『刀剣乱舞-宴奏会-2022』が4年ぶり
の開宴~和楽器×オーケストラによる
臨場感あふれる重厚な演奏で、ゲーム
世界を追体験

※本文記事には公演内容の詳細が記載されています。ご注意ください。

2022年9月11日(日)夜、グランキューブ大阪 メインホールにて、七周年記念企画となる『刀剣乱舞-宴奏会-2022』が開宴した。本公演は、刀剣育成シミュレーション『刀剣乱舞ONLINE』のゲームBGMや主題歌、刀剣男士の近侍曲のオーケストラアレンジを、プロオーケストラと和楽器・ゲスト奏者の編成で行われるコンサート。生演奏の音楽とともに、スクリーンに映るゲームや刀剣男士の映像、季節を巡る光に包まれて『刀剣乱舞ONLINE』の軌跡を振り返ることができる特別な公演だ。

『刀剣乱舞-宴奏会-2022』公演写真  演奏:京都市交響楽団
2018年3月には三周年企画として大阪・仙台・京都・福岡・東京の5都市で10公演を、2018年10月には横須賀・京都・東京の3都市でアンコール公演(5公演)を開催し、約2万5,000人を動員した。そして七周年を迎えた今年、4年ぶりに『刀剣乱舞-宴奏会-2022』が帰ってきた。

今回は大阪を皮切りに仙台・東京・名古屋・熊本の全国5都市を廻る。新進気鋭の若手指揮者・山脇幸人が全公演の指揮を担当、演奏はプロオーケストラが担い、熟練の腕を持つ和楽器奏者やゲスト奏者が出演する。音楽監督とアレンジは前回に引き続き三宅一徳が担当し、アレンジには萩森英明も参加。非常に豪華な布陣で『刀剣乱舞ONLINE』のゲーム音楽が表現される。今回は、初日・大阪公演の模様をレポートしよう。

定刻を迎え、ステージ上の巨大スクリーンに大阪公演の近侍をつとめる陸奥守吉行(オリジナルSDバージョン)が映し出され、注意事項が伝えられる。本公演も前回に引き続き、陸奥守吉行・山姥切国広・加州清光・蜂須賀虎徹・歌仙兼定の始まりの五振りがそれぞれ各会場の近侍をつとめる。なお、始まりの五振りの近侍曲は担当近侍公演でのみ演奏される。
いよいよ奏者がステージに登場。大阪公演の演奏は京都市交響楽団。和楽器・ゲスト奏者の中には、前回から引き続き参加している奏者も多い。そして大阪公演の近侍・陸奥守吉行のイメージ楽器がギターと三味線であることから、本公演にだけギターが入るという、なんとも贅沢な編成だ。

津軽三味線とギターが主題歌『あなたと 私と』のワンコーラスをしっとりと奏でると、閃光のような鋭い照明とともに尺八の高らかな音色が美しく響き渡るオープニング映像を経て、陸奥守吉行の「刀剣乱舞宴奏会開演するぜよ!」という宣言で、ついに『刀剣乱舞-宴奏会-2022』大阪公演が幕を開けた。
視界いっぱいのスクリーンにゲーム画面が映し出され、ゲームの世界に没入しやすくなっている。鶴丸国永を部隊長に、部隊編成されていく出陣に向けた臨場感のある和太鼓の音とともに、じわじわとゲームの世界観に入り込んでゆく。
2018年の宴奏会ではステージ6の「池田屋一階」まで出陣していたが、今回はその続きとなる「延亭の記憶」への出陣からスタート。また、5つの特命調査と対大侵寇防人作戦への出陣が行われ、それぞれの合戦場におけるBGMが演奏された。

『刀剣乱舞-宴奏会-2022』公演写真  演奏:京都市交響楽団
ゲームプレイ中に聴いているあの音楽がダイナミックなアレンジと生演奏で立体的に迫ってくる。きっと審神者はそれぞれの本丸で見た景色を自身の中で思い返していることだろう。曇りのない笛の音色がまっすぐに突き刺さり、低音の弦楽器がリズムを支える。一音一音にリアルなゆらぎを感じられるのは、生演奏ならではだ。

そして、刀剣男士の近侍曲もフルやメドレーで披露され、どの近侍曲も素晴らしかった。演出などは見てのお楽しみにしてほしいのだが、せっかくなので1曲だけ雰囲気をレポートする。
最初に披露された近侍曲は鶴丸国永。ステージ一面が真っ白に染められ、琴や笛による雅な雰囲気が鮮やかに会場を満たす。1階席の天井や壁面には、近侍をイメージした模様と照明がダイナミックに動き回り、楽曲を彩った。ステージから全力で放たれる音と光の演出。サウンドの分厚さと迫力にのっけから圧倒された。曲中と曲終わりには近侍のボイス演出もあり、審神者を喜ばせた。

