小池徹平&城田優「カンパニーと共に
1ミリでも高く完成度を上げていきた
い」 ブロードウェイミュージカル『
キンキーブーツ』インタビュー

ビジュアル撮影も無事完了。秋に控えた3度目の上演に向けて着実に動き始めている『キンキーブーツ』カンパニーより、2016年・2018年に続きチャーリー役を演じる小池徹平と、今回初めてローラを演じる城田優が対談を実施。ミュージカルの舞台では初共演ながら“同級生”として長く友情を温めてきたふたりに宿る確かな信頼感と、飾らない言葉で語ってくれた作品に寄せるそれぞれの誠実な思いは2022年版の『キンキーブーツ』の揺るぎない土台となり、観客の心にも新たな愛と希望をもたらしてくれることだろう。
ビジュアル撮影の様子
──小池さんのチャーリーと城田さんのローラで挑む『キンキーブーツ』。舞台初共演となる本作に向けて今、どんな気持ちでいらっしゃるのでしょう?
小池:僕は今回が3回目の『キンキーブーツ』なんですけれど、(日本初演・再演でローラを演じた三浦)春馬のこともあったので、やっぱりいつもとは違う心情ではありますね。単純にただ一言「すごく楽しみだ」とまとめるだけでは言葉が足りな過ぎるな、という気持ちもありますし……もちろん「楽しみ」は絶対的に、すごく、自分の中にはあります。今この段階に来るまでにもたくさんいろんな方とお話しして、様々な心境も踏まえた上で「やるぞ」という気持ちにはなっていますし、なによりもやはり優が一緒にやってくれるというのは、僕にとって非常に頼もしい。とは言え、同級生の友達っていうところからいきなりこの素晴らしい作品のステージの上で初めて一緒にやるっていうのは、なんか夢のような感じもすごくしてるんです。初めてで、でも気心が知れてるので何もしなくてもわかると言うか。もちろん優の舞台もたくさん観ているので、共演相手としてはもう信頼しかない。まだやってもないのに安心感を勝手に感じているのが、今、現在の心境です。
城田:僕らは出会って約20年ぐらいの仲、シンプルにただの高校の同級生から始まっていて、これまで同じ学校の先輩、後輩、同級生含めいろんな方といろんなお仕事で共演する機会があったんですけど、徹平とは本当にごく稀にちょっと一緒になる程度でがっつりと共演したことがなかった中、今回の初共演。お互いはもう切っても切れない濃い関係性ではあるので、舞台上でももともと僕らが持っているものも十分に活かして使っていけるかな、とは思う。ただね、徹平は安心感しかないと言ってくれてても、僕はまだ不安しかないんですけど──
小池:ま、俺はそれも知ってるんですけどね(笑)。
城田:うん(笑)。
──…という以心伝心もできるくらいの間柄のお二人。素敵ですね。ではそれぞれに「今回はこういうところを大切に作り上げていきたい」と考えている“肝”になるような部分を教えてください。
小池:肝になる部分は優ですね、完全に。『キンキーブーツ』はストーリー上の主人公は僕が演じるチャーリーで、僕も絶対的に作品の柱にならなきゃいけない使命は確実に果たす気満々でやっていきますけど、やっぱりなによりも『キンキーブーツ』を支えているのはローラという圧倒的な存在。ローラあってこその『キンキーブーツ』なので。優は本当にこれから心も体も非常に削れる作業が待っていると思うんですけれど、彼ならやってくれるだろうな、という思いも僕はあるし、プレッシャーを与えてるわけじゃないんですけど、『キンキーブーツ』の肝と言えばやはりローラだと思います。
城田:すべての物語においてすべての登場人物が重要であるということは大前提なんですけど、徹平も言うように、ローラって本当に重要な存在だと思います。特に今回においては、ほとんどの他キャストのみなさんはもう勝手知ったる慣れ親しんだ3度目の公演。ストーリーや自分の役柄、振付、歌を含めてたぶん「懐かしい」とか「楽しい」という感情がきっとあるんだろうなと思う中、僕は果たしてその感情を千秋楽までに得られるだろうか、という思いもありつつだけど……でもそこに負けないように、自分は初めてやらせていただくフレッシュさを武器にできたらいいし、それをカンパニーにおける風というか、ひとつのエッセンスとして加えられればな、という思いではあります。あの、普段は僕、割とビッグマウスになることで強気の心境に自分を持っていく言動をするんですけど、今回はそれもちょっと難しく……
小池:なんでよ? 大丈夫? なんか、弱気じゃない?
城田:弱気も弱気よ。正直この胸の感情を言葉にするのも難しいですし……もちろん、とにかく与えられた時間をしっかりと使って全力で頑張るというのは常にあるんですけど。
──ローラの未知でフレッシュな第一歩。これはもう作品の柱・チャーリーの支えは欠かせません。
小池:もちろん。というか僕だけじゃないですよ、その気持ちは。みんなそうです。優が一番抱えているもの、多いと思うから。
──小池さんご自身についてはいかがですか?
