L→R 桜井秀俊(Vo&Gu)、YO-KING(Vo&Gu)

L→R 桜井秀俊(Vo&Gu)、YO-KING(Vo&Gu)

【真心ブラザーズ インタビュー】
“楽しく生きるぞ!”っていう覚悟を
持つようなアルバムにしたかった

歌詞を書く時は寸止めがいいと思うし、
それが粋だと思う

そこから桜井さんのちょっとウェットな「群衆」が雰囲気を変えて、「LOVE IS FREE」はディスコ調のトラックで、バンドサウンドですらないという自由さで。

桜井
「群衆」は暗いよね(笑)。コロナ疲れしている梅雨時に書いた曲なんですけど。気分が塞ぐ時ってどこかにぶつけたくなるので、曲を書くチャンスなんですよね。4小節おきに転調をして、着地できないもどかしさを表現したり…まぁ、面白い曲になりました。
YO-KING
「LOVE IS FREE」は遊びだけど仕事みたいな感じでいろんな人に会っている時に、トラックを作ってもらった江沼郁弥くんと知り合ったんですよ。俺はご存知のとおり、本当に自信のある人間なんだけど、いろんな人に会っていると“世の中には俺より自信のある人がいるんだ!”って驚かされることもあって。だから、今は自分より頭のいい人だったり、幸せそうにしている人と会うのが何より刺激的で面白いんだよね。

そんな江沼さんとの楽曲では《愛とは自由だよ》と高らかに歌っていて。

YO-KING
90年代の俺が使ってた“愛”って洒落だったんだけど、「愛」から27年経って、本当の意味で“愛”を使えるように成長したとも言える。

あれから時を経て“真の愛の遣い手”になったと(笑)。

YO-KING
あははは。でも、“ストレートに取ってください”って気持ちはあって。あの頃は“愛”ってひと言入れるのが恥ずかしいから、“一曲の中に“愛”って何回入れられるか?”みたいなことをしていたけど、今はそんな照れも必要なくなっちゃったというか、“愛って最強じゃん”って素直に思いますね。“愛”って消費されまくってるけど、“愛”に当たる言葉は他にないから。本当は“愛”の意味なんて教えたくないんだけどね。みんな知らないことを俺が知っているってことに価値があるから(笑)。

《大切なのは許して寄り添うこと》とヒントは書いていますが、真意の部分は書いていないし、行間を読んで想像するところに歌詞の面白さもありますしね。

YO-KING
歌詞を書く時は寸止めがいいと思うし、それが粋だと思うんですよ。潜在意識にあるものを顕在意識に出す瞬間をパッケージするのがアーティストだから。出来上がった曲が自分のキャパを超えていて、“俺、本当にこんなの書いたんだ!?”って曲もあるよ。

なるほど、面白いです。「破壊」はさっき話したように、こんな時代における真心のスタンスや在り方を表していて。

YO-KING
今の世の中にいろいろ思うことはあるけど、それをそのまま書いても歌として面白くないし、俺が俺として書くものに相応しくない。俺の自由とか愛とかいう立場で書いたほうがいいという確信はありましたね。

それに僕はすごく救われましたし、「一触即発」の《世界が明日もまだ続くとは限らないぜ》という歌詞にもつながったり、だからこそ今日を大事にしようということで“TODAY”のタイトルにつながったり、いろいろ考えさせられました。

YO-KING
なるほど、そうだね。

そして、YO-KINGさんと桜井さんのツインヴォーカルによる「Boy」。これはもう堪んなかったです!

YO-KING
サービスしちゃったね(笑)。
桜井
そうだね。なりゆきでこうなっちゃっただけだけど(笑)。

《僕たちはいまも友達かい?》と歌っちゃっていて、そういう歌じゃないのは分かるけどニヤけちゃいます。

桜井
あははは。最初はYO-KINGさんひとりに歌ってもらうつもりだったんですけど、“こういうメロディーで”って感じで仮歌を入れていたら“ツインヴォーカルにしようか?”って流れになったんですよ。“えっ! こんな歌詞だけど、そんなことしていいの?”って(笑)。だから、ひとつだけ言わせてもらいたいのは、“ふたりで歌うつもりで作った曲ではないです!”と(笑)。
YO-KING
それは言っておかないとダメだね。俺は芸人なところがあるから“恥ずかしいけど、これをやったらウケるよね?”って気持ちもあったけど(笑)。

あははは。でも、いつまでも仲良しのふたりで歌うことで、歌詞にある少年性みたいなのも増してグッときました。続く「雨」は歌とピアノの一発録りに挑戦していて。

YO-KING
ピアノの江﨑文武くんも人と会う遊びの中で知り合った人なんですよ。僕がここ10年でもっとも聴いたアルバムがビル・エヴァンスの『Waltz for Debby』なんだけど、ビル・エヴァンスが好きって共通項もあって。バンドで録る曲がだんだん固まってきた時、“バンド以外のアレンジの曲も入れたいよね”ってことでお願いしました。

ピアノとの一発録りは緊張感もありました?

