伴大介×渡辺宙明×金属恵比須が夢の
コラボ~『人造人間キカイダー』の主
演俳優・伴大介のデビュー50周年記念
CDリリースへ

『人造人間キカイダー』の主演俳優・伴大介のデビュー50周年を記念したCD「春くれば2022」が、2022年10月14日に全国のCD店、ネットショップなどで発売される(企画・発売元:スリーシェルズ/ボロミアンリング)。同CDで伴大介が歌唱するナンバーは全曲、去る6月に他界したアニソン・特撮音楽の巨匠・渡辺宙明が作曲、その編曲・演奏をプログレッシヴ・ロックバンドの金属恵比須が担当した。伴大介のデビュー50周年はもちろん、渡辺宙明追悼の意も込めた、夢のコラボの実現がった。
伴大介は、故・渡辺宙明が、伴のために作曲した「春くれば」(人造人間キカイダー挿入歌)を、約半世紀ぶりに再レコーディング。アレンジこそオリジナルに忠実だが、プログレッシヴ・ロック・バンドの金属恵比須による強靭なるサウンドが加わり、50周年に相応しい新境地に到達した。お馴染みの主題歌「ゴーゴー・キカイダー」や「メインタイトル」も収録。こちらもダイナミックで切れ味の鋭い演奏と、伴大介の深みある声がマッチし、力強く響く。「ゴーゴー・キカイダー」では、次世代を担う令和の時代の子供たちによる昭和リスペクトな掛け声「ゴゴーゴー!」が聞けるのも地味に嬉しい。
特筆すべきは、渡辺が、他界する数日前まで歌詞の監修と編曲プランについて指示を出していた2つの新作「春はくる」と「よみがえれ不死鳥!」。渡辺は「伴さんの50周年にお祝いとして」とアレンジを提案。原曲は、2006年の伴大介一人芝居のために作られたBGMであったが、ブルージーなギターサウンドが染みる名曲。これらを70年代文化にリスペクトを捧げる金属恵比須ならではのアレンジによって、ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、イエス、ジェネシスなどを思わせる名サウンドに仕上げられた。メロトロン、ハモンドオルガン、ミニモーグなど、お馴染みのヴィンテージ楽器も心地よい音色で迫る。
「春はくる」は、「春くれば」のアンサーソング的な意味合いも持つが、しっとりと響く伴大介の声が特徴的なラジオボイスやメロトロンコーラスも加えてファンタジックに表現されている。「よみがえれ不死鳥!」は、6分近い大曲。正義の心を持って何度でも立ち上がろうとする正義のヒーローを描いた歌詞が心に染みるが、それにあわせてブルース・ロックを基調としつつも、ハード&ヘヴィなサウンドが展開される。圧倒的な存在感を持つ後藤マスヒロのドラムと栗谷秀貴のベースによる鉄壁のリズム、髙木大地によるブルージーなギターソロ、宮嶋健一による怒涛のキーボード・サウンドなど、伴大介の凄味のある歌唱も踏まえ、涙なしには聴き通すことができないだろう。
「人造人間キカイダー」の主演俳優である伴大介の歌声はもちろん、50周年という企画盤のレベルを超えた、宙明サウンドとプログレッシヴ・ロックの融合が聴ける名盤。なお、初回出荷分には、伴大介の自筆サイン入り。特製・伴大介コースターも付属する。

■「1972年当時、これらの曲をロック・バンド編成で演奏するとしたら?」金属恵比須・髙木大地
編曲のテーマは「1972年当時、これらの曲をロック・バンド編成で演奏するとしたら?」。
アコースティック楽器と違い、バンドで使用するエレクトリック楽器は時代とともに進化するので、最新のテクノロジーを使用するのが常だ。が、今回は50周年。1972年当時の音が鳴る楽器の使用を心がけた。音色の「時代考証」をして、それらの楽器に見合った編曲と使用法を採用した。もちろんヴィンテージ楽器がすべて揃うわけではないので復刻製品やシミュレーターも併用している。さながら大河ドラマのスタッフの気分だ。
