ヴェルディ『ファルスタッフ』、ロッ
シーニ『泥棒かささぎ』から、ワーグ
ナー『ニュルンベルクのマイスタージ
ンガー』まで~充実の時を迎える青山
貴(バリトン)、大いに語る。

初夏のびわ湖ホールで、芸術監督 沼尻竜典のシーズン最後を飾る「びわ湖ホールプロデュースオペラ」の制作発表が行われた。上演される作品は、ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』で、沼尻はこの作品上演を以て、一つの劇場で同じ指揮者がワーグナーの10作品すべてを指揮する日本で初めての指揮者となる。
注目は、誰が主役のハンス・ザックスを歌うのかだったが、こちらは大方の予想通り、日本を代表するバリトン歌手 青山貴の名前が発表された。2013年に『ワルキューレ』のヴォータンを演じて以降、〈びわ湖リング〉をはじめ、着実にワーグナー作品における歌唱実績を上げ続けている青山が、遂に最高の “マイスタージンガー” を歌い上げる。
左から びわ湖ホール館長 村田和彦、芸術監督 沼尻竜典、ハンス・ザックス役 青山貴『ニュルンベルクのマイスタージンガー』制作発表(2022.7.4 びわ湖ホール)  (c)H.isojima
今まさに充実の時を迎えている青山は、8月9日に本番を控えたロッシーニの歌劇『泥棒かささぎ』の稽古に余念がない。本番まで時間のない中、特にいつもと変わる様子もなく、快く取材に応じ、あんなコトやこんなコトを語ってくれた。
さすらい人を演じる青山貴   びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー《ニーベルングの指環》『ジークフリート』(2019.3.7~8 びわ湖ホール)   写真提供:びわ湖ホール

―― 『泥棒かささぎ』本番直前ですが、稽古は順調ですか? 昨年、本番1週間前に延期が決まり、1年2か月遅れの本番という事になります。
コロナで本番1週間前の、オーケストラ合わせ前日に延期が決まり、悔しい思いをしました。一度作り上げたモノを1年寝かせて再度取り上げるケースは初めてです。新たに取り組み始めると楽譜に書き込みなどもしてありますので、すぐに思い出しますね。今回は勢いに任せて歌うのではなく、発声や音程に気を遣い、前回以上に深いところまで到達したいと思っています。
昨年コロナで延期になった「泥棒かささぎ」。楽しみです!  (c)H.isojima
―― 先日のレクチャーコンサートを拝聴しました。青山さん演じるフェルナンドと、その娘ニネッタ役の老田裕子さん、代官役の伊藤貴之さんの三重唱は、ロッシーニの魅力一杯で見事でした。
時間が止まったように、美しい旋律と軽やかなリズムに乗せて、それぞれが感情を表現していきます。悲しいことも明るい音楽に乗せて歌っていくのがロッシーニの魅力ですし、私たちも楽しいです。
左から青山貴(フェルナンド)、老田裕子(ニネッタ)、伊藤貴之(ゴッタルド) レクチャーコンサート(22.6.22 ザ・フェニックスホール)  写真提供:朝日新聞文化財団

左から朝岡聡(フリーアナウンサー)、伊藤貴之、老田裕子、青山貴、園田隆一郎  写真提供:朝日新聞文化財団
―― 青山さんのフェルナンドは、捕まったら自分も死刑になるのに、娘を助けに行くという漢気に溢れた、少々無謀な役ですね。常に死を意識しながら優しさを表現していくところも難しい役どころだと思います。

悲劇性を前面に押し出しながらも、どこかに明るさを忘れないように演じることが、オペラ全体のイメージに繋がると思っています。園田隆一郎マエストロからは、「不幸を一心に背負っている役なんだから、謙虚で控えめなイメージを投げ打って、猛獣のように激しく演じて欲しい!」と言われていますが、これが難しい(笑)。頑張ります。
ロッシーニ 歌劇『泥棒かささぎ』稽古風景  写真提供:びわ湖ホール
―― 先月中旬には、びわ湖ホールでヴェルディの『ファルスタッフ』に出演されていました。以前にお話を伺った時に、一番好きな作曲家はヴェルディと仰っていました。

『ファルスタッフ』をやらせて頂いて、益々ヴェルディが好きになりました。『ファルスタッフ』と云えば、コミカルな部分ばかりを押し出しがちですが、シリアスな気持ちを内面に秘めて、軽やかにステップ(笑)。今回も田口道子さんに徹底的にしごかれました。40日くらい滞在して作り上げたのですが、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーと一緒になって作り上げられたのが楽しかったです。

