L→R 海(Ba)、たかはしほのか(Vo&Gu)、ゆきやま(Dr)

L→R 海(Ba)、たかはしほのか(Vo&Gu)、ゆきやま(Dr)

【リーガルリリー インタビュー】
心の器からあふれ出してしまうほど
私の感情を占めていたのが
“恋と戦争”

配信リリースされたデジタルEPのタイトルは“恋と戦争”。まるで対極にあるようで、その実、とても近しい“恋”と“戦争”だが、このふたつをコンセプトに作り上げた今作のなんとキャッチーで、なんとただならないことかー。異彩を放ち続けるリーガルリリーの衝撃的にして会心の一撃を存分に喰らってほしい。

一人称は“君”になっているけど、
この曲は自分に書いた曲

今年1月にリリースされた2ndフルアルバム『Cとし生けるもの』から半年余りで、早くもEPというボリューム感があり、とてもコンセプチュアルで聴き応えも十二分な作品が届くとは嬉しい驚きですが、今作が生まれるきっかけはなんだったのでしょうか?

たかはし
今年の春頃に“夏にEPを出しましょう”という企画があがって、それが“私が歌いたいことって何だろう?”と考えるきっかけになったんです。“今、本当に自分の口から出したいと思うことは何だろう?”って。ちょうどその頃、自分の心の大半を占めていたのが“恋”と“戦争”だったんですね。自分にとって身近な恋と、ニュースとかで身近には感じているけど実際にはとても遠くで起こっている戦争。そのふたつってかけ離れているようで、つながっていることでもあるんじゃないかと思ったんです。

のっぴきならなさという意味では確かに共通しているように思います。

たかはし
本当に心の器からあふれ出してしまうほどに自分の感情を占めているのがこのふたつで、特に戦争に関しては…例えば自分の中にある“正解”も“間違い”も無力になってしまう。私は現実社会で生きていくにはそういうことから目を逸らすのも大切というか…“そういうものなんだから仕方がない”って言いながら、この社会で生きていかざるを得ない状況があることも分かってはいるんですけど、どうしても目を背けるのが自分自身で許せなくて。自分の器に収まりきれなくてあふれてしまっても、そういう現実とか、それによって感じたこととか、そうした全てを食べ残すことが許せなかったんです。だから、「ノーワー」の歌詞でもそういう表現をしていて。一人称は“君”になっていますけど、この曲は自分に書いた曲、私自身を歌った曲なんです。

「ノーワー」の歌詞の1行目、《君は全てを体に入れてトイレで吐いた。吐いた。》は、まさにたかはしさんのことなんですね。目に映るものも耳に飛び込んでくるものも生まれた感情も、まずは全部をしっかり受け止めたいと?

たかはし
はい。例え自分の器が限界になって吐き出したとしても、一度全てを取り込むことで、自分の器のかたちが作られるんじゃないかと思っていて。
ゆきやま
今、思い出したんですけど、「ノーワー」が送られてきた時に私はちょっと「リッケンバッカー」(2016年発表のアルバム『the Post』収録曲)につながっているのかなと思ったんですよ。あの曲にも“食べ残す”っていう言葉が使われているんですけど、ほのかはずっといろんな物事とか感情とかを食べてきたんだなと思いましたね。

「ぶらんこ」(2016年発表のアルバム『the Post』収録曲)にも《きみがはいた》という一節がありますし。

確かに言ってる。
たかはし
歌うことと吐くことって似ているから。歌いながら歌詞を書いている時とか言葉を吐いているような感覚になるんです。

恋も然ることながら戦争というものが作品のテーマとして、たかはしさんの意識に芽生えたのは、やはり現実に戦争が起こったことが大きいですか? それとも、ずっと感じたり考えていたことがこのタイミングでかたちになったのでしょうか?

たかはし
小学生くらいの頃から戦争についてはいろいろ聞かされていましたし、私が生きてきた中でも世界のいろんなところで戦争や紛争は起きていて、そういうニュースを観たり聞いたりしてきましたし…だから、戦争というものはずっと頭から切り離せなかったんですよ。例えば美しい自然の絵を描いたり、何か作品を作るとなると、なぜか破壊することを人間はやめないという現実も考えてしまったりして。でも、今回の戦争はこれまでのものとはまた違った争いだと感じたんです。それこそインターネットの中での対立、SNSで戦争反対を訴える人たちと戦争に興味がない人たちとの間の対立だったり、実際の戦地ではない情報社会の中での争いというか…。

戦争を議論すること自体はとても大切なことなんですけどね。

たかはし
そう思います。でも、そういうSNSでの対立とかを見ていると、“#NoWar”がまるでトレンドみたいに感じられてしまう瞬間もあったりしたので。それがどうしても飲み込めなくて、曲名を“ノーワー”にしたんです。直接的すぎると思ったのですごく考えたんですけど、最終的にこれに決めました。

ゆきやまさんと海さんは、たかはしさんから最初に「ノーワー」を受け取った時にどう感じましたか?