「ゴーゴー・キカイダー」「春くれば」は、基本的に渡辺宙明先生のアレンジに準拠した。しかしブラスとストリングスなどのオーケストラ楽器はエレクトリック楽器に置換。トランペットは70年製造開始のモノフォニック・シンセサイザー「Minimoog」、そのほかのブラスやストリングスは70年代製造のテープ・サンプリング鍵盤楽器「Mellotron」(一部、Mellotronのデジタル・サンプリング楽器「Memotron」)を使用。和音の補強にはHammond Organ、エレクトリック・ピアノを。当時のロック・バンドが手に入る機材を想定した。普通のバンドがやるようなデジタル・シンセサイザーによる安易な置換は決してしていない。ギター・アンプは当時の主役だったMarshall 1959(復刻版)を使用している。「ゴーゴー~」のタンバリン、「春くれば」のトライアングルも忠実に再現。
初演の「春はくる」「よみがえれ、不死鳥」は完全に私による編曲だ。「春はくる」は、当時の洋楽を意識したリッチなフォーク・ソングを意識した。イントロと間奏には「ジローのギター」の変奏を挿入し、コンセプトの一体感を持たせるようにした。「よみがえれ、不死鳥」はギターを主役にした編曲に。ブルースロック系にすることによって曲の重さを表現してみた。「ジロー」といえばやはりギターだからだ。
編曲するに際し改めて感じたことは宙明先生のメロディの強さである。後世に残るどころではないインパクト。
今回、遺作の編曲という大役をおおせつかったプレッシャーは尋常ではなかった。何度も腹を痛めてトイレに駆け込んだほどだ。もし50年前に依頼を受けた時を想定し、駆け込むトイレは和式か洋式かどちらだったのかの「時代考証」をしながら。
■伴大介さんと宙明先生の友情の楽曲(西耕一によるプロデューサーノート)
2022年2月23日、映画『怪猫狂騒曲』を鑑賞に池袋ヒューマックスにいらした伴大介さんから、「春くれば」をもう一度レコーディングしたい、と相談を受けた。伴さんの目の奥で燃える炎を見て、これは「本気だ」と思った。伴さんは、ここまで渡辺宙明先生の曲を大切に思ってくださっていたのだ。すぐさま宙明先生と、作詞の田野倉健之さんと会議を重ねた。宙明先生の体力を踏まえて、雑誌『モノ・マガジン』で宙明先生から3月に作曲指導を受けたばかりの、金属恵比須の髙木大地さんに編曲と演奏をお願いしては、と提案して、宙明先生も田野倉さんも「それは名案!」と考えが一致した。当初は、「春くれば」と「ゴーゴー・キカイダー」「人造人間キカイダー・メインタイトル」をレコーディングする予定であったが、宙明先生が「伴さんのお祝いならば、なにか用意しなければなりません!」と新曲を提供することになり、伴さんの一人芝居『人造人間は愛の夢を見るか』(2006)のために宙明先生が書き下ろしたBGMに宙明先生監修のもと、新規に作詞して、「春はくる」「よみがえれ不死鳥!」が完成した。
その制作中に、宙明先生から伴さんの思い出を何度も伺い、この仕事に寄せる思いの深さを知った。考えてみれば、いわゆる挿入歌やBGMではなく、「伴大介」のために曲を作るというのは、異例なことであった。作詞と編曲のプランなどが完成したのが6月21日、先生は6月23日に急逝されてしまった。
残されたものたちで仕事を進めた。宙明先生の御子息の俊幸先生からは「父が発注を受け、やり残した仕事なのであれば、完成させてください」と御許可を頂いた。
金属恵比須のオケ録りは、8月15日。伴さんのヴォーカル録音は9月9日、9月15日に行われた。その最中に、伴さんから様々な話を聞いた。1973年の「春くれば」のレコーディングには、作詞の丘灯至夫先生と、作曲の宙明先生もいらしたんだ。でも、俺はまだ何も知らない若者で、レコーディングの後に、丘先生がどんなにすごい人だったかを知ったんだ。宙明先生のレッスンに、撮影が終わってから通ったな。「春くれば」の良さが、歳を重ねて更にわかってきたんだ、だからこそ、50周年で歌いたいんだよ。伴さんは熱っぽく語っていた。
新曲となった「春はくる」「よみがえれ不死鳥!」は、金属恵比須の演奏とアレンジが、絶妙に組み合わさり、宙明サウンドを踏まえた新境地となっている。伴さんと宙明先生の友情の結晶ともいえるこのCDで、宙明先生のご冥福をお祈りしつつ、残された素晴らしい音楽を世に広め、伝えていきたい。
(以上、CDブックレット収録の解説より)

【プロフィール】
■伴大介(ばんだいすけ)
