idom、Myuk、八木海莉、クボタカイが
強烈な個性をぶつけ合った『CLAPPER
BOARD -Enjoy the weekend!-』オフィ
シャルレポート

10月11日(火)に東京・渋谷クラブクアトロで開催された、次の音楽シーンを作りだすニューアーティストたちが競演するイベント『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』のオフィシャルレポートが到着した。

次世代の音楽シーンを担う新進気鋭のアーティストが競演する注目の音楽イベント『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』が10月11日(火)に東京・渋谷クラブクアトロで開催された。第10回目となる今回は、24歳のidom、23歳のクボタカイ、21歳のMyuk、20歳の八木海莉という、まさにブレイク間近であろうブライテストホープが集結し、それぞれがパワー全開で他の誰にも似ていない自らの個性とクリエイティビティを存分に発揮して見せてくれた。

■エモーショナルな音像でフロアの熱気をあげるidom
idom
トップバッターとして登場したのは、新人ながらもフジテレビ月9ドラマ『競争の番人』主題歌に抜擢され、「GLOW」でメジャーデビューを果たしたことでも大きな話題を集めているidom(イドム)。楽曲制作だけでなく、映像やイラスト、デザインなどもこなす新世代型のマルチクリエイターである彼が、眩い光を背にステージに登場した瞬間にフロアの空気がガラッと変わった。時に左手をポケットに突っ込み、時に気だるそうに体を揺らしながら甘くしなやかな歌声を発する姿は、モデルのような風貌と不思議な名前も相まって、まるでヨーロッパ映画の1シーンを見ているような風景を連れてくる。音楽を始めてからたったの1年でソニーXperiaやTikTokのCMソングに起用された「Awake」「Moment」「Freedom」をメドレーでダイナミックに繋ぎながら、「Hey, What’ s going on eveybody!(みんな、調子はどう?)」と呼びかけ、シンセベースが効いたオルタナティヴR&B「soap.」やラップもフィーチャーしたアーバンR&B「i.d.m.」でフロアの熱気をどんどんとあげていった。
idom
MCではギター、ベース、ドラムを率いたバンド編成でのライブがこの日が初めてであることを明かし、「自分が弱い時に勇気を出せるような曲が届いたらいいな」という思いを込めたというドラマ主題歌「GLOW」をエモーショナルに歌い、高らかなハイトーンを鳴り響かせた。言いようのない孤独感を抱えながらもなんとか生きていこうとする「帰り路」と二度と会えない相手への未練や後悔を綴った「二人」で、洗練されたサウンドだけではなく、彼の“歌の言葉”が持つ力をオーディエンスにしっかりと届けた。
idom

■Myukは詩の朗読をはさみ物語を丁寧に編んでいく
Myuk
現在21歳のシンガーソングライター・熊川みゆの音楽プロジェクト、Myuk(ミューク)はストーリー性を感じるステージを展開した。1曲目はTVアニメ『NIGHT HEAD 2041』のためにEveが書き下ろしたバラード「シオン」。タイトルは“君を忘れない”や“追憶”という花言葉を持つ紫色の花の名前だ。彼女は、吐息まじりの歌声で忘れたくない思いを綴り、歌詩の朗読から “真実の愛”や“私を忘れないで”という花言葉を持つ勿忘草をモチーフにした尾崎豊のバラード「Forget-me-not」のカバーへとつなげ、観客を楽曲の世界観へと引き込んでいった。
Myuk
アコースティックギターを抱えながら、「今の精一杯の心を込めて歌いたいと思います」と語った後、気鋭のトラックメイカーであるShin Sakiuraがプロデュースと作曲を手がけ、フレンズのおかもとえみが作詞を担当した「あふれる」では、先程までの切なく物悲しげな雰囲気から一変して、柔らかな笑みを湛えて歌い、日常の何気ない恋愛模様を描いた「Pancake」ではさらにチャーミングにポップに弾む。10月26日にデジタルシングルとしてリリースされる新曲「フェイクファーワルツ」ではジャズロックのようなパンチの効いたサウンドからはっきりとした輪郭を持って歌声を浮かび上がらせるなど、楽曲ごとに多彩な表情を見せた。
そして、再び、歌の詩の一部分をピアノの伴奏に乗せて語り、Eveとの運命的なコラボレーションの第1段となったTVアニメ『約束のネバーランド』のエンディングテーマ「魔法」で儚くも力強い癒しの歌声を届け、「憧れのクアトロ。素敵な時間でした」と感想を述べてステージを後にした。
Myuk

