INTERVIEW / Billyrrom 抑圧された世
界を自由に踊らすBillyrrom。加速す
る6人の向かう先とは

東京都町田市出身の現役大学生による音楽集団、Billyrrom(ビリーロム)がニュー・シングル「Defunk」を本日10月26日(水)にリリースした。
結成/本格始動からわずか2年ほどだがすでに注目度の高いイベントへの出演や主要プレイリストへのリストイン、ラジオ・オンエアなどで認知を拡大。今まさに羽ばたかんとする気鋭のニューカマーだ。
今回はコロナ禍以降に集結したこの6人のこれまでの足取りを訊くべくインタビューを敢行。3ヶ月連続リリース・シングル、そして12月に予定されている初のワンマン公演など、厳しい時代に希望を見出す若者の声をお届けする。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by fukumaru(https://www.instagram.com/fkdmnm_08/)
遊びの延長線から始まったバンド結成前夜
――早速ですが、バンドの結成のいきさつから教えてもらえますか?
Taiseiwatabiki(以降:Taisei):単純に地元が一緒だったんですよね。
Rin:最初はTaiseiとShunsuke、あともうひとり地元が同じやつと一緒に、「俺らでバンド組んだらおもしろそうじゃね?」っていう感じで組んだんです。その後にMolと同じ大学に入って。
Mol:地元が一緒だから、それ以前からお互いなんとなく知ってはいたんですけど、話したことはなかったんです。
Rin:そうそう、MolはTaiseiとShunsukeと同じ高校だったんですよ。大学で同じ音楽サークルに入ったので、「じゃあボーカルやってくんない?」ってお願いして。
Mol:それが2020年の春〜夏くらいかな? そこから9月くらいにこの4人(Rin、Taisei、Shunsuke、Mol)になって、Billyrromの前身になりました。もちろんまだ名前は決まってなかったし、遊びの一環でしたけど。
――その当時はメンバー内でどのような音楽を共有していましたか?
Rin:ざっくりというとブラック・ミュージックや、それがルーツにあるような音楽ですかね。
Mol:スタジオではYogee New Wavesシュガー・ベイブ(SUGAR BABE)を頑張ってカバーしたよね。
Taisei:全然カバーできてなかったけどね。特にシュガー・ベイブの「DOWN TOWN」はスリーピースでできる曲ではない(笑)。
Mol:確かに。俺はドラム・ボーカルだったし(笑)。
――そこからバンドの意識が変わったタイミングというのは?
Mol:それも徐々にっていう感じだとは思うんですけど、Shunsukeをドラマーとして迎えてからですかね。せっかく4ピースになったんだから、ライブやってみたいねって。そんな気合い入った感じではなかったけど。
Rin:めちゃめちゃ気合い入ってなかった?
Mol:「絶対売れてやるぞ!」っていう感じではなくない?
Taisei:でも、ギター始めて半年でフジロック出ようとしてたよね。
一同:(笑)。
Rin:Molは「フジロック出るから就職するなよ」って言ってました(笑)。
――Shunsukeさんは元々ドラムをやってたんですか?
Shunsuke:いえ、全然。音楽は好きだったんですけど、楽器は何もやっていなくて。この3人(Taisei、Mol、Rin)から「ドラムやってくれない?」って言われて、「わかった」っていう感じで。
――では、YutaさんとLenoさんの加入の経緯というのは?
