「今までにない武蔵と小次郎の関係性
を見せたい」~横浜流星、中村隼人、
堤幸彦による『巌流島』制作発表会見
レポート

『真田十勇士』や『魔界転生』といった作品で大ヒット作を生み出してきた脚本家・マキノノゾミと演出家・堤幸彦が再びタッグを組み、宮本武蔵と佐々木小次郎の壮絶な戦いを新解釈・新設定で描き出す『巌流島』。2020年に上演予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止。2年の時を経てついに上演が決定した。
主演・宮本武蔵を演じるのは、数々のドラマや映画に出演し、演技やアクションを高く評価されている横浜流星。対する佐々木小次郎は、古典歌舞伎から新作歌舞伎まで幅広く出演し注目を集めている中村隼人が演じる。今回、公演の舞台である「巌流島」にて行われた、横浜流星、中村隼人、堤幸彦の3名によるオンライン制作発表会見の様子をお届けしよう。

ーーまず、決戦の地に来られた印象はいかがでしょうか。
横浜:武蔵と小次郎が世紀の一戦を行った場に立ち、同じ空気を吸っていることが感慨深いです。役作りにも影響すると思うので、来ることができてよかったです。
中村:船に10分ほど乗って上陸し、ただならぬエネルギーを感じ増した。足を踏み入れた瞬間に感じた厳かな雰囲気を来年の舞台に反映させたいです。
堤:私が巌流島に来たのは2回目ですが、前回は曇っていたんです。今日は晴れていますし、潮の変わり目なのか流れがかなり早い。2人が戦った時もこんな感じだったんじゃないかと思います。この空気、風、太陽を忘れず、舞台をやりたいですね。
ーー舞台への意気込みを教えてください。
横浜:2020年の公演は中止になってしまい、悔しい思いをしましたし責任も感じました。また上演が決まって非常に嬉しいです。あれから積み上げてきたものを全て注ぎ込んで深みの増した武蔵を生きたいですし、2年前に共に稽古した仲間たちの思いも背負って、堤さんや隼人さんをはじめ、スタッフ・キャストの皆さんと一致団結して最高に熱い作品をお届けしたいです。
中村:僕は2年前この作品に参加していませんでした。出来上がったカンパニーの中に入っていくプレッシャーと緊張はあります。でも、僕が入ることで新たな風を吹き込めたらいいなと思います。
横浜:僕らは全力で迎え入れますし、舞台において、隼人さんは大先輩。胸を借りて全力でぶつかりたいと思います。
中村:でも、史実だと小次郎は一撃でやられちゃうらしいですよ(笑)。
横浜:今回は新解釈なので(笑)。
舞台『巌流島』扮装写真
ーー新解釈という部分についてお聞きしたいです。
堤:自由自在に背景を変えられる巨大なLEDなど、最新テクノロジーを使うのがひとつ。そして、従来の舞台の流れ・進行にとらわれず、新たな形を目指したいと考えています。ですが、基本はお2人の汗と血と涙を間近で見えるように作っていく。本当の演劇が持つ力強さとテクノロジーを融合させたものにしたいと考えています。台本はもう出来上がっています。史実では一瞬で雌雄を決したと聞いていますが、舞台ではそうはさせません。武蔵と小次郎はかなり長きにわたる知り合いで、互いを運命の相手だと思っている。形を変えて言えば恋愛に近いかもしれないし、友情の物語かもしれない。「侍が命をかける意味」を問い続け、お客さんに迫ってくるような話にしたいと考えています。ですから決闘が一瞬で終わることはなく、見せ場として描きます。
ーー中村さんは歌舞伎以外での大規模な舞台出演はこれが初ということです。歌舞伎役者だからこそ表現したいことを教えてください。
中村:初めてなので、歌舞伎俳優のスキルがどう活きるのか。流星さんはどう思いますか?
横浜:全部活きると思いますよ。立ち居振る舞いも所作も。
堤:あと喉ですよね。常日頃、たくさんのお客さんに届くように声を出していらっしゃるから。映像からきた人たちもそうじゃない人たちも、声をどう届かせるかは非常に重要。手本を示してくれると嬉しいです。
中村:歌舞伎はマイクがない演劇なので、悩みつつ自分なりに鍛えてきました。堤さんがおっしゃるように、先頭に立てるように頑張りたいです。今回はテレビメインの方や舞台メインの方など、いろいろな分野の方が集まっているカンパニーなので本当に楽しみです。
ーー横浜さんはどのような武蔵を演じたいと考えていますか?
