感覚ピエロ、This is LAST、かずき山
盛り、mol-74、Rhythmic Toy World出
演『TOKYO CALLING 2022』最終日レポ

『TOKYO CALLING 2022』Day3

2022.9.19 渋谷
“3 DAYS of PEACE, LOVE and MUSIC!!!!!!!!”のメッセージを掲げ、9月17日(土)、18日(日)、19日(月・祝)の3日間にわたって新宿、下北沢、渋谷それぞれ13会場で行なわれた日本最大級のサーキットフェス『TOKYO CALLING 2022』。
前日に続き各種イベントの中止が相次いで発表されるなど、猛烈な台風14号が西日本一帯で甚大な被害を及ぼしていた3連休ラストにあたる敬老の日。もちろん東京においてもその影響は少なからずあったが、幸いにも『TOKYO CALLING 2022』は全日程を無事に終えることができた。本稿では、3日目の渋谷エリアで繰り広げられたバンドマンたちの熱演を厳選レポートする。

感覚ピエロ/at O-EAST
Spotify O-EASTのトップバッターは、感覚ピエロ。朝から豪雨が降り注いでいた東京だったけれど、あっという間にジャンプするオーディエンスを続出させた彼らの圧倒的なパフォーマンスが、台風の憂鬱を一気にはねのけてくれた。真っ赤な照明の下で横山直弘(Vo&Gt)が激しいシャウトを叩きつけた「疑問疑答」、4つ打ちロックを皮肉りながらエッジーに切り込む「A-Han!!」と、序盤にしてアリーナクラスの実力を存分に発揮。タフな爆音を鳴らす滝口大樹(Ba)、アキレス健太(Dr)、サポートのタケヤドラゴン(Gt)のテンションもすこぶる高い。
「クソどしゃ降りの中、よく来たじゃん。何年か前に配信で『TOKYO CALLING』があって、俺ら張り切って18曲くらい用意してたのに、5曲とかしかできなかったんだわ。今日はその続きをやろうと思います!」と奮い立つ横山。《道無き道 だからどうしたよ?》《ここがゴールなんて誰が決めた》と歌うバンドの覚悟にフロアがより過熱した「革命リアクション」、インスト的なかっこよさも多分に備えた「サイレン」で、次はアルバム『ピリオドは踊る』のニューモードを鋭く見せつける。
「やっぱり、時間はぜんぜん足りません(笑)。今年は自分たちで打つライブはもうないけど、来年に向けてめちゃくちゃ準備していて。その成果を出すときには一緒にたくさん遊びたいんで、どうぞよろしくお願いします」と横山が伝え、最後はこの先を切り開いていく誓いを込めた「ハルカミライ」で鮮やかにステージを締め括った。

【セットリスト】
01.CHALLENGER
02.疑問疑答
03.A-Han!!
04.革命リアクション
05.サイレン
06.ハルカミライ
■This is LAST/at O-EAST
This is LAST
今夏は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』や『RUSH BALL』に初出演を果たすなど、ティーンを筆頭に人気が急上昇している3ピースロックバンド、This is LASTがO-EASTに登場。代表曲と言える失恋ソング「愛憎」「殺文句」がいきなり続けて届けられる中、菊池陽報(Vo&Gt)の抜群に通る感情豊かな歌声、弟の菊池竜静(Ba&Cho)と鹿又輝直(Dr)がどっしりと底を支えるサウンドの凄みが際立つ。この大舞台を任されるのも納得だ。
This is LAST
「殺文句」では《夜桜からのラブホテル 楽しかったかい?》のような一節があったりと、プライベートな日記を覗き見ているみたいな赤裸々すぎる歌詞もクセになる。また、そんな未練の渦巻く生々しい言葉を軸としつつも、エモーショナルなギターロックサウンドに乗せて「踊れるかい? 行けるかい?」とハンドクラップを誘い、小気味よく場内を盛り上げていくさまは新鮮そのもの。
This is LAST
「忘れられない日になるように、大事に大事に音楽をやります」と陽報が話したあとも、ストリングスの同期を使いながら女性目線で歌ったミディアムラブバラード「バランス」、爽やかなメロディで“さよなら”を表現した最新曲「もういいの?」と、胸に刺さる切ないナンバーを存分に聴かせた3人。とびきりハッピーでポップな締めの「オムライス」を含め、おなかいっぱいに満たされるライブだった。