小池:この3度目の公演をやるという判断をする時、僕にとって一番大きかったのは、プロデューサーとサシでじっくり話をしたこと。結局僕が座長として、というかまず、自分が座長であることをちゃんと背負って、みんなの思いも踏まえてしっかり話すべきだし、自分の思いもぶつけるべきだし……っていうのを最初にきっちりさせていただいて。やっぱり一人一人の思いが強くある作品なので、自分自身がどうするかを自分で決めないと、きっと良くも悪くも後々作品にも何かしらの影響を与えてしまうだろうと思いましたし、それぞれが自分で決めるべきだと思った。そこに関する思いはすごく強かったです。なので「みんなやろうよ」とは今回一言も言ってないです、僕は。で、最終的に自分はプロデューサーの強い思いも聞かせてもらい、「やる」という決意を決めてこうして今ここにいます。だから、もう僕はぶれることはまったく何もない。やるって決めたらやる人間なのでね。
──カンパニーひとりひとりが出した答えが今、私たちの前にあるわけですね。
小池:「やる」って決めたとき次に何が重要になるかっていうと、やはり「ローラ役は誰か」。それについてもプロデューサーと少し話しました。もちろん『キンキーブーツ』はオーディションも絶対あるのでそれも踏まえてだったんですが、前回(再演時)のオリックス劇場、大阪公演をやってたときに僕と春馬と2人で楽屋でいろんな話をして……この『キンキーブーツ』っていうミュージカル作品をまたこの先も日本でいろんな人が演じていったら嬉しいよねとか、すごく夢が広がる話をたくさんしたんですよね。
──そこに、城田さんがチャレンジしてくれた。
城田:僕は『キンキーブーツ』をニューヨークで観たときも日本で徹平と春馬がやったものを観たときも、ローラという役に対しての魅力とか憧れとかそういったものはすごく感じましたけど、「今の自分の人生ではローラという役を演じることはないだろうな」とも思っていました。じゃあなぜ今回ローラのオーディションを受けようと思ったかと言うと、春馬とよくミュージカルの話とかをしていた中で、ある時「いつか優くんにもローラを演じて欲しいんだよね」「そしていつか一緒のステージに立ちたい」といった想いを話してくれたことがあって。この時の春馬とのやりとりの記憶が、今回「受けてみよう」って思えるエネルギーに変わったんです。
逆に言うと、それしかないって言ってもおかしくはないというか。彼と話したことや……今ここで簡潔に話すのは難しいし言葉にするのも文字にするのも困難だとは思うんですけど……やっぱり彼に対しての思いというのが、僕はすごく強いですね。なので、決して彼のローラをコピーするわけでもなく、しっかりと自分なりのローラを演じないといけないなと思ってはいる。でもやっぱり春馬の圧倒的なローラを観ていて、そしてそこに穴がぽっかりと空いてしまった中で、誰がローラをやるにしても厳しい試練になるだろうなと思いますし、彼の本当に素晴らしい努力と才能を持って完成したローラ、実際生の舞台で観たものが本当に素晴らしかったので、そういったところへの思いを含めて「自分の中でできることがあるなら挑戦したい」という気持ちはオーディションでも伝えさせていただきました。
──そして実際にローラ役に決まったときは……
城田:今でもそうなんですけど、正直「やった〜!」とかっていう感情よりは……そうですね……ホントにうまく言葉にはできないんですが、まずは「しっかり全うしないといけないな」というところ。でもやるからにはもちろん楽しめるように、とも思いました。ローラという役はやっぱり自分を肯定してあげることがすごく大切な要素になってくると思うので、その辺を自分がしっかりと体現できるようにしたいなと受け止めています。
──小池さんはローラが城田さんに決まったと聞いていかがでしたか?
小池:正直、僕、誰がローラをやるんだろうってなったときに、本当に優しか浮かばなくて。今回3度目をやっていく中で、やはり、ただただキャストが代わった、ローラが代わったっていう状況じゃないので。そういうことを考えたとき、ローラをやってくれる人は自分の中でも絶対的な信頼感というか、気心知れた人で、なおかつローラをやれる実力を兼ね備えた人以外、ちょっと今回は無理だなと。で、優ももちろんこの作品はすごく好きでしたし、僕からも「やってほしいな」っていう連絡をして。もちろん優は優なりの思いや悩みが本当にたくさんあったでしょうけど……。だからいろんな思いを乗り越えて優がローラにチャレンジしてくれて、オーディションに受かってくれて、一緒に大好きな『キンキーブーツ』という作品で共演できるのは非常に僕は今嬉しいというか、優のおかげで楽しみに、より楽しみになったなっていう感じですかね。
──『キンキーブーツ』は大人の人生にもう一度希望を投げかけてくれる物語だと思っています。ローラが劇中「ありのままを受け入れて」というとてもシンプルだけど豊かなメッセージを発信してくれるように、例えばお二人も人間としてエンターテイナーとして、人生に挑んでいく中、なにか大事にしている言葉やモットーなどはありますか?