Yuta:僕は元々写真をやっていたので、バンドのアー写を撮ってくれって頼まれたんです。それからしばらくはカメラマンとしてバンドにくっついてたんですけど、ある日のスタジオ帰りに「お前はもうBillyrromだよ」ってRinに言われて。
Mol:ルフィみたいじゃん(笑)。
Rin:色々とすっ飛ばしてるって。その間に色々なことがあったから(笑)。
Yuta:最初はVJとしてライブ中の映像を担当していたんですけど、そのうちにやっぱり音も出したいなって思ってDJを始めました。あと、Lenoは実は僕からの提案で入ったんです。全員地元は町田なんですけど、僕とLenoだけ少し離れていて。
Leno:八王子寄りというかね。
Yuta:そうそう。バンド内で「シンセがほしいね」っていう話が上がったときに、「地元にめっちゃカッコいいやついるよ」って紹介したら一発でハマって。それから一緒にやっていくことになりました。
Leno:元々僕はソロで音楽制作をしていて。ヒップホップ系のビートメイカー/プロデューサーとして活動していたんですけど、ちょっとくすぶっていて。そんなときにYutaから「ヤバいバンドがいるんだけど」って紹介されて、これはチャンスだなと。初めてライブを観に行ったときに、「これは絶対俺が入った方がカッコよくなる」って思ったので。
Mol:そんな風に思ってたんだ(笑)。なんだかんだあって、去年の6月くらいにこの6人が揃いました。
コロナ禍だからこそ生まれたBillyrrom
――Billyrromとしての方向性、目指す音楽性などについて話し合うタイミングはありましたか?
Mol:どうだろう……正直、「こういう音楽をやっていこう」って決めたことはなくて。メンバーそれぞれの好きなものやルーツが結果としてBillyrromの音楽性になるんじゃないかなって考えていて。
Rin:最初からそこは一貫しているよね。シンプルに自分たちの好きな音楽をやるっていう。
Mol:それがバンド名の由来にもなっているしね。
――バンド名はBill Evansとジプシーのロマ族が由来になっているそうですね。これはどのようにして決まったのでしょうか。
Rin:バンド名を考え始めてから数ヶ月くらい決まらなかったんです。流石にそろそろ決めないとヤバいだろってことで、「次の練習のときにひとり一案持ってこよう」って話をして、結局考えてきたのが俺ひとりだったんです(笑)。Bill Evansが持つ“流されないマインド”と、移動型民族であるロマ族の“自分たちの音楽を様々な場所から発信していく”という流動性、その2つを組み合わせた造語にして、みんなに提案したら「いいじゃん」って。
Mol:そのRinの考えがバッチリだったので、みんな即決でしたね。造語にしたいっていうのは以前から考えていたことで。
Rin:検索に引っかかりやすくするために、スペルとかも少しイジって。
――なるほど。みなさんの音楽的ルーツはそれぞれバラバラですか?
Rin:傾向としてブラック・ミュージックが好きっていうのはあるけど、結構バラバラだよね。
Taisei:そうだね。本当に色々なタイプの人間が集まってるって感じで。敢えてこのバンドの方向性みたいなものを挙げるとすれば、踊らせる音楽ってことになるのかな。
――「踊らせたい」という思いは、やはりライブを軸に活動してきたからこそ芽生えてきたもの?
Rin:そうかもしれないですね。最初から音源ベースで活動していたらそうはならなかったかも。
Taisei:最初はライブばっかりだったし、作曲についてもオーディエンスや自分たちが楽しめることを第一に考えてたもんね。
――コロナ禍以降に本格始動しているので、ライブ活動の面で動きづらい部分もあったのではないでしょうか。
Rin:でも、ライブハウスの営業自粛とかが緩和されてきた頃にライブをやり始めたので、そんな大変な思いはしてないかもしれないですね。
Mol:そもそもBillyrromはコロナ禍がなかったら絶対結成されなかったと思うんですよね。大学もオンラインになって時間を持て余したというか。Shunsukeなんて大学が遠かったので最初はひとり暮らししてたんですけど、コロナ禍になった影響で地元に戻ってきて。だから、不謹慎かもしれないんですけど、僕らはコロナ禍をプラスに変換できてる部分もあるんです。
ダンスを“自由”に変換する「Danceless Island」
――2021年の9月にはバンド初のリリース音源となるEP『Frontier』が発表されます。当時の制作プロセスなどを教えてもらえますか?
