BugLug主催「バグサミ」、彼らが秩父
で挑んだ野外フェスとは

2022年9月3日、BugLugの主催する「バグサミ」が秩父ミューズパークにて開催された。
会場の発表があったときに、観客側・バンド側から出た反応は「どこ!?」だった。ライブ会場として知名度は高くなく、アクセスだって良くない。この会場で、どんなライブが行われるのか? そんな不安を期待に変える、それがBugLugというバンドの不思議なところだ。型にハマらない、楽しい“今”を優先するバンド。でも、その「楽しい」にみんながついてくる。
今回は、バグサミ2022の会場レポートとともに「BugLugと野外ライブ」という趣旨でBugLugのこれまでを振り返っていきたいと思う。
BugLugの野外ライブの歴史
BugLugのバンドとして初の野外ライブは、おそらく2013年の夏。
今や毎年恒例となったバグの日(BugLugは毎年8月9日をバグの日として、イベントを行なっている)。2013年の8月9日は、大阪・アメリカ村の三角公園前 RIBIAビジョンでライブを行ったのだ。正確にはオープンエアーのステージという形だったが、ほとんど詳細が明かされずゲリラ的に行われたライブで、意外なステージロケーションを記憶に残している人もいるのではないだろうか。
次いで2014年6月に日比谷野外大音楽堂で行われた、ライブツアー「太陽と月が在る限り」のファイナル公演。当時のBugLugのキャリア的にも、日比谷野音は1つのステップとなりうる会場であり、演出にも気合が入っていたと記憶している。梅雨時期の野外、雨の降る中での熱演だった。また、同年バグの日(8月9日)に新宿ステーションスクエアではゲリラ野外ライブも行った。
2016年4月には2度目の日比谷野音を経験し、ひとまわり成長したBugLug。しかし、一聖(Vo)の頭部重傷アクシデントが発生し、バンドそのものの存続が問われる一年になった。そんな年の8月9日には、一聖を抜いた優、一樹、燕、将海の4人で代々木公園の野外ステージに立ったのだ。
翌年2017年の8月9日には、リハビリを終えた一聖が復帰して、5人での代々木公園野外ステージを迎えることができた。
一聖(Vo)
一聖の復帰後、日本武道館公演などを経験し、今や毎年恒例となっているヴィジュアル系の一大イベント「びじゅある祭」にも出演。服部緑地野外音楽堂を踏んだ。
2018年9月には3度目の日比谷野音ワンマン「KAI•TAI•SHIN•SHO」と、初のフェスイベントとしてのバグサミも成功。2019年6月には4度目の日比谷野音ワンマン「秘密基地~Secret base at HIBIYA YAGAI DAIONGAKUDO~」を開催した。
一樹(Gt)
そしてコロナ禍を耐え切ってからの、満を持しての2022年、バグサミ野外開催と相なったわけだ。
BugLugというバンドはライブバンドを自認しているわけだが、彼らが大切なライブ活動のキャリアをいかに野外ステージに賭けてきたか? 上記の経歴で、その情熱の一端を垣間見ていただけたら幸いである。
「バグサミ」のコンセプトとは?
先の章でも書いたが、2018年の8月9日(バグの日)に開催された「バグサミ」が、初めて多数のバンドを呼んでのフェス形式のイベントになったものだ。バグサミというイベントのコンセプトとしては、2018年当時からすでに完成しており、バンドとして理想とする形は下記のようなものだったかと想像する。

複数ステージを移動する鑑賞形態
1日で若手からベテランまで多数のバンドを見られる
BugLugが気になった・対バンしたいバンドを呼ぶ

2022年のバグサミは、その理想を体現したまさに理想的なフェスイベントになったのではないだろうか。
優(Gt)
まず、秩父ミューズパークという会場設定だが、これは一聖本人が「ステージが複数あり、野外という条件で選んだ」と言っていた。周辺に鉄道駅もない立地のため、当日ステージに立ったバンドの多くから「前乗りしないとリハに間に合わない」「山奥まで来てしまった」というようなMCが連発された。
もちろん、ファンも宿泊プランやシャトルバス、自家用車などを駆使しての会場アクセスであったが、一種遠足のような雰囲気も手伝って、楽しさやワクワク感を感じた人の方が多かったのではないだろうか。さまざまなバンドTシャツに身を包んだファンたちが、秩父の緑深い公園に集まってくるのは壮観であった。
燕(Ba)
また、1日で多数のバンドを見られるというコンセプトも、実によく実現されたタイムテーブルだった。客席は、蟻、色々な十字架、ザアザアなど、アフターコロナのヴィジュアル系シーンでは見ておきたいバンドから、アルルカンキズ生憎の雨。の魔喪(ex.マモ)など、BugLugと何度も対バンしてきた「盟友」とも言えるアーティストまで、1日いるだけで網羅できたはずだ。

悠介(Dr)

また、BugLugとともにシーンを盛り上げていく中核バンドと目されている己龍などの出演も決まっていたが、感染症事情で残念ながら出演キャンセルとなってしまった。己龍が出演できない代わりに、BugLugの事務所の先輩格であるメリーがフェスに花を添えてくれた。

「ヘドバンしながら野外フェス」の楽しさ
当日のステージは、野外ステージのKITERETSUステージと、屋内音楽堂のHATENKOUステージに分かれており、その間を行き来しながら観客は好きなアーティストのライブを楽しむ形式だった。
また、音楽堂と野外ステージの間には地元・秩父の名物フードなどが多数出店しており、開場移動の合間にスナックを楽しむファンも多数。フェスの理念に基づいて、地産地消を目標としたのだろうか? 色々な十字架やコドモドラゴンなどは、ファンに混ざって衣装のままフードを楽しむ姿も見られ、フェスならではの味わいを見せていた。
ポテくまくん(秩父のゆるキャラ)も会場に駆けつけており、会場に飾られていたBugLugの等身大パネルと同列の人気を博していたことも併記しておく。
ポテくまくんとBugLugがゲート前でお出迎え
野外ステージ後方は芝生になっており、そこにシートや椅子を持ち込んで座る観客や、音楽堂に席を確保する観客など、さまざまな見方ができたのも良かった。芝生の上を連なって横モッシュしていくバンギャルたちがいたり、会場の柵を使って全力のヘドバンに勤しむ観客たちもいた。客席からも「ビール飲んで野外ステージでヴィジュアル系が見られるの、最高!」といった声が聞かれた。
今まではヴィジュアル系のライブ=ライブハウス、というイメージが強かったと、少なくとも筆者は感じていたが、今回のバグサミでは緑深い会場の中、人の目を気にすることもなく、快適に会場を回遊できるのもとても楽だと感じた。「ヘドバンしながら野外フェス」という選択肢もありなのだ、と思い知らされた気分だった。
一聖も自身のMCでは「みんな、来てくれて本当にありがとう!」と感謝を述べ、早速「来年もやります!!」宣言もしていた。
大トリのBugLugステージ
BugLugはヴィジュアル系の中では独自の立ち位置のバンドだが、人一倍シーンの隆盛に貢献してきたバンドだとも、筆者個人的には思っている。そのBugLugが主催する「バグサミ」が、これからもフェスとしての立ち位置をしっかり保ちつつ、ヴィジュアル系の登竜門的イベントになればいいな、と想像したりする。
いずれは氣志團万博やイナズマロックフェスのような、開催地域の名を聞けば思い出すような、象徴的な人気フェスにに成長するのではないか?と思っている。その日を楽しみに、来年のバグサミにも期待することにしよう。

取材・文=

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