番組ロゴではない、手書き文字イラスト

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朝ドラ史上最低評価『ちむどんどん』
のクソつまらない中身を振り返る

NHK朝ドラ『ちむどんどん』が9月30日で最終回を迎えることが発表されると「ようやく終わる!」と歓喜の声が……。そう、「ちむどんどん(胸が高鳴る)」どころか「わじわじ(いらいら)」の連続であった“朝ドラ史上最悪”のストーリーを振り返ろう。最低評価の朝ドラ・ちむどんどん、批判の嵐はなぜ? 沖縄本島北部の山原(やんばる)地方が舞台のドラマ『ちむどんどん』。沖縄の本土復帰50年を記念して制作された肝いりの作品として放送が開始されたが、朝ドラ史上稀に見るほどの不評ぶりとなっている。

 近年の朝ドラではSNS上で「#○○反省会」というハッシュタグが立つのが恒例となっており、前作の『カムカムエヴリバディ』では賛否両論入り乱れ大盛り上がりしていた。一方で今作の「#ちむどんどん反省会」はというと、否定的な意見のオンパレードだ。
 著名人も、例えばミュージシャンのヒャダイン氏はツイッターで「ちむどんどん、朝からなんかいやーな気持ちになりますねえ。何とかならないのかな。見なきゃいいんだな」とつぶやき、メディア評論家の影山貴彦氏も自身のコラムにて「ストーリー展開が雑で安直に見える。作り手は演者の無駄遣いをしているようにも映る」とまで評している。ついには元農林水産大臣の礒崎陽輔氏に「俳優の皆さんは立派に演じられていますが、脚本の論理性が崩壊しています。私自身、沖縄振興の関係者として残念であり、すでに手遅れかもしれませんが、NHKは猛省する必要があります」とツイッターで投稿される始末。  どんだけ酷いのか?
 脚本家は『パッチギ!』や『フラガール』の羽原大介氏。「2年半、この作品のことしか考えていなかった」という羽原氏は政策統括の小林大児氏とチーフ演出の木村隆文氏と何度も打ち合わせを重ねたという。
 実績豊富な一流の制作陣が本気で臨んだ大作になって然るべきドラマのどこが酷いのか、見ていこう。
「四姉妹を描いたアメリカ文学の『若草物語』を参考に、長男と三姉妹の構成は面白いと考えた」という脚本家の羽原氏。小学生だった主人公・暢子と母・優子、父・賢三、兄・賢秀、姉・良子、妹・歌子の6人家族が暮らす山原に東京からの 転校生・和彦がやってくる。暢子たちが和彦に手製の沖縄そばを振る舞ったところ、「今まで食べたそばの中で一番美味しい」と褒められたことで、料理をご馳走する喜びに目覚め、暢子はいつか東京でシェフになる夢を描くというのが、第1週のあらすじだ。
 ここまでは視聴者の評価も高めだったが、翌週の冒頭から不穏な空気が漂い始める。父の急逝から始まる、問題の第2週……。
最低評価の朝ドラ・ちむどんどん、パートで4人を育てるムリゲー
 父が死に、女手ひとつで4人の子どもを育てなくてはならなくなった母・優子。しかも500ドル(現在の価値で200万円ほど)の借金が残されていた。どうにも立ちゆかない中、東京に住む父・賢三の叔母から4人のうち1人を預かるという手紙をもらう。主人公の暢子が手を挙げて、自分が東京に行くと言った。
 家族に別れを告げて、バスに乗り込む暢子。口減らしのために子を奉公へ出す往年の名作『おしん』のような物語になるのかと期待が膨らむ。がんばれ、暢子! 負けるな、暢子!
 窓から顔を出して、泣きながら手を振る暢子は……突然、バスから降りた。
 え!? バスから降りた?
 家族の元へ駆け寄り、抱き合い、「家族みんなで暮らして幸せになろう!」と母の優子。いやいや……。
 東京に行かんのかーい!
 視聴者全員がテレビに向かってこうツッコんだのは言うまでもない。
 ていうか、借金とか、生活費とか、どうすんの?
 それから7年が経ち、暢子は高校生となり……。
 いや、だから借金は?
 母・優子は共同売店で働いていた。
 いやいや、共同売店って、要するにスーパーのパートみたいなもんでしょ? それで4人育てて、高校まで行かせるって、ムリゲー!
