戸次重幸が尊敬する益岡徹との二人芝
居『A・NUMBER』への期待感を語る

戸次重幸と益岡徹による二人芝居『A・NUMBER(ア・ナンバー)』が、上村聡史の演出で2022年10月に紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAほかで上演される。作者は、現代イギリスを代表する劇作家キャリル・チャーチル。2002年にロンドン・ロイヤルコート・シアターで初演され、数々の名優によって演じられてきた、近未来を舞台に自分がクローンだと知ってしまった息子とその父親の関係を描くスリリングな作品だ。同じ顔をした3人の息子を演じる戸次に、父親役の益岡との初共演への思いなどを聞いた。
『A・NUMBER(ア・ナンバー)』
――初挑戦の二人芝居で、お相手は益岡徹さん。稽古を前にした今のお気持ちは?
益岡さんとご一緒できることに、至上の喜びを感じております。というのも、私が観た中でベスト5に入る作品に、益岡さんが出演された『巌流島』という舞台(96年上演)がありまして。私は映像で観たんですが、佐々木小次郎役の益岡さんは、今の若い人の言葉でいうとまさに“神演技”をされていて、心の底から笑わせてもらったんです。その益岡さんと二人芝居で濃密なやり取りができるなんて、楽しみ以外の何ものでもありません。
――益岡さんとは、今回が初共演でもあるのですね。
はい。同じ映画に出演したことはあるんですが、シーンがまったくかぶらなくて。『A・NUMBER』のスチール撮影で初めてお会いした時は、やっぱり緊張しましたね。自分が益岡さんの年齢になった時に、ここまでのダンディさ、落ち着きを出せるだろうか?と思ったくらい“大人”な印象といいますか、非常にジェントルマンな方だなと感じました。
――そんな益岡さんが演じる父親と対話する、同じ遺伝子を持った3人の息子を、戸次さんはどう演じようと思われていますか?
3人とも見た目は全く同じですが、年齢もキャラクターもそれぞれ違うので、自分としては、まったく違う人間を演じるつもりでいます。なので、場面ごとに非常に新鮮な気持ちでお芝居ができるんじゃないかと思っていて。逆に、益岡さんのほうが大変だと思います。父親は3人の息子それぞれにどんな対応をしていくのか? そこから何が見えてくるのか? というのが、この作品の大きな見どころ。自分が隠している真実を、息子たちにどこまで打ち明けるのか、という神経をすり減らすようなお芝居を、最初から最後まですることになるので。
戸次重幸
――上演時間は70分。濃密な二人芝居になりそうですね。
そうですね。二人ともセリフの量がすごいんです。しかも台本を読むと、相手のセリフを途中で遮って自分のセリフをいうような感じで書かれているので、それが会話のテンポに繋がるといいなと思っています。読んでいて「ここのやりとりの意味は何だろう?」と思うところもあるんです。まだ演出の上村聡史さんにはお会いできていないんですが、まさに稽古場で三人で作っていく作品になるんだろうなと感じています。
――膨大なセリフ量に対する不安はありませんか?
セリフ覚えは非常にいい方なので、そこは心配していないんです。他のことは覚えられないんですが、年をとるごとにセリフは早く入るようになってきていまして。子どもが生まれてからは涙もろくなって、泣き芝居も昔よりできるようになりましたし、最近、役者に向いてきたなと感じます(笑)。もう一つ、6月~7月にやらせていただいた舞台『奇人たちの晩餐会』で、ピエールという役を演じきれたことも自信になっているんです。あの役も、それまで演じたことがないくらい、とてつもないセリフ量だったので。『奇人たち~』は二人芝居ではなかったんですが、片岡愛之助さんが演じるフランソワと二人のシーンが多い舞台だったので、二人芝居の予習をした気になっています(笑)。
――頼もしいです。何かセリフを覚えるコツがあるのですか?
昔は、自分のセリフが載っているページを、台本を開いたそのまま、絵として覚えていました。相手のセリフ尻の単語だけ覚えて、「この単語が来たら、自分のセリフだ」というような形で。でも、そうしたらセリフをすごく記号的に言うようになってしまって、30代中盤で仕事がパタッとなくなったんです。セリフの覚え方から変えなければならないと思い、まず全体の流れの中でのそのシーンの役割を覚えて、その中での自分のセリフを覚えるようにしたら、どんどんセリフが入るようになりました。流れの中で人のセリフも覚えるから、労力は増したんですが、結果的に早く覚えられるし、芝居もよくなった気がします。
戸次重幸
――なるほど。『A・NUMBER』は、ある日もう一人の自分と出会ってしまった息子と父親との対話から始まります。戸次さんは、もしも街で自分と同じ顔の人に遭遇したら、どうしますか?
焦りますよね。北欧の伝承にある、いわゆるドッペルゲンガーだとしたら、数日中に私は死ぬことになるでしょうから。それがクローンだったら、どうなんだろう?……でも興味はありますね。
――ありがとうございます。最後に『A・NUMBER』への意気込みを聞かせてください。
僕自身、楽しみで仕方がない公演です。「ファンです」という気持ちが前面に出るとご迷惑だと思うので、そこは十分気をつけつつ、益岡さんのお芝居をいちばん間近で堪能できる喜びを味わいながら、遠慮なくぶつかっていこうと思います。舞台という生のエンタメの“有り難さ”を、役者側もお客さん側もより感じるようになった昨今。でもだからこそ、一公演一公演により価値があるようにも思うんです。お客さんには様々な負担を強いることになってしまい、もちろん心苦しさも感じていますが、以前にも増して「よくぞ、足を運んでくださいました」という思いで舞台に立たせていただいています。生の会話の応酬を、ぜひ間近で楽しんでいただけたら嬉しいです。

<スタイリスト>小林洋治郎(Yolken)
<ヘアメイク>横山雷志郎(Yolken)

《衣装協力》
Sian PR

《クレジット》
ジャケット/¥24,200
パンツ/¥46,200/FACTOTUM/SianPR
(アイテム名/ プライス / ブランド名 / 問合せ先)
※金額は税込価格 
※表記の無いものはスタイリスト私物

《問合せ先》
SianPR
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-2-3 ルカビルII 2F〜4F
TEL:03-6662-5525
取材・構成・文=岡崎 香

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