牧野由依

牧野由依

【牧野由依 インタビュー】
音楽でファンのみなさんと
またつながれる作品を作りたい

声優、シンガーソングライター、ピアニストなどマルチに活動する牧野由依がミニアルバム『あなたとわたしを繋ぐもの』をリリース。つながりや縁をテーマに、敬愛するアーティストの新居昭乃やさかいゆうをはじめ、“もうひとりの父”と語る岩井俊二などのクリエイターが制作に参加している。今という時代を映しながら自身のさまざまな経験も反映した、未来を感じさせる作品となった。

希望という光りだけが
ずっと照らしているわけではない

今回のミニアルバムを作るにあたり、テーマにしたことは何ですか?

昨年12月にリリースしたシングル「エスペーロ」が映画『ARIA The BENEDIZIONE』の主題歌で、『ARIA』というシリーズと久しぶりに再会できたことや、デビューさせていただいたレーベルであるフライングドッグさんから再びリリースさせていただけたことなど、再会やご縁というものを感じる日々を過ごしていまして。そうした中で、今回のミニアルバムはファンの方やお世話になった作家の方など、全ての縁をつないでいけるようなものにしたい、音楽でファンのみなさんとまたつながれる作品を作りたいという想いから制作がスタートしました。

「幸せのメロディ」は作曲編曲を北川勝利さん、作詞を北川さん、藤村鼓乃美さんが担当されていて、北川さんはアニメ『ARIA』シリーズの楽曲も多数手がけているので、まさに『ARIA』つながりですね。

はい。北川さんは私が歌った『ARIA』第1期の挿入歌「シンフォニー」(2005年10月発表のシングル「ウンディーネ」収録曲)を作っていただいたこともあり、久しぶりにご一緒できて嬉しかったですね。

北川さんらしいポップな楽曲で、日常のふとしたところに幸せが転がっていることを歌っていますね。

北川さんには“ライヴの最後に歌うような雰囲気の曲で”とお願いをしました。レコーディングの時にお話をうかがったら、今はライヴでお客さんが声を出せないけど、いつかみんなでこんなふうに歌いたいとイメージが膨らんだそうです。

それが《ラララ》と歌っているコーラスですね。

そうです。まさしく幸せのメロディーだと思います。今まで日常的にできていたことが、突然できない状況になって、改めて当たり前じゃなかったと気づく…そういう身近にある幸せというものを、この曲で表現していただきました。

《愛しさにそっと触れてみる》の“触れてみる”の歌い方が、すごく軽やかで心に残りました。

そこはこだわったところです。動きやモーションが見えるような歌い方をしたいと思って、どういう触れ方なのか、べっとり触れるのか、サッと触れるのか、ツンって跳ねるように触れるのか、自分の中でたくさん想像しました。その結果、私の中ではチョンっという感じだと思ったので、それを歌でも表現できたらいいなと。

「Tale of Blue」は作詞作曲を新居昭乃さんが担当されていますが、新居さんとは初対面だったそうですね。

はい。アニメ『ARIA』の第3期で昭乃さんがエンディングテーマ「金の波 千の波」と「鳥かごの夢」を担当していたつながりもあり、昭乃さんの楽曲や今回の「Tale of Blue」を編曲してくださった保刈久明さんともいろんな作品で間接的なつながりがあったので、無理を承知でオファーさせていただいたところ、とても素敵な楽曲を提供していただきました。

神秘的な楽曲に牧野さんのウィスパーなヴォーカルがぴったりだと思いました。新居さんからもああいうウィスパー系のディレクションがあったのですか?

あれは自分の中から自然と出てきたものです。事前の打ち合わせの時に、“北欧の森で朝もやがかかっているような雰囲気の曲を書いていただきたい”とお願いをさせてもらったのですが、実はその時から“こんなふうに歌いたい”というイメージが自分の中にあったんだと思います。その時は自覚していませんでしたけど、きっと心のどこかにあって、それがレコーディングの時に具現化されてああいう歌になったというか。デモは昭乃さんご自身が歌ってくださっていたので、そこに正解があるのではないかとか正解を探してしまった瞬間もあったんですが、そこはしっかり自分なりの歌い方を求めたいと思いました。昭乃さんとは打ち合わせやレコーディングの合間にエンニオ・モリコーネなど共通の趣味の話をさせていただいたりして、本当にやさしくて素敵な雰囲気を持った方で、そんな昭乃さんだからこそ、こういう曲が生まれるんだなと納得しました。

ピアノは牧野さんご自身で弾かれているそうですね。

はい。演奏している時は緊張しないんですけど、“こんな感じでどうでしょうか?”と訊いて返事がくるまでは、死にそうなくらい緊張しました。生きた心地がしなかったです(笑)。でも、“すごくいい感じです”と言っていただけたので、本当に嬉しかったです。

「私と世界」は作詞が森雪之丞さん、作曲がさかいゆうさん、編曲は冨田恵一(冨田ラボ)さんというとても豪華なメンバーですね。

この制作にあたって、もしお願いできるとしたらどんなアーティストがいいか、本当に夢の話みたいなところで、さかいゆうさんのお名前を挙げさせていただいていたんです。雪之丞さんと冨田さんは、さかいさんつながりなんですけど、雪之丞さんとはプライベートでちょっとしたご縁があって。歌詞を提供していただくのは初めてでしたが、親近感を勝手に感じていました。

ネオシティポップといったサウンドの楽曲で、歌詞の舞台が東京、ロンドン、ニューヨークとどんどん変わるのが面白いですね。

歌詞には東京が夕方(5時)、ロンドンは午前9時、ニューヨークが午前4時と出てくるんですけど、歌詞をもらってすぐにスマホの世界時計で時差を確認して、“ちゃんと合ってる!”と思って感動しました。歌詞の中で、同じ時をちゃんと刻んでいるんだなって。

雪之丞さんに、こういう歌詞を書いてほしいと?

雪之丞さんから“こういう歌詞はどう?”とご提案をいただきました。お忙しい中で、私のこれまでの楽曲を何曲も聴いてくださって。プライベートで初めてお会いしたのが10年くらい前だったので、とても久しぶりだったんですけど、当時の私のイメージであるとか、私の結婚や出産のことも知ってくださっていて、“自分が今過ごしている時間と同時に、いろんな世界が動いているということを歌として表現するのは、今の由依ちゃんにすごく合うと思う”と言っていただいて。大人になった今なら、こういう世界観を歌っても面白いんじゃないかと思いましたね。

全体に非常にシンプルな言葉で綴られた歌詞で、中には《大事なバトン 受け継ぐため/今私世界に生きている》という歌詞もあってメッセージ性も感じました。

思ったのは、希望という光りだけがずっと照らしているわけではないということです。2番には《遠くで銃声が》という歌詞もあって、昨今の世界情勢を感じさせます。それを痛みで心が苦しくなりすぎない感じのニュアンスで、でも“そうだよな”と思う絶妙なバランス感で表現してくださっています。この歌詞をいただいて思うことはたくさんあったんですけど、最後には未来に期待したくなる曲だと私は思いました。今がつながって、未来に期待したくなるなって。こういうことを歌詞にできるのはとても素敵だなって、雪之丞さんの歌詞を読んで思いました。
牧野由依
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OKMusic編集部

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