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大作にはない味わいが楽しめる小品映
画『MONDAYS このタイムループ、上司
に気づかせないと終わらない』『向田
理髪店』【映画コラム】

『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(10月14日公開)
 10月25日、月曜日の朝。プレゼン資料の準備で徹夜明けの吉川朱海(円井わん)は、後輩の2人組から「僕たち、同じ1週間を何度も繰り返しています」という報告を受ける。
 ところが、タイムループからの脱出の鍵を握ると思われる永久部長(マキタスポーツ)は、いつまでたってもタイムループに陥っていることに気付いてくれない。朱海たちは“上申”を利用して、次々に同僚たちにループを気付かせ、最後は部長に届くように画策するが…。
 「もう仕事なんて放り出してしまいたい」「新しいスキルを身につける、いい機会かも?」「仕事がうまくいくまで繰り返して、最高の状態で転職する」…。
 社員たちのさまざまな思惑が交錯する中、また同じ月曜日がやって来る。果たして彼らは“チームプレー”で部長に事を気付かせ、タイムループから脱出することができるのか…。
 同じ時間を何度も繰り返すタイムループは、描き方によっては、まさに“ネバーエンディング・ストーリー”にも成り得る面白さがあるし、同じシーンを何度も撮り直せたり、後で編集もできる映画向きの素材だともいえる。
 だから、例えば『恋はデジャ・ブ』(93)『タイムアクセル12:01』(93)『ターン』(01)『ミッション:8ミニッツ』(11)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)などの佳作が生まれている。
 また、最近では、ホラーに転用した『ハッピー・デス・デイ』(17)、主人公を加えた3人が巻き込まれる『パーム・スプリングス』(20)、アクションゲーム感覚の『コンティニュー』(21)など、新機軸のタイムループものも登場してきた。
 竹林亮が監督したこの映画は、それらとも違い、舞台をオフィスに限定し、タイムループの原因が主人公にはない、巻き込まれるのはオフィスの全員、1日ではなく1週間が繰り返される、といった新たな種類のタイムループを描いているところが面白い。タイトルが長過ぎるのが惜しまれるが、また1本、タイムループものの佳作が生まれたと言っても過言ではない出来だ。
 何だか、若き日、編集プロダクション時代の徹夜作業で生じた妙な連帯感や達成感を思い出して懐かしくなったが、今時もこんなブラック会社が存在するのかとも思わされた。
『向田理髪店』(10月14日公開)
 向田康彦(高橋克実)は、妻の恭子(富田靖子)と共に、九州の筑沢で親から受け継いだ理髪店を営んでいた。理髪店の客は、幼なじみや近所の老人たちがほとんどだが、ある日、東京で働いていた息子の和昌(白洲迅)が帰郷し、会社を辞めて店を継ぐと言い出す。
 原作・奥田英朗、監督・森岡利行。筑沢という架空の町が舞台だが、ロケは大牟田市で行われた。
 父と息子の葛藤 街で起こる騒動や人間模様を描きながら、過疎化、少子高齢化、介護、結婚難といった地方が抱える問題や、東京と地方との距離を浮き彫りしていく。夫と息子との間を取り持つ母親役の富田ののほほんとした雰囲気がとてもいい。
 ところが、後半、映画のロケ隊が街にやってくるあたりから妙な展開になるのが残念。その「赤い海」という映画内映画が、もろに『レオン』(94)のパクリで、しかも作りが稚拙なもので(わざとそうした?)、困惑させられるところがあった。
 ただ、ラストシーンの「赤い海」の上映会は、ちょっと『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)風で、キャストやスタッフ、地元のエキストラの一人一人に敬意を払った感じがうかがえたので、地方発信の映画として、盛り返した感があった。
(田中雄二)

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