横浜:マキノさんの脚本は、武蔵の葛藤や戦う意味、心の揺れが濃く描かれています。内面は大事に作っていきたいですし、新解釈なので、史実も大切にしつつ自分にしか出せないものを出して、新たな武蔵を見せたいと思っています。
(左から)中村隼人、横浜流星
ーー堤さんから横浜さんへの期待は。
堤:必ずやり遂げてくれるでしょうし、適役だと思います。武蔵の生き様、暗さや強さ、何十年も何かを思い続ける気持ちみたいなものを演じてほしいですね。
ーー新解釈で描く令和の巌流島ということですが、どんな作品になりそうか教えてください。
横浜:世界観、武蔵と小次郎の熱い関係性、それぞれの生き様、生々しい殺陣など、見どころがたくさんあると思います。皆さんの心に残る作品にしたいですね。
中村:まだお伝えできないこともたくさんありますが、今までにない話になるんじゃないかなと。結末は同じでも、過程がこれまでの映画や時代劇とは一味違うと思います。武蔵と小次郎の関係性、武士として生きる上での葛藤が色濃く出せる作品になっていると思います。最初は一緒の思いだったのに、自分は剣術指南の奉公をしたり、武蔵は我が道を突き詰めたり。僕のキャラクターが濃くなると武蔵のキャラも際立つと思うので、もっと本を読み込みたいです。
堤:マキノさんの脚本は、大きな時代の話であると同時に個人的な話です。1600年台初頭という戦国時代から江戸時代へと移り変わり、侍の生き方が問われていた激しい時代。宮本武蔵と佐々木小次郎は居場所はちょっと違うけど、侍という生き方に対して同じ気持ちを持っていたり、あるいは反目するものがあったり。その心模様が本当に面白いので、そこを色濃く見られるように作っていきたいです。
ーー横浜さんと中村さんに、お互いの印象をお伺いしたいです。
横浜:ポスター撮影で刀を合わせた時、物腰は柔らかいけど内にすごく熱いものを秘めている方だと感じました。稽古がすごく楽しみですし、舞台に関して大先輩なので、胸を借りて切磋琢磨しあえたらいいなと思います。
中村:色々な作品を拝見し、繊細な芝居をされる方だと思っていました。その方が無骨で男臭い武蔵をどう演じるんだろうと楽しみにしていたんですが、来た瞬間そのまま武蔵で。僕も自然と役に入っていけました。引き出していただけたという印象が強いです。
舞台『巌流島』メインビジュアル
ーー会見前にゆかりの地である小倉城と手向山を巡ってきたそうですが、いかがでしたか?
横浜:行けてよかったですね。色々な説を聞かせてもらったので、取り入れられるものは取り入れて役作りをしたいです。感じたことをしっかり整理し、稽古までに武蔵を作っていこうと思います。
中村:武蔵は武を追い求めていた無骨な人物かと思っていましたが、水墨画を描いたり書を残したりもしていたと小倉城の展示で知りました。すごく意外というか、印象が変わりましたね。
堤:ものすごく強いと言われて全国に名が知れ渡ったけど、その実やはり人間なんですよね。自分の居場所を求めてさまようこともあり、我々と変わらない。ただ、非常に強かったせいで色々な運命や決闘を背負わなきゃいけなかった。ちょっと悲しい人たちだなと改めて思いました。
ーー全国公演に向けた意気込みをお願いします。
横浜:全国各地の方にこの作品をお届けできることが本当に嬉しいです。怪我のないよう、心は熱くても頭は冷静にやっていきたいと思っています。
中村:本当にたくさんの土地を回らせていただき、数々の名優たちが演じた佐々木小次郎を演じさせていただきます。自分が持てる全てをぶつけて成功させたいです。
堤:コロナ禍で多くの部隊が延期や中止になりました。その悔しさや切なさも背負い、今できる最大の表現をできるといいなと思っています。芝居は舞台上だけで行うものではないと思っていますから、耳で聞いて目で見て肌で感じる、客席を巻き込んだ立体的な作品にしたいですね。
(左から)中村隼人、横浜流星
ーー最後に、横浜さんから舞台を楽しみにされている皆さんへのメッセージをお願いします。
横浜:稽古はこれからなので、各々が役作りをした上で、チーム一丸となって熱く作品を作っていきたいです。必ずみなさんの心に響く作品をお届けすることを誓うので、楽しみに待っていてください。
取材・文=吉田沙奈

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