『爆裂都市(BURST CITY)
オリジナルサウンドトラック』は、
陣内孝則、大江慎也らが
自ら音をかき鳴らした規格外の劇伴

“博多のロック”のスーパーセッション

何故に演技ほぼ未経験のミュージシャンを起用したのかと言えば、それはもう石井監督が本作にロックミュージックを必要としていたからに他ならない。しかも、単にその演奏を劇伴にするだけではなく、ライヴシーンを含めて彼らの一挙手一投足をも収めたということは、バンドマンたちが発散するエネルギーも含めてフィルムに焼き付けてしまおうという目論見があったのだろう。本稿作成にあたって石井監督のことをあれこれググっていたら、2005年3月24日の『ほぼ日刊イトイ新聞』に掲載されたインタビューの中で興味深い言動を発見した。少し長いが以下に引用させていただく。

[今の現代社会、東京もだけど、「野生」っていうものは、見えない。というか‥‥本来ぼくらは地球の上に住んでて、巨大な宇宙の中の「地球」という惑星の中に住んでて。地球の、「ある所」に住んでるんですよね。そういう当たり前の「野生」というか、ワイルドな力の中に、奇跡的に生きてるんだけど、都会の24時間の世界に生きてると、「野生」とかそういうものって、一切必要ないですよね。いらないんですけど‥‥俺は必要としてると思うんです。「ロックにひかれる」とか、「うわーこのベースかっこいい!」「ドラムの音がズンズンくる!」とか、「ガムランいいねー」とか。そういうことを、「本能」っていうのが、求めてるんだと思うんですよね。]([]は『ほぼ日刊イトイ新聞/インディーズ映画の冒険野郎。石井聰亙監督の話をふむふむ聴く。』からの引用)。

これは浅野忠信、永瀬正敏が主演した2001年7月公開の短編特撮アクション映画『ELECTRIC DRAGON 80000V』についてのコメントではあるが、そのまま『爆裂都市 BURST CITY』にも当てはまると思う。都会において“野生の本能”が求めるもの──引いては都会において“野生の本能”を呼び覚ますものとして石井監督はロックミュージックを用いているのだ。本作の舞台は近未来の架空の都市であるのものの、サイバーっぽさがほとんどなく、圧倒的に野蛮で粗野なイメージを強く感じさせる。それは劇伴の影響が大きいのかもしれない。

で、その肝心な劇伴。出演してるザ・ロッカーズ、ザ・ルースターズ、ザ・スターリンの楽曲も使われているが、いくつかの楽曲が劇中に登場するバンド“バトル・ロッカーズ”名義である。ここまで説明して来なかったので一応説明しておくと、“バトル・ロッカーズ”とは本作の主役のひとつと言っていい存在で、前述した陣内、鶴川、大江、池畑に、オーディションで選ばれた伊勢田勇人(Ba)を加えた5人編成のバンド。つまり、本映画用に結成されたバンドである。しかも、1980年代の“博多のロック”の第二世代≒いわゆる“めんたいロック”の2バンド、ザ・ロッカーズとザ・ルースターズとのタッグだった。当時のシーンをど真ん中で浴びていた人たちにとってはかなりのニュースだったかもしれない。映画の公開と当サントラの発売告知を兼ねたフライヤーがネットに上がっているのを見つけたが、そこには“超話題! 旋律のスーパーセッション、バトルロッカーズ登場!!”との惹句が踊っていた。界隈ではまさに“バトル”と呼べるような顔合わせだったのだろう。

OKMusic編集部

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