シャリーノ作品で注目集める現代音楽
フルート奏者・若林かをりのインスタ
レーション・コンサート&写真展同時
開催

現代音楽演奏のスペシャリストとして活躍し、かつ幅広いレパートリーを持つフルート奏者、若林かをり。彼女が、2021年9月にコジマ録音よりリリースしたCD&写真集「『Lux in Tenebris/闇の中の光』サルヴァトーレ・シャリーノ作曲フルート独奏のための作品集1977-2000」の発売記念と銘打ったインスタレーション・コンサートを、2022年9月22日 (木) ~9月25日 (日)、東京・国立市の宇フォーラム美術館で開催する。上演は約1時間を予定。期間中、美術館内では、ドイツ在住の写真家 JUMPEI TAINAKA の写真展も同時開催する。
【動画】Lux in Tenebris インスタレーションコンサート開催(告知)

若林は、2018年に第72回文化庁芸術祭賞新人賞を受賞。受賞理由となったのが、彼女のソロ・リサイタル「フルーティッシモ!〈vol.5〉」の成果だった。同演奏会のプログラムを占めていたのが、現代作曲家サルヴァトーレ・シャリーノの無伴奏フルートのための作品集。そして、その演奏会でも披露されたシャリーノ作品を日本人として初めて本格的にレコーディングしたアルバムこそ、冒頭で紹介したCD&写真集『Lux in Tenebris/闇の中の光』だった。
アルバムのタイトルについて若林は、「シャリーノの音楽は、夜の深い闇と静寂を彷彿させます。JUMPEI TAINAKA氏のホームページで、Lux in Tenebris というタイトルでまとめられた一連の写真ワークを見た時に、これこそまさに、[沈黙と異音の魔術師][夜の沈黙より現れし響き][かそけき音]と評される音響世界を持つシャリーノ作品のアルバムのタイトルに、ぴったりだと感じました」と語る。
Kaori WAKABAYASHI /Photo : Naoya Yamaguchi (Studio☆Di:VA)
同アルバムには、JUMPEI TAINAKAによる48ページの写真集も付属させ、音楽と写真の立体的なコラボレーションを実現させた。この、作品のイメージを可視化した写真集を付属するという画期的なアイデアも呼び水となって、同アルバムはリリース以来、「レコード芸術」「音楽現代」をはじめ数多くの音楽誌や新聞などメディアで取り上げられ、話題を呼んだ。
アルバムのタイトルにもなった「Lux in Tenebris/闇の中の光」は、かねてよりTAINAKAが撮り続けている作品世界を表すのに重要なキーワードの一つ。TAINAKAは、「闇の中、燦然と輝く光を追い求めて。しかし闇の美しさを知るためのきっかけかもしれません。とかく、闇が悪しきもの、光が良きものとして表現されることにはうんざりしている。明るいが良くて、暗いが悪い。なにごとも一面的でないことをもうかれこれ何千年もあらゆる創作者たちがしてきているはずなのに、いまだにそんな物語であふれている。世界は光に満ち溢れているのではなく、闇と光のグラデーション。そのグラデーションこそが、世界に驚異の美しさを生み出し、われわれをとんでもない境地にまで心をもっていく。明るい世界ばかりに目を留めるのではなく、一旦、暗闇の世界の美しさの中を旅してみないか」と述べ、さらに「光の中を行くのではなく、闇の奥深くから、遠くの光が世界を燦然と輝かす様子を写真に捉える。そして、その世界の中を流れる風が、若林かをりの演奏するシャリーノの音楽」と説明する。
なお、今回、リリース記念公演と銘打ち、満を持して開催されるインスタレーション・コンサートでは、空間演出に松本 永を迎え、音楽・写真・空間を駆使して、より立体的に『Lux in Tenebris/闇の中の光』の作品世界の表現を目指す。フルートが奏でる音楽の中で浮かび上がる写真を、闇を纏った空間の中で描き出す。
公演のアートディレクターでもあるTAINAKAは、松本の起用について「リリース記念公演を考えたとき、若林の奏でるフルートと自身の写真世界の組み合わせで表現したCD+写真集の世界観を、ライブでいかに立体化させるか、という課題にぶち当たった。音楽と写真の組み合わせに もう一つ、空間での光と闇の表現を取り入れることで、この三つの軸なら世界を作り上げることができると考え、兼ねてから信頼を置いている照明家であり空間オペレーションのスペシャリストである松本氏に協力を打診し、空間演出を加わえることがった。音楽・写真・空間の三つの軸。まさに点が線になり立体になることを意味する。それらが様々に組み合わさり作用し合って、『Lux in Tenebris/闇の中の光』の作品世界への没入を目指す」と抱負を語った。
一方の松本は公演への参加について、「JUMPEIとの出会いは14年くらい前。演劇の公演のスチール撮影に彼が入っていた時です。舞台写真を撮影する普通のカメラマンとは何か違う雰囲気……というかその場にそぐわない存在感に、一発で名前を覚えました。ここしばらくは特に会うこともなく、でもSNSで彼の活動はチェックしていました。そうしたらある時期から作品にどんどん“凄味”が増していくわけです。そして、さらにそこに“優しさ”みたいなものが加わっていく……何か気になる存在。それがJUMPEIです。そんな彼からのオファーだったので、正直ほとんど理性的に考えることも無くOKしちゃいました。かをりさんとはもちろん初共演。どんなものを皆様に見て頂けるか? ご期待ください!」とのこと。
最後に、若林は今回の公演について、「長年、惹きつけられてきたシャリーノの作品を、このような形でCDに収められたことは嬉しく、今回、さらに発展させたプロジェクトとして、立体的なインスタレーション・コンサートを企画・実施できることに、大きな幸せを感じています。シャリーノ作品の演奏に理想的なのではないかと感じる、宇フォーラム美術館の豊かな響きの空間で奏でる音楽と、光と影による演出の中で、まるで動き出すように迫力のある写真の融合の姿を、是非、体験しにいらしてください!」と熱を込めて語った。
音と写真と光と影が融合する 複合的なアートが交差する、ひと時の体験をぜひご堪能あれ。
Kaori WAKABAYASHI /Photo : Naoya Yamaguchi Hair & Make up: Yukiko Yokomizo (Studio☆Di:VA)