中島郁子(クイックリー夫人)と青山貴(ファルスタッフ)  びわ湖ホールオペラへの招待 ヴェルディ歌劇『ファルスタッフ』(2022.7.17~18 びわ湖ホール中ホール)  写真提供:びわ湖ホール
―― びわ湖ホール声楽アンサンブルのシステムは本当に素晴らしいですよね。

今まではあまりお付き合いが無く、よく存じ上げなかったのですが、お給料をもらって実際のオペラに触れながらしっかり勉強ができるなんて、恵まれた環境だと思います。何よりも、皆さん仲が良くて明るい。先輩、後輩の関係に加え、OBの皆さんが助けに来るのも素敵です。
青山貴(ファルスタッフ)と山岸裕梨(アリーチェ)  びわ湖ホールオペラへの招待 ヴェルディ歌劇『ファルスタッフ』(2022.7.17~18 びわ湖ホール中ホール)  写真提供:びわ湖ホール
―― びわ湖ホールと言えば青山さんですよね。ヴェルディからワーグナーまで大活躍です。先日、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の制作発表が行われ、ハンス・ザックス役でのご出演が発表となり、大変な話題となりました。びわ湖ホールと青山さんの関係を教えて頂けますか。
新国立劇場オペラ研修所を出て、最初の海外留学から帰って来た2005年に、びわ湖ホールの芸術監督をされていた若杉弘先生から声を掛けて頂き、プロデュースオペラ『スティッフェリオ』のスタンカー役のカバーキャストで呼んで頂いたのが、びわ湖ホールとの関係の始まりです。日本に帰って来たばかりで、仕事もお金もなかった時だったので、有難かったです。ちょうど若杉先生が、ヴェルディ・シリーズをやられていた時で、翌年の『海賊』にもセイド役のカバーキャストで呼んで頂きました。
びわ湖ホール初代芸術監督 若杉弘  写真提供:びわ湖ホール
―― 沼尻さんが監督の時代からの関係ではなかったのですね。
そうです。若杉先生がびわ湖ホールの芸術監督をやられた最後の2作品にカバーキャストで呼んで頂きました。カバーとは云え、びわ湖ホールのような大きな舞台で、ヴェルディの主要な役を歌わせて頂いて、大変刺激的な時間を過ごしたことをよく覚えています。
―― 沼尻さんとの出会いはいつになりますか。
2009年に新国立劇場「高校生のためのオペラ鑑賞教室」の『トスカ』で、スカルピア役として声がかかりました。選んで頂いたのは、新国立劇場の芸術監督になられていた若杉先生ですが、その公演を指揮されていたのが沼尻竜典さんでした。その前にも何処かでお会いしたことは有るかもしれませんが、オペラでご一緒したのはこの『トスカ』が最初のはず。この時の演出が、先日の『ファルスタッフ』の田口道子さん。これもご縁ですね。例によって、厳しくご指導頂いたのですが(笑)、何とか本番を迎えることが出来、それを沼尻さんは評価して頂いたのだと思います。そんな事があって、2013年のワーグナー『ワルキューレ』でヴォータンのオファーを受けました。歌えると思って頂いたのでしょうね。
びわ湖ホール芸術監督 沼尻竜典  写真提供:びわ湖ホール
―― いきなりのワーグナーですね。これまでにヴォータンを歌った日本人はそれほど多くありません。どんな感じでオファーを受けられたのですか。
実は、ワーグナーの事は何も知りませんでした。正直言って、ワーグナーを歌いたいと思ったことは無かったんです。やはりイタリアオペラが好きでした。新国立劇場オペラ研修所の研修生だった頃、新国立劇場のオペラを観ることは出来たのですが、ワーグナーのオペラは、油断すると寝てしまう感じで(笑)。これは自分のレパートリーでは無いなぁと思っていました。こんな凄い曲を歌う、専門の歌手がいるんだろうな、くらいに思っていました。沼尻さんのオファーは、まさに青天の霹靂というのでしょうか。その時は、選んで頂いた可能性に賭けてみよう! 出来るか出来ないかを考えるよりも、「やるしかない!」と腹を括った事を覚えています。

びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー《ニーベルングの指環》『ワルキューレ』(2018.3.3~4 びわ湖ホール)  写真提供:びわ湖ホール

