福井晶一×上川一哉「観に来ていただ
ければ必ず届くものがある」〜ミュー
ジカル『フィスト・オブ・ノーススタ
ー〜北斗の拳〜』対談インタビュー

ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』が、2022年9月25日(日)に東京・Bunkamuraオーチャードホールにて開幕する。2021年12月の日本初演を経て、新たなキャストが加わり演出・音楽面もブラッシュアップされての再演となる。
初日が近づき、2022年版の製作発表も開催されて盛り上がりを見せる最中、ラオウ役の福井晶一とジュウザ役の上川一哉にインタビューを実施。共に劇団四季出身かつ、それぞれWキャストでの出演となる二人だからこそわかる葛藤や、自身の役との向き合い方について語ってもらった。
――劇団四季出身のお二人がこうして外部の作品、しかも『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』でご一緒されると知ったときは驚きました。
上川:本当に! 福井さんとご一緒できると聞いたときは嬉しかったですね。
福井:劇団では共演がなかったからねえ。もちろん(上川)一哉の存在は知っていたんですけど。活きの良い若手が出てきたってね。
上川:いやいや(笑)。
――劇団時代に稽古場でご一緒にすることもなかったのでしょうか?
福井:なかったよね? あざみ野の稽古場の廊下ですれ違って挨拶するくらいで。そもそも僕に、挨拶してた?
上川:してましたよ!(笑)それに、僕は福井さんとの思い出があるんです。
福井:え、何々?
上川:劇団のみんなでお花見をしていたことがあったじゃないですか。そのとき、僕と福井さんだけなぜかあとから呼ばれたんですよ。ふたりで向かっていたら、福井さんが僕に「一哉、絶対に俺より先に帰るなよ」とおっしゃって(笑)。なのでお花見に合流してから僕はずっと福井さんのことを見ていたんですけど、乾杯した途端にお帰りになりましたよね?(笑)
福井:ああ〜わかった! あのときね(笑)。 いや〜僕お酒弱いんですよ(笑)。
――上川さんは、今回が劇団四季退団後初のミュージカル出演となります。同じ劇団の先輩である福井さんに相談することはありますか?
上川:はい。お聞きしたいことはいっぱいあります。ただ出演シーンが違いますし、福井さんは筋トレをされているので(笑)、タイミングを見なきゃなというのはあります。でも、ちょこちょこ相談はさせてもらっていますよ。
福井:こうやって改めて話すのはほぼ初めてだよね。今までで一番喋っているかもしれない(笑)。
――上川さんは劇団外の作品に初めて関わってみて、何か違いは感じましたか?
上川:そうですね。やっぱり四季には四季の味がありました。そして今回の作品も、このカンパニーならではの色や雰囲気があると思います。作品に対する取り組み方はどこも同じなのではないでしょうか。
――福井さんは退団されてからも第一線で長年ご活躍されています。その経験を踏まえて上川さんにアドバイスをするとしたら?
福井:現場によって演出家や共演者が変わるので、求められるものも目まぐるしく変わるんです。でも、劇団で習ってきたことは間違いではないし絶対に助けてくれるから、それは信じていいと思うんです。回り回って結局は浅利(慶太)先生がおっしゃっていたことだと気付くときがあるんですよね。
ただ、外に出ると「個」が大事になってくる。しっかりといろんな意見を聞いて、自分がどうしたいか、どう演じたいか、どういう風に見てほしいかということを明確に持って現場に入ることが大事かもしれないですね。僕も最初は大変でした。そのときは劇団時代の仲間たちに助けてもらったので、今回は僕が一哉に伝えられることを伝えたいなと思います。
>(NEXT)新たなジュウザと2度目のラオウ
――公演に向けて体力作りや筋トレなどで意識していることはありますか?
上川:福井さんはいつも筋トレされていますよね。
福井:実は僕ね、この作品の前は『てなもんや三文オペラ』という作品で女性の役を演じていたんですよ。共演していた生田斗真くんに「でかい」と言われたのがすごくショックで(笑)、その間はトレーニングをやめていたんです。でも終わった途端にやっぱり『北斗の拳』の現場はみんな筋トレしているので、今必死になってやっています。
上川:僕も筋トレはしているんですけど、しなやかに動くのがジュウザかなと思うんです。 殺陣のシーンは激しいので怪我のないようにしっかりストレッチをして、ガチガチになり過ぎないように心掛けています。
福井:一哉は飲み込みが早いですし、身のこなしもすごいんですよ。ジュウザってアクロバティックで大変な動きもあるので初演ではみんな苦労していたんです。でもそういう技もすぐに習得していて、やっぱり動きが流石ですね。
――ジュウザというと劇中の「ヴィーナスの森」というショーナンバーが見どころだと思いますが、実際にやってみていかがですか?
上川:いやあ〜難しいですね。ただただ楽しくやっているわけじゃなくて、悲しみの先に今のジュウザの生き方があるので。石丸さんもおっしゃっていたんですけど、“セクシーだだ漏れ”というところを真面目に捉えて過ぎて視野が狭くなってしまう……。でも、Wキャストの伊礼彼方さんというすごくお手本になる方がいらっしゃるので。
福井:彼をお手本にしたらダメだよ(笑)。
――福井さんから見た上川さんの「ヴィーナスの森」はどうですか?
