山口乃々華×奥村佳恵×和田琢磨 初
共演の3人が語る、オリジナルミュー
ジカル『SERI〜ひとつのいのち』出演
に向けての意気込み

conSeptのMusical Dramaシリーズ第7弾『SERI〜ひとつのいのち』が、2022年10月に東京・博品館劇場、大阪・松下IMPホールで上演される。
本作は、目が見えず話すこともできない少女・千璃(せり)をアメリカで生み、彼女と共に生きる日本人家族の実体験を倉本美香氏が書いた『未完の贈り物』(2021年)を原作としたオリジナルミュージカル。
脚本・作詞を高橋亜子、作曲・音楽監督を桑原まこ、演出・振付を下司尚実が担い、3人の気鋭のクリエイターの初コラボにも注目が集まっている。
8月8日(月)、都内にて本作の取材会が開催された。会場には、ミュージカル初主演となる千璃役の山口乃々華、千璃の母・美香役の奥村佳恵、千璃の父・丈晴役の和田琢磨の3名のキャストが出席。出演に向けての意気込みや覚悟を語ってくれた。
(左から)和田琢磨、山口乃々華、奥村佳恵
ーー初共演となる御三方ですが、お互いの印象、そしてこれからどのように舞台を作っていこうと思われているのか教えてください。
和田:山口さんが演じる千璃は、今回の登場人物の中で一番難しい役柄だと思います。すごく真っ白といいますか、この方はどこまで何ができるんだろうと、共演者の僕からもワクワクするような印象を受けています。奥村さんとは撮影のときに初めてお会いしました。クールビューティーな方なのかなと思ったら、すごく明るくニコニコ笑って共演者の方とお話をされていたので、ギャップがありました。先日大阪でも記者会見をしたのですが、奥村さんが受け答えする言葉にはものすごく印象的なものがたくさんあり、夫婦役をやるのがさらに楽しみになりました。いい夫婦感を作れそうだなと思っています。
山口:お二人共なんですけど、パッと目が合ったときに本当に目の奥が優しくて。奥村さんの最初の印象は、パキッとされているしお肌も真っ白で、お人形さんみたいだなって圧倒されていたんです。けれどニコって笑顔でお話してくださるので、嬉しい気持ちになります。和田さんは(役の)丈晴さんとすごく似ているんじゃないかなと。優しい中にも支える力があって、取材会の前に話していたときも笑いを取ってくださるような楽しい方です。作品はシリアスですけれども、きっと本当の家族愛のような、ギュッと強く温かいものが生まれるんじゃないかなと思い、楽しみにしています。

山口乃々華

奥村:和田さんは本当におおらかな方だなという印象がすごくあります。顔面だけ見た感じだと、鼻にかけてるんだろうなとか思ってしまっていたのですが(笑)、全くそんなことはなくて! 人当たりが柔らかくて、おそらく座組のクッションのようになってくださるんだろうなと思える優しい方です。(山口)乃々華ちゃんは本当にピュア! 心が綺麗なんだろうなと思います。会話をしている中でも、いろんなものに対する反応がすごく素直な人だなと私は感じていて。あとは、シンプルにかわいいですね(笑)。仲良くしてほしいです(笑)。
奥村佳恵
ーーご自身の役の印象はいかがでしょう? また、どのようにアプローチしていこうと考えていらっしゃいますか?
