木村達成、須賀健太、早見あかり、安
蘭けいらが独特の魅力を持つ骨太な戯
曲に挑む 舞台『血の婚礼』稽古場レ
ポートが公開

2022年9月~10月、東京・大阪にて上演される、舞台『血の婚礼』の稽古場レポートが到着した。

(左から)母親役:安蘭けい、花婿役:須賀健太、演出:杉原邦生
スペインの伝説的劇作家、フェデリコ・ガルシーア・ロルカの三大悲劇のうちの一作『血の婚礼』が9月15日(木)より上演される。官能的で、情熱的で、悲劇的で、詩的。 独特の魅力を持つこの骨太な戯曲に、木村達成、須賀健太、早見あかりら若き才能たちが体当たりで挑んでいる。8月末、その稽古場を取材した。
(左から)レオナルド役:木村達成、花嫁役:早見あかり、女中役:内田淳子
稽古場に入ると、スペイン・アンダルシアの乾いた風の匂いが漂ってくるかのような、 象徴的なセットが目に飛び込んでくる。そう、舞台はアンダルシア。“花婿”と“花嫁”は結婚を控えていて、それは喜ばしいことなのだが、“花婿”の母親は、自分の夫がある一族に殺されたことを忘れていない。そして“花嫁”のかつての恋人レオナルドは、その親族である……。逃れられない血の宿命と土地への執着、愛の衝動が絡まり、悲劇を引き起こしていく物語だ。
(左から)母親役:安蘭けい、花婿役:須賀健太、花嫁の父役:吉見一豊
(左から)母親役:安蘭けい、演出:杉原邦生
演出の杉原邦生の「よし、 やってみよう!」という明るい声を合図に始まったこの日の稽古。シーンは第二幕の半ばあたり。レオナルドと“花嫁”“花婿”の三角関係、そしてレオナルドの親族と“花婿”の父親の因縁などが浮かび上がる中、その不穏さを覆い隠すかのように賑やかに結婚式が始まる。チェロ、アコースティックギター、パーカッションの生バンドもすでに入り、フォークロア調の婚礼の歌が奏でられている。楽しげなのに、どこか郷愁を誘うその旋律が絶妙だ。
レオナルドの妻役:南沢奈央
(左から)女中役:内田淳子、花嫁役:早見あかり
祝祭感に満ちた空気の中、まわりの光量すら一段暗く感じるような一人異質な雰囲気を出しているのがレオナルド役の木村達成だ。台詞もなくスっと部屋に入ってきただけで目を惹く存在感。稽古着ながら、乱雑にまとめた髪に黒のロングブーツの似合う、ワイルドさ。木村がこれまでに演じてきた役とはひと味違う、新たな魅力だ。
レオナルド役:木村達成
レオナルド役:木村達成
甘い愛の言葉を交わす“花婿”と“花嫁”は須賀健太と早見あかり。しかしながら本心から優しく花嫁を慈しんでいるのが伝わってくる“花婿”に対し、何かを恐れるように「あんたの傍から離れない」と言う“花嫁”の温度差にもまた、不吉さが漂う。
(左から)花婿役:須賀健太、花嫁役:早見あかり、演出:杉原邦生

同じくどこか尋常ではない気配を感じている南沢奈央扮するレオナルドの妻……。祝杯があげられ、祝福のダンスが踊られる華やかな雰囲気の中、それぞれのキャラクターの一筋縄ではいかない心情が少しずつ露わになっていく。

(左から)レオナルドの妻役:南沢奈央、演出:杉原邦生、女の子役:出口稚子、演出助手
さらに安蘭けい扮する“花婿の母親”。けして忘れぬ憎しみを抱きながらも息子の幸せを願い、一方で何か良くないことが起きるのを予感しているような、しかしそうならないことを祈ってもいるような複雑な内面を、巧みな台詞まわしで表現。
母親役:安蘭けい

(左から)母親役:安蘭けい、花婿役:須賀健太
とりつくろった表の顔と、押し殺した内面を的確にみせていくキャスト陣の演技で、祝祭の空間はどんどん不穏さを増していく。そして、花嫁は姿を消す――。
(左から)母親役:安蘭けい、花嫁役:早見あかり
(左から)女中役:内田淳子、花嫁役:早見あかり
花嫁の不在が判明する場面では、「突然コトが起こりすぎる感じがするので、段階を追って整理していきます」と杉原。その言葉どおり、どの情報が誰にどう伝わっていくのかが明確に整理され、「何が?」「もしかして」「まさか」と、キャラクターたちの心情の変化がなめらかになっていく。ひとつひとつ布石を打っていくかのような杉原の理知的な演出で、緊張感がマックスになったところで第二幕が終わる。物語はこのあと、彼らの愛や激情がむき出しになる第三幕へ。第三幕では、ロルカの詩情溢れる戯曲の魅力もさらに色濃くなる。このカンパニーがどんな狂おしい愛を描き出していくのか、 楽しみにしたい。

(左から)女中役:内田淳子、レオナルド役:木村達成
(左から)レオナルド役:木村達成、花嫁役:早見あかり

東京公演は今秋9月15日(木)~10月2日(日)渋谷・Bunkamuraシアターコクーン、 2022年10月15日(土)~16日(日)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。チケットは絶賛一般発売中。

撮影:宮川舞子・サギサカユウマ  取材・文:平野祥恵

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