YO-KING
緊張はない。“早くいいのを録って終わりたいな”って気持ちしかなかった(笑)。なぜ緊張しないかって言うと、うまく歌わなきゃいけないっていう意識が常にないんですよ。俺はこの曲に限らず、60点出せればいいと思ってるし、自分の好きな歌い方ができればいい。何度も聴くにはうますぎるより、そのほうがいいんですよ。

でも、YO-KINGさんの歌声、ピアノとの相性もばっちりでしたよ。

YO-KING
今ね、俺、歌手としても脂が乗りきってるんだよ。

アルバム聴いて思いましたけど、絶好調ですよね!

YO-KING
そう! 絶好調なのよ、本当。
桜井
…すごくいいキャッチボールをするね。強めのボールをビシッと受け取って、また投げ返した(笑)。

いやいや、本音ですよ!(笑) そして、オールディーズなロックンロールサウンドがめちゃくちゃカッコ良い「ブレブレ」に続きます。

桜井
これも「一触即発」と同じリズム隊で、乗っかったにすぎないんですけどね。ど頭のイントロでYO-KINGさんがギブソンのSGをジャンガジャンガって弾いて、“あっ、こういう悪さでやれってことね”ってことを理解して、そのままみんなでワ~ッとやって、良いテイクが録れたっていう。みんなでプレイバックを聴いて出た言葉が、“悪いおっさんたちやなぁ”だったし(笑)。で、「雨」と並べてみたらすごくいい流れができていて、不思議な縁というか…偶然だけど、結果的にすごく良かったですね。

ラストに向けて「うたたね」「白い紙飛行機」と桜井さんの曲が続く流れがすごく気持ち良いです。

桜井
「うたたね」はコードがCとE7のふたつしか出てこないんですけど、実はそのふたつを並べたところで、音楽的には解決しない進行なんです。でも、その解決しないのが、妙に解決されたり、まとめられたりするよりも、むしろリアルに感じて面白くて。それをかたちにしたくて、「うたたね」って曲になりました。「白い紙飛行機」は昼のバラエティー番組のテーマ曲みたいな感じでオファーを受けて作った曲なので、ちょっと軽くなっちゃうかなとか思ったんだけど、歌詞の中の暗い部分がうまく機能して、抜けの良い場所に連れて行ってくれる救いのある曲になりましたね。
YO-KING
ちょっとブリティッシュロックの香りもあって、ポップでいいよね。

この素晴らしい新曲たちを掲げて“FRONTIER”と題したツアーがスタートするわけですが。

YO-KING
ツアータイトルはもとどおりの感じまで開拓していくって意味もあるし、どよ~んとした雲をかき分けて青空に向かって行くという意味もあるんだけど。こういうアルバムができたから、どっしりとツアーをやりたいですね。
桜井
まっ、普通にツアーができるだけでありがたいですよ。早く、みんなが気兼ねなく遊びにこれるような世の中の空気になってほしいですね。

取材:フジジュン

アルバム『TODAY』2022年10月26日発売 日本コロムビア
    • COCP-41887
    • ¥3,300(税込)

ライヴ情報

『真心ブラザーズ ライブ・ツアー「FRONTIER」』
11/03(木) 東京・EX THEATER ROPPONGI
11/12(土) 京都・磔磔
11/24(木) 北海道・札幌PENNY LANE24
11/26(土) 宮城・仙台darwin
12/03(土) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
12/04(日) 香川・高松DIME
12/10(土) 熊本・B.9V1
12/11(日) 福岡・DRUM LOGOS
[2023年]
1/14(土) 大阪・BIGCAT
1/15(日) 愛知・ダイアモンドホール

真心ブラザーズ プロフィール

マゴコロブラザーズ:1989年 大学在学中、音楽サークルの先輩・YO-KINGと後輩・桜井秀俊で結成。バラエティー番組内「フォークソング合戦」にて見事10週連続を勝ち抜き、同年9月にシングル「うみ」でメジャーデビューを果たす。14年に自身のレーベルDo Thing Recordingsを設立し、19年にはデビュー30周年を記念し、リスナー投票によるベスト10楽曲を収録したセルフカバーアルバム『トランタン』をリリース。20年は10月に17枚目となるオリジナルアルバム『Cheer』を発表。デビュー34年目となる今もなお、ライヴ、制作にと精力的な活動を展開している。真心ブラザーズ オフィシャルHP

「一触即発」MV

OKMusic編集部

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