ヴォータンを演じる青山貴  びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー《ニーベルングの指環》『ワルキューレ』(2018.3.3~4 びわ湖ホール)  写真提供:びわ湖ホール
―― 実際にヴォータンを歌ってみて、如何でしたか。
もう言葉で言い表せない感動と達成感でした。客席の熱狂ぶりも初めて味わうもので、ワーグナーのオペラはお客様と共に作り上げられているのだなと思いました。その後、2016年にはワーグナーの『さまよえるオランダ人』、2017年からは〈びわ湖リング〉の出演へと続きます。ワーグナーは正直、歌っている時は必死で、楽しいという感じは一切ありません。ロッシーニの『泥棒かささぎ』は、皆の声が重なっていって、フェルナンドのような不幸を一身に背負う役でも、アンサンブルが楽しい!と思えます。それに対して、ワーグナーは、自分がオーケストラの楽器の一部になっていると言いますか、声が合わさる感じがほとんど無く、孤独を感じます。ただステージ上で、自分が歌っていない時に鳴っているオーケストラのサウンドが、たまらなく高揚感を感じるもので、あの感じは他で味わったことのないモノでした。
感染予防を万全に『泥棒かささぎ』立ち稽古の様子  写真提供:朝日新聞文化財団
『泥棒かささぎ』立ち稽古の様子  写真提供:朝日新聞文化財団
―― これまでびわ湖ホールで演じられたワーグナーは、『ラインの黄金』『ワルキューレ』のヴォータン、『さまよえるオランダ人』のオランダ人、『ジークフリート』のさすらい人、『パルジファル』のアムフォルタスと、どれも大変な役どころですが、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のザックスは、ちょっと特別な役ですね。
昨年、新国立劇場の『ニュルンベルクのマイスタージンガー』にフリッツ・コートナー役で出演していました。この公演、ご多分に漏れず、コロナに翻弄された公演でして、昨年8月に予定されていた東京文化会館での公演は中止になったのですが、ちょうどその頃、びわ湖ホールから連絡が有って、沼尻芸術監督最後の作品『ニュルンベルクのマイスタージンガー』に出て欲しいという事でした。その時、何の役かは語られなかったので、同じコートナー役だろうと思っていたのですが、実はザックス役だったという…(笑)。それが判ったのは昨年11月、新国立劇場公演の本番に差し掛かる数日前に、沼尻さんご本人から直接頂いたメールに「ザックス役をよろしくお願いします!」と書かれていたのです。
オランダ人を演じる青山貴  びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー歌劇『さまよえるオランダ人』(2016.3.5~6 びわ湖ホール大ホール)  写真提供:びわ湖ホール

ヴォータンを演じる青山貴  びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー《ニーベルングの指環》『ワルキューレ』(2018.3.3~4 びわ湖ホール)   写真提供:びわ湖ホール

