比企能員役の佐藤二朗(左)と妻・道役の堀内敬子 (C)NHK

比企能員役の佐藤二朗(左)と妻・道役の堀内敬子 (C)NHK

「鎌倉殿の13人」佐藤二朗「激しい憎
悪の火を燃やして、最後までやり切ろ
うと」 堀内敬子「“強い母親”を意
識」比企一族の壮絶な最期を振り返る

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。8月14日放送の第31回「諦めの悪い男」では、北条家と激しく対立してきた比企一族が滅亡。ここまで比企一族の当主・比企能員を演じてきた佐藤二朗と、妻・道役の堀内敬子がコメントを発表し、その最期を振り返った。
 能員の壮絶な最期を演じ切った佐藤だが、意外にも撮影前は「その前の時政(坂東彌十郎)と2人っきりのシーンとか、あるいは第30回の、廊下を挟んで義時(小栗旬)と2人で対峙(たいじ)し、そのあと善児(梶原善)が出てくるシーンとかの方が、僕としては大事なように思っていた」のだという。
 ところが、リハーサルの段階で思わぬ出来事が起きた。
 「死ぬシーンのリハーサルをやったら、小栗義時と、坂東彌十郎さん演じる時政の親子がすごくいろいろ、僕より真剣に提案しているんですよ。『ここは俺が刀を抜きたい』とか、『俺が口で言って』とか小栗が言ったり、彌十郎さんも『こういうやり方もある』と言ったりして、いろんなことを提案してくれて」
 さらに、「演出担当の若い保坂(慶太)監督も、こっちが思ってもいないような演出をしたり、プロデューサーの清水(拓哉)さんもいろいろ提案してくれたり」と、誰もがいいシーンを作り上げようとする姿勢に、「僕が死ぬのに、周りの人の方が積極的」と感じた佐藤。
 そこでハッと気付いたのが、「いかんいかん!もっと高みを目指さなきゃ」ということだった。
 「どの仕事もそうだけど、一人でやっている仕事じゃなくて、共演者や周りのスタッフに押し上げられるというか、『おいおい、もっとこいよ!』と引っ張られるような感覚になるときが、俳優をやっていると確かにあるんです」
 当時の気持ちをこう振り返った佐藤だが、その喜びを、酔った勢いで備忘録的にtwitterに書いたところ、ニュースになるというおまけまで付いたという。
 これで気を引き締め直した佐藤は「僕はとにかく北条の親子と憎しみ合う役ですから、役者として、普段は仲がいいんですけど、カメラが回っているときには当然、激しい憎悪の火を燃やして、最後までやり切ろうと思ってやっていました」と撮影に臨み、見事な最期を映像に焼き付けた。
 一方、堀内は、夫の能員がよろいを身に着けずに時政の下を訪れ、討たれてしまったことについての思いをこう語る。
 「そこまで不安に思っていなかったけれども、『やっぱりやられたんだ』という、予想をちょっとしかしていなかったことが目の前に起こったという感じ、驚きの方が大きかったかなと思います」
 その後、館に攻め込まれる場面の撮影前には偶然、北条方が攻めてくるシーンの映像が流れていたのを目にしたという。
 「それを見られたので『こんな感じで攻めてきているんだ』というのが分かって、より一層、自分の心に緊迫感を増すことができたかなと。普通だと見ないままやることが多いですけど、ちょっと攻め手の声が聞こえたり、そういうのを流してくださったのを見たりしたので、すこし気持ちは高まったと思います」
 こうして一段と気持ちを高めて臨んだ道の最期の場面について堀内は「とにかく“強い母親”という感じは意識しました」と振り返り、その言葉に込めた思いを語った。
 「死ぬことに関しても悔いは全然ないし、能員が死んだ時点で。もう生きてはいられないという気持ちもあったと思いますし。ただ、みんなが本当に逃げ延びられるのかも分からないから、そこはちょっと不安なところはありますけど、自分のやることをやって、みんなを逃がして引き止めるという、その強さが出ればいいなという感じはありました」
(取材・文/井上健一)

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