 その辺の説明は特になく、高校卒業後の就職先に悩む暢子が描かれた第3週。第4週でライバル校との料理対決があり、そういえば料理人になる物語だったことが思い出される。もちろん勝利し、「東京へ行って、コックさんになりたい!」と宣言する暢子。
 結局、東京へ行くんかいとなって第5週に入ると、ここで“ニーニー”と呼ばれている兄・賢秀が沖縄の本土復帰に合わせたドル円為替レートの詐欺事件に巻き込まれて、再び家族は借金を背負わされる。
 東京行きを諦めると言い出す暢子。「うちは諦めない!」と語気を強める母と姉。さあ、どうする! どうやって解決するの! さあ、さあ!! ……え!?
 東京へ行ったニーニーがプロボクサーになって大金を送ってきましたとさ。
 ちゃんちゃん。
 いやいや、雑過ぎるだろ。兄が作った借金を兄が一発で返すって、マッチポンプが雑過ぎるだろ。
 この“運”と“偶然”であっさり解決の流れは、東京編でもくり返されるのである。
最低評価の朝ドラ・ちむどんどん、“運”と“偶然”だけで進む雑物語
 第6週は就職先があるわけでもないのに東京へやってきた暢子のシーンから。
 とりあえずプロボクサーになっているはずの兄を訪ねてジムへ行くと、送金した大金が前借りや仲間からの借金であったことを知る。この借金がどうなったかは、その後も特に語られることはなく、ジムから消えた兄がいるかもしれないと聞いた神奈川県横浜市鶴見区へ。
 沖縄からの出稼ぎ労働者が多数暮らし、“リトルオキナワ”と呼ばれる沖縄県人街のある鶴見で兄を探していると、沖縄の民族楽器・三線の音色が聞こえてきた。その家に突撃訪問すると、偶然にも沖縄県人会の会長宅であり、運良く泊めてもらうことができ、沖縄料理屋2階の下宿先と銀座のイタリアンレストランの職まで紹介してもらえた暢子であった……って、いやいや。“運”と“偶然”まみれで努力や苦労がまるで見えず、感情移入する隙さえ与えてくれない。これぞ「ちむどんどん」クオリティである。
 ちなみにこの週、物語に不必要な姉(川口春奈)の入浴シーンがあったのだが、視聴率が悪いことを知ってのテコ入れか?  さておき、特に困難もなく、銀座のイタリアンで働き出した暢子。新人のくせにオーナーに楯突いて料理対決で負けると、なぜか新聞社への修行を言い渡される。理由は恐らく新聞記者となった幼なじみの和彦と“偶然”の再会を果たすためだけの無理展開。しかも彼は都内一等地と思しき場所に実家があるのにも関わらず、暢子と同じ鶴見の沖縄料理屋2階に“偶然”下宿するというね。
 雑にも程がある。
 新聞社の後は、なぜかおでん屋台の立て直しを命じられるのだが、これは戦後まもなくイタリアンレストランのオーナーもおでん屋台をやっていたという妙な設定を入れ込みたいだけといった、これまた雑な理由に他ならないだろう。
 ちなみにドル円為替で自分を騙した詐欺師と“偶然”再会した兄が、怒って殴ることもなく、なぜか再び意気投合して騙されたことで「もう見ていられない」と朝ドラ離脱者が続出したのが、この第9週辺りのことだ。
 それからしれっと4年が過ぎての第10週。オーナーから看板メニューの開発を命じられる暢子は、東京の病院で診てもらおうと母と上京した病弱な妹のために沖縄料理「イカスミジューシー(イカスミの雑炊)」を作ったことからヒントを得て、新メニューを考案した。その名も……。
 イカスミパスタ!
 ……でしょうね。
 これを食べたイタリアン料理長の二ツ橋シェフ。
「確かに見た目は良くない。真っ黒で食べたら歯も歯ぐきも黒くなる。しかし見た目とは正反対の純粋で濃厚な旨味は……深い!」
 いやいや、イカスミパスタ「ネーロ」はイタリアの“水の都”ヴェネツィアの名物料理なんだけど。それを銀座の高級イタリアンで料理長をするシェフが知らないってあり得ないんだけど。
 脚本家の羽原氏はドラマの公式ムックで行われた座談会でこう話している。
「ここで白状しますと、僕たちおじさん3人組(前述の制作陣)は料理の知識がまったくないんですよ」
 いやいや、そうだったとしてもイタリアンの料理人の話を書くって段階で勉強するだろ。前述した2年半の間、何をしてたの?