和田:父親役や夫の役って、あまり人生で経験がなくて。実年齢的には適齢期というか、丁度いい年齢だと思います。役に対して自分でどう作っていこうかというのは、奥村さんと山口さんからいろいろ吸収して、そこに素直に反応して役を作っていけたらいいなと思っています。彼らに起きた出来事は非日常的ではありますが、台本を読んでいてわからなかったり共感できなかったりということはなかったので、自分の人生で経験してきたことや感受性を広げていけば、そんなに難しくはないかなと思っています。技術的には難しいことがいっぱいありますけど(笑)。
和田琢磨
山口:千璃の誕生から小学校に入るまでの、両親と一緒に過ごす6年間が描かれているのですが、私は目も見えるし言葉も理解できるし、千璃の状況は自分からはとても遠く、簡単に理解できることではないと思うんです。でも考えてみたら、それが千璃ちゃんにとっては当たり前であって、伝える手段が私たちと比べると少ないというだけで、きっと心は同じくらい、いや、もっと豊かに動いているかもしれないなと思いました。なので感性のアンテナをしっかり張って、身体で覚えていきたいなと思います。
奥村:私が演じる美香は、感情の幅もすごく大きく描かれていて、自分の感情の高ぶりを歌にしているシーンもかなりあります。音楽の力ってすごく大きいと思うので、引っ張られ過ぎるとバランスが取れなくなるのかなと。なので、音程をしっかり取っていくということも含めて、自分の中であまり引っ張られ過ぎないようにやっていきたいと思います。
奥村佳恵
ーー実在するご家族を演じるにあたって、何か覚悟をされたり、責任のようなものを感じることはありますか?
和田:今までも実在の人物を演じさせていただいたことはあるんですけど、それでビビっていたら何もできなくなってしまいます。ただ、台本になるべく嘘なく向き合いたいなとは思います。今回はアメリカで暮らしている日本人家族の話ですが、日本で暮らしている家族の中でも起こり得るような会話が散りばめられているので、真摯に、そのときの状況に都度向き合っていけば、自ずと自分の役やシーンで伝えたいことは浮かび上がってくると思います。そういうことを心がけていきたいです。
山口:私は同じ原作を元にして作られたリーディング・ミュージカルの作品を観たことがあって、そのときに結構心にズシンときてしまいました。今回、ご縁があって出演のお話を奇跡的にいただいたんですけど、最初に「やりましょう」と言うのに覚悟が必要なくらい、私が演じる千璃ちゃんはとても稀な障害を持っていて、難しいんじゃないかと思いました。でも台本を読んでいく中で、美香と丈晴という二人の夫婦(千璃の両親)が諦めないでいてくれたことに愛情や希望を感じ、この家族になりたいなと思えたんです。とても責任は感じています。
山口乃々華
奥村:実在されていて、しかも今現在生きていらっしゃる方々を演じるのは、確かにいつものお芝居と比べると少し圧みたいなものを感じてはいます。けれど、どんな作品に出演するにしても板の上でお芝居をするのは私であって、私の身体、私の声でお客様に届けるものです。台本は原作に対して忠実に描かれていると思うので、私は台本に書かれている通りに、そのシーンがお客様に届くように、舞台の上で必死に生きるということをするしかないなと思います。
ーー本作は楽曲が全部で27曲あります。台本を読んだときに、ミュージカルとドラマの共存のバランスをどうやって取ろうと思いましたか?
