L→R 中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)、菅原卓郎(Vo&Gu)、滝 善充(Gu)

L→R 中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)、菅原卓郎(Vo&Gu)、滝 善充(Gu)

【9mm Parabellum Bullet
インタビュー】
前向きさとギリギリの厳しい状況を
模索しながら表現した

僕らの中でリバーブを使うのが
ずっと流行っている

「All We Need Is Summer Day」「淡雪」のような、季節感をこれまで以上に出した曲が入っているのも印象的でした。哀愁や奥行きがあって。

ありがとうございます。9mmの曲ってサウンドの印象に反して、メロディーに乗せられる文字数が意外と少なかったりして、“これだけしか使えないの!?”みたいな気持ちになることも多いんです。その制限された感覚が短歌や俳句にちょっと近くて。「淡雪」は“月がきれいだな”とか“あの人に会いたいな”とか、そういうシンプルなイメージで歌詞を書いてみましたね。歌を詠むようなタッチで《さよなら 今年もまた 桜が咲きはじめて》と始めつつ、ギターのフレーズから春先に雪が降っている絵が浮かんだので、季節感のある方向に導かれていったかたちです。

アルバム全体を通してギターの音が淡さを増した感じがします。

前作の『DEEP BLUE』(2019年9月発表の8thアルバム)あたりから、僕らの中でリバーブを使うのがずっと流行っているんですよ。ギターを録る時に合いそうだったら、とにかくふんだんにリバーブをかけるみたいな感じで(笑)。サウンドの遊びもすごく楽しみながらやっています。「淡雪」は滝がすでにそのテイストでデモを作ってきたし、「煙の街」も“演歌とか歌謡曲っぽいリバーブの音作りをしたい”とメンバーで話していて。ヴォーカルに関しても、今回はディレイとエフェクトの要素が強いですね。エンジニアさんに任せてミックスで処理するというより、録る段階で“こんな響きが欲しい”みたいな構想がちゃんとありました。滝が一から作ったり改造を加えたりしたマイクやプリアンプを使っていたりするのですが、これが予想以上に素晴らしかったんですよ。なので、他のバンドとますます被らないオリジナルな音になったんじゃないかと。

あと、今作ではグルーブの大きさが際立っていると思いました。スリリングでメロディアスなインストの「Spirit Explosion」もそうだし、「泡沫」のテンポがスローダウンするところとか、「Tear」も曲尺以上の濃厚な味わいで。もともと9mmの特徴としてあった卓郎さんの歌を中心に生まれる大きなグルーブが、さらに巨大に感じられる瞬間が多かったです。

これまではさほど狙って作ってこなかった音響的な部分を、今回はかなりいろいろ考えましたからね。さっき話したヴォーカルやギターのエフェクトとか、自分たちが細かく指定したのは初めてで、そのコントロールがグルーブの大きさにつながっているんだと思います。エンジニアさんだと躊躇いそうな場面も、僕らが“大丈夫です! もっとやっちゃってください!”みたいな感じで進められたので。

表題曲の「タイトロープ」はどんな曲になりましたか?

この曲はデモ段階から展開が目まぐるしい今の構成になっていたので、どういった表現をすればいいのかがなかなか掴めなかったんですよね。歌入れの日まで歌詞を書いている、本当にタイトロープ状態になっちゃって(笑)。粘りに粘った結果、9mmのハードボイルドな側面がガツンと出ました。賭けというか、身を任せちゃう感じ。ちょっと投げやりな気持ちにも聴こえるかもしれないんですけど、人生は時に“もう挑戦するしかないじゃん”っていうタイミングがあるから。そんなシチュエーションで踏み出すための曲ですね」
ーポジティブとネガティブ、どっちの感情も含まれているような不思議な曲ですよね。
最終的にポジティブな方向へ行ければいいなと。ただ単にギャンブルでスリリングな印象だけで終わってほしくない曲でもありますね。始まり方からして怪しい雰囲気が際立っていますけど、この不穏なアレンジゆえに“タイトロープ”っていう言葉が出てきたんだと思います。

サビの《Tell me why こんなこと いつまで続けるの》とかは、例えば世の中の綱渡り的なコロナ対策を連想させるような響きもなくはなかったです。

うんざり感が見えますもんね。今おっしゃっていただいたように、そうやって歌詞の物語の範疇をはみ出して聴こえてくれたら嬉しい気持ちもあるんです。かと言って、あまり企みすぎるとあざとくなってしまうので、そこは塩梅が難しいんですけども。自分がシンプルに歌詞を書けている時は、そういう作用が起こりますね。いろんなとらえ方ができるのなら、きっといい歌詞なんだと思います(笑)。

アルバムタイトルを“TIGHTROPE”としたのは?

前向きさとギリギリの厳しい状況にいるっていうところのバランスが、まさに今の世界を表していてちょうど良かったんです。アルバムのツアーのタイトルも“Walk a Tightrope”にしたんですよ。このタイトルにすることによって、危ない橋をどうやって渡るのか、渡りきるための方法を模索しながら表現したのが伝わるから。

9作目のフルアルバムなので、バンド名の“9”を絡めたタイトルの可能性もあったのかなと思いましたが。

もちろんありましたよ。9枚目のアルバムだからタイトルに“9”を入れようかとか、セルフタイトルにすることを一瞬考えたりもしました。だけど、こうしてバシッとくる言葉が出てきたので、今は“TIGHTROPE”にして良かったとすごく思っています。

取材:田山雄士

アルバム『TIGHTROPE』2022年8月24日発売 Sazanga Records/TRIAD
    • COCP-41808
    • ¥3,300(税込)
    • ※初回生産分のみスリーブ&フォトブックレット付き

ライヴ情報

『9mm Parabellum Bullet presents「Walk a Tightrope Tour 2022」』
9/09(金) 大阪・Zepp Osaka Bayside
9/11(日) 愛知・Zepp Nagoya
9/19(月) 福岡・Zepp Fukuoka
9/23(金) 宮城・仙台GIGS
10/02(日) 東京・Zepp Haneda(TOKYO)
10/09(日) 北海道・Zepp Sapporo

9mm Parabellum Bullet プロフィール

キューミリ パラベラム バレット:2004年3月横浜にて結成。2枚のミニアルバムをインディーズレーベルからリリースし、07年にDebut Disc「Discommunication e.p.」でメジャーデビュー。09年9月9日に初の日本武道館公演を開催し、結成10周年を迎えた14年には日本武道館2デイズ公演を成功させた。16年に自主レーベル”Sazanga Records”を立ち上げ、メジャーデビュー10周年を迎えた17年5月に7thアルバム『BABEL』リリース。18年には期間限定無料ダウンロードというバンド初の試みを行なった「キャリーオン」(映画『ニート・ニート・ニート』主題歌)と、9月に開催した『カオスの百年TOUR』会場限定シングルとして「21g/カルマの花環」を発表。バンド結成15thアニバーサリーイヤーとなった19年には、4月に東京・大阪にて野音フリーライヴ開催し、8枚目となるオリジナルアルバム『DEEP BLUE』をリリース。そして、23年に結成19周年イヤーを迎え、『9mm Parabellum Bullet 19th Anniversary』を開催。1月から12月までの9日、もしくは19日と“9”がつく日には、アコースティックライヴの合わせると15公演を実施し、9月19日には9年振りとなる日本武道館公演も開催。9mm Parabellum Bullet オフィシャルHP

「All We Need Is Summer Day」MV

「Hourglass」MV

「泡沫」MV

「白夜の日々」MV

OKMusic編集部

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