THE King ALL STARSの
1stアルバム『ROCK FEST.』は
加山雄三が最高の
ロックアーティストであることの証明

世代を超えたスーパーバンド

ザっと説明するつもりが大分スペースを使ってしまったけれど、それ自体が加山雄三というスターの偉大さ、奥深さを表していることとご理解いただきたい。加山雄三がロックであることは、こんなコタツ記事を読むよりも何よりも、氏がこれまで発表した音源を聴くのが最適であるのは言うまでもなかろう。『加山雄三のすべて~ザ・ランチャーズとともに』(1966年)や『恋は紅いバラ -加山雄三アルバム-』(1966年)、ライヴアルバムである『オン・ステージ(ランチャーズと共に)』(1968年)、さらにはインスト曲のセルフカバー『ブラック・サンド・ビーチ』(1994年)辺りを聴くのがいいと思うが、当コラムではTHE King ALL STARS『ROCK FEST.』を推したい。

知らない方のために、これもまたザっと説明すると、THE King ALL STARSとは、加山雄三を中心として2014年に結成されたロックバンド。2013年に行なわれた音楽フェス『ARABAKI ROCK FEST.13』に出演した加山雄三 & ARABAKI YOUNG KING BANDを発端にメンバーが集ったものだ。このメンバーもすごい。フェスによく行くという音楽ファンであれば、その名を聞いただけでも盛り上がる面子であろう。THEATRE BROOKの佐藤タイジ(Gu)、コーパス・グラインダーズの名越由貴夫(Gu)、The HIATUSのウエノコウジ(Ba)、勝手にしやがれの武藤昭平(Dr)、Benzoの高野 勲(Key)、ex.のオトナモードの山本健太(Key)。ここまでが『ARABAKI ROCK FEST.13』で演奏したメンバー。そこに加えて、MONGOL800のキヨサク(Vo)、THE COLLECTORSの古市コータロー(Vo)、SOIL&"PIMP"SESSIONSのタブゾンビ(Tp)、そして、パフォーマーとしてスチャダラパーの3人、BOSE(MC)、ANI(MC)、SHINCO(DJ)の総勢13人によるスーパーバンドである。

このうちの3、4人でバンドを組んだだけでも十分に話題になる面子だ。キャリアも豊富な手練ればかりで、演奏面での不安は何もなく、普通に考えて変な音源が出来上がるわけもないが、“船頭多くして船山に登る”の喩えもある。バンドのリーダー格が集まることでかえってまとまりがつかない…なんて可能性がなくはなかったとも思う。具体例は挙げないが、2、3人でも船が山に登っているというか、登りもしないようなことはかつていくらでもあった。けれど、THE King ALL STARSと、その1stである『ROCK FEST.』はまったくそうなっていない。何気にそこはすごいと思う。それは加山雄三という存在がバンドの中心となっているからに他ならなかったのだろう。

氏が他メンバーの精神的な支柱となっているのは当然として、収録曲のチョイスからもそれが分かる。M2「未来の地平線」とM10「ブレイブリーハーツ」はこのバンドのオリジナルだが、それ以外は加山雄三がかつて発表してきた楽曲ばかりである(M1「SEE SEE RIDER」はスタジオ音源ではこれが初収録のようであるが、氏も敬愛するElvis Presleyのカバーであり、ライヴでは披露している)。加山雄三が歌い、加山雄三がギターを弾くことを前提としていることで、いい意味で演奏が整理されている印象がある。見方を変えれば、加山雄三の懐の深さ、その中で他のメンバーが自由にやっている。そんな感じが随所にある。例えば、M3「Crazy Driving」。原曲からしてガレージ感のあるサーフロックで、このTHE King ALL STARS版もその辺りの空気感は見事に引き継ぎつつ、途中から原曲にはないタブゾンビのトランペットが表れる。その密集感、グルーブ感が実に素晴らしい。

OKMusic編集部

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