目に映るもの全てが“美” 舞台「パ
タリロ!」~ファントム~ ゲネプロ
レポート

2022年9月1日(木)天王洲 銀河劇場にて舞台「パタリロ!」シリーズ4作目となる「〜ファントム〜」が開幕。その初日直前に行われた公開ゲネプロの模様をレポートしよう。
舞台「パタリロ!」~ファントム~ 舞台写真  (c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会

サブタイトルの“連載45周年記念 祝いだ! 祭りだ! パタリロだ!”の言葉通り、舞台は幕開けから惜しみなくゴージャス! 所用でラスベガスに降り立ったパタリロ殿下がタマネギ部隊と魔夜メンズをバックダンサーに従え、「♪僕パタリロ〜」と自己紹介ソングで登場する。完璧なフォーメーションも美しく、あっという間に劇場内はハリウッドムービーの始まりのようなエンタメ感に満ち、客席からは自然と手拍子が起こる。タマネギたちのピコピコハンマー&ハリセンチョップのツッコミに早くも昭和心をかきたてられつつ、まずは占い師のザカーリと出会ったパタリロが相手の弱みに付け込んで恐ろしいまでの無茶振りをしていく“事件”の始まりまで小気味よく展開。さらに今回の物語のキーマンとなる魔術師のミスターフー、無理やりパタリロの護衛を命じられるヒットマンのヒューイットら舞台初登場のキャラクターも参戦、そこにもちろんバンコランとマライヒもジョインすれば……耽美でスリリングでLOVEとギャグと歌とダンスがグルグルに混じり合い溶け合っていく「パタリロ!」ワールドが炸裂するのだった。

(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
初演から“当たり役”のパタリロを演じる加藤 諒は今回も絶好調。理想のパタリロフォルムを武器に、もはやカリスマ的な存在感で歌に踊りに芝居に体を張ったギャグにと全力で舞台上を駆け回る。そのスキルの高さにも改めて目を見張る思いが。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
バンコラン役の宇野結也もファーストシーンからキレまくり! 原作のバンコランが美少年キラーぶりを極めながらも着実にギャグ漫画の住人へと変容していった如く、マックスまで振り切って輝く進化系のバンコランを見せてくれた。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会

マライヒ役の後藤 大は可愛さ増量、“ナチュラルな恋心を抱く可愛い恋人”という佇まいがキュート。原動力のすべてがバンコランへの愛、過去を乗り越え大切な人生を手に入れた柔らかさも魅力的だ。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
ザカーリ役の佐藤永典の手腕もさすが。第一声から観客を釘付けにする“舞台のザカーリ像”をきっちりと構築し、見目麗しさと時折よぎる「ちょっと残念な人かも…」というギャップで難敵のパタリロとも堂々渡り合っていく。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
謎多き人物・ミスターフーを演じるのは井阪郁巳。人当たりのいい超能力者というスマートさと、どうしようもなくバンコランに惹かれていく抑えきれない熱情を最後まで美しく伝えてくれる。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
ヒューイットを演じる丘山晴己は技巧派という印象。登場人物の中では最も“普通の人”に近いノーマルな振る舞いをしているように見えるのに、どうしようもなくじわじわとこちらの笑いのツボを侵食してくる独特の間合いがいい。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
タマネギ部隊の原嶋元久、佐川大樹、田村升吾、武本悠佑はちょうどいい存在感でステージを彩り、「4人しかいない」事実を上手に忘れさせてくれるタマネギのプロ。魔夜メンズの小沢道成、愛太、笹尾ヒロトも魔夜メンズのプロとして適材適所にステージを埋めていく本作に欠かせない存在だ。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
そして歌姫の中村 中。物語終盤、バンコランをめぐる怒涛のアクションシーンに彼女のドラマティックな歌声が重なっていくクライマックスは本当に感動的。原作への熱いリスペクトと共に、1曲の歌に絡め取られながら昇華していく「〜ファントム〜」という哀しい愛の物語──これぞ演劇的表現! 言葉にできない昂まりがくれる余韻はとてつもなく大きい。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会

今回は周年祭りということで本編の衣裳も華やかにバージョンアップされていて思わず細部にまで目を奪われてしまったが、さらに、事前アンケートを元にしたセットリストでのレビューショーも展開。休憩なしのノンストップ、過去作から印象に残った名曲の数々でもうひと盛り上がりが待っている。バンコランやタマネギ部隊のメドレー、パタリロやマライヒのソロナンバーを始め、全員参加での歌・ 歌・歌(コーナーゲスト、初日はなんと魔夜峰央氏。豪華!)。声援は我慢……だが、会場が一体になれるクックロビン音頭タイムもあるので、「パパンがパン」の合図に合わせてぜひご一緒に! 

(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
楽しい舞台は数々あるけれど、舞台「パタリロ!」は目に映るもの全てが“美”を中心に成っている上でのオモシロという高等技術が他の追随を許さず、また、見てはいけないものを見てしまった背徳感(&見せてもらえた満足感)も凄まじい。もちろんそれは原作者・魔夜峰央が作品に注ぎ込んだ美意識あってこそだが、舞台ではその原作の輝きをクリエイター陣と俳優たちが全力で実体化、マンパワーでしか伝えられない“幸福な時間”として、ドンと私たちの目の前に差し出してくれる。舞台「パタリロ!」、なにしろこちらは始まりから終わりまで、ずーっと笑顔で観てしまうのだ。本当に、なんて楽しいんだろう。原作が100巻を超えた今、さらにネタは尽きることなし。演出の小林顕作氏もどこかで言っていたように「目標・寅さん」で、この先もいつまでも続くシリーズになってくれたらと心から願っている。
(c)魔夜峰央/白泉社 (c)舞台「パタリロ!」製作委員会
初日会見コメント
■パタリロ役:加藤 諒  
本日、初日を迎えられたことを嬉しく思っています。舞台稽古中は、色々なことを気を付けなくてはいけないご時勢だったので、今まで以上に嬉しさが溢れています。このまま千秋楽まで突っ走っていけたらいいなと思いますので、皆さん応援よろしくお願いいたします!
■バンコラン役:宇野結也  
前回より、さらに人としての結束が強まったカンパニーになったなと思っています。結束が強まったことによって、作品のクオリティや目指すところも一段、二段とあがっていった稽古でした。素敵で、耽美で楽しいワチャワチャな世界が待っているので、ぜひお楽しみください!
■マライヒ役:後藤 大  
今回で僕がマライヒを演じるのは二回目になるんですけど、ほかにパタリロやバンコランたち続投のキャストもいるので、カンパニーが前よりもっと打ち解けて、相談したりディスカッションする機会が増えました。今のご時勢でもできる、パタリロの面白おかしい、舞台でしか出せない素敵な部分を皆さんにお届けできたらと思っています。
■演出:小林顕作 
原作の「パタリロ!」が来年で連載45周年なので、いつもとは少し趣向を変えて後半にお歌の時間もつくって(笑)、ものすごく盛り上げていきたいなと思っています。声を発する応援とかは出来ないですが、皆で拍手して盛り上がれるような盛りだくさんの内容になっているので、ぜひ楽しみにしていてください。
■原作:魔夜峰央  
単純に一人の客として楽しませてもらいたいなと思っています。毎回びっくりさせられることが多くて、皆面白いなと。計算ではなく、自然に演じられるということは役者さんの力量でしょうし、キャラクターに合っているんだなと思います。バンコランはバンコラン、マライヒはマライヒ、パタリロはこれ以外ないっていうパタリロですから。 本当に楽しみにしています。頑張ってください!
取材・文=横澤由香

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