May'n

May'n

May'nの喜怒哀楽を引き出してもらった

2008年にシンガポールで初の海外イベントに出演して以降、2010年にはアジアツアーを開催されたりと活動の規模が広がっていますが、2011年2月発表のミニアルバム『If you…』に収録されている「Phonic Nation」を聴くと、“自分はひとりだ”と感じる心を大事にされているようにも思いました。

確かに他の曲でも“ひとり”っていうのは歌詞にすることがあって、“人は必ずひとりで生まれ、ひとりで死んでいく”みたいな気持ちで生きていた時期もありました(笑)。だから、“ひとりで強く生きねば”みたいなのがモットーだった時もあって。

今ではそれが変わっているんですか?

そうですね。それも間違いではないと思うけど、最近は“ひとりでも生きていけるけど、誰かがいたらもっと広がるよね”って思うんですよ。誰かと一緒じゃなきゃ生きられないわけじゃないけど、誰かと一緒にいたら、ひとりで生きていくよりもいろんな未来が待っているかもしれないとすごく思います。だから、人との出会いを大切にしていたいし、出会いを楽しく思っているっていうのは、キャリアを重ねて気がつくようになりました。「Phonic Nation」を作った時は自分自身がまだまだ頑張るっていう力強い想いがありつつも、この世界にはたくさんの人がいるってことにびっくりした時で。2008年にシンガポールに行って、“同じ空が本当に続いているんだ!?”ってことを初めて実感したんですよ。飛行機でずっと窓の外を見ていたら、“空ってつながってる!”って(笑)。住む場所が違えば言葉も違うけど、それぞれの場所に頑張っている人がいるって。今でも自分で歌っていてグッとくるというか、ひとりで生きているけど、ひとりが世界にたくさんいることの心強さ…なので、ひとりでいてもひとりじゃないというメッセージに自分も背中を押されています。

May'nさんは活動していく中で価値観が変わるような出来事をたくさん経験されていると思いますが、ずっと変わらずに原動力になっているものって何だと思いますか?

やっぱり好きっていうパワーですかね。好きなものや趣味から始まったものを仕事にすると、趣味ではなくなってしまうし、好きではなくなってしまうかもしれないと、いろんな人が葛藤する部分だとは思うんです。私は好きだからこそ頑張り続けることができていると実感しているので、この先どんなに悩むことがあっても好きな気持ちさえあれば乗り越え続けられると思っています。最初は歌が好きなところから始まったけど、ライヴをするうちにワンマンライヴも好きになったし、ファンの方と過ごしていく中で好きなものが増えていって、それが原動力につながっていると思いますね。

そんなMay'nさんにとってのキーパーソンとなる人物は?

自分の人生観が変わったなという視点では、ヴォイストレーニングでお世話になった佐藤涼子先生です。佐藤先生と出会ったのは2015年で、私が喉を壊して休業をした時だったんですよ。そんな時に自分の引き出しを増やしていく大切さを教えてくれたのが先生で、私は歌へのこだわりが強かったから“May'nと言えばこれ”という軸が固まっていたんですけど、“引き出しを増やしておいて損はないんじゃない?”と言われて。“使うか使わないかはあなたの自由だけど、まずは増やしておいて、求められた時にパッと出せるものがあるのは必要なことよ”と教えていただいて、確かに今の自分にあるものを磨いていくだけじゃなくて、増やしていく楽しさもあると気づかせてもらいました。あと、先生はよく“人間力を高めなさい”とおっしゃるんです。要は自分に正直になって自分を知りなさいと。先生と初めて会った時に、“May'nは優等生すぎて人間味が感じられないから、本当に何を思っているのかが分からない”と言われたんですよ。“人には喜怒哀楽があって、いろいろムカついたことがあるはずなのに、あなたは全然出していないでしょ?”と。

先ほどお話していた、自分を奮い立たせて頑張っていた時のような。

私もそういう“うわっ、嫌だな”と思う感情はあるんですけど、それは出しちゃいけない感情だと思ってずっとしまい続けていたんです。そうしたら、先生が“誰にも言わないから、最近あったムカついた話を全部教えて”とおっしゃったので、そこで初めてワーッと話した時に“May'nのムカつく話って超楽しい!”って言ってくれたんですよ。人間として持っちゃいけない感情はあると思いますけど、先生に“ちょっとしたものはそうやって出していったほうが、もっと人間としての魅力が深まるのよ”と言われたのが、私にはすごく新鮮で。それまでは喜怒哀楽の喜と楽しか考えていなかったけど、それからは全部に目を向けるようになりました。表に立つ上で発信しないほうがいいことはあるけど、MCでも“ありがとう”とか“楽しかったよ”だけじゃなくて、“昨日はこんなことがあったんだけど、今日は楽しかった!”と素直に言えるようになってからは音楽もさらに楽しくなったので、May'nの喜怒哀楽を引き出してくれた佐藤先生には本当に感謝しています。以前は練習をする時はいつも鏡を見ていて、ライヴでも完璧に魅せたいと思っていたんですけど、喜怒哀楽に敏感になってからはその瞬間の気持ちをキャッチしてパフォーマンスをするように変化していって、カッコ良く歌う曲でも楽しんだり、MCで“この曲なんでこんな笑顔で歌っちゃったんやろ?”とか言うようにもなりました。そうしたら生きやすくなったし、May'nとしてパフォーマンスしやすくなったのは本当に大きな変化です。

取材:千々和香苗

OKMusic編集部

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