さすらい人を演じる青山貴  びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー《ニーベルングの指環》『ジークフリート』(2019.3.7~8 びわ湖ホール)  写真提供:びわ湖ホール
―― ザックスをやると判ってどんな気持ちだったのですか。
もう滅茶苦茶緊張しました。それまで、ザックス役のトーマス・ヨハネス・マイヤーが歌っているのを横目に見ながら、なんて大変な役なんだと思っていました。歌う量が半端じゃないですし、途中でヨハネス・マイヤーが涙を流しながら歌っているのを見て、ドイツ人にしか分からない特別な役なんだ。自分がこの役をやる事は一生ないだろうなぁと思っていた役だったのです。新国立劇場公演では、ザックス役のカバーキャストは日本人ではありませんでした。ポーグナ―役のギド・イェンティンスが、いざという時は、ザックスを歌う段取りになっていました。
―ー そんな大変な役、すんなり受け入れることが出来たのでしょうか。
沼尻さんは、これまでも私を色々な高みに導いて下さり、全然違った景色を見せてくださいました。これまでもそうであったように、沼尻さんが出来ると見込んで声を掛けていただいたのなら、これはやるしかないと思いました。決め手は、沼尻さんの一言、「年齢的に今じゃないか⁈」沼尻さんが、びわ湖ホール芸術監督としてラストとなる『ニュルンベルクのマイスタージンガー』ですので、限界までやってやろう!という気持ちになりました。
左から 青山貴と芸術監督 沼尻竜典 『ニュルンベルクのマイスタージンガー』制作発表(2022.7.4 びわ湖ホール)  (c)H.isojima
―― ザックスをやる事が決まってからの新国立劇場公演では、ヨハネス・マイヤーの事をガン見されていたのではないですか(笑)。
その通りです。ヨハネス・マイヤーの一挙手一投足を見て、研究しました(笑)。時間はいくら有っても足りないだけに、8月の段階から判っていればもっと余裕を持って新国立劇場の公演に臨めたと、その点は残念でした。
―― びわ湖ホールの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』にベックメッサー役で出演される黒田博さんは、ザックス役を歌われているそうですね。
2002年、二期会創立50周年記念『ニュルンベルクのマイスタージンガー』でザックスを歌われています。なので、普通なら黒田さんにお話しが行くところ、沼尻さんは、最初から私にザックスを歌わせようと思っていたとお聞きしました。これは、もう期待に応えるしかありません。頑張ります。
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』制作発表(2022.7.4 びわ湖ホール)  (c)H.isojima
―― 青山さんのように、イタリアオペラからワーグナーまでを歌える歌手は、そんなにいないと思います。
3月くらいから『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のザックスのコレペティ稽古を始めています。さすがに最近は『泥棒かささぎ』に集中していますが、ワーグナーとロッシーニでは確かに歌い方に違う部分はあります。しかし、イタリアオペラのテクニックをちゃんと習得していれば、ワーグナーにも十分応用できると思います。山があるとして、ルートが違うだけで、辿り着く場所は同じと云えばいいのでしょうか。ワーグナーとロッシーニ、基本の幹は同じで、微妙な調整の仕方が違うだけで、ちゃんと理解してやれば、どちらも歌えるようにも思います。もっともこれは、今取り組んでいる『泥棒かささぎ』のフェルナンドが、ザックスに近い低めの声だから言えるのかもしれません。これまでの役は、あまり考え過ぎないようにやって来ましたが、ザックスはずっと舞台に出ずっぱりで、歌う量が半端なく、技術的にも他のどの役よりも難易度は高いです。それはワーグナー自身が、まさにマイスタージンガーに宛てて書いているからかもしれませんね。
青山貴(バリトン)  写真提供:二期会21
―― 青山さんが声楽家を目指そうと思われたのはいくつの時ですか。幼少期の楽器経験など、教えてください。
歌を始めたのは、高校からです。私の母校、府中西高校は合唱部が強い学校なのですが、新入生の勧誘も強引で(笑)。私は断れずに、まんまと音楽室に連れていかれて、部員の歌を聴かされたのですが、それに感動して入部をしてしまいました。
―― 小学校、中学校は何をされていたのですか。
中学ではサッカーをやっていましたが、途中で辞めてしまいました。それだけに高校では一つの事を最後までやり切ろうと思っていたのに、深く考えることなく合唱部に入った事は自分でも意外でした。小学校、中学校とピアノや楽器を習ったことは有りません。クラシックを聴く事も無く、音楽と云えばJポップを聴くくらい。工藤静香渡辺美里、TMネットワークのCDを買って来て、よく聴いていました(笑)。高校で合唱部に入ってハマったのは、カラオケです。合唱部で発声練習をしているからか、カラオケに連日行っていたからか、少しずつ大きな声が出るようになりました(笑)。
歌は高校の合唱部で始めました。それまで楽器経験はありません。  (c)H.isojima
―― 音大を目指そうと思われたのは、いつですか。
高校2年です。私が入学した時に3年だったテノール歌手の望月哲也さんが東京藝術大学に入られたことが、自分も藝大を目指そうと思ったきっかけでした。そのタイミングでピアノを習い始めましたが、さすがに始めるのが遅すぎましたね。試験では課題曲を何とかギリギリ弾けるくらいでしたが、とてもピアノを弾けますとは言えません。楽典やソルフェージュは、望月さんが教えてあげると仰るので、家まで度々伺いました。
―― 現役で東京藝大に合格されたのですね。
奇跡ですね。私の学年で唯一、国立大学に進学したという事で、母校の広報誌に写真付きで紹介されたほどでした(笑)。高校から始めたのに、意外と曲は知っていました。合唱部の恒例行事に「独唱会」というのが有って、年に2,3回、全部員が、オペラのアリアなど好きな曲を持ち寄って歌うのですが、70人ほど部員がいるので、70曲を聴く事になります。これを年に2,3回やると、有名な曲は大体聴いたことになりますね。最初、蚊の鳴くような声で私が歌ったのが、『椿姫』ジェルモンの歌う“プロヴァンスの海と陸”。その後、実際にオペラで歌うようになるのですが、いつも高校時代を懐かしく思い出します。
府中西高校合唱部は最高。よくぞ勧誘してくれた!という感じです。  写真提供:
―― 大学時代はどうだったのですか。
全国からエリートがやって来ましたが、自分に足りないものはここで、こんな勉強をしないといけないのかなどと、意外に冷静に受け止めていたように思います。同級生とも仲良くなって、充実した大学生活を送っていました。自宅から通っていたこともあり、生活のために無理なアルバイトに追われる事もなく、合唱のエキストラや結婚式の聖歌隊を歌う事で、収入を得ていました。大学院に進み、独唱科かオペラ科を選択するのですが、迷わずオペラ科を選びました。やはりオペラがやりたかったんだと思います。
―― 1997年、大学4年の時に、芸大『メサイア』公演でソロを歌われたのがデビューという事になっています。という事は、今年がデビュー25周年という事になります。
えー、そんなに…。早いですね。あれから20年くらいだと思っていました。芸大時代も、かけがえのない出会いが沢山ありました。イタリアオペラの魅力にハマった、第10回芸大オペラプロジェクト、ロッシーニの『ラ・チェネレントラ』にダンディーニ役で出演しましたが、その時指揮をされていたのが、今回『泥棒かささぎ』を指揮して頂く園田マエストロです。あ、『ファルスタッフ』もですね(笑)。恩師の鈴木寛一先生との出会いは特別なものです。先生はドイツ音楽、宗教曲を大変得意とされていました。私の声を評価して頂き、宗教曲、オラトリオへ誘って頂いたのは先生ですし、声を磨くためにはイタリアに行くべきと勧めてくださったのも先生です。色々な方との出会いを糧に、大学院を卒業してから、二期会オペラスタジオ第44期マスタークラスを終了し、新国立劇場オペラ研修所第4期生を3年で終了。新国の研修所で教えて頂いたセルジョ・ベルトッキ先生にもっと教えて頂こうと、文化庁の在外研修を利用して、ボローニャに渡り、その後ミラノで研鑽を積みました。

