SIX LOUNGEは新天地でのリリース&ツ
アーを前にいま何を思うのか

SIX LOUNGEが10月26日、EP『ジュネス』をリリース、それに先立ち10月15日から同作を引っ提げた全国ワンマンツアーをスタートさせる。ライブ力に定評がありライブ現場で生き抜いてきた彼らはコロナ禍をどのように過ごし、いかにして新たなレーベルとの契約や、初めてアレンジャーを迎えるなどの制作面での挑戦・変化を受け入れ、現在地まで歩んできたのか。そしていま何を思うのか。取材時点では制作中であった『ジュネス』のことも含め、結成から10年という節目を迎えた3人が語ってくれる。
──10周年なんですねえ。
ヤマグチユウモリ:ね、気づいたら。何かが10年続いたことないので、すごいなぁって、他人事みたいな(笑)。
イワオリク:俺は入ってどのくらいですかね? 7年くらいか。これしかやってないから、結構長いことやってる感じはしますね。でもそれ以上のことはない感じです。
──直近のライブを観て、良い意味で粗さや勢いを損なうことなく、より聴かせる演奏をするようになったなぁと感じたんですよ。そのあたりは意識的に変えてきたのか、それとも自然と変わってきたんでしょうか。
ユウモリ:余裕は出てきたのかもしれないですね。(以前は)ライブ前もライブ中も常に「どうしようかなぁ」って考えていたのが、ライブ中はその時のことしか考えないように、わりとすっからかんでやれるようになりました。まあ、コロナがでかかったですけどね。だってどうしようもないじゃないですか、声出せんし。それからは何でも来いというか。
ナガマツシンタロウ:俺は、曲の幅が広がったことで曲によってプレイの仕方も変えなきゃないっていう風に思って。細かくというか、しっかり演奏する曲と昔みたいに爆発できる曲の使い分けをしなきゃなっていう意識はありましたね。その切り替えは少しずつできるようになってる気がします。
リク:お客さんの反応も前よりはわかりにくくなってたので、楽しみ方が……自分たちがやっていて気持ち良いところの観点がちょっと変わった。俺は昔よりも、キメが合うとかの細かいところが気持ちよくなってきたので、前よりちゃんと演奏するようになったかもしれないです。
──ああ、「聴かせるようになった」印象はそのあたりから来ているのかもしれない。いまコロナ禍の話も出ましたが、ライブができなくなった当時はどんなことを考えて、どう過ごしてました?
ユウモリ:緊急事態宣言のときはビビりましたね、人がいなさすぎて。でもそれ以外は別に、もともと人が多いわけじゃないんで、大分は(笑)。バンドとしてはアコースティックの盤を出したり、配信ライブに手を出したりとか、曲を作ったりもしてたんで、そんなに止まってはなかったです。締め切りのない曲作り期間と捉えてました。
──その間、他のメンバーは?
シンタロウ:歌詞はあまり書かなかったですね。ライブがなくてダルいなぁと思って、刺激もなくて、酒に逃げる感じでした(苦笑)。その怠けてる感じに対してイライラしだして、それでまぁ書けるようにはなったんですけど。
リク:俺は一通り、やってなかったことをやってみたりしました。パチンコとか(笑)。
──(笑)。
リク:あと免許も取ったっすね。今まで時間なかったので。だからへこんだりはあんまりしなかったかもしれない。ライブできなかったのはあれですけど、だからといって死にそうな感じはなかったですね。
──その後、ライブができそうな状況になってからは早かったですよね。
ユウモリ:早かったです。すぐやりました。最初、大分からやり始めたんですけど、大分でも田舎の方に行って。お客さん10何人で4人分の間隔くらい開いてて、チェスみたいな状況でライブもして、おもろかったですけど、「マジか」と思いました。お客さんもこれで楽しいんかな?って。いまはだんだん戻ってきたので良かったですけど。
シンタロウ:俺はやり始めた頃、お客さんがというよりも、大きい音を出せる喜びの方が大きくて、楽しかったですね。
ユウモリ:そこから徐々に、どうやったら盛り上がるんだろう?っていうのから、自分らが楽しむっていう方向に切り替わっていって。
──その変化って、実は以前みたいなライブができるようになったとしても大事な気はします。
ユウモリ:そうですね。まあ、年齢もあるかもしれないですけど。たまたまコロナがあっただけで、そういうものなのかも。
シンタロウ:ちょうどその頃から、曲も今まで通りじゃ良い感じにならないものも増えたんで。
──曲調の変化でいうと、やっぱり『3』がデカかったですか。
シンタロウ:そうっすね、うん。
ユウモリ:(当時所属の)メーカーとの契約3年目で、いまとなってみれば最後のアルバムだったので。本当はミニアルバムを作る予定でレコーディングまで終わってたんですけど、もうちょっと頑張ろうみたいなやりとりがあって。だから……売れようとした曲たちが多いかもしれないですね。でも、それもまだよく分かってなかった。次の方がすごいんで、「売れようとしてる感」は(笑)。
──ユウモリくんの中の「売れようとしてる感」って何?