城田:スペイン語で「ケセラセラ」っていう言葉があって、僕はここ数年、30代に入ってからそれがテーマっぽくなってるかな。もともと僕個人の性格が非常にマイナス思考、ネガティブ思考で、周囲にも「繊細」とかいろんなこと言われるんですけど(笑)、そんな自分に最終的に役に立つ言葉が「ケセラセラ」。そのとき掲げている目的に向かって精いっぱい努力をして、それでもやっぱり抗えないことや考えても仕方ないことや不安や障害があったりする。でも自分がとにかくやれるだけやったのなら、最後はもうなるようになるだけ、ケセラセラだよって思って心を落ち着けるんです。あとは自分を鼓舞するためだったり余裕があると思い込めるよう、わざと「大丈夫、大丈夫」って言葉も乱発しますね。本番前とかに。
小池:え、大丈夫じゃないじゃん、それ(笑)。
城田:そう(笑)。大丈夫じゃないのに「大丈夫、大丈夫」「できる」「やれる」って……目の前の障害が多ければ多いほど、あえてそういうポジティブな言葉を言うんです。「ケセラセラ」=「なるようになる」も、投げやりなイメージではなくてもうちょっとも温かみがある感じ。「心配ないさ」的なマインドの言葉だから、周りの人たちにもそういう気持ちでなるべく声をかけるようにしますし、自分自身にもそんなつもりで言ってあげたりしますね。
小池:僕は自分の中でそういう不安があるときは、まずもうシンプルに、やるかやらないかっていう二択を自分に迫ります。「なに不安がってるんだよ。悩んでんだよ。迷ってんだよ」じゃなくて、「やるかやらないかどっちだ? やるんだろう? “やるんだったらやろうぜ”」っていう強い言葉で、もうやるしかないってところに持っていく。さらにもうひとつ。それを越えた先には自分の中で「脱力」っていう言葉を常に頭に思い浮かべてますね。手を抜くほうの脱力じゃなくて、肩の力を抜くほう。力み過ぎるとやっぱりよくない、ベストパフォーマンスできないので、もうホントに本番前は僕いっつも「脱力」のことしか考えてないです。どうせ出たら力んじゃうから(笑)。このふたつの言葉はいつもすごい大事にしています。
ビジュアル撮影の様子
──なるほど。心をほぐして事に向かうイメージですね。さらにはお稽古に向け、具体的な準備なども始まっているかと。
城田:準備はまだ個人レベルで、僕はヒールを履いての自主稽古などをやらせていただいてるんですけど、とにかくまあ大変で。本当に想像を絶する準備が……
小池:そりゃそうだよぉ。
城田:今日このあともボイトレの予定です。ローラはキーの高いナンバーが多いですし、自分自身も不安定なところがあったりするので、そのあたりをしっかりと直していきたいと思っています。
──シンディ・ローパーが手がけたゴキゲンなナンバーたちをまた聴けることも楽しみです!
城田:いろんなミュージカルがある中、『キンキーブーツ』のナンバーは非常にキャッチー。そういうシンプルだけど重要なポップスのポイントを押さえつつミュージカルにしているので、誰の耳にもスッと届くし、難しいけれど歌えると気持ちいい曲ばかり。ワクワクするメロディーラインはもちろん、トラックやアレンジもとても印象的で僕も大好きです。
小池:うん。本当に素晴らしい楽曲しかないけれど、優も言う通り、難しい。たぶん久しぶりに歌ったらすごい難しいんだろうなとかって改めて感じてる。ただ、歌えたときは確かにめちゃくちゃ気持ちいい! かなり魅力的な歌ばかりだと僕も思っています。
城田:徹平や他の前回からの出演者のみなさんは歌詞もセリフもストーリーもセットも、動きも含めて何もかも全部が染みてる状態だと思うんですけど、僕はその中にあとから入るので。もちろんみなさんの経験値をカバーするほどのことは絶対にできないですけど、でも目標は、そこをどこまで上げられた状態で稽古を始められるか、ですね。自主稽古でできるだけの準備をした上で、みなさんと共に1ミリでも高く完成度を上げられればな、と。一人でてんやわんやしてる時間がたくさんになってしまうと成長もできないですし、カンパニーのコミュニケーション、一番大事な人間関係を築くためにも自分自身の課題は先にクリアしておかなくては。あと数カ月、自分の中でとにかく越えなきゃいけない壁はたくさんあるので、まずはそれをやりつつしっかり準備して本稽古に挑みたいなと思っております。とにかく──頑張ります。
小池:僕もセリフを覚え直さないといけないですね。チャーリーも膨大なセリフがあるんで、まず準備としてはそれを覚えるっていうことと、あとはもう優を含め、このNEWカンパニーたちでどう楽しんでもらえるか。「現場で緊張してたり萎縮してる時間なんてないよ」っていうか、やっぱり「そんなのもったいないよ」っていうぐらい、早く「『キンキーブーツ』のカンパニーに来てすげー楽しいな」ってみんなに思ってほしいから、その雰囲気作りを心がけたい。こんなハッピーな作品、楽しくやったほうがいいに決まってるのでね。僕ができることって言ったら……ま、そういうところぐらいですかね(笑)。
城田:(笑顔)。
取材・文=横澤由香 撮影=敷地沙織

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