■透徹した歌声と凛とした佇まいが印象的な八木海莉
八木海莉
自身のYouTubeチャンネルでの弾き語りカバー動画で注目を集め、昨年12月にメジャーデビューした20歳のシンガーソングライター・八木海莉は、夜明けを知らせるようなハミングとともに、アンニュイでメロウなムードの「Sugar morning」でライブをスタートさせた。「今日は思いやりを大切に自由に楽しんでください」と語りかけた後、夏の3ヶ月連続リリース第3弾として配信された、ORANGE RANGENAOTO が編曲したエレクトロポップ「刺激による彼ら」ではフロアから自然とクラップが湧き起こり、ポップしなないでが作曲と編曲を担当したギターリフが特徴的なドライビングなサマーチューン「君への戦」では速いパッセージのラップに君への思いをぶつけながらも、間奏では観客に手を振る仕草も見せるなど、明るく楽しい雰囲気で会場を包み込んだ。
八木海莉
今年4月にリリースされた1st EP『水気を謳う』のオープニングを飾っていた「お茶でも飲んで」では、笑顔で<お話にならないよ>と自問自答を繰り返し、同作に収録されたシティポップ「海が乾く頃」では、会いたくても会えない人への思いが詰まった感情をSEとして流れる波の音に紛らわすように表現。MCでは、「先月、初めてワンマンライブをして。今日は他のアーティストさんとライブをするのが初めてで緊張しています」と正直な気持ちを吐露し、TVアニメ『魔法科高校の劣等生 追憶編』の主題歌に起用されたデビュー曲「Ripe Aster」で、強い信念を持って生きていく姿勢を歌声で示すと、彼女の清く凛とした佇まいに観客の目は釘付けになった。
八木海莉

クボタカイがフリースタイルで届ける今、この瞬間
クボタカイ
この日のトリを務めたのは、adieuSnow Manらへの楽曲提供でも知られるラッパーでシンガーソングライターのクボタカイだ。ギター、ベース、ドラム、キーボードというフルバンド編成でステージに登場した彼は、「しゃべるより音楽がしたい!」と声を上げ、全7曲をシームレスに繋ぎ、ノンストップでパフォーマンス。ラテンのフレーバーも感じるブギーファンク「ひらめき」ではスタンドマイクを握りながら夏の余韻を残したときめきを放ち、ラブソング「ピアス」「せいかつ」ではアコースティックギターを弾きながらフォーキーにブルージーに歌唱。淡々とした日常生活を題材にしている分だけ、その目線の鋭さと、数々のMCバトルで名を馳せたラッパーとしての独特の言語感覚が際立って胸に迫ってきた。
クボタカイ
ここで、アコギを置いて、ハンドマイクに持ち替えると、「拝啓(Freestyle)」に乗せて、<idomが盛り上げ、Myuukにドキドキし、八木海莉の歌が心に響く。そいつを音楽で返す……>と、この日のイベントを振り返ると同時に、目の前に観客がいる今、この瞬間の感情をフリースタイルの即興ラップで展開。観客からは興奮にも似た歓声と拍手が沸き起こり、中原中也の詩を引用した「ベッドタイムキャンディー2号」ではビートを刻むようなブレスによって官能的なムードを引き連れ、フロアをミラーボールの光が照らした「MIDNIGHT DANCING」では演者も観客も一体となって踊り、開放的で多幸感に満ちた空間を作った。そして、最後に<愛している>から始まる失恋ソングで、彼の代表曲でもある「ロマンスでした」に、同じ時間と空間を過ごした思い出を観客と共有し、様々な恋と青春の物語を届けてくれたライブイベントは甘酸っぱい気持ちを残して幕を閉じた。会場を後にした観客が、階段を降りながら「いい日だったね」と口にしていたのが印象に残る1日となった。

取材・文=永堀アツオ 撮影=新保勇樹

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