 料理人の話なのに料理を作るシーンがほとんど出てこないのもうなずける話だ。
 その後、料理長が両脚を骨折するというミラクルで暢子はシェフ代行になり、スタッフとのチームワークが大事みたいな話を入れ込んでの、第12週へ。
 同じ詐欺師に何度も騙されるニーニーなんてどうでもよくなるほど“わじわじ”する恋愛編へ突入する。
最低評価の朝ドラ・ちむどんどん、友人の彼氏を略奪する自己中女 幼なじみの和彦には愛という名の恋人がいる。ある日、暢子の働くレストランへ愛と一緒にやってきた和彦は、愛の両親から結婚を迫られる。これを目撃した暢子は今まで経験のない、もやもやした感情に襲われ、自分は和彦のことが好きなのだと気付くのだった。
 愛は和彦と同じ新聞社に務めていて、暢子とは仲良しになっており、暢子のことが好きで沖縄の山原から上京した野菜の卸業を営んでいる暢子の幼なじみである智を合わせた4人でいつも遊んでいた。そのシーンの中で和彦と暢子がいつか付き合いそうな“四角関係”的雰囲気はあったので、この展開はアリとして、問題はその後。
 暢子は愛に向かって「私は和彦のことが好きだとわかってしまったけど、今は料理のことだけに向き合いたい!」と言い放つ。
 いやいや、それって言わなくてもよくない? お前がスッキリしたいだけだろ。
 和彦も「愛との結婚に踏み切れないのは暢子が好きだから」というのは演出でなんとなくわかってはいたものの、ダメ過ぎるセリフを吐く。愛と結婚して下宿を出て行くことになるという和彦に「最後に4人で海へ行こう」と暢子。それに対して和彦はこう言った。
「2人でもいいけど……」
 愛という結婚寸前の彼女がいる状態なのに2人きりで海に行こうというこのセリフにSNSでは「キモすぎる!」と批判の嵐!!
 視聴者に共感させないどころか、主役と準主役の2人にヘイトを集める脚本を書くって、正気ですか?
「暢子って『彼氏の近くにいて欲しくないタイプ』の典型だよね。男女関係なくフレンドリーでやたら距離が近くて『ウチらは友だちだから。そういうのじゃないから』感を出しているけど、結局略奪するっていう。女に嫌われる女過ぎる」
 といった書き込みも見られたが、まさに言い得て妙。
 案の定、暢子と和彦は交際0日婚を果たすのだが、それは暢子が「料理と向き合いたいから結婚はまだ」的な言い訳で智のプロポーズを断ってから6日後、和彦が愛に「全部なかったことにしてくれ」と言ってから5日後のことである。
 この第15週で大量の朝ドラ離脱者が出たであろうことは想像に難くない。
 その後も視聴者をイラつかせる展開は続く。第16週では結婚に反対する和彦の母・重子と初対面でビニール袋に入れたサーターアンダギーを持参した暢子に対して「駄菓子屋で買ったお菓子を持っていくようなもの。結婚したい相手の親にそんなものを持っていく沖縄県民はいない!」とネットは大炎上!! 結婚を許してもらうために毎朝お弁当を作って届ける作戦も「こういう女が一番嫌い!」と女性視聴者の声がSNS上を飛び交った。
 第17週は暢子の元同僚・矢作がイタリアンレストランの権利書を盗んで借金のカタに使い、それを暴力団が持ってきてオーナーを脅すという話なのだが、なぜか鶴見の沖縄県人会の会長がやってきて解決するという力業に批判沸騰。第18週のクライマックスは披露宴で、暢子役の黒島結菜がウエディングドレスや琉装(沖縄の伝統衣装)になったのだが、感情移入できないヒロインだけにまるで話題にはならず。暢子に振られた幼なじみの智が騙されて出席させられ、スピーチまでさせられたことに対する同情の声のほうが多く上がっていた。しかも披露宴の最後に暢子が言い放ったセリフがコレだ。
「今、決めました! 沖縄料理店をやります!!」
 いやいやいや、イタリアンでの修行は何だったの? その後もまたまたまた同じ詐欺師に騙された兄の違約金200万円を暢子が肩代わりして開店資金を失うが姉夫婦から200万円をもらって一件落着という、相変わらずのマッチポンプぶりだったり、権利書を盗んだ元同僚を見つけて「信頼できる料理人」だと自分のお店に雇い入れたり。
 観れば観るほど気分を害する稀有なドラマ『ちむどんどん』。9月30日をもってようやく幕を閉じることで平穏な日本の朝が戻ってくると期待したいがNHKは同局の視聴アプリである『NHKプラス』の利用者増加に貢献したとして、制作陣を局内表彰したというのだから、次回作の『舞いあがれ!』に関しても不安しかない。
 お願いですからまともな脚本にしてください!
文/ダテクニヒコ
イラスト/テラムラリョウ
[初出:実話BUNKAタブー2022年11月号]

※ロゴは番組のものではなくフリー素材の手書き文字イラストです。
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