「ベルガモちゃん」(デザイン:内藤泰弘)

「ベルガモちゃん」(デザイン:内藤泰弘)

【かねやん的アニラジの作り方】第3
2回 声優イベントの変遷、「生」で
接する場の広がり

「ベルガモちゃん」(デザイン:内藤泰弘) 新型コロナウイルス感染の猛威がおさまりません。わがベルガモも出演者、スタッフの感染が多く番組の休止延期、イベントの出演者変更など対応に追われる日々が続いています。声優さんほど、感染対策を万全にしている職種はないでしょう。もちろんスタッフも涙ぐましい感染対策を続けています。それでも各声優プロダクションから感染の報告が相次いでいます。

 感染を発表している声優さんはおそらく10日間の中で一度以上、生配信番組やイベントなどを行っていると思います。10日とは感染したさい自宅療養すべきとされている期間です。声優の感染の公表が増えているのは、声優がそれだけ表に「生」で出演する場面が増えている証拠だと僕は見ています。
 それにしても配信も含めて「生」で接する場は本当に増えました。僕は以前から書いている通り報道記者出身ですので「生」が基本。だからアニメの分野を担当するようになった当初、声優さんの「生」に対する恐怖心は相当なものだと感じました。「生放送で変なことをいったら取り返しがつかない」「完全台本で用意してほしい」など、今では信じられないオーダーがありました。しっかり準備したうえで、ある程度ハプニングを許容するのが「生」の面白さだと、声優さんや事務所を説得したことを思い出します。僕がラジオ大阪時代に手掛けた「Vステ夏の陣・冬の陣」などといったお祭り生放送は、声優界の「生」への面白さに目覚めてもらうために少しは役だったのではないかという自負があります。そして2010年代に入って声優界の「生」化に大きく貢献したのが、「ニコ生」ことニコニコ生放送でしょう。ニコ生の普及によって、急速に生で仕事をすることが普通になっていきました。
 「生」で接する場の広がりは、様々な分業化をもたらしました。1990年代後半、僕が手がけた「國府田マリ子のGM」という番組の公開録音イベントは出演者である國府田さん、マネージャー、番組ディレクター、PAさん、そして僕の5人だけ。なんと効率がいいのでしょう。「生」化の拡大と番組数の拡大によって、まず「話すことがない」問題が発生します。「生」であることはある程度、身の回りで最近起こったことなどを話す必要がありますが、番組数が増えると声優さんにお任せしてきたことが「話すことがもうない」という問題にあたります。これをサポートする放送作家という業務がアニラジ界で重きをなしていったのは、ある種必然でした。イベントで昔なかったのに今必ずいるのがメイクさん。この業種の方々とのお仕事もこの10年です。もちろん、以前ラジオマンだった僕には全く付き合いのない人たちでした(ラジオは映像がないのでメイクさんとは付き合いがなかったのです)。ラジオ番組の公開イベントというと、普段よりちょっといい服を着て、という程度だったのですが。確かにメイクさんが入ることによって、声優さんの輝きが増し、僕なんかはコストが増えるものの納得せざるを得ない効果もありました。出演者が3人いる番組では、衣装をそろえようとなると、以前なら「1人予算1万円まで、領収書もらってきて」と声優さんに頼んで買ってきてもらいましたが、今ではスタイリストさんに入ってもらうことも普通になっています。またテクノロジーの進歩もありました。客前で歌を歌うとなると歌詞を全部覚えてこなければならず大事でしたが、今ではモニターからパワーポイントで歌詞を出すこと(いわゆるカンペです)によって簡単に歌を歌え、それ以上にダンスなどに力を注げるようになりました。このようにさまざまな業種の分業が進むことによって、「生」で接する機会はクオリティ高く量産できる体制が築かれました。
 ただコロナ禍を経て、新たな「生」で接する機会が求められているような気がします。新しいイベント像をどこよりも早く見つけたい僕の挑戦は続きます。

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