ユウモリ:それはもう、あれでしょ。バズる!みたいな。
──キャッチーというか。
ユウモリ:安直にそうっすね。ポップだったら良いんだろうが!みたいな感じ(笑)……だったと思うなぁ。でも、速い曲はもうあんまり出来なくなってましたね、ライブもないので。ライブでやりたい曲よりは、音源として聴かせたい曲っていう意識だったかもしれない。
──その中でも「IN FIGHT」とかめちゃくちゃカッコいい。
ユウモリ:ですよねぇ。でもあれで売れようとしてたとは言えないっすよ(笑)。
リク:俺はあんまり「売れる/売れない」は考えてなかったし、『3』からガラッと変わったっていうのもいま言われて「ああ、そうかな」っていうくらいですね。まあ、幅が広がってるのは出すたびに感じていて、それは聴いてるものとか観てるもので容量が増えたことで、受け入れるものも増えていってたのかなと思いますけど。今回の『ジュネス』の方がガラッと変わってる感はあるかもしれない。
──シンタロウくんが歌詞を書く際もそれまでと違いましたか。
シンタロウ:メロディによって変わった部分はあると思う。『夢うつつ』とか『THE BULB』とかあの辺よりは、ちょっとくっきりリアルな感じになったというか。そういう歌詞が増えた気がしていて。(コロナ禍の)どうしようもない感じと、どうもできない自分に対してのイライラとか、自分に言い聞かせる言葉だったり──「IN FIGHT」とか「いつか照らしてくれるだろう」とかは前より若干ストレートな言葉で書いたかなって思います。
──ここ数年、音楽の聴かれ方自体も変わっていてるじゃないですか。そのあたりも意識はします?
ユウモリ:それこそ『3』からですよね。サブスクで、とか、歌始まりで、とか言われ出したの。めっちゃ気にしましたよ。それは売れたいからですけど……今回はすごいっすよ!! 振り切ってます。
リク:(笑)。
ユウモリ:でもどうだろうな、出来上がってみたら意外とぽいっちゃぽいか。前から知ってくれてる人はどう思うんやろ?とは思うけど、わりとみんな良いなぁって言ってくれるので。
──新曲のうち「相合傘」はライブでも聴きましたけど、アプローチの斬新さにまず耳がいって。
ユウモリ:あれは自分発信じゃないというか、向こうからもらったものに対しての答えみたいな感じだったので。
──お題みたいなものがあって?
ユウモリ:ありましたありました。その違いかもしれないです。
──やっぱり移籍して環境が変わると色々と違うわけですね。
ユウモリ:ユニバーサル時代はわりと自由にやらせてもらっていたんですけど、いまは言う事を聞いているので(笑)。最初はちょっと抵抗はありましたけどね。「こういう曲で」みたいに言われることに。でもそれはそういうものなんだろうなと思いますし。
──イメージを伝えるための手段として例を挙げたりもしますからね。
ユウモリ:そうそう。細かいところを言ってくれるのもわかりやすいので、やってみたら意外と良いかなっていう。完全に理論的なんですよ、やり方が。だから勉強しながらやってるみたいな感じです。
──という曲たちが上がってきて、どう思いました?
シンタロウ:「売れちゃうなぁ」と思って。曲作りは大変そうでしたけど。フレーズも「こういうものがいいんじゃないか」って向こうから来たりもして。
ユウモリ:編曲が入ったのもでかいですね。
シンタロウ:自分じゃ考えつかないようなフレーズとか来て、「あ、ここでこう行くんだ」みたいな勉強もあって。
リク:ベースもそうですね。自分からは多分出てこなかったことを、バッと出されて、絶対こんなの弾けねえだろうなと思ってたんですけど、いざ弾いてみたら、あーなるほどな、意外と良いなみたいな感覚ではありましたね。
ユウモリ:やってみたら意外と良い人やし(笑)。それを生業としてプロとしてやってる人はやっぱすげえなって。
──聴く人も、なるべく身構えずにポジティブに受け取ってほしいですね、それによって開かれる可能性というポジティブさがあるわけだから。
ユウモリ:そうなんですよ。ポジティブだと思います。
──過去のインタビューだと「こういう作品にしよう」というのはあまり定めずに、曲ごとに作っていくスタイルでしたけど、今回はどうでした?
