L→R 仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)、浅井健一(Vo&Gu)、福士久美子(Key&Cho)

L→R 仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)、浅井健一(Vo&Gu)、福士久美子(Key&Cho)

【SHERBETS インタビュー】
映画でも小説でも光を感じさせないと
芸術としての意味がないと思う

売れるために自分が思っていないことを

歌うというのはできない

“光と影”を内包した音楽がすごく好きですので、今回のSHERBETSの3曲は本当に惹かれます。「Smoothie Glider」は歌詞も《冷たい雨》という始まりですが、歌っていることは前向きですね。

そう。雨の日に青空を滑っていくグライダーを思い浮かべているという歌詞だから。

描き方が秀逸ですが、そういうイメージはどうしたら思いつくのでしょう?

もうそれは自然に出てくるものだから。説明の仕様がない。

映画や小説などからインスパイアされたりするわけでもないんですね。もうひとつ、浅井さんが書かれる歌詞は細かく説明しないことも魅力になっていると思います。

説明できんもん(笑)。できたとしてもしたくないし。

なるほど(笑)。説明する言葉がないのに情景は鮮明に浮かんできて、さらにメッセージも感じられるというのが素晴らしいです。

そこまで感じてもらえれば嬉しいな。

浅井さんの音楽に惹かれている方は、みなさん感じていると思います。

俺の曲、歌詞、歌を理解してくれる人もたくさんいて、それは本当に嬉しいことだと思う。もちろん全然通じない人もたくさんいるよ。でも、いっぺん真っすぐ聴いてもらったら絶対に伝わると、昔から俺は思ってるんだけどね。

そう思いますし、伝わりやすいことを重視してスタイルを変えたりしないでほしいと思います。

曲に関してはポップなものを目指したりするよ。ポップなものも好きだしね。でも、歌詞は自分が思っていることしか歌詞にできないから。売れるために自分が思っていないことを歌うというのはできない。できないから安心していいよ(笑)。

だからこそ、ファンの方は浅井さんに信頼を寄せていることを感じます。

だから、悪いことはできんよね(笑)。

できません(笑)。いえ、悪いことをしてもいいですが、自分に嘘をつかないでほしいとみなさん思っている気がします。

そうだね。

では、3曲目の「Mable」はどうでしょう?

「Marble」はサーフィンの歌。“Marble”というのはマーブル模様のサーフィンボードがあって、それのことなんだよね。

この曲はAメロは少し冷たい感触で、そのあとに光が射すようなサビがきて、後半で希望にあふれた雰囲気に変わるという構成です。最初に聴いた時に“ラブ&ピース”のような大きなことを歌っているのかなと思ったらサーファーの歌で、そういう歌詞でいながら心に染みることに衝撃を受けました。

本当に? 俺は「Marble」で書いたようなことが好きなんだわ。気の合う友達とどこかに行ったりして、みんなで気楽なひと時を楽しむという。だから、そういう場面を歌っただけなんだけど。

パンデミックがあったり、戦争があったりする中で、こういう何気ない日常こそが尊いんだというようなことが感じられました。

そう。そういうこと。それを感じ取るというのはすごいね。

いやいやっ! すごいのは浅井さんです。

分かりやすく説明してくれて、ありがとう(笑)。本当にそういうことで、それを説明しなくても感じ取ってくれれば一番いいなと思っている。

「Marble」を聴いた人は、みなさん感じると思います。では、この曲の歌やギターに関してはいかがでしたか?

歌は一生懸命歌いました(笑)。一生懸命、心を込めて歌うというか。あまり心を込めすぎてもいかんから、俺がみんなに勧める歌い方をした。俺たちは小学校の頃から歌う時は“口を大きく開けて、はっきり歌いなさい”とずっと言われとったじゃん? それは逆で、なるべく口は瞑ったまま歌ほうがいい。

えっ、そうなんですか!?

