世界最高峰のコンクール GFA4位入賞
のクラシックギタリスト猪居亜美にイ
ンタビュー! CLASSIC × ROCKで「ど
ちらのファンにも楽しんでいただける
ようなステージを」

アメリカ、インディアナポリスで7月に開催されたコンクール「ギター・ファウンデーション・オブ・アメリカ(GFA)2022」で日本人最高位の4位に輝いたクラシックギタリストの猪居亜美が、猪居亜美 ギター・リサイタル『CLASSIC ✕ ROCK』と題した記念公演を2022年10⽉13⽇(⽊)に、東京・Hakuju Hallで行う。ステージではコンクールで演奏した楽曲のほか、YouTubeで話題になったロックバンド・KISSの「ラヴィン・ユー・ベイビー」などを披露する予定だ。2023年2月12日(日)には、生まれ育った大阪にある、あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホールでのリサイタルも決定した。勢いに乗る猪居に、公演への意気込みなどを聞いた。
――GFAで4位入賞。おめでとうございます。まずはコンクールから振り返っていただけますか。
はい。GFAは高レベルの奏者が集まる世界最高峰の舞台です。コンクールは一次、二次を経て本選と続くのですが、日本人は35年前に本選に残って以来、誰もその先に進んだことがなかったので、「日本人には超えられない何かがあるのかな」「誰も踏み入れたことない場所で、結果を残したい」とGFA1本に絞って練習をしていました。2年前のコンクールは(新型コロナウィルスの影響で)途中で中止になってしまったため、今回は3度目のチャレンジでした。
――ご自身のSNSでは「結果を残すことが出来なかったら、もう止めよう」という決意をして臨んでいたと明かされていましたね。
プロとして活動をしている今は、コンサート用の曲を練習しながら、コンクールで演奏する曲を練習しなくてはいけません。コンサートではいらっしゃる方に楽しんでいただけるように、クラシックギターの定番曲を演奏することが多いのですが、コンクールで求められる技術との間には大きな差があって。両立をすることに限界を感じていました。今年のコンクールで「ダメ」という評価を受けたら、3度ダメだという評価を受けたことになってしまう。ダメを積み上げることを止めようと思いました。でも今回、奇跡的にファイナルに出場することができて、4位の評価をいただくことができた。審査では、緊張で思うように演奏をすることが出来なかったので、来年もチャレンジしようと思っています。
――悔しさをバネにリベンジですね。
そうですね。悔しいままでは終われない。来年のコンクールが開かれるまでの間に、しっかりと力を付けてファイナルの舞台に立つことができる器に成長したいです。
――猪居さんが生み出すやわらかい旋律と、情熱的な演奏に心を揺さぶられるのですが、緊張から解放されたのか。SNSでは、帰国時に「飛行機に乗り遅れてしまった」と明かされていましたね。
そうなんです。国内線では何度か乗り遅れてしまったことがあったのですが、国際線では初めてだったので手が震えました。寝坊などではなく余裕を持って起きて、(宿泊していた)寮を出る準備をしていたのですが、英語なので「間違っていないかな」など確認をしたり、その日に限っていつも利用している(アプリの)Uberタクシーが捕まらなくて。やっとの思いで空港のカウンターに着いたら「もう間に合わないと……」。インディアナポリスを出て、シカゴを経由する便だったのですが、シカゴ行きは明日出るけれど、シカゴから日本に向かう便がないと言われて……。「どこを経由しても良いので、最短で帰国できる飛行機を!」と探してもらったら、3日後だったんです。でも追加の料金などは発生しなかったので、ホテルを決めた後は「仕方ないな」と覚悟を決め、思いっきりリフレッシュしました。
――10月13日に、入賞を記念したリサイタルをHakuju Hallで行います。どのような構成を考えていますか。
今年のコンクールで演奏した「オリシャたちの儀式」(L.ブローウェル)、「Just How Funky Are You」(A. ヨーク)のほか、今回は初めて「悪魔の奇想曲」(M.C=テデスコ)をお披露目します。ほかにKISSの「ラヴィン・ユー・ベイビー」(KISS)も選曲しました。この曲は私が学生時代にCMに起用されていたことがあったのですが、外国の子どもたちがKISSのメンバーのようなメイクをして歌う姿に衝撃を受けたことがあって。私と同じ世代でもなじみがあるかなと思い選びました。ロックが好きな人には懐かしいなと感じていただけたらうれしいです。ほかにはマネージャーから提案されたエリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘヴン」も演奏します。Hakuju Hallは響きがとても良いので個人的に、クラシックギターに最も合っているホールと感じています。迫力がある演奏で、隅々まで音を響かせたいです。
