L→R 林“VOH”紀勝(Percussions&Vo)、根本 要(Vo&Gu)、柿沼清史(Ba&Vo)、寺田正美(Dr&Vo)

L→R 林“VOH”紀勝(Percussions&Vo)、根本 要(Vo&Gu)、柿沼清史(Ba&Vo)、寺田正美(Dr&Vo)

【スターダスト☆レビュー
インタビュー】
ビッグバンドアレンジで
予期せぬ化学反応が起きた

1981年のデビュー曲「シュガーはお年頃」を含む初期作品をリテイクしたミニアルバム『ブギウギ ワンダー☆レビュー』をリリースしたスターダスト☆レビュー(以下、スタ☆レビ)。背伸びしていたという当時のこと、初期の楽曲に影響を与えた音楽ルーツ、さらにコロナ禍で模索する中、探し当てた新しいライヴのかたちについて根本 要(Vo&Gu)に訊いた。

これだったんだよ!
今この時代に俺が作りたかった音は!

ミニアルバム『ブギウギ ワンダー☆レビュー』はスタ☆レビが81年、82年に発表した初期の曲をリテイクした作品ですが、新たにアレンジした作品を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

実は10月から始まるツアー(『スターダスト☆レビュー ツアー 2022~24 「ブギウギ ワンダー☆レビュー」』)は新しい音源を出さずに回ろうと思っていたんですよ。6月に『スタ☆レビ40周年 東西あわせて108曲 煩悩ライブ』をやって演奏したい曲はたくさんあったから、日替わり曲中心のツアーがいいかなって。でも、スタッフから“何か作ろうよ”と言われて、だったら初期の曲をこねくり回すのもいいかなって。初期の僕たちの曲って音楽的な技術も備わってないし、振り返って聴くと穴だらけなんですよ。それと当時はかなり背伸びした大人びた音楽をやっていたから、今、リテイクしたら面白いものができるんじゃないかと思って。当時は当時で自分たちなりに目いっぱいやっていたけど、今回はスタ☆レビをビッグバンドに見立てて。思った以上に面白かったですね。“やってみるものだな”って。

デビュー当初からビッグバンド風のアレンジにしたいという構想はあったんですか?

作った時のイメージとしては多少はあったけど、バンドにホーンセクションがいるわけじゃなかったからね。だから、今回は自分たちでスタ☆レビを遊ぶってイメージで、“ホーンセクションがいるバンドだったらどうなっていただろう?”っていうのが最初の発想です。ここ数年、一緒にやっているトロンボーンの前田大輔くんが毎回いいアレンジをしてくれるので、彼にスタ☆レビをゴージャスなビッグバンドにしてくれってお願いして。とは言っても、実際にビッグバンドは呼べないから、6人のセクションを何度もダビングしていくうちに予期せぬ化学反応が起きて、“これだったんだよ! この時代に俺が作りたかった音は!”ってなった感じですね。

大人びた音楽というお話が出ましたが、スタ☆レビの初期の楽曲は昭和20年代に活躍された服部良一さんの音楽に影響を受けたということですが、どんなところに惹かれていたのでしょうか?

実は戦後を振り返る的な番組で必ず選曲される笠置シヅ子さんの「東京ブギウギ 」や「銀座カンカン娘」は知っていましたけど、本当の意味で僕が服部良一さんの音楽のすごさに気づいたのは、1974年に発売された雪村いづみさんのアルバム『スーパー・ジェネレイション』で。服部さんのメロディーをキャラメル・ママ(松任谷正隆、鈴木 茂、細野晴臣、林 立夫からなる音楽ユニット。1974年に“ティン・パン・アレー”に改名)が新しい解釈で演奏していたんです。この作品が大好きで、こんなバンドを作ってみたいと、まさに自分がスタ☆レビを作る源流となったアルバムなんです。それまで昭和の懐かしい音楽としてしか聴いていなかったのに、歌もアレンジもメロディーも改めてそのすごさをアルバムごと解説してもらったような感じですね。“服部良一さんの音楽はすごかったんだ!?”って。あの体験がなかったらデビューシングル「シュガーはお年頃」も「銀座ネオン・パラダイス」も生まれていなかったと思います。

そうだったんですね。

僕が音楽を作る上で一番大事にしているのはリスペクトなんです。だから、そういうバンドが大好きで、はっぴいえんど、シュガー・ベイブ、ムーンライダーズにも影響を受けました。サザンオールスターズもそうです。