和田:素晴らしいミュージカルは世にたくさんあると思います。ただ自分はあまりミュージカルの経験は多くはないので、会話だけのシーンと音楽が乗ったときの質感の差が出れば出る程面白くなるんじゃないかなと思っていて。オリジナルミュージカル作品なので、約束事がある中でもトライアンドエラーで深く掘り下げていけたら、今までに観たことのない質感の面白い作品になるんじゃないかなと。ものすごくハードルが高いことなので、自分自身に戒めのように言っているんですが・・・・・・(笑)。
和田琢磨
山口:出来上がっている楽曲を聴かせていただいたら、比較的に明るい雰囲気で、いろんな音が聞こえてきて楽しい音楽でした。ただ、その中でも美香さんが悩んでいるときの音楽は激しく、すごくギャップもあります。私自身はこの作品の中でほぼ言葉を発しないので、身体表現を使ったり、日常生活をマイムで表現していくことになるのですが、多様な表現でいろんな角度から見せられるものがあると思います。言葉だけじゃなく、目でも耳でもわかるし、いろんな方向から投げかけられるような作品になるんじゃないかなと。
奥村:個人的にはここまでミュージカルで自分が歌う機会はなかったので、自分の中では挑戦です。例えばミュージカルを見慣れていない人だと「え、ここで歌うんだ!?」と驚く人も多いと思います。でもそうはなりたくないので、いかに芝居と繋げて歌を歌えるか、そこに違和感を感じさせずに自然と「あ、歌になってた」と気付いてもらえるくらい、シーンの中にうまく溶け込んだまま歌に入れたらいいなあと思っています。それは自分の努力次第のところもあると思いますので、一生懸命練習したいです。
ーー作品を通して伝えたいメッセージや、見どころを教えてください。
和田:いろいろな観方があると思っていて。母親の方が観たとき、男性が観たとき、人によって印象が変わる作品だと思います。だから、正直何かを伝えたいということはあまり考えていなくてですね。本当に台本と音楽に素直に向き合って、どう感じていただけるかというのが私自身も楽しみです。台本の中で、自分一人で葛藤したり夫婦で意見がすれ違ったりというシーンがあるんですけど、そういったことが観ている方の事情とリンクする瞬間もあると思うんですよね。自分の役、そして作品に対して極力嘘がないように向き合っていきたいです。
山口:私の役でいうと、千璃は実体と魂があります。魂の方では身体表現を用いていくので、そこで感情を伝えられたらいいなと思っています。この物語は障害と家族と一緒に生きていく話で、特別な例に感じるかもしれないけれど、これはあなたの物語でもあるんだよというメッセージがあります。こうして素直な気持ちで安心して毎日を生きられているのは、周りの人たちが支えてくれているからだよね、と。私自身も本当にそうだなと思っていて。誰かがいつも見てくれているから、支えてくれているから、こうしていられるんです。作品を通してそんなメッセージを伝えられたらいいなと思っています。
奥山:見どころとしては、身体表現やリアルな芝居のシーンや歌のシーンがあるので、いろんな要素があるということ。会話だけのお芝居は誇張せずリアルにやって、歌のシーンは音楽に合わせて普通に喋っているときとは違う響き方でお客様に届けるシーンになると思います。シーン毎にいろんな観方があるだろうし、それぞれ楽しんでもらえたらと思っています。作品を通してのメッセージは、乃々華ちゃんが話してくれたものが本当に大きなメッセージになると思います。美香という役としては、「逃げない」ということが一つあるのかなと。途方もないことに押しつぶされそうになっても、逃げずに戦い続けることで得られる光や温かさがある。負けないで戦うぞという気持ちが、役のメッセージとしてはあると思います。
(左から)和田琢磨、山口乃々華、奥村佳恵
ーーお稽古はこれからということですが、公演に向けて体力作りや健康面で気をつけていることはありますか?
奥村:最近、暑過ぎてクーラーをガンガンにかけているんです。でもやっぱり喉が乾燥するという弊害があるなと思ったので、もう少し涼しくなったらクーラーを止めたいと思います。今回は声を潰しちゃうということが一番怖いので、喉のケアは励もうと思っています。
山口:私は身体表現をさせていただくにあたって体力が必要になると思うので、ダンスレッスンを週に1回、3時間。今はバーレッスンとかアップをして、そのあとに振り付けというレッスンに通っています。なるべく動ける身体を作っている途中です。
和田:私は舞台の作品で体を動かすことは多いので、日常的に特別気をつけていることはないんです。今年に入ってからはパーソナルジムで個人レッスンを受けて、トレーニングで体を鍛えるようになりました。最近は筋トレにハマっていて、毎日腹筋ローラーで家でコロコロと。今回の作品の中で脱ぐシーンはないと思いますけどね(笑)。
(左から)和田琢磨、山口乃々華、奥村佳恵
取材・文・撮影=松村 蘭(らんねえ)

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