Rin:この頃はまだスタジオで全員で練りながら作るっていう技量がなかったので、俺かMolがGarageBand(DTMソフト)でデモを作って、みんなから意見をもらったり、音を足したりっていう感じで作っていきました。
Mol:当時の持ち曲5曲の中の3曲をパッケージしたっていう感じですね。最近では曲作りの方法も変わってきて、例えば僕が弾き語りで作ったデモにみんなが肉付けしていったり。色々な手法を試していきたいなと思っています。
――9月には3ヶ月連続リリースの第1弾として「Danceless Island」をリリースしましたが、これはどのように制作したのでしょうか。
Mol:「Danceless Island」はちょうど変化の過渡期というか、ちょっと特殊な曲なんです。原案はRinが作ってくれて。
Rin:8割くらい完成させたデモをスタジオに持っていって、それをみんなで一度解体して再構築しました。
――タイトルにも表れていますが、ダンサブルな曲調にメッセージ性の強いリリックが印象的でした。
Rin:元々はディスコっぽい曲を作りたかったんですけど、“踊らせる”っていうのはどういうことなのかって考えていって。肉体的に踊らせるのはもちろん、体が動いてなくても心を踊らせることもできるんじゃないかって思ったんです。まだコロナ禍も続いているし、よく言われているように日本人はシャイな人が多いから中々踊ってくれなかったりする。そんな人たちを踊らせるための曲というか。
――なるほど。
Rin:あと、“踊る”という行為を“自由”という言葉にも変換していて。この自由が抑圧されている世の中を“踊らない島(Danceless Island)”という風に表現して、そこに一石を投じるような曲にしたいなと。
――20代突入と同時にコロナ禍になってしまった、言わば青春を失ってしまった世代とも言えるBillyrromがそういったメッセージを発信することは、すごく意味があることだなと感じました。
Rin:ありがとうございます。
Mol:メロディとかはより開けたというか、ポップになっているのに、こういうメッセージが入っているのがすごくいいなと思いましたね。
――10月26日にリリースされる連続リリース第2弾となる「Defunk」は前作から打って変わりファンク色が強い楽曲になっています。
Mol:タイトルは“De = 減らす”、“funk = 臆病、尻込み”の造語で、挑戦や自由に伴う怖さを“なくす”と言い切るのではなく“減らす”勇気を持つことを謳う一曲であり、ラフに聴いても、細部に着目しながら聴いても楽しめるサウンドになっています。
Leno:個を立たせた音作りだったりフレージングを全面に出して、Billyrrom史上最も聴きごたえのある躍動感溢れる一作になったかなと思います。ライブを意識して制作しているので、音源との違いにも着目してもらえると嬉しいですね。
――世間一般的な話として、クラブではなくライブハウスでオーディエンスを踊らせるのって結構難易度が高いんじゃないかなと思うのですが、Billyrromとして工夫していること、意識していることはありますか?
Mol:最初の頃はめちゃくちゃ苦戦してましたね。初期は下北沢をメインに活動していたんですけど、当時はそれぞれの箱の特色やカラーも把握してなくて、とにかくDMを送りまくって色々なイベントに出させてもらったんです。当然、僕らと音楽性が全然違う方と共演することも多くて、自分たちのノリをフロアに伝搬させるのが難しかったですね。
Taisei:最初は自分たちのどこが悪いかもわからなかったよね。
Mol:シンプルに演奏も下手だったしね。
Rin:あと、ライブハウスの人に顔が怖いって言われたよね。硬かったというか。それからオーディエンスとの距離を近くするための工夫を色々取り入れていきました。
Leno:クラップ入れたり、ソロ・パートを入れたりね。あとは最近、同じような方向を向いているなって思えるバンドたちと出会えて。そういうバンドと共演すると、オーディエンスもいわゆるライブハウスのノリじゃないというか。
――シンパシーを感じるバンドというのは?