スクリーンには奏者の演奏する姿もリアルタイムで映し出される。真剣な眼差しで楽器を奏でる姿や、後列に配置された打楽器など、肉眼では見えにくいパートもしっかり確認できるのは嬉しい限りだ。指揮者の表情を下から覗くように映したアングルは臨場感に溢れ、思わず息を飲むほどだった。
曲が終わるごとに客席からは大きな拍手が贈られた。そしてここからは徐々にシリアスな雰囲気に。始まりの五振りにまつわる「特命調査」のBGMが順に演奏されていった。決戦に勝利するまでの熱き闘志が、オーケストラアレンジでどのように再現されているのか。その迫力を、ぜひ目と耳で堪能してほしい。

『刀剣乱舞-宴奏会-2022』公演写真  演奏:京都市交響楽団
『刀剣乱舞-宴奏会-2022』公演写真  演奏:京都市交響楽団
本公演は第一部と第二部で構成されていた。20分間の休憩を挟んで第二部がスタートしたのだが、休憩前や休憩中も楽しめる演出が盛り込まれているので楽しみにしてほしい。鳴り止まない大きな拍手は第一部の演奏の素晴らしさを物語っていた。
第二部が始まり、再び「特命調査」への出陣。ミステリアスで不穏な雰囲気、物悲しさ、決意の強さ、じわじわと迫りくる危機感。そんな感情を刺激するように、大胆かつ丁寧に紡がれるBGMを浴びて、すっかりゲームの世界に連れ戻された。
激化した戦いに無事勝利した後は、青野原出陣部隊の近侍曲メドレーが演奏された。そしてこのメドレーを締め括る燭台切光忠の近侍曲ではサックスが登場! 意外な奏者が立ち上がり、体を仰け反らせて最高にグルーヴィにソロパフォーマンスをキメた。これぞ和楽器とオーケストラの融合の真骨頂と言えるのではないだろうか。
和楽器とオーケストラのコラボレーションはお互いの個性を打ち消すのではなく、しっかりと引き立て合っていた。なによりも、これだけの音数をバランス良く積み上げる奏者の演奏力、華麗にまとめ上げる指揮者の統率力の高さに脱帽した。その辺りも楽しみに鑑賞してほしい。

「対大侵寇防人作戦」を振り返るパートでは、対大侵寇強化プログラム出陣部隊の近侍曲がメドレーで披露される。それぞれの楽曲の良さがふんだんに引き出されたアレンジばかり。刀剣男士の映像やイメージカラーによる照明も華やかで、視覚でも楽しませてくれた。

第二部のラストは初代のオープニング曲『夢現乱舞抄』で壮大に締め括る。これぞオーケストラ! という大迫力のハーモニーで、最高潮の盛り上がりを見せた。ここで今回の宴奏会のメインビジュアルがスクリーンに登場。抜けるような青空と花畑、そして三日月宗近を迎える始まりの五振り。一気に盛り上がって駆け抜けた第二部の余韻を噛み締めるように、大きな拍手が沸き起こった。

『刀剣乱舞-宴奏会-2022』公演写真  演奏:京都市交響楽団
アンコールでは、美しく荘厳なアレンジの三日月宗近の近侍曲を演奏。さらに「大阪公演の近侍は誰じゃあ? もちろんこのわし、陸奥守吉行じゃ!」とのボイスとともにスクリーンには陸奥守吉行が登場。お待ちかねの各会場ごとの近侍曲だ。

この日のハイライトはなんと言っても、大阪公演でのみ編成されるギターだ。軽快なメロディにエレキギターのパワフルなサウンド、津軽三味線の弾けるタッピングが合わさって豪快な音の波を生み出した。

『刀剣乱舞-宴奏会-2022』公演写真  演奏:京都市交響楽団
ダブルアンコールは現在のオープニング曲『あなたと 私と』。フルートの美しい旋律とバイオリンの優しいハーモニーがそっと包んでくれる。脳内に松任谷由実の歌声が再生された審神者も多いのではないだろうか。ラストに向かうにつれて徐々に高まる演奏、力を込めた渾身の指揮。ゲーム中とはまた違ったアンサンブルを放ち、エンディングに相応しい一体感で魅力した。
演奏が終わると、客席からはこの日一番の惜しみない拍手が贈られた。そして指揮者によるパート紹介。充実感を滲ませつつ、照れたような笑顔で手を振るなど、お茶目な姿も見せてくれた奏者たち。たっぷり2時間に及ぶ『刀剣乱舞-宴奏会-2022』大阪公演はこうして大団円で幕を閉じた。
残る公演は名古屋と熊本。名古屋公演の近侍は蜂須賀虎徹、熊本公演は歌仙兼定がつとめる。
『刀剣乱舞-宴奏会-2022』は、ただ本格的なゲームBGMを堪能できるだけではない。刀剣乱舞の物語を振り返り、本丸への想いや感情を引き出される機会となった。会場に集まった審神者はどんな体験をしただろうか。11月の熊本まで続く旅路を見守っていたい。ひとまず、間近に控える名古屋公演をお楽しみに。
取材・文=ERI KUBOTA    撮影=田浦ボン

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