今までとは違う感覚はすごくありましたね。言葉のハマり方とか曲が持つ力だけじゃなくて、今まで以上に言いたいこと、フレッシュな気持ちが詰まっているような。そう感じたのはきっと私自身もどこかで同じようなことを考えていたからだと思います。ネットニュースとかSNSとか、そういうものを意図せず取り込んでしまうことが、やっぱり私にもあったんですよ。それがちょっとつらいと思っていたところにこの曲が送られてきたので、とても共感したし、助けられた部分もすごくありました。デモの時点ですでに特別な曲だったから、どうにかしてもっと特別なものにしたいという気持ちでしたね。
ゆきやま
前回のアルバムで全部を出し切ったあと、次はどんなものを基準にして新しく一歩を踏み出すかという時期に、いろいろと曲が出てくる中で「ノーワー」のデモが送られてきて。聴いた瞬間に“たぶんこの曲がその走りになってくれるんだろうな”って私だけじゃなく、みんながそう感じていたと思います。メロディーがいいとか具体的に何がどうということではなく、直感的に“これだな”みたいな。
たかはし
アレンジ面で言うと「ノーワー」はゆきやまの提案してくれたリズムが基盤になって曲を引っ張っていってくれたんですよ。
ゆきやま
大事な言葉がいっぱい詰まっている曲だから、この言葉をオケでどうやって届けたら一番いいのかなと思って。どういうリズムに乗せるかはすごく大事じゃないですか。どこか寂しさとか、やるせなさみたいなものがあってほしいと思ったんですよ。

では、2曲目の「明日戦争がおきるなら」はどのようにしてできたのでしょうか?

たかはし
プリプロに入る日の朝に歌詞だけを全部書いたんです。スタジオでみんなが他の作業をしている時、私はその場にあったアコースティックギターでその時の感情のままにメロディーをつけて、“これ、今日やってみない?”って出来立てほやほやの曲をみんなに聴かせて(笑)。そこからかたちにした曲なんですよ。

おお! そういう作り方ってリーガルリリーではよくあるのですか?

ゆきやま
ちょこちょこありますね。「たたかわないらいおん」(アルバム『Cとし生けるもの』収録曲)もそうだったよね。
たかはし
私が思い立った時にそうやってもらっています。すみません(笑)。
ゆきやま
でも、いい感じになることが多いんですよ。受け取った側の気持ちにも鮮度があるので、そのままできるのは楽しいですね。
もちろんあとから肉付け作業はするんですけど、すごく純度が高いというか。

エモーショナルかつダイナミックなスケール感があるアンサンブルですよね。

たかはし
1番のAメロに《心臓の音》という歌詞が出てくるんですけど、ベースで心臓の音を表現してくれているんです。
キックの音とかゆきやまとふたりでいろいろ試していたんです。
たかはし
なので、土台は心臓の音にしようと思って。

ゆきやまさんはこの曲に対してどうアプローチしようと?

ゆきやま
自分にとってこの曲は精神年齢が中高生ぐらいな気がしたんです。大人のゆきやまちゃんだったらやらないような青々しさを感じて。ダイナミックさがあると言ってくださったのはそういうところなのかなと思います。

大人の自分だったらやらないってなんとなく分かる気がします。抑制を効かせているようで迸っている感じとか、まさにですね。

ゆきやま
そうなんですよ! 淡々としきれていないというか。そうしようとしたというよりは、そうなったという感じなんですけどね。

そうしたアンサンブルに乗せて歌われる歌詞がまたとても身につまされるというか、他人事ではない切実さが胸に迫ってきます。

たかはし
“明日戦争が起きるなら”と思うことって、ここでは戦争が起こっていないことであり…でも、どこか遠い国で戦争が起きているということなんですよね。もしも戦争のない世界だったら、“明日戦争が起きるなら”なんて考えもつかないはずで。私たちは今、当たり前に恋愛をしたりご飯を食べたりしているけど、同じ世界のどこかでは戦争をしている…そういう状況を歌いたかった曲なんです。
L→R 海(Ba)、たかはしほのか(Vo&Gu)、ゆきやま(Dr)
L→R 海(Ba)、たかはしほのか(Vo&Gu)、ゆきやま(Dr)
たかはしほのか(Vo&Gu)
たかはしほのか(Vo&Gu)
ゆきやま(Dr)
海(Ba)
L→R ゆきやま(Dr)、たかはしほのか(Vo&Gu)、海(Ba)
配信EP『恋と戦争』
リーガルリリー『cell,core 2022』

OKMusic編集部

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