Taisei:親しいバンドで一番共感するというか、影響を受けているのは鋭児かも。
Mol:そうだね。彼らとは2021年末に大阪で共演させてもらったんですけど、その日のライブはめちゃくちゃ記憶に残っていて。僕らにとってもオーディエンスと濃いコミュニケーションが取れたライブにもなったし、鋭児のパッションみたいな部分にも共感しました。今年6月に行った自主企画にも呼ばせてもらって。
Leno:ターニング・ポイント感あったよね。
Mol:音楽性は全然違うけど、精神性やスタンスには共通するものがあるのかなって。
Rin:今のとこ一番対バンする機会が多いChapmanからも刺激もらってるかも。
Mol:ノリ方が近いというか。彼らもしっかりとブラック・ミュージックに根ざした音楽を鳴らしていますし。
加速するタイミング――年末のワンマンへ向けて
――今後の動きについては、何か計画していることはありますか?
Leno:具体的なところだと、やっぱり年末のワンマンへ向けて曲を作ったり練習したり、全力で動いています。
Yuta:それに向けて、今月からバンドで制作スタジオというか拠点になる部屋を借りて。また意識が変わった気がするよね。
Mol:ギアをひとつかふたつ上げる段階が今なのかなって思いますね。
Rin:年末のワンマンが来年以降の自分たちにとってどれくらいのジャンプ台になるのかっていうのを楽しみにしています。
――楽曲制作もしているとのことですが、今後はどのような作品が生まれそうですか?
Mol:これまでにリリースしてきた楽曲とはちょっと異なる、いい意味で期待を裏切るような曲を今作っています。
Rin:Billyrromっぽさみたいなものを更新するんじゃないかなっていう感じの曲をいくつか作りためています。
Mol:今まではひとりでデモを8割くらい完成させてたんですけど、それだとみんなデモの方向性に引っ張られちゃうじゃないですか。最近はより未完成な状態でみんなに渡して制作しているので、メンバーの色が濃く出ているんじゃないかなと。
――制作に関しては誰がイニシアチブを取っているのでしょうか。
Mol:全員です。そこは決めなくていいかなって思っています。大変ですけど、時間を掛けてみんなで作り上げていきたいですね。
Taisei:この前合宿に行ったんですけど、元々あった曲をみんなでアレンジし直して。ぶっちゃけ原型もほとんどないくらい、一から再構築したんです。自分たちにはこういったやり方が合っているのかなって感じました。
――これからが楽しみですね。では、Billyrromとして成し遂げたい夢や目標を挙げるとすると?
Mol:フェスに出たいですね。最初にも名前挙がりましたけど、やっぱりフジロックはいつか出てみたい。
Taisei:日産スタジアムでライブしたいです。
Rin:日産スタジアムはマストだね。近いしデカい(笑)。
Leno:今作っている曲の中にはライブハウスというよりはアリーナみたいなところで鳴らしたらヤバそうなデモもいっぱいあって。だから、早く実現させたいですね。
Taisei:Bruno Marsの『NFL Super Bowl』のハーフタイム・ショーとかみんな好きだし、Suchmosの浜スタとかも喰らったし、みんな規模のデカい音楽が好きだったんだよね。
――年末のワンマン、とても楽しみです。最後に意気込みなどをお聞かせ頂けますか。
Leno:そんなに固く構えずに、気楽に来てほしいですね。同じような趣味の人たちと遊びに行く感じというか。僕らは音楽だけじゃなくて空間作りにも力を入れているので、踊らなくてもいいし、おしゃべりしててもいい。
Mol:体で踊っていなくても心で踊ってくれてたら嬉しいし、みんなが自由で入れる場を提供したいですね。
【リリース情報】
Marketing & PR: ArtLed
Distribution: NexTone Inc.
■ 配信リンク(https://nex-tone.link/A00107191)
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Marketing & PR: ArtLed
Distribution: NexTone Inc.