うん。これを言うと、みんな怪訝な顔をするんだけど。でも、やってみることを勧めたいね。

浅井さんの歌を聴くと、それが正しいような気がします。というか、浅井さんの歌は不思議です。繊細さや温かみがありつつナヨナヨしてはいないですよね。

うん。ナヨナヨするのは嫌いだから。

とはいえ、粗野だったり、暴力的な歌でもない。

昔はね、そっちにいきがちだったんだけど(笑)。でも、歌自体がカッコ良くありたいし、やっぱり大事なのは心に伝わることでしょ? 長く続けることでいろいろ見えてきたというか、気づくことがいろいろあってさ。変に自分を作って歌うのはカッコ悪いし、伝わらない。ただ、若い頃にしかできなかったことというのは確実にあって、それを否定する気はないけどね。

浅井さんは“響く歌”を歌うというところは一貫されていますよね。「Marble」のギターは艶やかなクリーントーンと歪み音を使い分けていますが、この歪ませた音はファズを使ったのでしょうか?

いや、ファズは使っていない。俺が歪み系で使っているのはRAT(ディストーション)とヴィバーチェ(オーバードライブ/ブースター/エンハンサー)だから。あの音はグレッチとヴィバーチェ、それにRATもかかっているかもしれない。アンプはマーシャルで、たぶんフロントピックアップで弾いていると思う。

この曲の歪んだ音も絶妙で、ギターの音色に対する感覚の鋭さを改めて感じます。さて、「UK」は良質な3曲が揃った、必聴と言える一作に仕上がりました。今作を完成させて、今はどんなことを感じていますか?

今日、いっぱい褒められたから嬉しいかな?(笑) なんか、すごく嬉しいんだけど(笑)。

ええっ! 褒めてはいないです。音を聴かせていただいて、純粋に感じたことを述べただけです。

本当に? 今回のシングルは…シングルというのはすごく大事で、すごく一生懸命作った。俺はメインは絶対に「Smoothie Glider」だと思っていたけど、最後にどんでん返しで「UK」になったという流れだっから、がむしゃらにやっていたらこうなった…みたいな感じかな?

冒頭でも言いましたが、“リード+カップリング”という感じのシングルではありませんので、ぜひ3曲をじっくり聴いてほしいと思います。さらに、シングルのリリースに加えて10月16日から始まる全国ツアー『24th→25th ANNIVERSARY TOUR “そして未来へ"』も楽しみです。

ツアーはね、やっぱり来てくれた人が“来てすごく良かった”と思って帰ってほしい。みんなが元気になってくれたら、なおいいし。そうするために、もう全力を尽くすよ。全力を尽くすというか…必ずそういうものにします。

取材:村上孝之

シングル「UK」2022年10月26日発売 Ariola Japan
    • 【初回生産限定盤】(2CD)
    • BVCL-1234~5
    • ¥4,180(税込)
    •  
    • 【通常盤】(CD)
    • BVCL-1236
    • ¥1,320(税込)

『24th→25th ANNIVERSARY TOUR “そして未来へ"』

10/16(日) 東京・渋谷Spotify O-EAST
10/29(土) 三重・四日市CLUB ROOTS
10/30(日) 山梨・甲府KAZOO HALL
11/05(土) 鹿児島・CAPARVO HALL
11/06(日) 福岡・DRUM Be-1
11/12(土) 宮城・石巻BLUE RESISTANCE
11/13(日) 福島・いわきclub SONIC
11/19(土) 兵庫・神戸VARIT.
11/20(日) 広島・SECOND CRUTCH
11/25(金) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
11/27(日) 石川・金沢GOLD CREEK
12/03(土) 大阪・Banana Hall

SHERBETS プロフィール

シャーベッツ:シャーベッツ:1998年に結成されたロックバンド。メンバーは浅井健一(Vo&Gu)、福士久美子(Key&Cho)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)の4名。内面的で繊細な部分とアヴァンギャルドで攻撃的な部分が重なり合い、サイケデリックでドラマティックな音楽世界を表現している。これまでにシングル7枚、オリジナルアルバム12枚、ライヴ盤3枚、ベスト盤を2枚発表。2022年10月に23年に迎える結成25周年のファーストアクションとしてシングル「UK」を発売し、全国ツアーを開催した。23年4月にアルバム『Midnight Chocolate』はリリースし、5月から全国ツアーをスタートさせる。SHERBETS Official Website

OKMusic編集部

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