――猪居さんはクラシック曲と共に、ロックの曲を演奏されています。これはどのような経緯があるのでしょうか。
私がギターを始めたのは、ギタリストの父(猪居信之)にギターを教わったことがきっかけでした。4歳の時なので、覚えていないのですが、6歳上の兄(猪居謙)も父にギターを習っていたので、家の中にギターがあることが当たり前の生活を送っていたんです。5歳の時に初めて発表会で演奏を経験して、褒めてもらえたり拍手をしてもらえることは嬉しかったのですが、練習は苦手な子どもでした。高校を卒業する時に、父に海外に留学をするか、日本の大学に進んでギターを学ぶかを迫られ、大阪音楽大学に進学をしたんです。実は中学・高校時代にエレキギターにはまったことがあって、(エレキギターの)大会にも出場していたのですが、なかなかうまくいかなくて。留学をしたらエレキを続けられないかも。エレキを続けるなら日本の大学かなって。父も「クラシックと両立できるなら(エレキを)続けても良い」と言ってくれたので……。
――2012年に進学された大阪音楽大学で、藤井敬吾先生と、福田進一先生に師事されました。「プロになりたい!」という夢を持つきっかけになったそうですね。
はい。お二人の先生にご指導をいただく中で、父から言われたことを理論的に理解できるようになり、クラシックギターって面白いんだなと感じるようになりました。福田先生に「プロになりたい」と相談をした時には、「ギターの音を磨くだけではなく、魅力がある人間にならなければ、プロとして続けていくことは難しいよ」とアドバイスをいただいて。20歳の時に、プロになろうと思いました。
――開設されたYouTubeチャンネルは22年8月現在で、約9万人が登録しています。メジャーへの扉を開いたのも配信だったと聞きました。
今では、ピアノなど色々な人が演奏動画を配信していますが、7~8年前はまだ少なくて。私も勝手がわからなかったので、最初は自分の部屋で演奏しているところを流していました。でもそれを新しいギタリストを探していたレコード会社(フォンテック)のプロデューサーが目にして、Twitterで連絡をいただいたんです。大学在学中でしたし、こんなことあるのかなと当時は思っていましたが、現在に至っています。
――SNSではロックバンドのMUCCが好きと公言されています。
はい。軽音楽部に所属していた中学生の時から、ヴィジュアルロックが好きでした。MUCCは中学3年生の時に、テレビで演奏をしているところを見てハマりました。激しいものが好きで、マキシマムザホルモンの曲で練習をしたり、MUCCのメンバーが頭を振りながら演奏をするのを真似たりもしていました。
――2023年年2月12日(日)には、大阪のあいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホールでも公演しますね。こちらは2021年に音楽会社「日本コロムビア」が期待の新人を紹介するシリーズ「FIVE STARS」の第5弾でもあります。
はい。「CLASSIC ✕ ROCK」と題したコンサートは、今年の3月に大阪でスタートしました。ステージではリンキン・パークや、エヴァネッセンスなどを演奏したのですが、選曲をしていた時に、アメリカのアーティストが多いことに気が付いて。クラシックもアメリカの作曲家で揃えていたんです。来年、同じシリーズを大阪でやることが決まったので、今回は日本のアーティストを取り上げようと、X JAPANを取り上げることに決めました。Hideさんが冒頭に奏でるアルペジオから、炎のように激しく変化していく「紅」、しっとりとした世界感がクラシックギターにぴったりと思う「ENDLESS RAIN」を演奏しようと考えています。私自身、クラシックだけではなくロックも大好き。どちらのファンにも楽しんでいただけるようなステージをお見せしたいです。
取材・文=翡翠

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