■ 配信リンク(https://nex-tone.link/A00105524)
【イベント情報】

『Billyrrom First One-Man Live』

日時:2022年12月17日(土) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・渋谷 WWW
料金:ADV. ¥3,500 ※ZINE付き
■Billyrrom: Twitter(https://twitter.com/billyrrom) / Instagram(https://www.instagram.com/billyrrom/)
東京都町田市出身の現役大学生による音楽集団、Billyrrom(ビリーロム)がニュー・シングル「Defunk」を本日10月26日(水)にリリースした。
結成/本格始動からわずか2年ほどだがすでに注目度の高いイベントへの出演や主要プレイリストへのリストイン、ラジオ・オンエアなどで認知を拡大。今まさに羽ばたかんとする気鋭のニューカマーだ。
今回はコロナ禍以降に集結したこの6人のこれまでの足取りを訊くべくインタビューを敢行。3ヶ月連続リリース・シングル、そして12月に予定されている初のワンマン公演など、厳しい時代に希望を見出す若者の声をお届けする。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by fukumaru(https://www.instagram.com/fkdmnm_08/)
遊びの延長線から始まったバンド結成前夜
――早速ですが、バンドの結成のいきさつから教えてもらえますか?
Taiseiwatabiki(以降:Taisei):単純に地元が一緒だったんですよね。
Rin:最初はTaiseiとShunsuke、あともうひとり地元が同じやつと一緒に、「俺らでバンド組んだらおもしろそうじゃね?」っていう感じで組んだんです。その後にMolと同じ大学に入って。
Mol:地元が一緒だから、それ以前からお互いなんとなく知ってはいたんですけど、話したことはなかったんです。
Rin:そうそう、MolはTaiseiとShunsukeと同じ高校だったんですよ。大学で同じ音楽サークルに入ったので、「じゃあボーカルやってくんない?」ってお願いして。
Mol:それが2020年の春〜夏くらいかな? そこから9月くらいにこの4人(Rin、Taisei、Shunsuke、Mol)になって、Billyrromの前身になりました。もちろんまだ名前は決まってなかったし、遊びの一環でしたけど。
――その当時はメンバー内でどのような音楽を共有していましたか?
Rin:ざっくりというとブラック・ミュージックや、それがルーツにあるような音楽ですかね。
Mol:スタジオではYogee New Wavesやシュガー・ベイブ(SUGAR BABE)を頑張ってカバーしたよね。
Taisei:全然カバーできてなかったけどね。特にシュガー・ベイブの「DOWN TOWN」はスリーピースでできる曲ではない(笑)。
Mol:確かに。俺はドラム・ボーカルだったし(笑)。
――そこからバンドの意識が変わったタイミングというのは?
Mol:それも徐々にっていう感じだとは思うんですけど、Shunsukeをドラマーとして迎えてからですかね。せっかく4ピースになったんだから、ライブやってみたいねって。そんな気合い入った感じではなかったけど。
Rin:めちゃめちゃ気合い入ってなかった?
Mol:「絶対売れてやるぞ!」っていう感じではなくない?
Taisei:でも、ギター始めて半年でフジロック出ようとしてたよね。
一同:(笑)。
Rin:Molは「フジロック出るから就職するなよ」って言ってました(笑)。
――Shunsukeさんは元々ドラムをやってたんですか?
Shunsuke:いえ、全然。音楽は好きだったんですけど、楽器は何もやっていなくて。この3人(Taisei、Mol、Rin)から「ドラムやってくれない?」って言われて、「わかった」っていう感じで。
――では、YutaさんとLenoさんの加入の経緯というのは?