『ブギウギ ワンダー☆レビュー』にはデビュー曲「シュガーはお年頃」も収録されていて、「銀座ネオン・パラダイス」は今もライヴで“銀座”をその街の名前に変えて歌われている曲でもありますね。

「シュガーはお年頃」は当時、細野晴臣さんの「泰安洋行」や「トロピカル・ダンディ」を聴いて、“あのノスタルジックないい匂いってどうしたら出せるんだろう?”と思って作った曲でしたね。そこに当時から大好きだったコーラスをふんだんに取り入れようと。それでThe Manhattan TransferとThe Pointer Sisters的なコーラスワークを真似て、途中にアカペラも入れてって感じで。だから、今回のビッグバンドアレンジはそれらが接着剤みたいになって、僕の音楽背景を全部まるっとまとめた良いアプローチになりました。トラックダウンした音を聴いた時、気がついたらスタジオで立ち上がって拍手していましたもん(笑)。

とても華やかですし、コーラスとホーンが気持ち良く溶け合っていて。

「銀座ネオン・パラダイス」は「シュガーはお年頃」より戦後のメロディーを意識していますね。ホーンセクションの人たちにも“これ、いつの時代の曲なんですか?”って訊かれたけど、“スタ☆レビの2枚目のシングルです”と言ったら、みんな“これオリジナルですか?”ってびっくりしてたけど、確かにそういう匂いがする曲ですね。

スローなラブソング「紅いハンカチ」はイントロからして映画音楽みたいでした。

二十歳そこそこでよくこんな曲が書けましたよね。映画音楽っておっしゃってくださったけど、言い得て妙だなって。

根本さんの歌声がまたムーディで。

2ndアルバム(1982年6月発表の『今宵はモダン・ボーイ』)の頃は歌い手としての意識がなくて、ほんと下手っぴで申し訳ないです(笑)。昔より多少はうまくなりました。ホーンが中心のこのサウンドもいいですよね。ビッグバンドジャズって昔のダンスミュージックだから、スインギーで派手な音作りになりがちだけど、こういうスローバラードを入れられたのは良かったです。40年前の自分を褒めてあげたい曲です(笑)。「噂のアーパー・ストリート」はもともとがロカビリー風だったので、一番のチャレンジでした。The Brian Setzer Orchestraがいなかったら、こういうふうにしていなかったかもしれないですね。

歌詞にはマリリン·モンローやエルヴィス·プレスリーを思わせるフレーズが出てきますね。

ジョン・レノンも出てきますね。最後の「What A Nite!」は初代のキーボーディストだった三谷泰弘くんの曲なんですけど、僕らはロックバンドだけど、当時からこういうスィングする感じが大好きで。ライヴのオープニングや盛り上がりの最初にやる曲です。ブラスがハマりすぎなぐらいに堂々としていますね。

成熟した20代のバンドだったんですかね?

あははは。面白そうなことは深く考えないでやっていたんですよ。止める人もいなかったし(笑)。とにかく面白いと思ったらやる。ただの勢いですよね。今の僕が当時のスタ☆レビをプロデュースしていたら“こういう曲はまだ早いよ!”って言っていたかもしれない(笑)。でも、当時はプロデューサーもスタッフもみんな面白がってくれて、好きなようにやらせてもらいました。しかも「シュガーはお年頃」なんて、当時CMソングにも抜擢してもらって。本当に感謝してます。スタ☆レビは、そんな出会いも含めて本当に運が良いバンドです。

まさに原点と言ってもいい楽曲たちのリメイクですね。

そうですね。ただ、僕らは大風呂敷を広げるバンドなので、決してこういう曲ばかりではないけど、この辺の曲はライヴでやり続けていることもあり、どんどん変化してきました。だから、あえてこのアルバムを例えれば“ワインのように寝かせ、40年経ったらこんなに芳醇になりましたよ”って感じですかね。
L→R 林“VOH”紀勝(Percussions&Vo)、根本 要(Vo&Gu)、柿沼清史(Ba&Vo)、寺田正美(Dr&Vo)
ミニアルバム『ブギウギ ワンダー☆レビュー』
Blu-ray&DVD&CD『スターダスト☆レビュー 40TH ANNIVERSARY年中模索~しばらくは、コール&ノーレスポンスで~』【Blu-ray】
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OKMusic編集部

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