5月5日生。川口市出身。1972年、劇団NLT在籍中に「人造人間キカイダー」主人公ジロー役に抜擢されデビュー。この時、原作者の石ノ森章太郎により芸名を「伴大介」と命名される。その後も「イナズマン」「イナズマンF」「忍者キャプター」と次々と特撮作品で主役を演じる。一方、Jホラーの父と呼ばれる鶴田法男監督のVシネマ「ほんとにあった怖い話~第2夜 霊のうごめく家~」に出演したのをきっかけにホラー作品の出演も多い。映画「リング」「らせん」「リング0~バースデイ~」いずれも貞子の父、伊熊平八郎役で出演。音楽では、渡辺宙明によるキカイダーの主題歌・挿入歌集で「春くれば」、「石ノ森章太郎男も泣けるTV主題歌集」で「ゴーゴー・キカイダー」を歌唱。また、2022年2月公開の宙明サウンド✕化け猫映画「怪猫狂騒曲」で祟られる佐賀藩主・鍋島光茂を熱演した。
https://twitter.com/bandaisuke1
■金属恵比須(きんぞくえびす)
1991年結成のプログレッシヴ・ロック・バンド。2015年、『今日は1日プログレ三昧』(NHK-FM)でオンエアされブレイク。TV番組・雑誌・新聞など多数のメディアに取り上げられ、五木ひろし頭脳警察、ダミアン浜田陛下(元聖飢魔II)との共演を果たす。著名人にファンが多く、髙嶋政宏(東宝芸能)が熱烈に応援。2019年、樋口真嗣監督(『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』他)ら主催による「小松左京音楽祭」に出演。
代表作は『ハリガネムシ』『武田家滅亡』『黒い福音』。Vocal, Percussion:稲益宏美 Bass, Guitar:栗谷秀貴 Drums:後藤マスヒロ(元・人間椅子) Guitar, Keyboards:髙木大地 Keyboards:宮嶋健一。
https://yebis-jp.com/
■渡辺宙明(わたなべちゅうめい)
1925年(大正14年)8月19日愛知県名古屋市で生まれる。旧制八高理科を卒業後、東京大学文学部心理学科に学ぶ。卒業論文は「旋律的音程の力動性に関する実験心理学的研究」。作曲を團伊玖磨と諸井三郎に、ジャズ理論を渡辺貞夫に師事。作曲家デビューはCBC(中部日本放送)のラジオドラマ「アトムボーイ」(1953年)からである。映画音楽作曲家としては、新東宝の映画「人形佐七捕物帖 妖艶六死美人」(1956年)や「鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)」(1957年)などを皮切りとして、現在までに200作を超える映画に作曲した。 1972年に手がけた「人造人間キカイダー」と「マジンガーZ」がきっかけとなり、特撮やアニメの仕事も増え、世界的な人気を博す。東映スーパー戦隊もののスタートとなった「秘密戦隊ゴレンジャー」(1975年)から続くシリーズでは、BGMだけでなく、挿入歌の作曲者としてもこのシリーズを支え続けている。また金字塔を打ち立てた「宇宙刑事ギャバン」(1982年)から続くメタルヒーローシリーズは、最近も宇宙刑事Next Generation(2014年)で主題歌、BGMを作曲して高く評価を受けた。CM音楽やゲーム音楽も手がけており、戦後のラジオドラマからスタートして、メデイアの変遷とともに作曲を続けている作曲家である。2012年には長年の功績を東京アニメアワード第8回功労賞。2014年11月にはジャスラック永年正会員を顕彰された。2019年文化庁映画賞受賞(映画功労部門)。卒寿を迎えてからも日本最高齢の現役作曲家として活躍しており、2021年には『機界戦隊ゼンカイジャー』で『ゴーグルファイブ』から39年ぶりに戦隊テレビシリーズの挿入歌、BGMを担当するなど、最晩年まで活動した。95、96歳で「ネズラ1964」「虫コナーズ」「怪猫狂騒曲」なども作曲。ニコニコ動画のスリーシェルズ放送局にてレギュラー番組「渡辺宙明先生語る!」を配信していた。2022年6月23日、老衰による心不全のため、東京都渋谷区の病院で死去。

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