Yuta:僕は元々写真をやっていたので、バンドのアー写を撮ってくれって頼まれたんです。それからしばらくはカメラマンとしてバンドにくっついてたんですけど、ある日のスタジオ帰りに「お前はもうBillyrromだよ」ってRinに言われて。
Mol:ルフィみたいじゃん(笑)。
Rin:色々とすっ飛ばしてるって。その間に色々なことがあったから(笑)。
Yuta:最初はVJとしてライブ中の映像を担当していたんですけど、そのうちにやっぱり音も出したいなって思ってDJを始めました。あと、Lenoは実は僕からの提案で入ったんです。全員地元は町田なんですけど、僕とLenoだけ少し離れていて。
Leno:八王子寄りというかね。
Yuta:そうそう。バンド内で「シンセがほしいね」っていう話が上がったときに、「地元にめっちゃカッコいいやついるよ」って紹介したら一発でハマって。それから一緒にやっていくことになりました。
Leno:元々僕はソロで音楽制作をしていて。ヒップホップ系のビートメイカー/プロデューサーとして活動していたんですけど、ちょっとくすぶっていて。そんなときにYutaから「ヤバいバンドがいるんだけど」って紹介されて、これはチャンスだなと。初めてライブを観に行ったときに、「これは絶対俺が入った方がカッコよくなる」って思ったので。
Mol:そんな風に思ってたんだ(笑)。なんだかんだあって、去年の6月くらいにこの6人が揃いました。
コロナ禍だからこそ生まれたBillyrrom
――Billyrromとしての方向性、目指す音楽性などについて話し合うタイミングはありましたか?
Mol:どうだろう……正直、「こういう音楽をやっていこう」って決めたことはなくて。メンバーそれぞれの好きなものやルーツが結果としてBillyrromの音楽性になるんじゃないかなって考えていて。
Rin:最初からそこは一貫しているよね。シンプルに自分たちの好きな音楽をやるっていう。
Mol:それがバンド名の由来にもなっているしね。
――バンド名はBill Evansとジプシーのロマ族が由来になっているそうですね。これはどのようにして決まったのでしょうか。
Rin:バンド名を考え始めてから数ヶ月くらい決まらなかったんです。流石にそろそろ決めないとヤバいだろってことで、「次の練習のときにひとり一案持ってこよう」って話をして、結局考えてきたのが俺ひとりだったんです(笑)。Bill Evansが持つ“流されないマインド”と、移動型民族であるロマ族の“自分たちの音楽を様々な場所から発信していく”という流動性、その2つを組み合わせた造語にして、みんなに提案したら「いいじゃん」って。
Mol:そのRinの考えがバッチリだったので、みんな即決でしたね。造語にしたいっていうのは以前から考えていたことで。
Rin:検索に引っかかりやすくするために、スペルとかも少しイジって。
――なるほど。みなさんの音楽的ルーツはそれぞれバラバラですか?
Rin:傾向としてブラック・ミュージックが好きっていうのはあるけど、結構バラバラだよね。
Taisei:そうだね。本当に色々なタイプの人間が集まってるって感じで。敢えてこのバンドの方向性みたいなものを挙げるとすれば、踊らせる音楽ってことになるのかな。
――「踊らせたい」という思いは、やはりライブを軸に活動してきたからこそ芽生えてきたもの?
Rin:そうかもしれないですね。最初から音源ベースで活動していたらそうはならなかったかも。
Taisei:最初はライブばっかりだったし、作曲についてもオーディエンスや自分たちが楽しめることを第一に考えてたもんね。
――コロナ禍以降に本格始動しているので、ライブ活動の面で動きづらい部分もあったのではないでしょうか。
Rin:でも、ライブハウスの営業自粛とかが緩和されてきた頃にライブをやり始めたので、そんな大変な思いはしてないかもしれないですね。
Mol:そもそもBillyrromはコロナ禍がなかったら絶対結成されなかったと思うんですよね。大学もオンラインになって時間を持て余したというか。Shunsukeなんて大学が遠かったので最初はひとり暮らししてたんですけど、コロナ禍になった影響で地元に戻ってきて。だから、不謹慎かもしれないんですけど、僕らはコロナ禍をプラスに変換できてる部分もあるんです。
ダンスを“自由”に変換する「Danceless Island」
――2021年の9月にはバンド初のリリース音源となるEP『Frontier』が発表されます。当時の制作プロセスなどを教えてもらえますか?