シンタロウ:「こうしよう」はあまりなかったです。どう出すかも決まっていなかったので、曲をいっぱい作ってその中で良いのを集めて。じゃあEP出しましょうって言われて。
ユウモリ:メロディの細かく刻みであるようなものを考えながら作ったので、その辺は今っぽいっちゃ今っぽいんですけど、サウンドはわりとロックな感じで作っていきましたね。
──それがEPとしてまとまったのが『ジュネス』。青春っていう意味ですが、ここでいう青春って、過ぎ去っていくものを懐かしく思う気持ちなのか、それともまだ青春の中にいる感覚なのか、どっちなんですか。
シンタロウ:ある意味、ワクワクするような感じですよね。毎日新しいことをして、今回の制作でもやったことのないことをして、移籍もあって新しいところでもう一発、みたいな。その新鮮さとかドキドキする感じが、ある意味青春ぽいなって。大人にはなったけど、まだ遊べたりはできるし。作る中でいろいろ言われたりすることに対して、ちょっと✕✕✕✕な歌詞を書いたりとか、反抗する気持ちもガキっぽいというか。
──ああ、しっくりきますね。このインタビュー時点ではすべての音源は完パケてないですが、収録曲のうちまず「Morning Glow」は去年からライブでやっていて。
ユウモリ:『Morning Glow TOUR』のために作った曲ですね。ツアーで新曲をやりたいからタイトルの曲を作ろうっていう。作るときはツアーでやるためにわりと急いでいて、良い意味でパパッと決まったんですけど。……ちょうど『Morning Glow TOUR』のときにソニーに決まるかどうかで、曲がほしいってずっと言われていて、そうしたら意外と「Morning Glow」が良いって言われて。ええ!?って。
──わりと素で作ったのに。
ユウモリ:そうです。なんも考えずに。
リク:「やればできんじゃん」って。
ユウモリ:やってないのに!って(笑)。
──(笑)。じっくり歌を聴かせるようなアプローチで、歌詞も優しいラブソング的なワードが多くて。
ユウモリ:良い意味で捻ってないかもしれないです。そのあとに編曲に回って一回捻られて、すごいことになって、また戻って良い感じになりました。一回ラウド系みたいになったんですけど。
リク:袖無い人がやってる、みたいなイメージの(笑)。
──はははは! 戻ってきてよかったです(笑)。そして「相合傘」は分離の良い音というか──
ユウモリ:ドライな感じの。
──そうそう。で、隙間を恐れないアンサンブルの感じがあって。
シンタロウ:やってて怖いっすよねえ(笑)。
ユウモリ:そうっすねぇ……。
リク:でも一番無かったものなので、良いなと思いますね。推し曲です。サウンドとかもデカめのスタジオで録って。俺、あやかろうと思って、竿もサウシーのベース(秋澤和貴)に高めのベース借りて録りました。だから、サウンド面でも売れると思います!(笑)
──今までSIX LOUNGEを好きで聴いてきた層じゃない人たちにも刺さる可能性はある気がします。あと、「メリールー」の再録が入ってるのはどういう経緯で?
ユウモリ:それはソニー発信で「録りたい」っていうのと、10周年っていうこともあったので。10周年っていうことで入れるなら俺は良いなと思って。サブスクに無いっていうのもデカいと思うんですよ。
──ああ、なるほど。バンドとしても大事な曲であることは間違いないわけで。
ユウモリ:そうですね。ずっとやってるんで。
──まだメロディとかに青春パンクを感じる頃の曲ですからね。
ユウモリ:(笑)。ほぼ「BABY BABY」(GOING STEADY)ですからね。
──……せっかくボカしたのに言っちゃった。
一同:はははは!
──という3曲のほか、さらに3曲入ってリリースされる『ジュネス』ですが、そのツアーが10月からありますね。
ユウモリ:はい。めっちゃくちゃ久しぶりなんですよ、まとめて新曲をやれるライブって。だから良くなると思いますよ……練習しないと……。
リク:(笑)。
シンタロウ:リリースが途中なんですよね、ツアーを2本くらいやってからリリースなので。でも差が出ちゃうので、最初から新曲はやろうと思うんですけど、知らずにライブハウスで初めて聴くというのも最近無かったので、お客さんとしても面白いんじゃないかと。
リク:ワンマンですもんね。対バンだと他にバンドがいる楽しさがありますけど、ワンマンはワンマンならではの緊張感と……ちょっとまだ何も考えてなかったんで考えます(笑)。
ユウモリ:来てくれるだけで嬉しいんで。もう、楽しいと思いますよ。演奏は良くなってるし、ライブの方がもっと良いと思うんで。「ライブいいよ!!」って書いといてください(笑)。

取材・文=風間大洋 撮影=夏目圭一郎

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