【セットリスト】
01.愛憎
02.殺文句
03.恋愛凡人は踊らない
04.バランス
05.もういいの?
06.オムライス
■かずき山盛り/at WWW
かずき山盛り
日差しも少し覗く天気雨っぽい空模様にまで持ち直した夕方の渋谷。WWWに現れた“なにわコスメティックパンクバンド”かずき山盛りは、約5秒の超ショートチューン「雑草抜きのプロ」を冒頭に披露してすぐさまステージから捌けてみたり、「琉球サンライズ」ではイサム(Vo&Ba)がひっくり返ったビニール傘+オキナワンな出で立ちで戻ってきて「沖縄まで行って台風止めてきたんで、みなさん安心してください!」と笑わせたりと、その名のとおりの有り余るユーモアと確かな演奏力で会場全体を巻き込んでいく。
かずき山盛り
かずき山盛り
「かもめのピーちゃん」でも、かもめがデザインに使われた今年の『TOKYO CALLING』のオフィシャルロゴを引き合いに出して「俺らめっちゃ贔屓されてるやん!」とおどけつつ、アズマ(Gt)の裏打ちカッティングがオーディエンスを大いにスカダンさせるなど、怒涛の盛り上がりを見せる。
かずき山盛り
「天気の悪い中、たくさん来てくれてありがとう! 今日はテレビの撮影が入っているので、あまり変なことを言えないんですよ(笑)」とイサムが前フリをしての「ちんかすだらけの運動会」、ボーカルを執るモリヲ(Dr&Cho)が「大阪市西成区から最高のラブソング!」と告げた「西成の銀次」(正式タイトル自主規制)など、ネタ満載の楽しいパフォーマンスで全9曲を駆け抜けたかずき山盛り。終演後のフロアは、他のバンドのライブじゃ味わえない不思議な充足感に包まれていた。

【セットリスト】
01.雑草抜きのプロ
02.Welcome to the かずき山盛り
03.琉球サンライズ
04.かもめのピーちゃん
05.ちんかすだらけの運動会
06.西成の銀次 ~こじきの伝説~
07.START かずき山盛り
08.クレンジングオイル
09.マンホール
mol-74/at duo MUSIC EXCHANGE
mol-74
夜の渋谷は雨が上がり、湿度が高い中でやや強い風が吹いている。そして、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードと、一つひとつの音が繊細で温かみのあるmol-74の美しいアンサンブルによって、duo MUSIC EXCHANGEは台風を寄せつけない聖域のようなオーラで満ちていた。自分たちの殻を破ることに挑んだ最新アルバム『OOORDER』のナンバー「Renew」「Replica」が、武市和希(Vo&Gt&Key)の透き通ったファルセットが、場内の空気をゆっくりとほぐし、集まったオーディエンスを深い恍惚へと誘う。
mol-74
「僕らにとって4年ぶりの『TOKYO CALLING』、こんなにたくさん集まってくれてありがとうございます。台風も心配していたんですけど、なんとか無事に開催できたことが嬉しい限りです。お互いに楽しんでいきましょう!」と武市が伝え、続いては人気の「エイプリル」へ。映画のようなラブストーリーが脳裏にフッと浮かぶ心地よさに加え、歌と音が驚くほどに清らかで澄んだ演奏の安定感にも改めて息を呑むばかりだ。魔法みたいな高速ハンドクラップがフロアにあふれた「%」の壮観な景色は、3日間に及ぶサーキットフェスの大成功を表していたかのよう。
mol-74
「ここにいるお客さんそれぞれにmol-74の音楽と出会ったきっかけやストーリーがあると思うんですけど、そう考えると本当に胸が熱くなります」と、『TOKYO CALLING』への感謝を語った武市。最後は井上雄斗(Gt&Cho)のボウイング奏法が崇高さを助長する「Saisei」で、圧巻のサウンドスケープを創り上げてみせた。

【セットリスト】
01.瞼
02.Renew
03.Replica
04.エイプリル
05.%
06.Saisei
Rhythmic Toy World/at O-WEST
Rhythmic Toy World
『TOKYO CALLING 2022』もいよいよ大詰め。O-WESTのトリを任されたRhythmic Toy Worldは、《頑張れ生きる人》と歌うポジティブなメッセージと爽やかな疾走感が光る「僕の声」から、3日目の終盤でそれなりに疲れているであろうオーディエンスに早速ガツンとエネルギーを注入してくれる。
Rhythmic Toy World
続けて、ダーティなロックサウンドやシニカルなラップで果敢に攻めた「ゴーストタウン」、この時間まで残ってくれた音楽好きに愛のバラード「8535」を披露。ライブができなかった、ライブに行けなかった日々を振り返り、今のような状況が戻ってくる日を願って人知れずがんばってきたお互いのことを労い、「君にはライブハウスで笑っていてほしい」と内田直孝(Vo&Gt)が想いを伝える場面も。
Rhythmic Toy World
その熱量をもって“心に灯す青い炎”がテーマの新曲「青炎」を届け、困難に真正面から対峙していく不屈の精神を示したRhythmic Toy World。「俺たちが鳴らす音とか歌う言葉とか、全部を持って帰ってほしいとは思わないんだよ。持てるぶんだけでいい。たったひとこと、ワンシーンだけでも忘れないでいたら、また会ったときに“ひさしぶり”ってなれるでしょ? そんな夜にしたくて今日はステージに立ったんだけど、すごくよかったです……!」と内田が告げ、本編ラストは聴き手にアイデンティティを問うような「青と踊れ」を、アンコールはMAGIC OF LiFEを呼び込んで両者の合同バンド“GIFT MEN”として「Muzik!!!!!!!!」を演奏。最高にピースフルな空間で音楽の楽しさが極まり、素晴らしき大団円を迎えたのだった。

【セットリスト】
01.僕の声
02.ゴーストタウン
03.8535
04.青炎
05.青と踊れ
〈ENCORE〉
01.Muzik!!!!!!!!(GIFT MEN)

取材・文=田山雄士
撮影=Aoi/アオイ(This is LAST)
   清水舞(かずき山盛り)
   Ryohey(mol-74、Rhythmic Toy World)

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