ART-SCHOOLが帰ってきた。完全復活を
見せつけた会心のリキッドルームワン
マン、詳細レポート!

木下理樹の体調不良による3年間の活動休止を経て、4曲入りのEP『Just Kids .ep』をリリースしたART-SCHOOL。復活ライブ「Just be here now」が恵比寿リキッドルームで行われた。EP発売日の7月13日に新代田FEVERで開催された木下理樹(Vo, G)と戸高賢史(G)によるアコースティックライブは、途中で中尾憲太郎(B)、藤田勇(Dr)が現れ、サプライズに驚くオーディエンスを前にアンコール1曲を含む8曲を披露し、強靭なアンサンブルと伸びやかな木下の歌声で素晴らしいカムバックを見せつけたわけだが、そこから1か月強、こちらの予想を遥かに上回る完全復活ライブをART-SCHOOLはやってのけた。
開演時間になり、Aphex Twinの「Girl/Boy Song」が流れ、フロアは一気に期待と緊張が高まる。木下理樹、戸高賢史、中尾憲太郎、藤田勇という鉄壁の4人に加え、この日はNITRODAYのやぎひろみ(G)が加わった初めてのトリプルギター5人編成。帰還を歓迎する大きく長い拍手の中、「BOY MEETS GIRL」で超躍動的なアンサンブルを叩きつける。木下のシャウトの切れ味も抜群だ。木下が「ありがとう」と言い、「real love/slow dawn」に雪崩れ込む。戸高のドライヴしていくギターのカッティングを軸にしたヘヴィーなアンサンブルが凄まじい。3年ぶりの復活ライブということを抜きにしても、ART-SCHOOLというバンドのすごさが痛烈に伝わるパフォーマンスだ。
「Promised Land」、「ウィノナライダー アンドロイド」、「BUTTERFLY KISS」と立て続けに披露していく。繊細で美しいメロディ、何が起きてもびくともしないようなアンサンブル、儚いが確かな芯のある木下のヴォーカリゼーション、いくら年月を重ねようとも瑞々しいままの木下が創り出す楽曲の世界観──。序盤でART-SCHOOL完全復活を印象付ける。
戸高が「ART-SCHOOL約4年ぶりのリキッドルームです。正直もうここでやることもないかなと思ってました。戻ってこれて良かったです」と言うと大きな拍手が起こり、それに合わせて戸高も拍手をする。じんわりとした雰囲気が広がる中、木下が「では……」と朴訥な口調で話すので、思わず笑い声がフロアから漏れる。MCでは相変わらず不器用さを発揮する木下。その後披露された『Just Kids .ep』収録の「レディバード」では、活休を経て得た寄り添うような優しさを放ち、「ミスター・ロンリー」の「この夜はきっと きっといつか明けるだろう この傷はきっと きっといつか癒えるだろう」という、大阪の実家で療養中に感じていた絶望と希望を乗せた歌を多層的に押し広げるべく戸高の雄弁なギターが鳴る。
戸高がおもむろに「どんな気分なんですか?」と木下に尋ね、木下は「うん……」と言い淀み、戸高が「良かったですね。こんなにたくさんの人が見に来てくれて」と言うと拍手が起こる。「ありがとうございます。楽しんで帰ってくださいね」(木下)、「(笑)本当に気の利いたことが言えない」(戸高)、「(笑)」(木下)という、ART-SCHOOLならではの掛け合いも3年ぶりだ。

木下がフライングVを置き、片足を目の前のモニターに乗せ、力の限り歌った生命力そのもののような「アダージョ」。そして、「SWAN DIVE」の後は、『Just Kids .ep』収録の「柔らかい君の音」。嵐を経て、ようやく手に入った平穏を噛みしめるような柔らかく優しい音に幸福感が充満していく。

本編ラストのブロックは「Just Kids」「スカーレット」「ジェニファー’ 88」「ロリータ キルズ ミー」という流れだったが、何が良かったかというと、20年以上もの間、ART-SCHOOLが築き上げた唯一無二の轟音オルタナティブロックのキラーチューンの連打が、新曲「Just Kids」を皮切りに始まったということだ。木下の端切れの良い「Just kids!」というシャウトにフロアから拳が一斉に上がった「Just Kids」は、たまらなく痛快だった。本編ラストの「ロリータ キルズ ミー」まで、トリプルギターによってその轟音はさらに強度を増し、眩暈がする程にかっこよかった。
完全復活を祝福する手拍子の中、再登場した木下は、「何かエモいことを喋れって憲太郎さんから言われたんですけど……」と言ってちらっと中尾の方を見てから、「僕はこの瞬間すべてがエモーショナルに映ります。倒れてから約3年、またステージに立てたらいいなあと思ってたけど、想像以上に時間がかかってしまい、やっと今日を迎えました。メンバーとスタッフと支えてくれたお客さんに感謝を述べます。ありがとう」と話した。どこかたどたどしいMCに、温かい拍手が起こる。「アンコールも全力でやりますので受け止めてください」。
戸高に促され、木下が12月に東京と大阪でライブを行うことを告知する。戸高「随分間が空くと思ったと思うんですが、その間はアルバムを作りましょう。もっと良くなってもっとみんなを満足させてあげたいと思っているのでよろしくお願いします」。大きな拍手が送られた後、「シャーロット」「あと10秒で」「FADE TO BLACK」と、さらに熱狂を更新する。
最後の最後、ダブルアンコールで木下は「何か言い忘れたことないかなと思って……『ただいま』ということを言い忘れてました。ただいま」と力強く口にした。完全復活を遂げたART-SCHOOLはまだまだ続くのだ。
文=小松香里 撮影=中野敬久

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