the GazettE 決して揺らがないだろ
うファンとの絆を証明したツアーファ
イナル「だから、この場所を守らなき
ゃいけない」

the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 01-COUNT "DECEM"

2022.7.14 中野サンプラザホール
コロナ禍を経て、実に3年ぶりとなった全国ツアーの最終日。各地でたくさんのパワーを貰ってきたとアンコールで述べたRUKI(Vo)は、さらに、こう語りかけた。
「音楽ってものはどこでもできるものなんだけど、the GazettEのライブってものは、やっぱりみんながいないと成り立たない。俺は生に勝るものはないと思ってたし、生じゃないと伝わらないし、みんなの気持ちも伝わってこないんだよ。だから、この場所を守らなきゃいけないし、この熱は声が出せなかろうと関係ない。信じてたから、お前らは声出せなくてもやってくれるって。決められたスペースの中で精一杯身体動かして、マスク越しでも目は笑ってるのが伝わってきた。それが得られただけでも、このツアーは意義があったなって思います」
RUKI(Vo)
5月13日の初日公演で彼が発した「the GazettEは、みんながいないとできない」という言葉。全国13公演に及んだ『the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 01-COUNT "DECEM"』で、それが確信に変わったと告げた彼の表情には、確かな達成感が滲んでいた。最新アルバム『MASS』を引っ提げ、「お前たちの熱量がアルバムを完成させる」と公言して始まった今回のツアーで彼らが求めていたものは、アーティストとしての挑戦や進化といったエゴではなく、久々の邂逅となるファンと共にどこまで高め合えるか?ということ。つまり、とことんファン目線でライブを積み重ねたツアーのファイナルだけあり、会場の空気感もピリピリとした緊張感を伴っていた初日とは、明らかに異なるものだった。
麗(Gt)
葵(Gt)のアルペジオから静かに開幕を告げたのは、初日と同じく「BLINDING HOPE」。レーザー光線が飛び交う刺激的な演出もヘッドバンギングを繰り出すフロアの熱狂も初日と同じであるにもかかわらず、どことなく温かな安心感があるのは、12公演で5人とファンが培ってきた“信頼”のなせるわざなのだろう。そのままシームレスで続いた「ROLLIN'」で湧き起こるクラップもウェルカム感たっぷりで、初っ端から高まる一体感にRUKIも「Oh Yeah Tokyo!」と歓喜。そんな一種和やかな空気の中で、今年20周年を迎えたthe GazettEというバンドの真髄を見せられたのが3曲目の「GUSH」だ。冒頭で麗(Gt)が鳴らすはずのギターの音が出ないというレアなシーンに拍手が湧き、RUKIも「おい、(機材)トラブルじゃねぇよな?」と疑問顏。「やっちゃって!」と再開を促すものの、今度は上手くタイミングが合わず「3曲目なんだけど、まだカッコつけてるんだけど……どうした、大丈夫か? カウント聞いてから入らなきゃ、戒(Dr)くんは(音を)止めなきゃ」と注意するRUKIの顏には、怒りも焦りもなかった。場内は笑いに包まれ、申し訳なさそうにする麗に「可愛い!」の声まで飛ぶが、RUKIの「お前らの記憶、消します」という宣言から完璧な激アツ空間を展開するあたり、まさしく三度目の正直といったところ。最後に“借りは返す!”とばかりに、エフェクティブなプレイで曲を締めくくる麗にも大きな拍手が贈られ、ハプニングを見事に切り返してみせた。裏を返せば、その自信があるからこそ不測の事態にも動じずにいられるのだろう。20年のキャリアの中であらゆる経験を重ねて、トラブルや“可愛い”を許容できる姿こそ、真の意味での“カッコよさ”なのだ。
葵(Gt)
「久しぶりに長いツアーを回って、純粋に楽しくて。今みたいなトラブルもライブじゃないと絶対味わえないことだから、面白い記憶が残ったと思います。今日1日、もっと面白くなると思うんで期待して」(RUKI)
そんなポジティヴなMC以降、アルバム曲を軸に既存曲を効果的に織り込みながら、時に力強く、時に繊細な感情の発露で場内を魅了していく5人。公演ごとに微妙な曲順変更を加えながらも、基本的には同じ流れで練り込んできたセットリストだけに、それぞれの楽曲がより大きなスケールと高い浸透力で沁みわたってきたのも印象的だった。不穏さがどんどん折り重なっていく「裏切る舌」で、めいめい自由に暴れて身体を温めたオーディエンスは、続く「NOX」でRUKIと共に拳を振り上げて最高のグルーヴを実現。また、シャウトを封印しての低音ボーカルが妖艶な「Bath Room」では5人の紡ぐ音の緻密な構成が際立ち、「濁」では楽曲の壮大感と緩急の利いたプレイがスペクタキュラーな照明効果と呼応して、ドラマティックな曲世界を創り上げていく。5人の歌と演奏のみならず音響、照明、演出すべてを駆使して繋ぐ物語は美しく、ホールツアーのアドバンテージを活かし切ったステージングからも、20年選手の底力を感じさせられた。