【若林かをり PROFILE】
フルート奏者。京都生まれ。東京藝術大学音楽学部卒業。ヴァイオリン奏者アーヴィン・アルディッティ氏の演奏するシャリーノ作品に衝撃を受ける。その後参加した現代音楽セミナー&フェスティバル「秋吉台の夏」で、シャリーノ作品を数多く演奏するマリオ・カーロリ氏との出会いをきっかけに渡仏。(公財)ロームミュージックファンデーション奨学生として、ストラスブール音楽院スペシャリゼーション課程フルート科および室内楽科修了。(公財)平和堂財団海外留学助成を受け、スヴィッツェラ・イタリアーナ音楽院修士課程現代音楽表現演奏科を、満場一致の最高評価を得て修了。修了論文は『日本文化…時間と空間の総括概念である“間”が、ヨーロッパの現代音楽にもたらした影響について』。2017年度文化庁新進芸術家海外研修員。サルヴァトーレ・シャリーノ生誕70年を記念し、フルート独奏作品を特集して開催したリサイタル「フルーティッシモ!vol.5」の成果として、2017年度第72回文化庁芸術祭賞 音楽部門新人賞を受賞。日本現代音楽協会主催「現代音楽演奏コンクール“競楽X”」第2位。2015年度滋賀県文化奨励賞、2006年平和堂財団芸術奨励賞、2019年音楽クリティック・クラブ賞奨励賞および令和元年度大阪文化祭奨励賞を受賞。BSプレミアム「クラシック倶楽部」、NHK-FM「名曲リサイタル」、「現代の音楽」、「ベストオブクラシック」などに出演するほか、国内外の音楽祭やコンサートに出演。
【JUMPEI TAINAKA PROFILE】
写真家/Art Director。17歳の時にスウィフト作『ガリヴァー旅行記』に触れてから文学に没頭。欧州に強烈な憧れを抱くようになる。そこから神話、宗教、文学、哲学、歴史、絵画を貪るように学び、20歳の時にドイツへ留学。滞在中に100都市は見なければと目標を立て、ドイツの主要都市から小さな村々までを訪ねる。帰国し大学を卒業後、一度は会社員になるも、自身の中にマグマのようにたぎるロマンを何かの形で表現したいという夢を捨てきれず、創作活動の道へ。言葉を書く執筆活動や言葉を吐き出す演劇を経て、言葉を必要とせずに直感的に完成する写真に傾倒し、生活の中心になっていく。30歳の時にドイツ・ハンブルクに移住、そこを拠点に日本や世界を巡る。様々な経験や想いを折り重ねた現在、「都市とは何か」「あなたは誰ですか」等、世界や人間の本質に迫る根源的なテーマに挑むべく、ファインダー越しに見る世界に内包される膨大な言葉や情報を汲み取り、シャッターを押す瞬間に至るまでの過程と物語を写真に収めながら、答えを探す旅を続けている。
【松本 永 PROFILE】
照明家/空間演出。まだ何ものでもない空間を感じてその可能性を夢想し、光を軸に演 出空間を立ち上げる。演劇を中心にノンジャンルで活動。 Concert アンサンブル室町 IAM~InfinityArtsMugen Theatre NICK-PRODUCE 日穏 ヌトミック TinT! Dance masaoption 藝○座 Movie さくらランドセル Art 前田麻里 松堂今日太と宮本亜門2人展、他。

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