及川浩治(ピアノ)インタビュー~ピ
アノ一台によるガラ・コンサート『名
曲の花束~ロマン派~』に寄せて

情熱的な演奏でファンを魅了し続ける人気ピアニスト、及川 浩治(おいかわ こうじ)。その彼が、2022年10月10日(月・祝)、サントリーホール(東京)でピアノ・リサイタル『名曲の花束~ロマン派~』を開催する。毎年、サントリーホールやザ・シンフォニーホールを始めとした各地でのリサイタルを精力的に展開している及川。昨年は、自身の原点ともいえる、語りと名曲でショパンの生涯を辿った「ショパンの旅」の1999年オリジナル版を22年ぶりに復活させ、話題となった。
今回のコンサートは、誰もが一度は耳にしたことのあるクラシック音楽の名曲や大曲を花束に見立てて、お客様にお贈りする「名曲の花束」シリーズの最新プログラム。ロマン派の名曲を、ピアノだけで「ガラ・コンサート」に見立てて演奏する。音楽への愛情あふれる及川の音色で、極上のハーモニーをたっぷりと楽しみたい。円熟味を増すピアニストにリサイタルへの想いを聞いた。
ーー今回は、「名曲の花束」シリーズの最新プログラムですね。本リサイタルかける意気込みを聞かせてください。
「名曲の花束」のプログラミングは、毎回そうなのですが、とても時間をかけて考えます。何をどの順番で演奏するのか、いつもとても悩みます。今回選んだ名曲たちは、どれも僕自身が大好きな作品です。たくさんある名曲から、聴いてくださった方たちがそれぞれ心の一曲として記憶に残っていただければ嬉しいですね。
ーー選曲はどのようなコンセプトで行ったのでしょうか。
コンセプトはロマン派の「ガラ・コンサートの一人ピアノ版」。今回、リスト作品が多くなったのは、ピアノで行うガラ・コンサートをリスト自身が実践するために、たくさんの編曲を残してくれたおかげで、ピアノ独奏曲、歌曲、コンチェルト、オーケストラ曲と盛りだくさんです。
また、特に今回は歌曲が多いのが特徴ですが、音楽はそもそも歌が原点ですので、当然、ピアノの演奏にも歌がなければなりません。ピアノからさまざまな音色をひき出す。メロディだけではなく、そこに必要なハーモニーやリズムがあり、楽譜からそれを読み取り、生きた音楽として聴いてくださる人に届け、そして伝えるのがピアニストとしての役割だと思っています。
ーーリサイタルは、シューマン「トロイメライ」で幕を開けます。この作品を最初の曲に選んだ理由を聞かせてください。
「トロイメライ」とはドイツ語で「夢」と言う意味。選曲した時、人生は夢のようなものだ、という思いが強かったのかもしれません。「トロイメライ」も2曲目に演奏するショパンの「ロマンス」も美しい歌に溢れています。次の歌曲につなぐ流れです。
ーー超絶技巧を駆使する華やかなリストの作品・編曲も、お客様がとても楽しみにしているところではないでしょうか。
リストは「愛の夢」も含め多くの歌曲をピアノのために編曲しています。そのほとんどがオリジナルのピアノ伴奏よりも音を増やして、さらに歌のパートも入れているので、当然演奏の難しさが増しているわけです。例えば「献呈」の前奏後奏もオリジナルよりも引き伸ばしています。
及川浩治
ーー及川さんにとって、リストはどのような存在なのでしょうか。
リストのアイデアには舌を巻くばかりです。リストの編曲ではメロディを片手だけで弾けるのは稀ですが、片手で弾いているように聴かせないといけません。それだけでも難しいのですが、リストはピアノパートの特徴と歌のメロディをとても自然に聞こえるように編曲していて、曲を知らない人は最初からピアノ作品として書かれたかのような印象を持つでしょう。
リストは演奏不可能と思えるような曲でも演奏可能な状態にできる天賦の才があったのです。ワーグナーや「死の舞踏」にも同じことが言えます。表現の限界に挑戦しているようなところもあり、そこに演奏していてとても面白さを感じます。
ーー今、お話の中で挙がったワーグナー/リスト「タンホイザー序曲」も聴きごたえのある作品ですね。今回はコンサートの最後を締めくくる一曲になっていますが、その理由を聞かせてください。
コンサートという「夢の時間」が終わり、お客様それぞれがそれぞれの現実に戻ります。皆様が、いろいろな事が起きている現実に立ち向かうための序曲として、演奏会の最後に「タンホイザー序曲」を演奏したいと思っています。
ーー最後に、今回、楽しみにされているお客さまにメッセージをお願いします。
今回は、美しいメロディが満載のプログラムです。あらためてピアノの可能性の豊かさ、音楽の美しさや感動を届けることが出来るように願っています。
取材・文=大野はな恵

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