Rin:この頃はまだスタジオで全員で練りながら作るっていう技量がなかったので、俺かMolがGarageBand(DTMソフト)でデモを作って、みんなから意見をもらったり、音を足したりっていう感じで作っていきました。
Mol:当時の持ち曲5曲の中の3曲をパッケージしたっていう感じですね。最近では曲作りの方法も変わってきて、例えば僕が弾き語りで作ったデモにみんなが肉付けしていったり。色々な手法を試していきたいなと思っています。
――9月には3ヶ月連続リリースの第1弾として「Danceless Island」をリリースしましたが、これはどのように制作したのでしょうか。
Mol:「Danceless Island」はちょうど変化の過渡期というか、ちょっと特殊な曲なんです。原案はRinが作ってくれて。
Rin:8割くらい完成させたデモをスタジオに持っていって、それをみんなで一度解体して再構築しました。
――タイトルにも表れていますが、ダンサブルな曲調にメッセージ性の強いリリックが印象的でした。
Rin:元々はディスコっぽい曲を作りたかったんですけど、“踊らせる”っていうのはどういうことなのかって考えていって。肉体的に踊らせるのはもちろん、体が動いてなくても心を踊らせることもできるんじゃないかって思ったんです。まだコロナ禍も続いているし、よく言われているように日本人はシャイな人が多いから中々踊ってくれなかったりする。そんな人たちを踊らせるための曲というか。
――なるほど。
Rin:あと、“踊る”という行為を“自由”という言葉にも変換していて。この自由が抑圧されている世の中を“踊らない島(Danceless Island)”という風に表現して、そこに一石を投じるような曲にしたいなと。
――20代突入と同時にコロナ禍になってしまった、言わば青春を失ってしまった世代とも言えるBillyrromがそういったメッセージを発信することは、すごく意味があることだなと感じました。
Rin:ありがとうございます。
Mol:メロディとかはより開けたというか、ポップになっているのに、こういうメッセージが入っているのがすごくいいなと思いましたね。
――10月26日にリリースされる連続リリース第2弾となる「Defunk」は前作から打って変わりファンク色が強い楽曲になっています。
Mol:タイトルは“De = 減らす”、“funk = 臆病、尻込み”の造語で、挑戦や自由に伴う怖さを“なくす”と言い切るのではなく“減らす”勇気を持つことを謳う一曲であり、ラフに聴いても、細部に着目しながら聴いても楽しめるサウンドになっています。
Leno:個を立たせた音作りだったりフレージングを全面に出して、Billyrrom史上最も聴きごたえのある躍動感溢れる一作になったかなと思います。ライブを意識して制作しているので、音源との違いにも着目してもらえると嬉しいですね。
――世間一般的な話として、クラブではなくライブハウスでオーディエンスを踊らせるのって結構難易度が高いんじゃないかなと思うのですが、Billyrromとして工夫していること、意識していることはありますか?
Mol:最初の頃はめちゃくちゃ苦戦してましたね。初期は下北沢をメインに活動していたんですけど、当時はそれぞれの箱の特色やカラーも把握してなくて、とにかくDMを送りまくって色々なイベントに出させてもらったんです。当然、僕らと音楽性が全然違う方と共演することも多くて、自分たちのノリをフロアに伝搬させるのが難しかったですね。
Taisei:最初は自分たちのどこが悪いかもわからなかったよね。
Mol:シンプルに演奏も下手だったしね。
Rin:あと、ライブハウスの人に顔が怖いって言われたよね。硬かったというか。それからオーディエンスとの距離を近くするための工夫を色々取り入れていきました。
Leno:クラップ入れたり、ソロ・パートを入れたりね。あとは最近、同じような方向を向いているなって思えるバンドたちと出会えて。そういうバンドと共演すると、オーディエンスもいわゆるライブハウスのノリじゃないというか。
――シンパシーを感じるバンドというのは?