福井:かっこいいですよ! 元々すごくモテる男だからそのままやればいいのに(笑)。 ちょっとした仕草が大事になってくると思うんですけど、一哉はいるだけでかっこいいから。あとは劇団のあれやこれやを思いっきり取っ払って、いかに自分が楽しめるかというところ。そのチャレンジをしている姿を見て、僕はすごく応援したいなと思うんです。
上川:本当にすごく迷っていたんですよね。福井さんにも相談させてもらって「一哉が思うものをやればいいんだよ」という言葉にすごく救われました。 そこを研究しながら掘り下げていこうと、今もがいているところです。
福井:相談しに来てくれるのが嬉しいですね。僕自身も退団後最初の作品が『レ・ミゼラブル』のトリプルキャストで、壁にぶつかりました。複数キャストだとどうしても自分を見失いそうになるんですよね。しかも一哉の場合は相手が個性的過ぎる伊礼彼方っていう(笑)。まあ、そこは考えずに自分のジュウザを作ればいいんだよという話をさせてもらっています。
――福井さんは初演に続いて2度目のラオウ役となりますが、特に思い入れのあるシーンはどこですか?
福井:ラオウ・トキ・ケンシロウの三兄弟のシーンは重要なシーンだと思っています。青年トキと青年ラオウの芝居が大好きなんです。あの2人がものすごい熱量で芝居を渡してくれるので、僕自身もそこに乗っかって行かなきゃいけないなと。台本や曲が変わっていろいろ手直しがある中で、初演以上にキャラクターの関係性が落とし込めているんじゃないかなと思います。あと、最後のラオウとケンシロウの戦いは前よりもっと清々しい気持ちで臨んでいけるんじゃないかなあ。初演とは違う新しい感覚が出てきているんです。三兄弟のシーンとケンシロウとの戦いのシーン、この2つは最後のセリフを言うためにも自分自身を追い込んでやっていかなきゃいけないなと感じています。
――そんな福井さんのラオウを上川さんはどう見ていますか?
上川:シンプルにかっこいいですね。僕、福井さんの声が好きなんですよ。ずっと昔から聞かせていただいていたということもありますけど「ああ、福井さんの声だ〜」って思っちゃいますね(笑)。劇団時代に共演できなかったので、こうして共演させていただくことも嬉しいですし、直に福井さんの声が聞けるということが何よりにすごく嬉しいんです。
>(NEXT)「メッセージを届ける」ということ
――演出は初演に引き続き石丸さち子さんが務めますが、石丸さんとの稽古はいかがでしょう?
福井:今回の中国公演の中止を告げられたとき、やっぱりどうしても気持ち的に落ちちゃったんですね。稽古前に重い雰囲気にもなったんですけど、石丸さんが「はい! 東京と福岡のお客様に良いものを観せるために頑張ろう!」と言ってくださって。一気に僕らを引っ張ってくれる力に本当に助けられているなあと。そういう意味でとても力強い存在であり、信じられる人ですね。
上川:僕は石丸さんから言われた「裸になれ」という言葉がすごく響きました。今の僕に必要というか、改めて響いた言葉だったんです。これまでの年月の中で、知らないうちに色々なものを着込んでしまって、自分でも脱ぎ方がわからなくなっているものがあるんです。でも、できるだけ裸になってありのままの形でお芝居ができたらなと思って、試行錯誤しているところです。
――稽古の進行状況としてはどうですか?
福井:実は、ある程度の動きをつけて既に1回通し稽古をしたんですよ。中身はこれからですが大枠はざっと通せています。ここからさらに各シーンを掘り下げていく作業になるのかなという感じです。ただ、芝居の中でのフライングはこれから。ドラマを作る上でもフライングをしながらの芝居の稽古はすごく重要になってくるので、しっかり取り組みたいですね。
――そういえば、上川さんはフライングや殺陣の経験は?
上川:フライングはやったことがあります。高いところは苦手なんですけどね(笑)。ただ、ジュウザのフライングはあまり高さはないんですよ。そのかわり横の一点吊りなのでバランスを取るのが難しいですね。殺陣に関しては、あまり経験がないんです。今回はラオウさんとの対決シーンがあるんですけど、福井さんも永井(大)さんもすべてを受け止めてくださるというか。殺陣に関してもアドバイスをいただいたり客観的な意見をくださったりするので、その分僕は自由にやらせてもらっています。
福井:この前初めて殺陣を合わせたんですけど、 やっぱり一哉はすごくいい感覚を持っているので、これはいいシーンになるだろうなと思いました。
――福井さんと上川さんのように劇団四季出身の方が出演することで、四季ファンの方が本作を観に来てくださるきっかけになるといいですね。
上川:そうですね。劇団四季は作品のメッセージをすごく大事にしてるのですが、今回『北斗の拳』に携わったことで、そこは同じなのだなと感じています。たとえやり方や方法が違っても、観てくださる方にお届けして何かを得てほしいという想いは一緒なんだなと。四季をずっと観てこられた方には僕の挑戦も見届けていただきたいですし、僕と福井さんの共演も観ていただきたいですね。
福井:『北斗の拳』はいろいろなものが詰まった作品でしょう。 石丸さんは蜷川幸雄さんのところの出身というのもあって、演劇として成立させてくれているんです。ただの男たちの戦いじゃなくてしっかりとしたドラマがあって、今の時代に響くテーマもちゃんとある。だからこそ、観に来ていただければ必ず届くものがあるはず。みんなで一つになって良いものを作ろうという想いがとても強い、気持ちのいいカンパニーなんです。そういうところは劇団四季にも劣りません。今回は公演期間も短いですし、本当に1回1回命を懸けて取り組んでいるのでとにかく観てほしいですね。決して他では味わえないエンターテインメントになっていると思います。
上川:僕自身、劇団にいるときはなかなか外の作品に触れる機会がなかったんですね。でも、こうして外に出て新しい作品に携わったことで「ああ、いろんな人に観てほしいな」とすごく素直に思えるんです。なので、僕もとにかく観ていただきたいです!
福井:そうだね。何より一哉の退団後初のミュージカル出演作になるので、その姿をぜひみなさんに見届けていただきたいなと思います。
取材・文=松村 蘭(らんねえ) 撮影=山口真由子

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