L→R Hina、Mona

L→R Hina、Mona

【Kitri インタビュー】
まだ出会っていない音楽を
映像から引き出してもらった

人のやしやさ温もり、
見えないものを表現したい

主題歌が決まるまでに候補を12曲も作られたそうですが、その中から「透明な」に決まった理由は何だったのでしょう?

Mona
もう“これしかない!”という感じで、監督も私たちもスタッフさんも満場一致で決まったんですけど、今考えてみると他の曲は映画の内容を音楽で伝えようと意気込んで作っていたところがあって。でも、映画は映画で全てを伝えてくれているので、映画の余韻が残るもの、最後に聴いて“良かったな”と思うものにシフトしていったからこの曲ができたんじゃないかと思います。

「透明な」はふたりのコーラスとピアノの和音から始まりますが、ここには劇伴でも大事にされていた余白を感じました。

Mona
この映画には透明感があると思ったので、それをピアノと歌で表現できないかと考えていたんですけど、なかなか出来上がらず。レコーディングの日は決まっているのに曲がない状態だったんで、“チェロとマンドリンでやさしい音色を入れたらうまくいきそう”という発想から主題歌にも羊毛さんと吉良さんに参加していただいて、珍しく先に楽器編成から考えていきました。

マンドリンとチェロの重なりには海辺っぽい涼しさがあり、ピアノの音は凛としていて、静かにじっくりと盛り上がっていく展開がこの映画にぴったりで。

Hina
主題歌はエンディングで流れるので、音の重なりが登場人物の心や物語そのものの重なりにも見える曲になったと思います。
Mona
登場人物のみんなが合唱しているような、ここでやっと通じ合える楽曲にできたらいいなという想いがあって、サビでひとつになれる曲ができたと思います。Kitriには今までなかった構成ですね。

サビの声の重なりは何奏くらい重ねているんですか?

Hina
高音と低音で分けて声を重ねることが多いんですけど、この曲ではふたりで同じ音を歌って数十回重ねています。

なるほど。同じ音で重ねているからこそ、おふたりの声だけでも合唱しているように聴こえました。また、ひとつの単語を2音ずつで歌い分けているAメロの歌割りも面白いです。

Hina
Monaから“Aメロはふたりで分けて歌いたい”と聞いていたんですけど、2音で意味を成す言葉が少なかったので、2音ずつの言葉を交互に歌うのではなく、4音でひとつの単語になる言葉にするのはどうかと相談してみたんです。ちょっと変だとも思ったんですけど、“新しくて面白い!”って言ってくれたので、このかたちでやってみました。共同作業みたいな感じで、歌っていても新鮮なので楽しいです。

歌詞のクレジットはおふたりの連名ですが、Hinaさんが中心になって作っていった?

Hina
はい。完成した映像を観てから歌詞を書いていったので、『凪の島』という映画そのものと、登場人物の気持ちに寄り添ったものにしたいと考えていきました。Monaもこの曲ができるまでにたくさんの曲を書いて、やっとの想いでできた主題歌だったから、言葉のチョイスも歌っていて気持ちが込められるものにしたいなと。ブラッシュアップする段階でMonaも一緒に書いてくれたし、特にサビは変わりましたね。もともとは《君に送りたい この世界に生まれた意味と愛があることを》と書いていたんですけど、Monaから“体言止めにするのはどう?”とアドバイスをもらってやってみたら、メロディーにもハマって広がりが出ました。
Mona
タイトルにもなっている“透明な”という言葉は最初は入っていなかったんですが、“あとひとつこの曲に入れたい言葉を…”と悩んでいた時に、もともと透明感を表現したかったことを思い出して、最後にふたりで“これだね”としっくりきて入れて、タイトルにもなりました。

楽曲を作る上で自然、海、島という情景もイメージされていたと思いますが、歌詞にはその単語が入っていないんですよね。

Hina
海や島のことは映像から十分受け取れるので、そこではない見えない部分というか、人のやさしやさ温もりだったり、まさに透明な部分を表したいと思ってあえて入れませんでした。

そんな意図があったんですね。『凪の島』の登場人物にはそれぞれ未熟なところがあって、それに向き合いながら一生懸命に生きる様子が描かれていますが、改めてそんな作品の主題歌「透明な」を作ってみてどんなことを思いましたか?

Hina
映画からはひとりひとりに抱えているものがありながらも、お互いに共感して支え合うやさしさが伝わってきて、愛おしい気持ちになりました。私たちの楽曲で聴いてくださる方々の心も包み込むことができたらと思っています。
Mona
最初は主人公の凪ちゃんに注目して観ていたんですけど、制作を通して何度も観ていくうちに、凪ちゃんは凪ちゃんで大人に言っていない気持ちがたくさんあったり、大人も子供に直接伝えていない想いがあるんだなと。生きているといろんなことがあるけど、みんなどこかで大事に思われていたり、人とのつながりで生きることができていたり、この映画で人の温かさに触れて、私たちも温かい気持ちになれた制作だったと思います。この経験を活かして、今後“新たな切り口でも曲が書けるかも!?”と期待が膨らんでおります。

取材:千々和香苗

配信シングル「透明な」2022年8月5日配信 BETTER DAYS
配信アルバム『映画『凪の島』 オリジナルサウンドトラック』2022年8月19日配信 BETTER DAYS
Kitri プロフィール

キトリ:幼い頃よりクラシックピアノを学んでいた姉のMona(モナ)とHina(ヒナ)によるによるピアノ連弾ユニット。ふたりが大ファンだと公言する大橋トリオの手に自主制作音源が渡ったことをきっかけに、大橋が手掛ける2016年公開映画『PとJK』の劇伴音楽に参加。19年には大橋がプロデュースしたEP『Primo』でメジャーデビューを果たした。その後、同年リリースの2nd EP『Secondo』、20年リリースの1stアルバム『Kitrist』に続いて、21年4月には2ndアルバム『Kitrist II』を発表。Kitri オフィシャルHP

「透明な」MV
(合唱ver. 凪の島合唱団)

「透明な」
“Toumeina” Official Audio
(映画『凪の島』主題歌)

映画『凪の島』予告編

OKMusic編集部

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