Taisei:親しいバンドで一番共感するというか、影響を受けているのは鋭児かも。
Mol:そうだね。彼らとは2021年末に大阪で共演させてもらったんですけど、その日のライブはめちゃくちゃ記憶に残っていて。僕らにとってもオーディエンスと濃いコミュニケーションが取れたライブにもなったし、鋭児のパッションみたいな部分にも共感しました。今年6月に行った自主企画にも呼ばせてもらって。
Leno:ターニング・ポイント感あったよね。
Mol:音楽性は全然違うけど、精神性やスタンスには共通するものがあるのかなって。
Rin:今のとこ一番対バンする機会が多いChapmanからも刺激もらってるかも。
Mol:ノリ方が近いというか。彼らもしっかりとブラック・ミュージックに根ざした音楽を鳴らしていますし。
加速するタイミング――年末のワンマンへ向けて
――今後の動きについては、何か計画していることはありますか?
Leno:具体的なところだと、やっぱり年末のワンマンへ向けて曲を作ったり練習したり、全力で動いています。
Yuta:それに向けて、今月からバンドで制作スタジオというか拠点になる部屋を借りて。また意識が変わった気がするよね。
Mol:ギアをひとつかふたつ上げる段階が今なのかなって思いますね。
Rin:年末のワンマンが来年以降の自分たちにとってどれくらいのジャンプ台になるのかっていうのを楽しみにしています。
――楽曲制作もしているとのことですが、今後はどのような作品が生まれそうですか?
Mol:これまでにリリースしてきた楽曲とはちょっと異なる、いい意味で期待を裏切るような曲を今作っています。
Rin:Billyrromっぽさみたいなものを更新するんじゃないかなっていう感じの曲をいくつか作りためています。
Mol:今まではひとりでデモを8割くらい完成させてたんですけど、それだとみんなデモの方向性に引っ張られちゃうじゃないですか。最近はより未完成な状態でみんなに渡して制作しているので、メンバーの色が濃く出ているんじゃないかなと。
――制作に関しては誰がイニシアチブを取っているのでしょうか。
Mol:全員です。そこは決めなくていいかなって思っています。大変ですけど、時間を掛けてみんなで作り上げていきたいですね。
Taisei:この前合宿に行ったんですけど、元々あった曲をみんなでアレンジし直して。ぶっちゃけ原型もほとんどないくらい、一から再構築したんです。自分たちにはこういったやり方が合っているのかなって感じました。
――これからが楽しみですね。では、Billyrromとして成し遂げたい夢や目標を挙げるとすると?
Mol:フェスに出たいですね。最初にも名前挙がりましたけど、やっぱりフジロックはいつか出てみたい。
Taisei:日産スタジアムでライブしたいです。
Rin:日産スタジアムはマストだね。近いしデカい(笑)。
Leno:今作っている曲の中にはライブハウスというよりはアリーナみたいなところで鳴らしたらヤバそうなデモもいっぱいあって。だから、早く実現させたいですね。
Taisei:Bruno Marsの『NFL Super Bowl』のハーフタイム・ショーとかみんな好きだし、Suchmosの浜スタとかも喰らったし、みんな規模のデカい音楽が好きだったんだよね。
――年末のワンマン、とても楽しみです。最後に意気込みなどをお聞かせ頂けますか。
Leno:そんなに固く構えずに、気楽に来てほしいですね。同じような趣味の人たちと遊びに行く感じというか。僕らは音楽だけじゃなくて空間作りにも力を入れているので、踊らなくてもいいし、おしゃべりしててもいい。
Mol:体で踊っていなくても心で踊ってくれてたら嬉しいし、みんなが自由で入れる場を提供したいですね。
【リリース情報】
Marketing & PR: ArtLed
Distribution: NexTone Inc.
■ 配信リンク(https://nex-tone.link/A00107191)
==
Marketing & PR: ArtLed
Distribution: NexTone Inc.
■ 配信リンク(https://nex-tone.link/A00105524)
【イベント情報】

『Billyrrom First One-Man Live』

日時:2022年12月17日(土) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・渋谷 WWW
料金:ADV. ¥3,500 ※ZINE付き

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『心が震える音楽との出逢いを』独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介。音楽ニュース、ここでしか読めないミュージシャンの音楽的ルーツやインタビュー、イベントのレポートも掲載。

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