROくんはこう叩いてくれるだろうし、HAKUEIくんもこうやって歌ってくれるだろう”って分かる。 だけど、O-JIROくんやHAKUEIくんが作る曲というのは、デモ段階ではギターを作らないでいてくれているし、作ってあっても俺が自由にやれるようにしてくれているんで、その融合が面白くて。

バンドマジックが起こったほうがいいということですね。

千聖
だから、「Social Networking Suicide」も実際に合わせてみて面白かった。「LIVING DOLL」もそうで、“あぁ、これがバンドだな”っていう(笑)。デスクトップ上で曲を作ってもこういう遊びはできるというか…ちょっと客観視できるんですよ、デスクトップは。それはそれで楽しくて。バンド編成で“せーの”でやるのもカッコ良いんですけど、だんだん客観性がなくなってくるんですよ。演奏に夢中になっちゃうんで(笑)。

一方で、HAKUEIさんはわりとセッションで曲作りするほうが好みだと、先ほど千聖さんがおっしゃっておりましたが。

HAKUEI
“言われてみるとそうなのかな?”と思って聞いていました(笑)。

コロナ禍においてはリハーサルをするにしても、セッションするにしても、なかなか難しい状況はあったわけじゃないですか。ここ2年間は大変だったと思うのですが。

HAKUEI
でも、コロナ禍に関係なく作り方は一緒なんで、そこは変わりなかったですね。特にそういうストレスはないんですけど、曲を作ってる時、歌詞を書いてる時は、やっぱり今の時代の雰囲気に影響されちゃうんで、そこでそういうものを求めたのかもしれないですね。

OKMusic編集部

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