REITA(Ba)
来年の閉館が決まった中野サンプラザに立てるのは、恐らく今日が最後になるであろうことに触れ、RUKIは「個人的には小さい頃から名前を知っていて、すごくやってみたい会場だった。最後にココに立てて良かったなと思います」と挨拶。そして「一本一本俺ら変わらずにやってるから、ファイナルとか関係ない。いつでも死ぬ気でやってるから死ぬ気で来いよ。楽しむことだけ考えようぜ!」と発した言葉の通り、激烈なナンバーを立て続けに投下して狂乱を作り出していく。「FRENZY」で凶悪なユニゾンを轟かせた弦楽器隊は「UGLY」でステージ上に散らばりながらも、麗がギターソロを放つ瞬間には葵とREITA(Ba)が一気に腰を落とす、その阿吽の呼吸ぶりには目を見張るばかり。また、RUKIの豪胆なスクリーモにオーディエンスは一斉に拳をあげて強烈な一体感を生み出し、さらに「ABHOR GOD」では容赦なく飛び跳ねて二階席を揺らしまくる。その末に「今は声出さなくていい、お前らの心、届けてくれ!」と届けられたのは、アルバム『MASS』でも最後に据えられている「LAST SONG」。ステージ上をくまなく移動しながら語りかけるように歌うRUKIに、オーディエンスは声の代わりにジャンプで応え、その様にRUKIも惜しみない拍手を返す。互いの心をクラップで通わせていきながら、麗は大きく身体を開き、逆にREITAが低いポジションで屈めば、葵はフロアをじっと見つめ、戒はエモーショナルなドラミングに乗せてと、それぞれのスタイルを取りながらも込める想いは一つ。アンコールの冒頭で戒が告げたように「最高に楽しいツアー」を味わわせてくれたファンへの感謝と、まだ果たせぬ景色を必ずえるという誓いだ。
戒(Dr)
「このツアーを通して一つ確信を持てたのは、どんな状況下でもthe GazettEらしくライブできるってこと。そして声が出せるようになったとき、もっとスゴいものが見せられるんじゃないかっていう楽しみ。だから期待しててください。一生暴れさせるんでよろしく!」(RUKI)
定番曲の「赤いワンピース」に懐かしの「生暖かい雨とざらついた情熱」を並べて、文句ナシに楽しませたアンコール。そう宣言したRUKIは「TWO OF A KIND」で再び二階席を振動させるオーディエンスに「さぁ、東京! 最高の景色だ!」と「LINDA~candydive Pinky heaven~」をドロップして、フロアに笑顔の花を咲かせていく。20年近く歌い続けられてきた《ここから始めよう 新しい日々を》というリリックはいつも以上の真実味をもって響き、さらに「お前らの明日を約束してやるぜ!」と雪崩れ込んだ「TOMORROW NEVER DIES」の最後には、力を振り絞るかのようにグルグルと回転してみせるREITAの姿が。彼らがいま以上に怖いもの知らずで血気盛んだった頃を彷彿とさせる景色に、筆者の脳裏には16年前、初めての日本武道館ライブでRUKIが語った言葉がよぎっていた。
「みんながいて、俺らがいて、ライブっていう空間ができれば、それだけでいい」
ファンと同じ空間を分かち合うことが許されなかった時間を経て、彼らが立ち戻ったのはそんな初心ではなかっただろうか。ライブ終了後、モニターで発表された今後の展開を見ても、その予想はあながち的外れではいない気がする。10月から東日本・西日本の全12ヵ所を巡る『the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 02-"The Unknown"』は、『MASS』の楽曲に歴代のアルバム9枚それぞれを掛け合わせて、公演ごとに異なる世界観を生み出していくというもの。中でも、1stから3rdアルバムは東西どちらの公演にも組み込まれているため、懐かしい楽曲が聴ける機会も多くなりそうだ。それに先立ち、結成20周年を記念したFC限定ライブ『HERESY LIMITED LIVE 2022 -HETERODOXY-』に、初めてのFCミーティング『20TH ANNIVERSARY FC MEETING -異端総會-』も、9月に東京・大阪で開催されることが決定。バンド史上初の、けれどファンにとっては間違いなく喜ばしい企画を行うに至った背景には、結成から20年を経て真の意味での自由を得た彼らの強さがある気がしてならない。この世界に何が起きようとも、もはやthe GazettEという存在と、そしてファンとの絆が揺らぐことは決してないのだ。
取材・文=清水素子
撮影=Kyoka Uemizo, Yoshihiro Mori

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