村越 ”HARRY” 弘明、肺がん治療か
ら復活! 1年9ヵ月ぶりライブで見せ
た、静かながらも強い信念

肺がん治療のため音楽活動を中止していた村越 ”HARRY” 弘明が、1年9ヵ月ぶりとなるライブを9月11日(日)に渋谷PLEASURE PLEASUREで開催。当日のオフィシャルレポートが到着した。

肺がんが発症した事を明かし、治療のため、音楽、ライブ活動を休止していた 村越"HARRY"弘明が音楽活動復帰を発表し、1年9ヵ月ぶりとなるたった一人でのライブを敢行した。そうあっさり書いてしまえばそれまでだが、ファンは気が気ではなかったはずだ。ソロバンドでの活発なライブ活動。更にストリート・スライダーズ時代のバディでもある土屋公平とのユニット、JOY-POPSを復活させてのCDリリースや、コロナ禍に負けずに行われていたライブと、近年にない程の躍動的な活動をしていたHARRYからの突然の病気のニュースだったからだ。
でもHPで「しばらく休養してから戻ってくるよ」と言った通り、HARRYはちゃんと帰ってきた。本当に嬉しい発表だったが、一緒に長年歳を重ねてきた往年のファンからすると本当の復活した姿を見るまでは安心ができないのも正直な気持ちだっただろう。9月11日、日曜の渋谷のど真ん中、渋谷PLEASURE PLEASUREでのライブ。しかも連続の2ステージ。文字通りワクワクとドキドキを兼ね備えながら会場に向かった。
渋いブルースがBGMで流れる中、2公演とも即日完売した満員の会場のお客さん達が開演を待っている。HARRYのライブは、始まる前に独特な静けさがあるのだが、そのブルースのBGMに合わせてお客さん達が手拍子をしている。みんなやはりHARRYの復活が嬉しくて仕方ないのだろう。客電が落ち、お祝いムードと緊張感を帯びた会場の空気の中、HARRYが現れた。お客さんが総立ちになり、割れんばかりの拍手の中、ハットからロマンス・グレーの髪をのぞかせ、いつものシルクシャツとブラックジーンズの細身で華やかな佇まい。今まで通りのHARRYがそこにいた。そしてHARRYはいつものように人差し指を立て長い腕を天高く上げ「楽しんでってくれ」と言い放ち、いきなりスライダーズの人気ナンバーのイントロを爆音でかき鳴らし、それをも上回るハスキーで野太い歌声を会場に響き渡らせた。
演奏とその歌声に体を揺らせながらも、何人ものお客さんが涙を拭うのが分かった。聞く人の体360度全身に響き渡るHARRY独特のあのワン&オンリーの歌声が全くの超健在だったからだ。よかった。本当によかった。自分もこみあげる思いが押さえきれず両腕を上げてガッツポーズをとっていた。
HARRYはエレキギターとアコースティックギターを駆使しながらブルースナンバーを中心に人気ソロナンバーを次々と披露していった。
アコギの音は重くもかろやかに会場に響き渡り、エレキはいつものように、曲ごとに何度も取り替えながら、時に太く、時に激しく、そして時にエフェクトを使い幻想的な空間を創り、会場の雰囲気を持つギター一つ一つで自由自在に操っていた。
そして歌われていく歌詞だが、その歌詞の中の、いくつかのフレーズが、どうしても、休養中、そして復活したいま現在のHARRYの気持ちと、重ね合わさって伝わってくる事が何度もあった。そういう音楽のマジックやケミストリーのようなものを目の前で目撃できるとこが生ライブ(来てる観客もコロナ禍の影響で久々の生ライブ参加の人がきっと多かっただろう)の一番の楽しい瞬間だ。
他にも「日本語でカントリーやろうとしたら、こんなんなっちゃったって曲を…」というユニークなMCからのオリジナルカントリーソングを披露してくれたり、途中でスライダーズのナンバーも披露され、往年のファン達も大いに盛り上げてくれた。そして「最近一番気に入ってるロックンロールを」と言い、激しいロックンロールナンバーをたたきつけてきて観客を踊らせ、最後に怒涛のスライダーズの人気ナンバーの連投で観客を見事にノックアウトさせ、いつまでも拍手がなりやまない中。復活ライブは終了した。
ギター1本とHARRYの歌声だけというシンプルなスタイルなだけに、その日本屈指の独特のギター演奏と歌声の素晴らしさが改めて際立つスぺシャリーなライブだった。
披露された素晴らしい楽曲の数々とパフォーマンス、そして会場で起きた色んな素敵な出来事をここでもっと事細かに説明したいが、実はHARRYからスペシャルなサービスがある。
数少ないチケットが即完してしまった為、沢山のファンの要望に応え、なんと特別にこのライブのアーカイブ配信が9月17日から行われるのだそうだ。このライブを見れなかった人、見てみたくなった人、現場で見たが、もう一度見たい人は、そのアーカイブ配信を見て、自分の目と耳でそれを目撃してほしい。ライブの中身の素晴らしさは絶対に保証する。
逆にひとつだけ伝えたい事がある。
HARRYはこの1年9ヵ月もの間、実は病でかなり大変な思いをしていたらしい。なのにストイックでクールなHARRYはそんな事をファンには一言も明かさず(きっと物凄い努力をしたんだと思う)、見事に復活し、更になんとアップデートまでされ、前よりパワフルになって見事に帰ってきたという事だ。
今回のライブタイトルの「So Alone」は、本来の「1人寂しい」という意味ではなく、「1人で強く立ち向かう」という、HARRYの強い信念に基づいた意味であり、「開催」するのでは無く、「敢行」するのだ。 そういうHARRYの静かながらも、強い信念に強く気付かされたライブだった。
おかえりHARRY。
“あんたがいないよる”から僕らはこれから解放される。
文=横山シンスケ(渋谷・東京カルチャーカルチャー店長・チーフプロデューサー)
撮影=三浦麻旅子

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