TETORAの『未来は今日だツアー 対バ
ン編』、SIX LOUNGEとともにバンドの
"今"を刻んだ名古屋の夜

TETORA 未来は今日だツアー対バン編 2022.9.7 名古屋CLUB QUATTRO
※以下のテキストは一部演奏曲に触れていますので、ネタバレを避けたい方はご注意を。
TETORAが最新アルバム『こんな時にかぎって満月か』のリリースツアーとして全国を回る『未来は今日だツアー対バン編』。12月のZepp DiverCity(TOKYO)まで29本にも及ぶツアーの2本目、名古屋CLUB QUATTRO公演を観た。ゲストはSIX LOUNGEで、お互いMCで「友だち」と形容していたように世代が同じで関わりも深い3ピースバンド同士だが、音楽性まで近いわけではないという組み合わせ。一体どのような相互作用が生まれるのだろうか。
SIX LOUNGE
平日の18:00開演という設定にもかかわらず満員状態のクアトロ。SE「雨にぬれても」がゆったりと流れる中登場したSIX LOUNGEは、「カナリア」からライブをスタートさせる。弾き語りでの歌い出し、ヤマグチユウモリ(Gt/Vo)の伸びやかな歌声は嵐の前の静けさといったところ。ナガマツシンタロウ(Dr)の叩きつけるようなビートと疾走するベースラインが並走し、たちまち場内を興奮の坩堝へと落とし込んでいった。
「俺たちは(ゲストとしての登場が)ここだけのツアーだから気合入ってるよ」とのユウモリの言葉通り、「LULU」では原曲よりもさらに熾烈に感じる2ビートに乗って爆走。イワオリク(Ba)がユウモリと立ち位置を入れ替えたりしながらゴリッゴリのベース音を響かせる。
SIX LOUNGE
SIX LOUNGE
対バンツアーが減ってしまった昨今、呼んでもらえたことがすごく嬉しい、真正面からやって帰る、と意気込んだ後の中盤ブロックはまずキラーリフ一閃、タフでヘヴィな質感と耳馴染みの良いメロディとが同居した、彼らの真骨頂「IN FIGHT」から。そのあとはもう怒涛の展開だ。ファストナンバーを次々に連投しまくる展開に、フロアの観客たちは飛び跳ねたり拳を突き上げたりと目一杯のリアクションで応える。歌声もギターも冴えまくるユウモリ、大きく身体を揺らしながら重低音を轟かせるリク、攻めまくるフロント2人をその打音で後押ししたり駆り立てていったりと奮迅のプレイをみせるシンタロウ。ロックンロールの危険な香りや快楽性、ロマン、胸のすく痛快さ。全てがここにある。
SIX LOUNGE
直球勝負だけに終始したわけではない。10月にリリースを控える新曲「相合傘」は彼らの新境地ともいえる仕上がりで、隙間が多めのアンサンブルとリバーブ成分を削ぎ落としたサウンドに、感傷的で切ないメロディが乗ったバラードソング。『3』以降の進化における最新到達点とも言えるだろう。「超気持ちよかったです、ありがとうございました!」。ユウモリが告げると、ラストは初期から歌い続けてきた「メリールー」を真っ向から届けてステージを降りた。
SIX LOUNGE
TETORA
“友だち”による鉄壁のライブの後を受け、今度はTETORAの番だ。オレンジ色に染まったステージへ3人が歩み出ると、盛大な拍手が注がれる。ドラム前で円陣を組んで、上野羽有音(Vo/Gt)がSIX LOUNGEへの感謝を口にしてから、「はじめます!!」という宣言とともに、勢いよく瑞々しいバンドサウンドと、今日この瞬間にしか味わえない時間が流れ出す。
TETORA
ツアータイトルにもなっている“未来は今日だ”とは、“いつか”ではなく“今”なんだという強い気持ちの表れだと思うのだが、『こんな時にかぎって満月か』リリース時のインタビューで上野は、「全曲に“(自分たちの)この曲を超えたくて作った曲です”というのがある」とも言っていた。過去の作品≒自分を超えたいという欲求もつまりは、常に“今”にこだわり更新し続けていたいという意志から来るものなのだろう。この日のライブも、現時点(厳密には少し前だが)のTETORAを映し出した最新アルバムの楽曲群を軸に、そこにライバルであり比較対象ともなる過去の曲たちを交えていく構成となっていた。
TETORA
たとえば、「ずるい人」と「ずるくない人」。どちらもバラードの部類で歌詞も明確に繋がっており、アフターストーリーやアンサーソングのような関係性の2曲を並べ、じっくりと聴かせていく。曲の緩急だけでなくライブ全体の振り幅を司る、シュアで包容力のあるミユキのドラム。曲と歌に寄り添いつつも、要所でみせる大きな演奏でしっかり存在感を発揮する、いのりのベース。サウスポースタイルでギターをかき鳴らし、少しハスキーな声を張り上げて歌う中に、笑ったり泣いたり怒ったりと豊かな表情をみせる上野のボーカル。 ところどころギターのフィンガーノイズのように掠れる上野の歌声は、曲の中に描かれた赤裸々な心情やセンチメンタルな情景を引き立たせるのに一役買っていたし、なんといっても彼女たちはアッパーな楽曲だけでなく、こういったスローな曲たちでも熱量の高い演奏を見せてくれる。
TETORA
MCでは、出番前に「今日演奏を失敗しなかったら100万円」と言っていたのに1音目から失敗した、とか、2年前に名古屋クアトロに来たときは出番直前にいのりの彼氏の浮気が発覚した、とか、場を和ませる(?)ゆるい話題で笑いあうTETORA。あくまで本当に言いたいことは曲の中で、目の前のファンに伝えたい思いは前奏や曲間に叫ぶように投げかけていくスタイルだ。「言葉のレントゲン」でギターのチューニングが狂ってしまう一幕があった際にも、とっさに対応しつつ「今日も2度とないライブします!」とトラブルを推進力に換えて乗り切ってみせた。
TETORA
「ライブハウスでワクワクして、ドキドキしてハラハラして。いろんな気持ちに一緒になってください」
上野の言葉に送られる拍手。そしてジャーンと一発、気合を音に込めるようにドロップされた「今日くらいは」。話しかけるようなボーカルと歌うベースライン、跳ねるビートが一体となってフロアを突き動かしていく。クライマックスは強烈な逆光を背負って爽快に疾走した「Loser for the future」だった。バンド感の強いアプローチでありながら、何度も拍子が変わるトリッキーさも併せ持った曲。そこで歌われる歌詞はこのツアーのタイトルにもなっている。TETORAの“今”を象徴する音が、ひときわ逞しく高らかに鳴り渡っていた。
TETORA
過去でもなく未来でもなく今この瞬間。ライブは一期一会と偶発性の積み重ねで出来ていて、その繰り返しでツアーも続いていく。それはやがて音楽人生を形作っていく。今、この瞬間のTETORAを見逃さないでほしい。

取材・文=風間大洋 撮影=夏目圭一郎
TETORA

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