ビートルズ圏外に出て、
自分らしさを臆することなく発揮した
ジョージ・ハリスンの
もうひとつの傑作
『リヴィング・イン・ザ・
マテリアル・ワールド』

どこを切ってもジョージらしい、
繊細で美しい曲ばかり。
インドっぽいメロディーも
巧妙に混ぜるセンス

ソングライターとしても、いかにも彼らしい美しいメロディものがいくつもある。『オール・シングス〜』の流れを汲むような、壮大かつドラマチックな「ザ・ライト・ザット・ハッド・ライテッド・ザ・ワールド(原題:The Light That Had Lighted The World)」や「ザ・デイ・ザ・ワールド・ゲッツ・ラウンド(原題:The Day the World Gets ‘Round)」のような曲、さらにインド音楽にどっぷりハマっている彼ならではの、ラーガ・ロックとでも言うべきミクスチャー感覚あふれるタイトル・チューン「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」もいい。後年、デヴィッド・ボウイがカバーした「トライ・サム・バイ・サム (原題:Try Some, Buy Some)」も名曲だ。この時期のジョージはクリエイティブのセンスが冴えまくっていたのだと思う。

アルバム『リヴィング〜』は、1973年6月22日に発表され、ビルボード・アルバム・チャートで5週連続1位、1973年度年間ランキング第43位、『キャッシュボックス』誌で4週連続1位を獲得し、年間ランキング47位を記録する。

群雄割拠のあの時代、元ビートルズという肩書だけでもある程度は売れたとは思うが、これはなかなか凄い成績である。ちなみに1973年はロック、ポピュラー音楽の“当たり年”とも言われるくらい、ビッグネーム(やがてビッグネームになるものも含め)が名盤を出した年でもある。ハードロック、プログレ、グラムロック、シンガーソングライター…と何でもござれ。サラッと列挙してみると、Pink Floyd / The Dark Side Of The Moon、Marvin Gaye / Let’s Get It On、Stevie Wonder / Innervisions、Don’t Shoot Me I’m Only The Piano Player & Goodbye Yellow Brick Road / Elton John、Houses Of The Holy / Led Zeppelin、Queen / Queen 、We’re an American Band / Grand Funk Railroadといったところがあるかと思うと、“元同僚”もBand On The Run & Red Rose Speedway / Paul McCartney & Wings、Mind Games / John Lennonと健闘。(順不同)。とまあ、有名どころだけでもこんな具合だ。おまけにこの年には“古巣”ビートルズまでが2枚組のベスト盤The Beatles / 1962年〜1966年』(通称『赤盤』)、The Beatles / 1967-1970(通称『青盤』)の2種を出し、どちらもチャートインするという状況だった。その中でジョージの健闘はなかなかのものではないか。

ぜひ、彼が最も輝いていた時期の傑作を聴いてみてほしい。それにしても、新人もベテランも、持てる才能を絞り出すように、しのぎを削っていたあの時代、ずっとドキドキさせられていたな。

TEXT:片山 明

アルバム『Living in the Material World』1973年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ギヴ・ミー・ラヴ/Give Me Love
    • 2. スー・ミー、スー・ユー・ブルース/Sue Me, Sue You Blues
    • 3. ザ・ライト・ザット・ハッド・ライテッド・ザ・ワールド/The Light That Had Lighted The World
    • 4. ドント・レット・ミー・ウェイト・トゥー・ロング/Don't Let Me Wait Too Long
    • 5. フー・キャン・シー・イット/Who Can See It
    • 6. リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド/Living in the Material World
    • 7. ザ・ロード・ラヴス・ザ・ワン/The Lord Loves the One (That Loves the Lord)
    • 8. ビー・ヒア・ナウ/Be Here Now
    • 9. トライ・サム・バイ・サム/Try Some, Buy Some
    • 10. ザ・デイ・ザ・ワールド・ゲッツ・ラウンド/The Day the World Gets 'Round
    • 11. ザット・イズ・オール/That is All
『Living in the Material World』('73)/George Harrison

OKMusic編集部

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