くじら

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【くじら インタビュー】
このアルバムが
今の時点での集大成だと思っている

くじらはこれまでyamaやAdoなどをヴォーカリストに迎え、新たなヒット現象を巻き起こしてきた新しい才能だ。結果、くじら以前/以後でシーンには大きな変化が起きた。そして、その歩みはさらに進化を遂げる。そんな彼が全曲自らが歌唱するアルバム『生活を愛せるようになるまで』をリリースした。パーソナルな感情の揺らぎを可視化する要注目の一枚だ。

自分の中に
これまでなかった感情

日常を描く情景や心理描写の鋭さに感銘を受けた『生活を愛せるようになるまで』、素晴らしいアルバムでした。完成した今、どんな気持ちですか?

今の時点での集大成だと思っています。アルバムのタイトル曲を書けたことが大きかったですね。アートワークを漫画家の浅野にいおさんに描いていただけたり、達成感があります。

アルバムを完成させるにあたってテーマやキーワードなどはありましたか?

タイトルと同じく“生活を愛せるようになるまで”かもしれませんね。今までずっと言いたかったことで。その核心、ど真ん中にあることを書けたと思っています。考え事をしている最中に気がつけた発見や価値観が僕にとっては新しく、自分の中にこれまでなかった感情をきちんと言語化できた時に、“じゃあ、これを中心にアルバム作品を組み立てよう”と思いました。

なるほど。

漫画の週刊連載で例えると、キメになるような一話ができたから、それを中心にして今までの話を単行本にしてまとめようというか、そんな感じかもしれません。もともとタイトルから決めてアルバムをがっつり作るって感じではなく、ぽつぽつと日々の中で出来上がった曲を束ねてくれるような強い曲ができたので、それを中心にアルバムにしようと思ったんですよ。

くじらさんらしさが、さらに進化して確立できたのが本作だと思いました。中でも「悪者」という曲が生まれたのは大きかったんじゃないですか?

まずはフィーチャリングでシンガーの相沢と作った「悪者 feat. 相沢」があって。普通の私生活の話をする中で、相沢の声質から思い浮かんだのがこの曲でした。相沢のヴォーカルだけでやるのもいいけど、片方から見たらこんなシチュエーションだけど、もう片方からだと実は全然違うというアイディアからMVをふたつ作ってみたんです。それで、初めてタイトルである「悪者」の本当の意味が分かったら面白いと思って。初めは小説家のカツセマサヒコさんに執筆いただいた小説で表現できればいいと思っていたのですが、せっかくならMVもふたつ欲しくなったんですよね。恋愛ソングなのでもうひとりのヴォーカルが必要だと思い、“じゃあ、自分も歌おうかな?”となりました。

そういう流れだったんですね。

はい。だから、アルバムでは自然な流れで自分で歌うことになりました。MVも小説もしっかりと作らせていただいたという感じですね。「悪者」を自分で歌ったことが自分で歌うという活動のきっかけになりました。

改めてアルバムで聴く「四月になること」もいいんですよね。日常を大切に生きること、忘れられない感情を思い起こされます。ソウルフルでアッパーな「抱きしめたいほど美しい日々に」、ドラマチックな「エンドロール」ではアレンジ力の高さにも驚かされました。日々くじらさんの成長を感じますが、楽曲を形作っていく上で大切にされていることを教えてください。

私生活で大切にしていることがアーティスト・くじらとして大切にしていることにつながっていると思います。曲を書き始めた最初の頃は、ファンタジーな世界観が好きだったんです。ボーカロイドで作っていたので、特にですよね。楽曲の中で物語が起きるみたいな。でも、自分はそのパターンは早い段階から苦手だと気がつきまして。

そうだったんですね!?

活動を始めるきっかけにもなるんですけど、自分の感性だったり物事を見る目が他人からは“変な人だね”と言われがちで、自分でも特殊なんだろうなと思っていたんです。でも、全然そんなことはなくて。一般的な10代、20代。でも、ちょっと音楽が好きなタイプの感性なんだなと。それが逆に自分にとっては武器になると思ったんですよ。日記を書いてみて寂しさを感じる気持ちとかを解像度を高めて抽出することができれば、共感性につながるのかなと。そう思ったのが、くじらというアーティスト活動の軸になっています。日常を描きたかったんですよね。なので、自分を甘やかさないというか、自分が作ったものを客観視することを大事にしています。それは私生活でも、作品を作る上でも変わらないですね。

とてもビジョンが明確なんですね。

例えば曲を作っていて“これにくじらっぽさをプラスしたら喜んでくれる人が増えるだろうな”と思ったらそれはやりたいことですし、喜んでくれる人がいないとしても、こういう姿勢を見せたいからあえてやろうと考えることもあります。常に楽曲は誰かに聴かれるものだと意識しています。

さらに明快なお答えをありがとうございます。プライベートな視点から生まれた歌詞を表現されていると思うのですが、くじらさん世代だとボカロPでは、じんさんの『カゲロウプロジェクト』など小説化さされていくフィクションの物語が人気でしたよね? 

大好きですね。

ルーツのひとつにありながらも、自分らしさ、くじららしさを自覚的に確立されたことがすごいと思いました。しかも、日常の高解像度で描いた世界観にリスナーの方々は魅了されているわけですもんね。ちなみにくじらさんはどんなアーティストの方をリスペクトしていたり、作品においてインスピレーションを受けたりするのですか?

一番好きなアーティストはキタニタツヤさんなんです。メロディーセンスだったり、曲の感じなど、憧れて憧れてここにいるので。キタニさんはたくさん音楽を聴かれていて、そんな中からたくさんの要素を抽出して曲を生み出されていると思うんです。ということは、キタニさんの曲を聴くとキタニさんのフィルターを通してたくさんの抽出された曲たちを聴くことにもなるんですよ。

なるほど。それは面白い考え方ですね。

抽出された濃度の高い液をいただけるという感覚です。あと、“物事にはこんな見方があるんだ!?”とか“これをこうやって伝えるんだ!?”とか“切り取るんだ!?”みたいな発見があったり。他には時速36kmというバンドがいまして、その影響も強いですね。
くじら
アルバム『生活を愛せるようになるまで』【完全生産限定盤】(CD+Tシャツ)
アルバム『生活を愛せるようになるまで』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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