指揮者 園田隆一郎と青山貴  写真提供:朝日新聞文化財団
―― 青山さんと云うと、「IL DEVU」の活動もありますね。

ありがとうございます。これまで3枚のアルバムをリリースしていますし、多くのファンの皆様に温かい声援を頂いております。
―― 目標とする歌手、好きな歌手はどなたでしょうか。
エットレ・バスティアニーニが好きです。彼は元バス歌手だったのが、音域を上げてバリトンになった人です。44歳で亡くなっていますが、彼の歌うヴェルディは、特に大好きです。一時期は「バスティアニーニ オペラアリア集」ばかり聞いていました。
好きな歌手はエットレ・バスティアニーニ!彼の「オペラアリア集」は愛聴盤です。  (c)H.isojima
―― 関西で青山さんの声を聴こうと思うと、まずは8月9日にフェスティバルホールで行われる『泥棒かささぎ』ですね。その後は、年末のベートーヴェン『第9』でしょうか。青山さんはびわ湖ホール同様に、大阪フィルの「定期演奏会」や『第9』でも関西のファンには馴染みがあります。
大阪フィルの『第9』は、福井敬さんと一緒にずっと呼んで頂いています。「定期演奏会」でも、ヴィンシャーマン先生のバッハ『マタイ受難曲』や『ヨハネ受難曲』、エリシュカ先生のドヴォルザーク『スターバト・マーテル』や『テ・デウム』など、忘れることの出来ない出会いが沢山ありました。有難いことです。
 今年も大阪フィルの「第9」でお会いしましょう! レクチャーコンサート(22.6.22 ザ・フェニックスホール)  写真提供:朝日新聞文化財団
―― 最後に「SPICE」の読者にメッセージをお願いします。
いつもご声援を頂きまして、ありがとうございます。悲願とも言える『泥棒かささぎ』が目前に迫っています。ここに来て、また第7波の到来とかで、心配な状況は続いていますが、我々歌い手は毎日検査を実施し、フェスティバルホール側は感染防止対策を万全に施して、皆様のご来場をお待ちしています。明るく元気な園田マエストロと、素晴らしい歌手が1年ぶりに揃いました。大阪交響楽団の歌心あるオーケストラの響きに乗せて、ロッシーニの美しい調べは皆様に元気をお届け出来ると思います。ぜひ、お越しください。そして、それ以降もコンサートは続きますし、2023年の3月には、びわ湖ホールの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』も控えています。これからも青山貴を、どうぞよろしくお願いします。コンサートホールでお待ちしています。
皆さま、コンサートホールでお会いしましょう!  写真提供:朝日新聞文化財団
―― 青山さん、長時間ありがとうございました。ご活躍を祈っています。
取材・文=磯島浩彰

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